2014年2月定例会 一般質問 和田あき子 2月28日 

1.長野県子ども支援条例について

<和田議員>
 長野県子ども支援条例についてお聞きします。
 長野県子どもの支援条例(仮称)骨子(案)の段階では、基本理念はどういう理念なのか、「こども」はどういう位置づけなのか、どういう条例を目指しているのか、骨子案にいたるまでの3年近い「子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会」の提言はどういかされたのか。条例案はどうなるのだろうと思っていました。
 ようやく、2月県議会前に要綱案を示し、知事はより良い条例とするためさらに議論が必要と言われました。私もその通りだと思います。

要綱案制定の趣旨は、
子どもは、社会の宝であり、一人一人がかけがえのない存在である。
子どもは、一人の人間として、その命や人格が大切にされ、社会の一員として豊かに育つことができるよう、その人権が守られなければならない。
子どもが、生まれた時から持っている育つ力を発揮して能動的かつ自立的に活動し、自らを大切に思う気持ちを持って自分らしく成長していくことができるよう、
大人は、子どもの力を信じ、支えていく必要がある。
長野県には、地域で子どもを大切に育んできた伝統と取組があり、多くの子どもは、大人に見守られながら健やかに成長している。
一方、人間関係が希薄になり、経済格差が広がるなど社会環境が変化する中で、いじめや虐待の増加等子どもを取り巻く環境は厳しさを増しており、問題を抱え我慢している子どもや誰にも相談できずに悩んでいる子どもがいる。
このような子どもを支援するため、その抱えているつらさ、悩み等に寄り添いつつ、相談に応じ、救済する仕組みが必要である。また、子どもへの支援は、乳幼児期から青年期まで成長段階に応じて継続的に行うとともに、子ども支援は、保健、医療、福祉、教育等様々な領域で、県はもとより、国、市町村、民間団体等が連携協力して、重層的かつ総合的に取り組んでいかなければならない。
ここに、子ども支援に関わる全ての者が連携協力して、子どもと子どもの育ちを支える人を支援することにより、未来を担う子どもの最善の利益を実現し、ひいては全ての子どもが将来に夢と希望を持ち、伸び伸びと育つ地域社会を実現するため、この条例を制定する。

と、「こどもの人権」について明記されたことを歓迎するものです。子ども支援条例にどんな思いを込めて制定をしようとしているのか。知事にお伺いします。

 こども人権条約が1989年採択され、1994年日本もようやく批准国になりました。この条約は、こどもの人権について、人間の尊厳と人格を認めることが、世界の自由・正義・平和の基礎であることを前文の冒頭で確認し、差別の禁止、こどもの最善の利益、生命への権利および生存・発達の確保、意見表明権など子どもに関する諸権利を定めています。
子どもの権利の世界基準ともいうべきものです。
 これらに照らして、長野県のこどもの置かれている現状は、長野県子どもアンケート調査のまとめでみると、毎日が楽しい約9割 自己に対する肯定感63.8% まわりから大切にされているという実感79.5% 自分の意見を受け止めてもらえる86% と、自己肯定感は全国に比べても高いという面があります。けれども、自己肯定感は小学5年生で8割から高校2年は4割まで落ち込んでいるという結果です。 また、個別には、貧困、児童虐待、いじめ、体罰、不登校、非行、薬物、性非行、障がいなどによって権利を侵されている現実があります。
こういう現実がありながら、不安や心配ごとを誰にも相談できない、どうやって解決していけばいいかわからない。自己肯定感の弱い子どもは「がまんする」とあきらめている実態があり、どんなことでも、うまく言えなくても相談できるところがあれば、寄り添って問題を解決してくれるところがあればと思います。
子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会において、重ねられた議論と7000人に及ぶアンケートなどの努力を無にしないためにも、制定ありきでことを急がず、子どもの現状認識を共通の土台にし、条例制定の必要性についてもっと県民参加の開かれた議論を重ねる機会をつくり県民意識の醸成をはかるべきではないかと思いますがいかがですか。健康福祉部長に伺います。

 骨子案がだされてから、県は、骨子案に対してのパブリックコメントの募集と、県民意見を聞く会を行い。それとは別に、子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会の委員も加わって、子ども支援条例について考える集まりなどがありました。
知事は提案説明で、「長野県子ども支援条例」につきましては、より良い条例とするためさらに議論が必要と考え、今定例会には条例案を提出せず、先般、要綱案をお示しいたしました。今後多くの皆様のご理解を得て条例案を提出してまいりたいと考えておりますので、議員各位におかれましては、幅広い観点からご議論を賜りますようお願い申し上げます。と言われています。

 子ども支援条例で総合的な相談窓口と救済をする子ども支援委員会が盛り込まれています。すでに、児童相談所、教育委員会、医療機関、警察署、チャイルドラインなど相談窓口はいろいろあり、さらに相談窓口はいかがかということも言われます。しかし、不安や心配、悩みがあっても、どこに相談していいかわからない、相談しても何も解決しない。相談してもっと状況が悪くなると思っている場合。実際に何をどのように話せばいいのか不安や心配があるが言葉で説明できない、他人に話すべきかどうかわからないと言う場合など成長段階の子ども特有の困難さがあります。どんなことでもじっくりと考えながら話を聞き、悩みを発見し、サポートする総合的な相談窓口を設けることと、現実に解決する救済機関は必要ではないかと考えます。

 条例によらなくても相談窓口・救済機関を設けることはできる、ということも考えられますが、条例によってその仕組みが担保されることが安定性・継続性を保障することになると思います。いかがか。健康福祉部長にお聞きします。

 子ども支援条例を制定するため、県民への周知、意見表明や議論をする機会とあわせて、県が果たさなければならない役割が大きくなります。知事部局はじめ教育委員会を含め、行政としてかなりの覚悟で取り組まなければなりません。
 条例の理念と必要性を語り、県民の議論を重ねてこそより良い条例ができるのではないでしょうか。知事に再度決意を伺います。
 自分自身思い返して、親らしいことをしてきただろうか?と考えることもあります。むしろ子どもの育ちと共に親にさせてもらった。まわりの多くの方々に支えられてようやくここまでくることができたというのが正直なところです。
格差と貧困、常に競争にさらされている、自分が世の中で必要とされているのだろうかなどなど、生きづらい社会の中で子どもも苦しみを抱えています。親もつらさを抱えています。本当に支援を待っている人がいます。支援するために頑張っている方々がいます。より良い条例を共に生み出していきましょう。

2.浅川ダム契約変更について

○浅川ダム本体工事における施工方法等について「浅川ダム施行技術委員会」からの助言等によって、過去3回、契約額の変更を伴わない変更契約を行ってきたというが、変更点はどういうものだったのかお聞きします。

○ダムの安全性の確保のための施工方法等の変更が必要になり12億7500万円の増額を行うこととなったとの説明であるが、当初から技術的に高度な工事が予想されました。ここまで見込み違いになったのはなぜか。進捗70%で12億7500万円の契約変更、工事費を増額したが、今後どの程度の工事費が見込まれるのか、建設部長に伺います。
(浅川ダム建設地の地質が悪いことは、工事を始める前から十分に承知していた。にもかかわらず、12億7500万円増額の契約変更が生じる。この先、どのくらい増額変更がされるのか?)改めて危険でムダなダムであると思います。

○内水対策について
浅川の内水対策は、長野県と関係機関で構成する「浅川総合内水対策協議会」を設立し、具体的な対策案の検討を進めるとともに、パブリックコメントや住民説明会で意見を伺い、昨年5月に計画を策定したと言われています。そして、その計画は排水機場の増設や流域の貯留施設の設置などのハード対策と内水想定区域図の作成や、避難体制の確立などのソフト対策と、概ね5年間で実施する短期整備と、中長期に実施するもので、計画に位置付けたすべての対策を実施することにより、既往最大の被害となった、昭和58年9月の台風10号と同規模の洪水に対して、住宅部での床上浸水被害をなくすことができるというものです。
しかし、豊野地区と長沼地区での住民説明会に私も出席しましたが、県の策定した内水対策案には議論百出で住民合意が得られたという状況ではありませんでした。
ダムは100年に一度の洪水を想定し建設をしながら、内水対策は既往最大被害を当てはめるたうえに、住宅部での床上浸水被害をなくすという計画の目標であるため、毎年のように起こっている農地への冠水被害などは被害とはみなさない。どうにも釈然としません。
部長、確認ですが、排水機場の増強も21トンの計画のうち当面14トンと言われていますが、ダム完成までに7トンまでということではないかと記憶していますが、14トン増強するのですか。
ダム建設だけが進捗し、内水対策は後回しになっているように思えてなりません。少なくとも、前回の住民説明会では、県の計画に納得できないまま今日に至っています。再度、内水対策について住民と話し合う場を設けるべきと思います。建設部長いかがですか。

3.教育委員会制度の見直しについて

最後に、教育委員会制度「改革」について伺います。
昨年12月に示された、中教審答申の教育委員会制度改革は、教育委員会に対する首長の権限が強まる内容で教育の中立性が保てるのかと危惧を抱かせるものでした。さらに、今月19日に自民党文部科学部会が大筋で了承したとされる教育委員会制度「改革」案は、首長が大綱方針の策定や教育条件・人事方針などを決定し、さらに国による介入・干渉を強化するなど首長と国による教育支配・介入を抜本的に強化する内容になっています。
国の教育委員会制度「改革」案は、教育委員会制度の根幹を変えるいまだかつてない大改悪と思われますが、教育委員長・教育長の見解をうかがいます。

 国の教育委員会制度の見直しとは別に、いじめ、体罰や教職員の不祥事など現在の教育の抱える様々な課題を解決するためには、教育委員会が自浄能力を発揮し、こども、保護者、住民、教職員の声をきちんと受け止め、教育行政に反映させるように改革をすることが求められていると思います。教育長は就任以来、開かれた学校ということを言われていますが、めざしている教育の姿はどういうものなのか伺います。

○阿部知事の教育委員会制度「改革」に対する考えはいかがか。
阿部知事は、全国知事会文教・環境委員会副委員長という立場で意見を述べておられます。その中で知事は、教育委員会制度の見直しについて、教育行政、地方教育行政は自治事務であり、国の関与は極力最小限にとどめていただく必要があると発言されています。その一方、知事は、「1、地方教育行政の責任者は選挙で選ばれた、住民の意向を反映できる首長とすべきである。2、教育長は、住民に対し直接責任を負う首長の下で実務的に教育事務をつかさどる機関とすべきである。3、教育委員会は首長と教育長に対する監視機能、あるいは教育基本方針等に関与する法的な権限を持った付属機関とすべきだ。」と意見をのべ、首用の権限を強めることを求めています。
いま政府与党が行おうとしている「改革」は、国が教育委員会に「是正要求」を行うことなど教育への権力的介入・支配につながるおそれがあるものになっています。それらの問題について知事の見解を伺います。

 教育は、子どもの健全な成長発達のため、学習期間を通じて一貫した方針のもと安定的に行われることが必要です。教育は、結果が出るまで時間がかかり、またその結果も把握しにくい特性があります。
 教育は、個人の精神的な価値の形成に直接影響を与える営みであり、その内容は中立公正であることが求められるものです。国民として共通に必要なものを身に付けさせる学校教育については、学校の基本的な運営方針の決定や、教育に直接携わる教職員の人事についても中立性の確保が求められます。
先の戦争の大きな惨禍を二度と繰り返さないことを誓って制定された現行憲法と一体のものとして、教育の政治的中立性が位置付けられ、教育委員会が独立の機関として設置されたことの意義は忘れてはならないことです。
 教育の安定性、継続性、中立性を確保するために、学校などの教育機関を管理する責任は、首長から一定の独自性を持った機関、現行では教育委員会で責任を持って行うことが望ましいと考えます。
 教育長が開かれた学校と言われるように、教育委員会としても、こども、保護者、住民、教職員の声をきちんと受け止め、教育行政に反映させることは大事なことです。さらに、世論は首長が教育行政にもっと関わるべきだとしています。(昨年4月に朝日新聞が行ったアンケートでは6割を超える)住民の代表たる首長が教育にモノを言うのは変なことではなく尊重されるべきで、ただしそれは話し合いであり、さいごに判断するのは教育委員会という、教育と政治の距離感を持つことではないかと思います。

 安倍政権による、教育委員会制度「改革」の動きは、解釈改憲による集団的自衛権行使容認など、「海外で戦争する」国づくりと一体のものと言わざるを得ません。昨年12月、臨時国会最終盤の特定秘密保護法制定、NHKの経営委員会人事に見られるような公共放送を自らの支配下におく、ついには教育制度の改革によって教育への無制限の権力的介入・支配の道を開く、これらの全体が「戦争する国づくり」という動きが強まっている下で、長野県の子どもたちのために、知事、教育委員長、教育長それぞれの立場でご奮闘いただきたい。