2013年11月定例会 12月7日  石坂千穂

平成24年度11月補正予算案(追加分)に対する質疑

<石坂議員>
 先ほど提案されました、平成24年度11月補正予算案追加分について質疑を行ないます。
 2008年秋の世界的な金融危機に端を発した世界同時不況は、長野県の経済・雇用情勢にも深刻な影響を与えてきました。
 この間、速やかな経済対策の実施で県内経済の下支えと雇用の創出を図るため、2009年1月臨時県議会以来、3年連続の臨時議会が開催され、公共事業の前倒し発注、切れ目のない経済対策、雇用対策が実施されてきましたが、一定の効果を挙げてきたと言えるものの、残念ながら出口の見えない状況が続いています。
 日銀松本支店が取りまとめた最近の長野県の金融経済動向によれば、長野県経済は横ばい圏内の動きとなっているとされ、設備投資は持ち直し、個人消費は手堅く推移しているものの、公共投資や住宅投資は下げ止まり、輸出・生産は弱めの動きとなっており、雇用・所得では改善の動きに停滞感が見られるとしています。
 また、長野労働局発表の最近の雇用情勢によれば、平成24年10月の有効求人倍率は3ヶ月連続0.80倍で雇用情勢は依然として厳しい状況にあり、持ち直しの動きに足踏みが見られるとしています。10月末現在の来春3月高校新卒者の求人・求職・就職状況では、就職内定率は66.9%で、前年同期は0.3%下回っています。同時期の来春3月新規大学等卒業予定者の就職内定率は、前年同期を3.1%上回っているとはいうものの50.4%で、平成19年の52.6%、平成20年の52.1%を回復するには至っていません。
 
 このような事態に少しでも効果があるのであればと、緊急の経済対策そのものには賛同するものですが、第一点として、今回の経済対策の実施にあたって長野県として特に留意した点について、知事に伺いたいと思います。
 
 二点目に、11月30日に閣議決定された今回の経済危機対応・地域活性化予備費等の活用第二弾は、全体の予算規模8803億円、事業費1兆2千億円規模というものですが、それに対して長野県で活用できるのが26億円規模に留まっているわけです。福祉・介護分野の施設整備や人材確保等の予算619億円、中小企業の資金繰り支援951億円、保育所・障害者施設等の整備1320億円、雇用対策・生活保護受給者の就労支援1100億円などの予算は、予算規模も大きく、県民の要望も高い予算と思われますが、長野県で活用できない理由は何でしょうか。
 
 三点目は、今回14億7千万円積み増しされる緊急雇用創出基金についてです。この基金事業については私たちも事業の延長や雇用情勢が好転しないなかでの恒常化も要望してきた立場から、いっそうの充実を願うものですが、緊急雇用創出基金によるこの間の創出は計画に対してどうであったのでしょうか。今回の基金積み増しで想定される雇用効果についてはどのような見通しを県として持っているのか、お伺いします。
 以上3点、よろしくお願いいたします。

<阿部知事>
3つのご質問に順次お答えしたいと思います。
まず今回の追加分の補正予算編成にあたって留意した点ということでございます。今回当初予算におきましても経済対策を念頭において補正予算を計上させていただいたところですが、厳しい経済雇用情勢が続く中で、県内経済の下支え、雇用の創出、現下の県政の最重要課題だと思っております。
そういうなかで県としてできることは何でもやっていかなければいけないという思いで取り組んできているわけでありまして、今般11月30日に国において第二弾の経済対策が閣議決定されたという状況を受けて、県としてもこの経済対策の内容のうち活用できるものについてはとにかく予算化して、スピード感持って対応しようという考え方のもとで予算編成させていただきました。
ご議決を頂いた後は年度内執行に努めて、経済対策としての効果が早期に発揮できるように取り組んでいきたいと考えています。

二点目でございます。国の8803億円の経済対策規模に対して、県の予算額が26億円に留まっている理由ということでございます。国の経済対策、これはすべて自治体向けの事業ばかりではないわけでございます。国が実施する事業もございます。また、津波で被災した地域等、被災地を対象とした事業等も含まれているわけでございまして、8803億円が全て都道府県や市町村、あるいは均等に都道府県に配分されるというかたちではありません。
私どもとしては、積極的に情報を収集して現時点で県として活用可能な事業を最大限盛り込んで、今回補正予算案として提出させていただいたところでございます。引き続き、さらなる情報収集に努めまして、活用可能なものについては2月補正予算案等でさらに対応していきたいと考えております。

それから、雇用創出の実績についてでございます。緊急雇用創出基金事業に関しましては、平成21年度からこれまで県そして市町村におきまして直接実施する事業、あるいは委託事業によりまして、離職を余儀なくされた方々の雇用を創出してきたわけであります。
現在までの雇用創出人数は計画数が21592人でございます。これに対して本年度分の見込み分も含めまして22650人ということでございます。計画より1058人多く雇用創出してきているというのが実情でございます。
またこうした直接的な雇用創出ということに加えて、産業振興、若年者の就労支援、観光PR並びに教育文化の振興、そうした幅広い分野におきまして事業の効果が出てきているものと考えています。
今回の基金の積み増しで想定される雇用効果についてです。緊急雇用創出基金事業、今回の経済対策第二弾におきまして総額800億円計上されております。本県には有効求人倍率や有効求職者数を勘案して14億7千万円が配分される見込みでございます。
この交付額によります雇用創出人数でございますが、これは国による積算根拠が一人あたり250万円という形で積算されていますので、これをもとにして算出しますと588人というかたちになります。
今回の基金の積み増し分につきましては市町村に配分する分も含まれております。平成25年度末までの間に市町村とも協力しながら、介護・医療・環境エネルギー等の成長分野における新しい雇用機会の創出を目標として、最大限有効に活用してまいりたいと考えております。

<石坂議員>
震災復興関連もあり、また、自治体が活用できるメニューは実は少ないということでご答弁を聞いて確認できたわけですが、それにしても全体の8800億円余のうち震災関連は3448億円で、圧倒的には先ほど私があげたメニューは全部その他の震災関連でないほうの5354億円に含まれるメニューなんですけれども、そういう意味では自治体側からは甚だ使い勝手が悪い部分もあるというなかで、県としては精一杯のご努力をしていただいたという点も確認できたと思います。
いずれにしても、少しでも景気浮揚に役立つように頑張っていかなければならないわけですので、今回の予算を組んでいただいた視点、中身については理解をいたしました。
昨年の1月の臨時県議会で、知事のご答弁によりますと基金事業を活用しての雇用創出は平成21年度までに県事業市町村事業合わせて5039人の雇用を創出し、22年度は6692人の雇用を創出する見込みで、合計11731人の雇用創出になる見込みとのご答弁でした。
先ほどのご答弁でさらに計画21592人の雇用創出計画に対してそれを上回る雇用創出がこの基金事業の活用でできたということですので、その限りにおいてはこの基金事業が役立っているということで大変嬉しくは思います。
問題はかねてから申しあげているところですが、基金事業による雇用はあくまでも一時的な雇用創出でありまして、景気回復・雇用情勢の好転までの短期的・つなぎ的雇用であります。本来は常用的な雇用に置き換えていくことが望ましい、そういう事業もあるわけで、例えば介護などの分野をはじめとして継続的な雇用、正規雇用につながるような支援がいっそう必要になっていると思います。
その意味で今回は第二弾の国の経済対策予算を受けての緊急的な措置ではありますが、この対策を一助としながらも、今後の県としての経済雇用対策の見通しについてどのようなご決意であるのか、知事のご見解を伺いたいと思います。

<阿部知事>
今後の経済雇用対策への決意というご質問でございます。
先ほども少し申しあげましたけれども、現下の厳しい雇用情勢、リーマンショック後徐々に有効求人倍率等も回復してきたわけですが、ここにきて少し足踏み状態と、景気底割れ懸念という状況の中で、県として出来る限りのことはまず最大限やっていくという姿勢で取り組んでいます。ただこれは国の予算との関係性、県も大変大きいわけですので、今総選挙の真っ最中ですが、新しい政権においてはぜひ本格的な経済対策・雇用対策、国としても取組んでもらいたいと、そういった要請はしっかり行っていきたいと思います。
加えて、これは臨時的な部分であるというのは、緊急雇用創出基金はまさに名前の通り緊急な対応ということでありますので、継続的な雇用創出ということもしっかり行なう必要があると思っています。
現在中期計画策定中でございますが、やはり私は、経済面・産業面の再生ということを、中期計画の方向づけのなかでは非常に大きなテーマとして出していくことが重要だと思っています。農林業あるいは製造業、ベースとしての産業の育成ということはもとより重要でございますが、農林業も複合化、6次産業化といった視点、あるいは製造業もこれから成長していくであろう環境エネルギーあるいは健康医療、そうした分野にシフトしていくことを県としてしっかり支えていくと。そうしたことによって安定的な雇用をつくっていくということが重要なことだと思っています。
当面の緊急対策、そして中期計画等も踏まえた中長期的なビジョンを持ちながら、しっかりとした経済対策・雇用対策に取り組んでいきたいと考えております。

<石坂議員>
最後にもう一点お伺いしたいのですけれども、昨年の1月臨時県議会でも、いずれにしても財源が伴うものでして、国に地方交付税の増額はじめ財源の十分な手立てを要求するとともに、地方の財源の安定した確保にも努力していきたいと知事が答弁されておられます。その点で、財源確保、それから長野県らしい雇用創出、景気浮揚の支援というのが両面必要になってくると思うんですが、その財源確保の面でどんな考えをお持ちかお聞きしまして、3回までということですので、質疑は終局させていただきます。

<阿部知事>
財源確保についてでございます。これは一つは、長野県は、国からの依存財源、非常にウエイトが高いわけでございます。そうしたなかで先ほど申しあげたとおり、やはり国としての経済対策・雇用対策にしっかり重点をおいた予算付けを当面していただくということが必要ではないかと思っております。
将来的には、これはもう地方税源の充実ということと、交付税も含めた一般財源が充実されていくことが重要だと思っております。
今臨時財政対策債というかたちで、本来国からキャッシュでいただけるはずのものが起債に振り替えているという、非常に変則的な状況が長く続いているわけですが、そういうことについては極力早く見直していただくことが必要であると思っておりますし、加えて、公共事業等の補助金も新しい新設経費についてどちらかというと手厚い形になっておりますが、笹子トンネルの事故もありましたが、これからやはり維持・管理・補修ということにウエイトが置かれてくるわけでありますので、国の補助金あるいは交付金といった制度もそうした部分に手厚いものに変えていってもらうことが、地方公共団体としての施策の幅が広がることになると思いますし、地元の雇用にもつながっていくものと考えております。そうした諸々の点について政府に対して引き続き強く改善を求めていきたいと考えています。