2013年6月定例会 6月26日 一般質問 小林伸陽

  1. 農業の振興について
  2. 第六次保健医療計画について
  3. 森林整備について

1.農業の振興について

(1)凍霜害対策について
<小林議員>
 最初に凍霜被害の支援策についてお尋ねします。この四月の凍霜害は県下全域に広がり、その被害面積は4,837haにも上り、被害額も当初の予想は15億円しかしその実態が明らかになるに従って、現在は35億6000万円にも上り、被災農家は深刻です。我が党議員団も各地を調査してまいりました。多くの農家の皆さんが、かつて経験したことの無い被害、マイナス2度から4度にも下がると同時に夕方から朝までの長時間続き手の施しようも無かった、今年収入がゼロ、今後どうしたら良いかまったく見通しが立たない、もう廃園を考えている、などの声が沢山寄せられました。
 我が党議員団は6月3日知事に支援策を求めて申し入れを行いました。知事は従来の制度にとらわれず支援を行うよう農政部に指示しましたが、どの様な支援策を行うのか農政部長にお尋ねします。

<農政部長>
 4月の凍霜害対策についてお尋ねでございます。
 今回の凍霜害につきましては被害が大変甚大でございまして、また被害を受けた果樹、野菜、これらは園芸作物を基幹とする本県の農業における重要な品目でございます。県といたしましては、先に公表させていただきました凍霜害対策の基本方針に基づきまして体系的に対策を実施して参ります。
 当面の対策として、今回お願いをしております6月補正予算に加えまして、今後市町村等の具体的な要望をお聞きしまして、9月11月の補正予算を含めて緊急支援対策、今年、来年に向けた対策、将来に向けた対策、この3本の柱で体系的に対策を進めてまいりたいと考えております。
 最初の緊急支援対策としましては、今回の補正予算による市町村の緊急対策事業の支援とともに、引き続き農業改良普及センターによる技術指導や農家の相談への対応を行ってまいります。また、今年、来年に向けた対策といたしましては、被害農家の営農資金への利子助成について、市町村・生産者団体と協調いたしまして、末端金利をゼロ・無利子とする方向で検討するとともに、被害にあった果物の流通・販売、これらの対策に対する支援につきましては、市町村等の具体的なご要望をお聞きしながら、9月以降対応していきたいと考えております。
 また、将来に向けた対策につきましては、災害に強い体制づくりといたしまして、果樹共済制度の充実・強化について国等に要請するとともに、補助事業を活用した防霜ファンなどの被害防止施設の整備を進めてまいります。さらに、被害農家の営農継続への支援や、果樹共済の加入促進につきましては、従来にない新たな支援策を9月までに検討させていただきまして実施させていただきたいと考えております。
 これらの対策をしっかりと実施いたしまして、被害農家の支援と災害に強い体制づくりに万全を期してまいりたいと考えております。

<小林議員>
 私たち共産議員団は、6月7日に日本共産党の井上参議院議員と農水省園芸作物課と災害総合対策課に今回の長野県の凍霜害の深刻な実態を報告し、従来の融資制度や共済制度にとどまらない激甚災害の指定や財政支援を求めてまいりました。国は、県や市町村の対策を十分考慮して支援していきたいとの事でした。園芸王国長野を目指す長野県としてこの大災害を乗り越え、希望を持って継続できるよう、大きな支援を重ねて要望します。知事の決意の程をお伺いします。

<阿部知事>
 凍霜害対策についてのご質問でございます。
 具体的な内容につきましては先ほど農政部長からご答弁させていただきましたが、今回の凍霜害被害は極めて甚大と考えておりますし、なおかつ被害を受けた果樹・野菜は、園芸作物を基本とする私ども長野県農業にとって重要な品目だと考えております。そうした観点で先般、凍霜害を受けた農家への支援ということで基本方針を定めると同時に、政策体系をしっかりと組み立てて、総合的・体系的な支援を行っていこうと考えております。
 ここの方針にも書かせていただきましたが、被害農家の経営への影響を極力軽減する、そして災害に強い産地の体制づくりを推進する、なによりも被害を受けた農業者のみなさんが今後も営農を継続できるよう、新しい支援策についても検討するということを明記させていただいております。今農政部で行っておりますので、そうしたさまざまな支援策をこれからも引き続き行うことによって、今回被害を受けられた農家の皆様方に対する支援を全力で行っていきたいと考えております。

(2)共済制度について
<小林議員>
 災害が起きると農作物の共済制度の改善が常に話題になるわけでありますが、共済の未加入問題であります。しかし未加入問題の影には、農業経営の厳しい現状と、被害時の補償の中身に大きな問題があります。農水省との交渉のなかでも共済制度の抜本的改善は必要といわれていました。市町村の共済支援も様々ですが、農家負担の軽減のために支援している自治体は加入率が高いといわれます。農家の皆さんに分りやすい制度に改善することや、全ての生産者が加入すれば掛け金の軽減や補償の中身の改善も可能となります、県としても共済加入率を引き上げるために一時的であっても財政的支援が必要と思います。さらに、市田柿のような小規模ではあるが地域にとっては特産品にも共済の対象品目に加えることや、被害果実の評価の見直しが必要と思いますが、県としての対策について農政部長にお尋ねします。

<農政部長>
 果樹共済等、共済制度の見直しについてのお尋ねでございます。
 果樹共済制度につきましてはご指摘のように、掛け金の割高感があることや補償割合などの制度の課題の改善に加えまして、地域ぐるみでの加入の促進が必要であると考えております。このため県といたしましては、ご指摘のような掛け金の助成というような形ではなく、地域加入率を考慮した掛け金の軽減措置を講じていただけるように国にすでに要請しているところでございます。
 また、今後地域ぐるみの加入の取り組みを支援をするために、新たな支援対策について9月までに検討をして実施させていただきたいと考えております。
 なお、特産的な少量品目の果樹共済への加入につきましては、果樹共済ですので、共済制度の設計がなかなか難しいという現実がございます。私どもも農林水産省と担当課長が出向きまして相談をさせていただいているところでございますが、これは今後の課題として農林水産省と引き続き相談させていただきたいと思っております。
 また、果樹農家の遠地の所在地ですとか果実の出荷方法などに応じまして、農家のほうからは多様な制度のご要望がございます。ご要望に応じる形でいくつかの加入方式が揃っていることは必要であろうと考えているところでございまして、果樹共済制度を果樹農家にとって魅力的であるものとするためには、累計数は多いほうがいいわけですけれども、これは新たな農家負担を伴わない形で補償内容、補償割合を拡大するようにということで国に対しても要請をしてきているところでございます。

<小林議員>
 財政支援が難しいと、集団で加入すれば減額できる仕組みと言われましたけれども、加入を促進する上で財政的支援をすることのほうがはるかに加入を促進する要だと思っています。その点もぜひ今後検討いただきたい。

(3)TPP参加について
<小林議員>
 TPP参加についてお尋ねします。
 県は5月20日にTPP参加による長野県の影響について発表しました。まだ不透明なことが多く算定できないものもあることを前提に農業分野は34億円のマイナス、県経済全体では681億円のプラスの影響と発表されました。
 6月25日に県JAグループから農業分野の影響試算が発表されました。県は聖域とされている品目については現時点で具体的影響がわからないとして計算を保留した試算としていますが、JAグループの試算は長野県の農林水産業減少額は1,029億円と推計されています。県とあまりにもかけ離れた数字となっています。しかしその中身を見ますとJAの試算の根拠は県の説明資料より具体的に示されている。想定外と言うのでしょうか。もしもこんな影響が生まれるとしたら長野県農業は深刻に事態を迎えます。なぜこのような大きな違いがあるのか、農政部長としての見解をお尋ねします。

<農政部長>
 TPP参加による本県農業への影響についてのお尋ねでございます。
 政府試算では仮に関税を全て撤廃し、何らの措置も講じない場合、内外価格差が大きい米、麦、乳製品、牛肉、これら等は輸入品と競合して置き換わるというふうに、前提想定いたしまして、農業生産は3兆円減少するというふうにしているところでございます。
 本県の農業生産へも、これは大きな影響があると私どもも思っているところでございます。県では、TPP協定参加によって関税撤廃した場合の長野県内への影響試算を行いまして、過日5月20日に公表させていただいたところでございます。ここにおいて農業生産額への影響試算額にあたりまして、ただいま申しあげた米や乳製品などの重要品目については、現時点、政府与党がこれらをしっかりと堅持していく方向で交渉するとしているなかで、関税が全て撤廃され全く何らの措置も講じられないという前提での計算は保留させていただいたところでございまして、額的にご指摘のように、県の試算は34億円プラスアルファと数字をださせていただきましたが、額的な違いは重要品目5品目についての試算を留保させていただいたこと、そして間接的な影響を国と同様にストレートには計算しなかったことがあって、額の大きさには違いがあるということです。
 県としては今後の交渉につきまして、米、麦、牛肉、豚肉、乳製品などの農林水産分野の重要品目を関税撤廃の例外とするなど、国民の利益確保に全力を挙げていただくよう引き続き国に要請するとともに、TPP交渉の推進の如何に関わらず、国内農業が将来に渡って持続的に発展していけるように、農業の競争力の強化等について取り組みを進めていきたいと考えております。

<小林議員>
 それでは、JAグループが試算した中身で県が試算しても1000億円程度の試算になるのか、その辺をお尋ねします。

<農政部長>
 試算結果についてのお尋ねでございますが、ただいまお答えしましたように、試算の前提と試算の方法が、私どもが5月20日に公表したものについては農林水産省並びに政府が統一見解として計算したものと、JAグループさんが計算されたものとは、前提は同じでございますが計算方法は異なりますので、結果として私どもはJAグループの計算方法を持っておりませんので、数字がどのくらい違うのかということについては現時点ではお答えできない状況でございます。

<小林議員>
 安倍総理はTPP参加を前提にとして目玉政策を発表しました。その具体的中身として、農地の集約化で農業所得の倍増を目指すとしています。
 その具体的対策として、県農地中間管理機構、仮称、いわば農地集約バンクを整備・活用し、地域内の分散・さくそうした農地利用を管理し、担い手ごとに集約化する必要がある場合や受け手が見つからない農地が有る場合に、借受けられるようにします。農地集積バンクは、必要がある場合には、基盤整備などを自らの負担で行い、担い手がまとまりのある形で農地を利用できるように配慮して貸付を行う。との見解が示されていますが長野県で農地の集約とはどの様なものになるのか農政部長にお尋ねします。

<農政部長>
 農地の集約化を行います新たな公的組織についてのお尋ねでございます。
 現在国が検討しております制度は、攻めの農林水産業政策の実現に向けて担い手への農地集積などを強化するために、小規模あるいは規模縮小農家の農地や、当面耕作者のいない遊休農地などを中間保有いたしまして、必要に応じて条件整備を行ったうえで担い手に貸し付ける機構を全都道府県に設置するものと聞いております。
 制度の詳細は明らかにされておりませんけれども、農地の利用集積を円滑に進めるためには地域の農業者間の合意形成と関係機関の連携が不可欠と考えているところです。新たな機構が有効に機能していくためには、市町村や農業委員会、農地利用集積円滑化団体などと有機的に連携した体系づくりが必要と考えております。
 このため県といたしましては現在全市町村で推進していただいております人農地プランの取り組みを通じまして、今後地域の担い手となる農業者への具体的な農地集積に対する合意形成を加速しますとともに、国に対しては地域での農地の利用調整を行う市町村や農業委員会などの役割を制度のなかに位置づけ、実効性が高い制度とするように要望しているところでございます。

<小林議員>
 農地の集約はすでに各地で進んでいます。私の住む箕輪町でも30haの水田を耕作する人も生まれています。その理由は耕作できないと近所の皆さんが管理できないと依頼されて耕作しているケースがほとんどです。こうした皆さんはこれ以上は耕作できない、圃場は狭く土手の面積は広い山間地の管理は毎日草刈に追われて大変、農地を集約化したからとコストを引き下げることは至難の業、寝る間も惜しんでやっているが儲けにはならない。こんなことはやりたいと言う後継者はほとんどいない、私がやめたらどうなるか心配、との現状からして農地の集約化には圃場の再整備が不可欠です。比較的平坦な箕輪町でも再度の土地改良が求められますが、これまでやった土地改良事業の返済負担が現在でも大きく、これ以上の負担はとうてい不可能です。
 新潟平野などの広大な平坦地なら条件はあるかもしれないが長野県のような中山間地の集約化、圃場整備は不可能と思われます。ましてやオーストラリアの一農家の耕作面積は3400haとも言われ、飯田市の全農地とほぼ同じ面積です。この規模と対等に競争できるはずがありません。
 県としてTPP参加後の農業再生にどんな対策を講じようとしておられるか、もし対策が無いのならTPP参加に断固反対すべきと思います。さきほど農政部長はJAの試算と県の試算では根拠が違うから比較もできないと言われましたけれども、それでは関税を全面的に撤廃して、今言いましたように農地の集積も大変困難ななかでそういうことが出来ない時点での見るとJAの試算になると思うのです。そのJAの試算に対する見解をもう一度お願いします。

<農政部長>
 JAの為さいました試算への見解としましては、JAグループはそもそも全ての組合員が農業者でございます。組合員の皆様方の今後のあり方を現在のような情勢を勘案し慮(おもんばか)って計算をされたわけでございまして、農業者の立場から大きな影響があるということを組合員の皆様はじめ多くの方々に主張したいというお気持ちについては十分理解ができるところでございます。私どもは農政だけでなくて県全体の発展性も含めた考え方をバランスを取って見ていく立場にございますので、農協グループの皆さん方の弾かれた数字を是とするものでありながら、これを否定するものではありません。
 なお私どもも、やがて交渉の結果が出て参りますと、これは長野県への影響もちゃんと推測・推計しなければならないと考えているところでございます。そのときこそまさしく、現実に農家の皆さんに降ってくる大きな影響の数字でございますので、結果が出た後でございますから、その数字の大きさに応じて国に対してはその影響を最小化するように県と致しましても大きな働きかけをしていく覚悟でございます。

<小林議員>
 農地の集積化が現実に可能かどうかという点について。

<農政部長>
 農地利用の集積につきましては、今回策定いたしました「しあわせ信州創造プラン」並びに「県食と農業農村振興計画」の第2期におきまして、担い手農家への集積率を計画期間中に51%まで引き上げると、これはおよそ9000haにわたるわけですが、こうしたものにつきましてはこれから対策を講じまして目標の達成に努力してまいりたいと思っております。
 なお、国が発表した8割という数字につきましては、ご指摘のように本県と国全体との農業基盤条件が異なりますので、当然のことながら差があるものと考えております。県内における中山間地域におきましては個人の個別の農業経営だけではなく、私どもは集落経営、組織経営という選択肢も含めながら対策を講じて実現を図ってまいりたいと考えているところでございます。

<小林議員>
 農家のみなさんもTPP参加して大変な事態になるから本当に深刻に心配しているんです。それが決まってからでは遅いから今どうするかが求められているんです。結果を見てから対応する、こういうことで本当に長野県の農業が守れるのか、ここが今問われていると思うんです。
 そういう点で知事も同様の考えなのかどうか、知事の所見を伺います。

<阿部知事>
 TPPについてのご質問ですが、私は終始TPPには慎重な立場で発言をさせてきていただいておりますし、政府に対しましても国民的な議論をしっかり行ったうえで判断していかなければいけないということを申しあげてきております。
 先ほど来、農業の影響についてご議論されているわけですが、いろいろ前提条件の置き方や仮定の置き方によって相当程度違ってくる部分もあろうかと思いますが、いずれにしても長野県においても一定の影響は当然出てくるだろうと思っております。そういう意味で庁内の会議等でも情報共有、対策をこれまでもとってきているわけでありますし、先般国会議員に対しても、私ども考え方をお伝えしているところであります。
 これは最終的に責任を持って判断するのは県ではなくて国でありますから、地域の声を様々なルートで国に対して伝えていくということが重要ではないかと思っております。

<小林議員>
 このTPP参加の問題については、先日もJAの反対の総決起大会には、自民党国会議員も民主党国会議員も全員参加して決意表明をされておりました。
 全ての政党が反対しているこのTPP参加への態度を明確に示して、長野県農業守るよう引き続き頑張っていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。

2.第六次保健医療計画について

<小林議員>
(1)基準病床数について
 計画の中に県の役割が示されています。県は広域的視点に立って、総合的な保健医療の施策を推進します。医師看護師等の医療従事者の確保など、個々の病院や市町村だけでは対応が困難な問題については、広域的な行政機関として主体的な取り組みを行うとありますが健康福祉部長にお尋ねします。
 最初に病床数の見直しの根拠についてお尋ねします。
 第六次計画では県全体で一般病床を1,266床削減しますがなぜ削減するのかお尋ねします。削減された医療圏の中身を見ますと一万人当たりの病床は上伊那が67.9床、諏訪が81床、大北は81.7床しかないのに、多いところは上小の106.4床、佐久の104.6床が現状です。大北地区はこれまで512床あったものを一挙に196床を減らし、316床にしてしまいました。松本、諏訪圏は増床するのにベッド数の少ない医療圏である上伊那・大北、木曽をなぜ削減するのか、削減の理由とその根拠お尋ねします。

<健康福祉部長>
 第6次保健医療計画のなかでの基準病床数の見直しについてお答え申しあげます。
 都道府県が定める医療計画には基準病床数に関する事項を記載することとされております。この基準病床数ですが、長野県の10ある二次医療圏ごとに設定することとなっています。趣旨としては二次医療圏内の適正な病床配置を推進し、各地域における医療提供体制の確保と医療水準の向上を図るために設定するものとされておりまして、この算定式自体は厚生労働省が定めて算定式に基づきまして、病床種別ごとに算出することとなっています。
 議員ご指摘いただきましたのは、一般療養病床にかかる基準病床数と承知しておりますが、第6次保健医療計画における二次医療圏ごとの一般療養病床にかかる基準病床数でございますが、これは厚労省の告示をもとにまず性別、それから年齢階級別の人口による各医療圏ごとに想定される入院患者数を算出いたします。その他に医療圏内に流入・流出する入院患者数の調整、病床の稼働状況、こういったものも考慮して算出することとしております。
 その結果、これは全国的な傾向でもありますが、平均在院日数自体が2日程度短縮されていること、それから介護施設への対応可能患者数の増加などを要因と致しまして、上伊那、木曽医療圏だけでなく長野県内におきまして、また全国的な傾向でもありますが、全ての医療圏で病床数が減少するということになっております。
 議員ご指摘の通り、上伊那、木曽医療圏のように流出患者数が多い圏域において、基準病床数を減少するという仕組みになっているのは確かでございますが、県といたしましては流出をそのまま追認するのはよくないと思っております。こういう現状を追認するのではなくて、このほかの地域医療再生計画のなかでも二次医療圏ごとの医療提供体制の充実強化を図るということを掲げてございます。第6次保健医療計画のなかでも10の医療圏は堅持するということで見直しを行なわないとしたところでございますので、健康福祉部としても現行の10の医療圏を維持するように努めて参りたいと思っております。

<小林議員>
 患者の流出を試算に入れれば医療過疎の地域からどんどん患者が流出していくわけです。それでまたベッドが削減されるということになると、過疎地域はますます過疎化していくという悪循環を産むことをまず言っておきたいと思います。
 
(2)医師・看護師確保について
<小林議員>
 ?医師を見ますと10万人当たりの医師数は松本321.1人、佐久210.1人、諏訪201.1人、一方少ない地区は木曽109.5人、上伊那131.8人、上小144.8人と松本圏の半分から三分の一にも満たないのが現状です。五年前の調査時点より減少しているのは木曽と上伊那でした。県の数値目標は前回数値を下回った医療圏があるため現状以上とし、地域間格差を解消すると記されていますが具体的対策と方針を伺います。
 
 ?看護師も十万人当たりの人数は、佐久が984.9人、松本が946.2人となっているのに、木曽は689.4人、上伊那は702.7人と大幅に少ないなかで県の数値目標を見ると偏在のある二次医療圏においては平成28年度末までに全国就業看護師数の水準を目指すと記されていますが、目指す数値目標でなく達成する数値目標にすべきではないか健康福祉部長にお尋ねします。
 
 ?医師・看護師・病床数どれをとっても少ないのは木曽圏と隣接している上伊那圏と大北、これではすべての県民が等しく医療の提供受けられる医療体制を構築するという県の姿勢が見えてきません。又地域医療は公立病院だけでなく民間病院も大事な役割を果しています。松本市や長野市は民間病院も充実し高度医療も提供されています。その一方で過疎地は医師や看護師の不足で病床の稼働率が下がる、下がれば病床を削減する。削減すればさらに医師や看護師の確保は難しくなる、こうした悪循環をどう断ち切るのか、健康福祉部長にお尋ねします。

<健康福祉部長>
 医師不足、医師確保、看護師確保、医療機能の維持についてのお尋ねでございます。
 ?まず医師不足の実態と確保対策についてお答え申しあげます。議員ご指摘の通り、厚生労働省の調査によりますと、県内の平成22年末ですが人口10万人対の医師数は205でございました。平成20年末の196と比較しますと増加しているところですが、全国平均は依然として14名ほど下回っていると。二次医療圏ごとに見ますと、上伊那及び木曽医療圏におきまして前回調査を下回っているということです。地域における偏在はさらに広がっているということでございました。
 このため診療機能を維持向上させていく必要があるということから、今回の信州保健医療総合計画におきましても、全ての圏域で平成29年度には人口当たりの医師数を現状維持以上とすることを目標としたところでございます。
 医師確保の方策として様々なものを展開しておりますが、信州医師確保総合支援センターを中心にドクターバンク事業を通じまして、医師の確保定着に努めてまいりますとともに、今後は医学生の就学資金貸与者の医師不足病院への配置や幅広い診療を担える信州型総合医の養成を行いまして、医師の地域や診療科偏在の解消に取り組んで参りたいと考えております。
 
 ?次に看護師不足についてのご指摘でございます。県内の平成22年末の人口10万人当たりの就業者数は、県全体で見ると1186.8人でございます。この数自体は全国平均より若干高いわけですが、議員ご指摘の上伊那・木曽地域については、人口10万人あたりの看護師数が全国平均を下回っているということです。これも、今回の信州保健医療総合計画におきましては平成29年度に向けて全国水準を目指すこととしたところです。
 看護師確保にも今様々な手を今うっているところでございまして、看護師確保が困難な地域の医療機関への就労の誘導策として、看護師職員への就学資金貸与事業を実施しております。平成25年4月にはこの貸与を受けた45人の方々が中小規模の病院や診療所などに就業するという実績が上がっております。また、看護師職員の離職防止、再就職支援としまして、勤務環境の改善策として院内保育所の運営費の助成やナースバンク事業で再就業の相談事業や研修等の支援に取り組んでおります。さらに今年度の取り組みとして県内外の学生への就職ガイダンスと、県内中小病院の病院見学会等を組み合わせた新たな事業に100名を超える看護学生の参加を予定している、こういうことも取り組む予定です。
 なお上伊那病院につきましては地域医療再生計画に基づく地域独自の就学資金制度の創設、また木曽地域につきましては新たに開校する信州木曽看護専門学校の整備充実への支援などの事業中心に確保対策に取り組んでまいりたいと思っております。
 目標値でなく達成値、達成すべき目標だとご指摘いただきましたが、我々としてはぜひこれは達成すべきものとして考えているところでございます。

 ?医療機関が医師・看護師という職種の確保ができなくなれば病院としての機能が落ちる、それによってまた患者が減って、それがまた医師・看護師の減少につながるのではないか、その悪循環を同断ち切るのかというご質問です。
 これについては現在第6次保健医療計画におきましても、国から指摘を受けまして、4つの医療圏域に関しまして、まず上伊那圏域については地域医療再生基金があたって医療機能の向上が今図られているところと思っております。それから3つの医療圏域に関しましても、今第三次の地域医療基金の申請を行っているところでございますが、この中でその地域の医療機能の充実・向上させていくという計画にしておりまして、そういうことで私どもとしては10医療圏域の医療機能を向上させていこうと考えているところでございます。

(3)医学生修学資金貸与制度について
<小林議員>
 医師確保のために県は学生には、奨学金月額20万円の制度つくり、その就職先は公立及び公的病院としており、民間病院ではこのような高額な奨学金制度は到底できない中で、中小の民間病院は医師確保がさらに困難になっています。県の制度は公的病院だけでなく県内であれば民間病院も就職先に加えることを多くの民間の医療機関が求めています。学生も卒業後の選択の幅が広がり、生まれ育った地域で働きたい、へき地や診療所など働きたい。こうした医学生の希望にこたえる制度になれば、奨学生の確保に門戸がさらに開かれると思います。
 信州型総合医の養成を目的に研修プログラムを民間病院の力も導入してつくる準備も進められすでに公募もされているようです。大変有効な事業と歓迎するものです。しかしその運用を見ると、2年間の臨床研修を受け、3年間の専門研修を受け勤務は中核病院に一年、公立の医師不足の病院に3年間勤務の義務化が図られ、民間の選択肢がありません。大規模病院には専門性の高い医師が求められるが、医師の少ない中小病院や診療所では総合医が求められます。既卒医師の総合医研修も積極的に受け入れられるべきと思いますがいかがか。健康福祉部長にお尋ねします。
 
 知事は、看護師は地産地消と言われていますが、上伊那圏域には地産地消をつくりだす看護師養成施設がありません。看護師学校の上伊那への設置を強く求めますが、知事の見解をお尋ねします。

<健康福祉部長>
 県の医学生奨学金制度の改善に関するお尋ねでございました。
 この制度自体は平成18年度から開始しております。貸与開始した制度ですが、卒業後の一定期間県内の医療機関で勤務や研修することを義務付け、医師確保と地域偏在の解消を図ろうとするものです。
 ただ一方で、6年の医師の養成課程を終えましても2年の初任者研修期間、その後専門医をとるとすれば一定程度、標準で3年、科によっては4年5年ございますが、一定程度の専門研修の期間がございますが、医師の養成に時間がかかるということでございますので、就学資金貸与者が一定程度出て参りまして一定数の勤務医を配置できるということになるのは数年先のことになろうかと思っております。
 このため当面は配置できる人数が限られるということから、勤務先は公立・公的な病院に優先的にということにしておりますけれども、先ほどの議員ご指摘の配置方針につきましても、定期的に見直すということにしておりますが、将来的には配置対象となる病院の医師の充足状況や配置可能な人数を見ながら、民間病院等への配置の拡大等も検討してまいりたいと思っています。

<阿部知事>
 看護師の確保につきましては、先ほど健康福祉部長がご答弁申しあげましたように県全体として重要な課題だと考えております。上伊那地域については地域医療再生計画に基づいて地域独自の就学資金制度を創設するといったことで確保対策に取り組んでいきたいと考えているところでありまして、新しく学校の設置ということでご質問ございましたけれども、事前の通告ございませんでしたので私のほうで残念ながら十分検討できておりません。従いまして今の時点でどうこうするということで進める考えはありません。

<小林議員>
 医療体制の遅れた地域に医療の充実をして、医療格差が生まれないように全力を挙げていただくことを要望しておきたいと思います。

3.森林整備について

<小林議員>
 森林整備には森林簿と森林計画図面が使われて具体的な整備をしておりますが、これは大変不備で50%も所有者が違うというような問題が起きてきております。こうした中で最も正確なのは課税台帳に記される所有者であります。これを一元化して森林整備に使えるようなシステムを作るべきと思いますが、林務部長にお尋ねします。
 次に、保安林の整備の問題でありますが、上伊那地方も保安林の中に松くい虫の被害が大変多く生まれています。
 こうした中で、保安林には大変種類があり、様々規制がありますので、その整備がなかなか進まない。この問題をどう解決するかということと、林務部が本格的に県産材を活用する、そういう役割を果たすべきではないかと思いますが、いかがか、お尋ねします。

<林務部長>
 森林整備についてご質問をいただきました。
 先ず森林簿と森林計画図の最新情報について、課税台帳を使ったらどうかというお尋ねでございます。森林簿や森林計画図の森林情報、これは適切な森林整備を図る上で大変重要な基礎資料でありますので、その精度向上は大変重要であると認識をしているところでございます。固定資産税台帳、いわゆる課税台帳を反映させることにつきましては、市町村の個人情報保護条例の取扱いから、すべての台帳の情報を活用することは、これは困難な状況と考えております。
 このため県といたしましては、地籍調査の結果を反映するなど現在までに30市町村の森林情報を更新しています。また、平成24年度からは、森林法に基づいて森林の土地の所有者となった旨の届け出が義務付けられましたので、これを活用して20市町村において130件の届け出を森林情報に反映させているところです。今後とも市町村と連携しながらより一層森林情報の整備に努めていきたいと思っております。
 保安林の整備でございます。松くい虫等で保安林が荒廃している部分でございますが、松くい虫被害につきましてはここ数年6万平方を超えておりまして、被害が拡大している状況でございます。松くい虫対策につきましては、保全すべき重要な松林、それから周辺の松林を明確にして、重要な松林については予防対策、駆除対策を重点的に実施しているところでございます。また、周辺の松林にいては害拡大のための対策として樹種転換を実施しているところでございます。この樹種転換につきましては、保安林の伐採の制限がございますので、一律にできるという場ではございませんが、保安林の中の被害木の伐採、その周辺の森林等と一体で整備するなかで、保安林の機能回復を進めてまいりたいと思っているところでございます。
 県産材の利用促進につきましては、いわゆる川上分、そして川下の対策として、川下で川上を引っ張るという形でございますのでこれが一番重要な考え、重要な対策だと思っておりまして、これは最終的に進めてまいりたいと思っております。
 県では部局連携の県産材利用促進連絡会議、これを活用しながら部局の連携をしながら進めているところでございます。今回の議会では、県産材のあまり活用されていない分野における新製品の開発、また製品化されているものの、利用が進んでいない木製品の導入を支援する「信州の木先進的利用加速化対策」この予算を提案しておりますので、こうした事業を積極的に推進し、新たな分野における県産材の需要拡大に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 加えて、県産材の生産、流通、加工の各段階ではコストダウンを図るための支援措置、公共建築物への木造化支援を行いまして、幅広い分野において県産材が余すところなく活用されるよう、今後とも取り組んでまいります。この他にも国では、「木材利用ポイント制度」というものが今年創設されましたので、こうしたものを追い風に木造住宅の新築や改築、そうしたものへの推進が図られるよう図っているところでございます。これからも様々な制度を活用しながら、県産材の対策、これを一元的にいっそう推進してまいりたいと思っております。

<小林議員>
 県産材利用をさらに林務部中心にいっそうの活用を推進することを強く願います。
 それから松クイ虫の関係でありますが、松クイ虫の被害を待つのではなく、現在ある松をどう利活用するか、間伐を大いに促進してこれを利用する方向に転換することを強く求めて、質問を終わります。