2012年11月定例会  一般質問 石坂 千穂

  1. 浅川の治水対策について
  2. DV被害者への支援について
  3. 土地改良組合の畑地かんがい事業等の負担金について
  4. 県立4年制大学について

1、 浅川の治水対策について

1、 東日本大震災の教訓を生かした対策になっているか。
2、 浅川ダムは砂防ダムに方針転換するべきではないか。
3、 内水対策としての排水ポンプ21トンの増強は、ダム完成時に完了する計画とするべきではないか。また、遊水地機能の確保は不可欠ではないか。

<石坂議員>
 浅川の治水対策についてお伺いします。
 東日本大震災の経験から、私たちは、今まで安全だと思っていたものが安全とは限らないと言う教訓を得たはずです。安全性に対するおおもとからの見直しが、改めて必要だという考え方が大きな流れとなって、例えば原子力発電所でも、本来、原発の立地前の深い検討が必要なはずだった活断層の評価について、今、改めて検証が行なわれています。
 先日、長野県立歴史館において、地震時の文化財保護に関する研修会が行なわれた際の信州大学の大塚勉教授の研修資料によれば、2011年3月11日の大震災以降、長野県で起こっている地震は、とりわけ長野盆地周辺に集中しています。そして、3月12日に栄村を襲った長野県北部地震が、地震空白部分で起こったこと、2011年6月30日の松本地震が牛伏寺断層に平行な未知の断層が活動して起こっていること、長野県内には身近に多数の活断層が存在していること、地震時には軟弱地盤で大きい地震被害が発生することなどが指摘されています。
 浅川ダムの安全性については、昨年6月以降の調査においても、改めて専門家の意見が分かれており、県が調査を依頼した専門家でさえ、「活断層ではないが不安が残る」としているにもかかわらず、根本的な見直しがないまま、最終的に知事の判断で「安全だ」として工事を進めています。果たしてこれで、震災の経験を生かした対応と言えるでしょうか。昨日の荒井議員の質問に対し、東日本大震災の教訓を生かした県の地震対策基礎調査が来年度から行われる見通しとの答弁でした。大震災後の県民の不安に応える調査を行うといっておきながら、必要な検証も行なわないまま工事を進め、本当にこれでよいのでしょうか。知事の見解をお伺いします。

 浅川ダムの建設地上流は、地滑り多発地帯です。浅川で一番解決が迫られているのは、千曲川に浅川が流れ込めずにおこる内水被害ですが、内水対策としての効果がなく、安全性が検証されていない現行の穴あきダムの建設は、洪水時の大規模な土砂流入がおきれば、穴詰まりの問題等かえって危険です。熊本県では、全国で初めて6年間の歳月と88億円の費用をかけて、県営荒瀬ダムの撤去が始まりました。ダム建設にあたっても、多くの費用と対策をダムサイト周辺から上流の地滑り対策にかけざるを得なかった浅川ダムは、早急に建設を見直して、新たに砂防ダムに転換するべきではないでしょうか。
 さて、9月4日に浅川の内水対策を検討する浅川内水対策協議会が発足し、具体的な検討が始まったと思いますが、平成23年に提示された計画では浅川排水機場の排水能力を現在より毎秒21トン増強する計画で、このうちダム完成時までに増強するのはその3分の1の7トンでしかないとされています。県の浅川ダムに関する再確認作業の結果、ダムを造ることで下流の内水被害がむしろ悪化することは県自身が認めていることであり、排水ポンプ毎秒7トンの増強は、計算上、その悪化する分に見合うものです。つまり、7トン分の増強がされても、現状の水準にとどまり、現状より改善されることはないということになります。ダムを造ることで内水被害を悪化させるのですから、ダム完成時までに、現状よりも内水被害を改善させるために21トンの増強を完了させるべきではないでしょうか。また、当初の県の内水対策メニューにはない遊水地、遊水機能の確保は必要不可欠だと思います。なぜならば、排水機場の能力を増強しても千曲川の増水が警戒水位となれば、ポンプを止めなければならず、内水被害が、なすすべもなく拡大するからです。現在の検討状況はいかがでしょうか。以上、建設部長にお伺いします。

<阿部知事>
 浅川の治水対策についてのご質問でございます。
 東日本大震災で強い揺れを東北の各地で観測しているわけですが、東北を中心としたダムの点検結果によりますと、コンクリートダムの全てについて管理上支障のある被害は報告されていないということであります。震災後ダムの設計あるいは調査手法等について、改めて検証が必要となる様な新しい知見は出てきていないと考えています。只、浅川ダムについては東日本大震災の発生を受けて不安を感じていらっしゃる方々もおられるという事で、F−V断層の安全性について中立的第三者的な専門家に調査を依頼して、予断を持つことなく丁寧に再確認を行わせていただいたところです。
 今後とも浅川ダムの建設については、慎重に安全性を確認しながら工事を進めてまいりたいと考えております。


<建設部長>
 浅川の治水対策についてお答えいたします。
 まず、浅川ダムを砂防ダムに転換すべきではないかとのお尋ねです。
 浅川の治水対策については、外水対策として、治水専用ダムと河川改修の組み合わせにより事業を進めているところです。この事から河川改修が進んだ現在も、外水氾濫から人命財産を守るために、ダムによる洪水調節が必要になります。
 穴あきダムは危険とのご指摘ですが、仮に上流域で土石流が発生したとしても、ダム貯水池での河床勾配が2度程度と緩やかであり、常用洪水ばきが閉塞するようなことはないと考えています。
 なお浅川流域については、これまでに砂防堰堤や床固め溝を順次建設し、土砂災害防止の観点からも計画的に対策をすすめているところであります。
 次に、浅川の内水対策についてのお尋ねです。
 浅川の内水対策につきましては、昨年の地元説明会において、既往最大被害と同規模の洪水に対し、宅地部での床上浸水被害を防止することを目的として、浅川排水機場の毎秒21tの増強と浅川堤防の嵩上げ及び2線堤による三つの対策案を提示し、この内排水機場の増強については、地元の了解が得られているところです。
 本年9月4日には、千曲川河川事務所をはじめ長野市、小布施町及び、県の浸水被害対策に係わる担当部局からなる浅川総合内水対策協議会を設立し、浅川流域全体で内水被害を効果的かつ効率的に軽減するための、ハード対策とソフト対策を一体とする総合内水対策計画の策定を進めています。議員ご指摘の排水機場の規模につきましては、ダム完成までに21tを増強することは工程的に困難ではありますが、この協議会の計画策定作業の中で、工程や経済性、効果等を考慮し、できるだけ7tを上回る規模の検討を進めているところです。
 この総合内水対策計画については、地域の皆様からのご意見をお聞きし、ご理解を得たうえで計画を決定し、内水対策事業を積極的に推進していきたいと考えております。
 尚、遊水地については先ほど申し上げた三つの内水対策をとることで、その設置は必要ないと考えております。

<石坂議員>
ダムについては賛否両論に分かれている、県が設置した住民参加の150名位のメンバーだったと思いますが、流域協議会で数度に渡ってやはり、内水対策としての遊水地の設置が要望されていると思います。
 是非くれぐれも現実に起こっている被害の軽減のために、そして将来に禍根を残さないよう、県としては責任を持って対策をとってほしいこと、申し上げておきます。

2、DV被害者への支援について

1、 DVの定義について、どのように認識しているか。県内で把握されているDV被害の実態と支援の現状はどうなっているか。
2、 DV被害者の支援に重要な住宅の確保で、加害者が配偶者でない場合も公営住宅が提供できるよう、法改正を国に働きかけていただきたいがいかがか。

<石坂議員>
 ドメスティック・バイオレンス、いわゆるDV対策についてお伺いします。
 内閣府男女行動参画局の資料によれば、2002年から2011年の10年間で配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は35943件から82099件と約2倍強に増えていますが、同じ10年間に都道府県警察における配偶者からの暴力相談等の対応件数は3608件から34329件と約10倍になっており、深刻な事態が急増していることが伺えます。
 私が実際に相談に関わった長野市内の女性の事例ですが、独立して家庭をもち子供さんもいる息子さんから、金銭的要求を中心とする連続的な暴力と脅迫を実家の母親と同居している娘さん、お孫さんが受け、暴力の現場には、しばしば警察にも駆けつけていただく事態で、息子さんからの相つぐ暴力で充分な睡眠も取れず、身の危険を感じた母親は、娘さんやお孫さんとともに知り合いの女性議員宅に緊急避難し、身を隠さざるを得なかったと言う事例です。女性相談センターにも市の職員にも親身に相談にのっていただきましたが、女性相談センターで保護してもらうためには職場や学校へ通うことはできなくなるため、職を失ってしまうことを恐れてご本人の決断ができず、県営住宅への緊急入居による保護も「配偶者からの暴力被害者の公営住宅への入居について」の法の該当者とならないと言う理由でかなわず、結局、駆け込んだ女性議員宅に1ヶ月以上避難する事態とならざるを得ませんでした。
 ドメスティック・バイオレンスを単に「配偶者からの暴力」と限定する考え方もありますが、実際には、恋人や親子間の暴力など親密な関係にあるものや家族からの暴力の被害にあうことも多く、配偶者からの暴力と同様に保護することが必要ではないかと考えます。被害者は圧倒的に女性であり、暴力によって人権を著しく侵害され、対等な人間関係が成り立たなくなっています。ご紹介した事例でも、実際に住居を提供した女性議員宅も1ヶ月に及べば家族の負担も相当なものであり、もし、それが不可能となれば、被害者の女性と同居家族3人は路頭に迷うことになったでしょう。
 県はDV、女性に対する身近な人からの暴力の問題について、どのようにとらえ、対応しているのでしょうか。県内のDV被害相談や支援の現状について、健康福祉部長にお伺いします。

 また、DV被害者の支援には、身の安全の保護のため住宅の確保が重要です。加害者が配偶者でない場合も県営住宅を活用できるような対策はとられているのでしょうか。建設部長にお伺いします。

<健康福祉部長>
 DVの対応、そして県内のDV被害者相談や支援の現状についてお答え申しあげます。配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律、いわゆるDV防止法ですけれども、これでは支援の対象を、事実婚を含む配偶者からの暴力被害者としているところですが、県としては議員ご指摘のような恋人やあるいは、親子間の暴力などによる被害もあることは承知しております。そうゆう方々に関しまして女性保護の観点から、女性相談センター等において相談に応じて被害者の保護を行っているところです。
 平成23年度に女性相談センターそして保険福祉事務所等で受けたDVに関する相談件数ですが、1741件でした。このうち35人の被害者に対して延べ415日間一時保護をするなど被害者の自立に向けた支援を行なっているところです。


<建設部長>
 DV被害者の県営住宅への入居に関するお尋ねでございます。
 現在は、配偶者からの暴力を受けた被害者を対象に優先入居を行っております。県営住宅には、住宅セーフティーネットとしての役割がありますので、被害者を保護し自立を支援する観点から、議員からご質問いただいた加害者が配偶者でないケースにおいても、女性相談センターや福祉事務所等の関係機関から、被害者の状況等を良くお聞きして優先入居ができるよう対応してまいりたい、と考えております。

<石坂議員>
 それぞれから、現場では法の如何にかかわらず、家族間の暴力を含め広い意味での暴力からの保護に対して柔軟で具体的な対応をしていただいているという事ですが、現実にご紹介した事例ではやはり、配偶者間のDVに対応する緊急入居という事であるのでという事が主要な理由になって、実際には県営住宅への緊急入居はその時点ではかないませんでした。もちろん相手が配偶者で有る無しだけではなく暴力の実態とかいろんな総合的な判断はあったと思うのですが、実際にそうゆう事例がありましたので、現場に改めて県のとっている基本的な対応、それから法の本来の主旨について徹底していただくこと、そうゆう意味での暴力からの保護が実際に懇切丁寧にサポートされるよう、現場への徹底を改めてお願いいたいと思いますが、両部長のご答弁を改めてお願いします。

<健康福祉部長>
 いわゆるDVの範囲といいますか、その被害者の方々をいわゆる法では今のところ実婚を含む配偶者という事ですが、実態としては恋人あるいは親子間に対してどの様に対応するかという再度のお尋ねですが、私どもとしては可能な限り被害者の方に寄り添う、そしてまた慎重に配慮して、緊急事態もこれは総合的な現場の判断でございますけれども、まずは女性保護の観点から、女性相談センターとか保健福祉事務所等できちんとお話をお伺いするよう、徹底してまいりたいと思っています。


<建設部長>
 先ほども申しあげましたとおりですが、住宅セーフティーネットとしての役割、これを充分に果たすために加害者が配偶者でないケースにおいても優先入居ができるよう、対応してまいります。

3、土地改良組合の畑地かんがい事業等の負担金について

1、 、 土地改良組合の畑地かんがい事業等の経費は、利用の如何にかかわらず組合員負担の仕組みになっているが、実態に見合った軽減策を検討できないか。

<石坂議員>
 土地改良区の畑地かんがい事業等の負担金についてお伺いします。
 北信地方のある農業後継者から、土地改良区の畑地かんがい事業等の負担金を実際には利用していない土地の分も払わなければならず、休止、脱退もできない仕組みは納得できないと相談を受けました。本人の不服申請は却下され、耕作する、しない、施設を使用する、しないに関わらず、経費の負担は組合員の義務であり、任意脱退も認められないと言うものです。この土地改良区の場合、県営かんがい排水事業で20億700万円、県営畑地帯総合土地改良事業43億3200万円の事業費が投入されており、国・県の補助金47億5000万円を除いても15億8900万円の事業費を約600軒の農家で負担しなければならず、維持費なども合わせて、安易な脱退や休止を認めれば残りの農家の負担が増え、公平性も欠くと言うことになるのは理解できます。
 しかし、農業を取り巻く現状がきびしい中で、農業収入は安定せず、実態に見合った経費削減も行なうことができず、使用していない設備の経費も負担し続けなければならないと言うのでは、余裕があるのであればいざ知らず、これでは、ますます後継者になる人は減ってしまうでしょう。中には、後継者はおらず、配偶者は亡くなり、高齢になって耕作はできず、売ることもできない土地の負担金を、少ない年金のほとんどで支払っていると言う人の話や、「俺は、もう、畑かんに殺されるよ。」との嘆き節も聞きました。
 本来農家の助け合いの組織であるはずの土地改良区事業の負担金が、農家を逆に苦しめているのであれば、実態に見合った支援策を検討できないのでしょうか。農政部長にお伺いします。

<農政部長>
 土地改良区が行なっております事業の農家負担金についてのお尋ねでございます。
 土地改良区の運営とか農業水利施設の維持管理に要する経費については、受益となっている農地を耕作している組合員農家が、その面積に応分の負担をされているところです。
 議員ご指摘のような事象の解消に当たっては、これらの農地については国や県の補助を受けて条件を整備した、正に守るべき優良農地ですので、これらの有効利用と、地域内の安定的な水利を維持するという観点も必要です。
 こうした事から県としては規模を拡大していただく手法を持った農家あるいは新規就農者の皆様方に対して、これらの農家から農地と貸していただく、譲渡していただく、場合によって畑かんではないが水田などは全部作業を委託していただく、などを検討いただきたいと考えております。これらのいずれかの方法をとっていただくと、負担金は新たな耕作者が納める事になりますし、農作業委託のばあいは、現在の農地所有者の方々が農業収入が出るわけでその中から支払っていただくというふうになると考えております。
 ただ、これらの農地の利用の調整は、個人では大変です。それぞれの市町村の農業委員会、県の農業開発公社、農協などで、借り手や買い手への農地の斡旋行為、あるいは法律的な手続きのご支援は行なっています。県としては、樹園地などについては円滑な継承をしていただくことが重要と考えており、これらの対策をしておりますし、遊休化した農地の再生利用の対策も実施しています。新規就農者の確保対策もあわせて実施しているところですので、こうしたところから、こうした事象の解消にもつなげてまいりたいと考えています。

<石坂議員>
 今農政部長からお答えいただいた対策が、本当にうまく回っていると意欲を持って頑張れるのですが、そうなっていない現実がこの質問になっていることをご理解いただいて、今回問題提起させていただきますので、農業者の意欲につながるような何らかの支援策をさらにきめ細かく検討していただく事をお願いします。

4、県立4年制大学について

1、基本構想素案に対するパブリック・コメントの内容はどのようなものか。素案に対する県民意見をどのように受け止めているか。
2、「長野県の発展に真に貢献できる4年制大学」像に対する見解を伺いたい。
3,4年制大学における専門的資格の取得をどのように位置づけているか。
4、 県短大が果たしてきた役割や今までの検討の経過を生かし、管理栄養士の養成とともに栄養教諭の養成を行うべきではないか。

<石坂議員>
 県立四年制大学についてお伺いします。
 9月20日に公表された基本構想素案に対して、約800件と言う非常に多くのパブリック・コメントがよせられたとお聞きしていますが、その内容はどのようなものでしょうか。県として、素案に対する県民の意見を今後どのように受け止めていくのでしょうか。総務部長にお伺いします。

<総務部長>
 県立4年制大学の検討にあたってのパブリックコメントの内容とその受け止めについてのお尋ねです。9月から10月にかけて受け付けたパブリックコメントについては、785件の多くのご意見をいただいたところです。意見の内容は素案の全般にわたっておりますが主なものを申しあげたいと思います。
 まず基本的な大学の考え方につきましては、グローバル化に対応した人材の育成あるいは地域で活躍する人材の育成を求めるご意見をいただいております。
 次に学部学科の構成についてですが、1100件を越えるご意見をいただいております。主なものとしては、長野県の特色あるいは魅力を活かすという点、学生のニーズに対応すべきという点、専門性・資格取得を求めるといったご意見をいただいております。また、他大学の競合に対する懸念とか長野県にない学部学科の設置を求めるご意見もいただいています。
 次に、教育の特色についていただいたご意見は500件を越えるご意見をいただいております。主なものとしては、留学あるいは全寮制についてのご意見で、一律の義務化でない方法はないのか、経済的な負担への配慮が必要ではないかといったご意見をいただいています。
 このほかにもたくさんのご意見をいただいております。これらは新県立大学に対する県民の皆様の関心の表れと考えておりまして、いずれも貴重なご意見として真摯に受けとめ今後の対応を検討しているところです。

<石坂議員>
 知事は、議案の提案説明の中で、「長野県の発展に真に貢献できる4年制大学」をと述べられましたが、それはどのような大学像でしょうか。知事の見解をお伺いします。

 基本構想素案には、県議会からも県民からも批判や異論が続出しました。それは、県短期大学が、長野県内外の人材育成に一定の役割を果たしてきた歴史を持ちながら、時代の変化と発展の中で、2年間の履修では社会的ニーズとなった管理栄養士の取得はできず、教員免許も2種の取得しかできないなどの制約があり、そのため、県の包括外部監査でも、「管理栄養士養成過程を軸にした4年制大学への転換無しに県短期大学の存在意義はなくなる。」と指摘を受けた経過があるにもかかわらず、基本構想素案では、新4年制大学は資格の取得は目的としないとされ、従来の検討や県民の思いが全く無視されてしまったからではないでしょうか。秋田国際大学を意識しすぎた結果と言えるかもしれません。
 私は、4年制大学ならではの専門的な学問の探求の中で、学んだことをステップにして専門的資格を取得することは意義あることだと考えます。県立四年制大学における専門的資格の取得について、知事は、どのように位置づけているのでしょうか。見解をお伺いします。

 9月県議会でも議論が集中した管理栄養士の養成については、県内他大学との競合や、就職先の確保などの課題が心配されています。私は、県議会の超党派で構成している県短期大学の4年制化に関する懇談会でも、総務企画委員会でも主張してきましたが、ここにこそ、長野県らしい発信ができる重要なポイントがあるのではないかと考えています。基本構想素案が議論された第4回準備委員会を傍聴させていただきましたが、「来るたびに長野県が好きになる。」と発言されたある委員が、新県立大学は長野県の豊かな自然や風土に根ざした長野県らしい発信ができるものにと、地産地消や食育、信州学などを位置づけたものにと提案されていました。今、「給食で死ぬ!!子供を救った奇跡の食育」と言う本が感動を広げています。中学校の校長から真田町の教育長になり、わかる授業への取り組みと、化学肥料や農薬を極力避けた米飯給食中心、魚、野菜たっぷりの給食への改善で、いじめ・非行・暴力がなくなり優秀校になった長野県真田町の取り組みを推進した大塚貢さんの実践や、大塚さんの講演に感銘を受け、社員食堂で無農薬有機栽培のお米や地産地消の野菜を使った食事を提供し、社員の健康や働く意欲につなげている新潟県に本社がある石油ストーブやエアコンの大手企業、株式会社コロナの内田社長の実践などが紹介されています。言うまでもなく、これらの実践において、管理栄養士の果たしている役割は欠かせないものとなっています。
 これらの点を踏まえて新四年制大学に提案したいのは、管理栄養士とともに、栄養教諭の養成です。栄養教諭の配置は、全国的に年々前進はしてきていますが、食育の重要性が叫ばれている割にはまだまだ遅れており、平成24年度で兵庫県331人、福岡県253人、鹿児島県156人などで全体に西日本が厚く、東日本が遅れています。その東日本でも新潟県122人、岐阜県116人に比べれば、長野県の62人は大きく遅れをとっていると言わざるを得ません。長野県食育推進計画の中でも、推進体制の中に大学・専門学校での専門的な研究・指導・助言・人材育成がうたわれており、県立4年制大学での栄養教諭の養成は必要不可欠ではないかと考えますが、知事の見解を伺います。

<阿部知事>
 4年制大学の質問に順次お答えします。
 まず、長野県の発展に真に貢献できる4年制大学像についてのご質問です。地域社会が持続的に発展していくためには、長野県そして日本の風土文化に根ざして、かつグローバルな視野を持ち、地域資源を活用して新しい価値を生み出すなど、イノベーションを起こすことができる人材が必要だと考えております。具体的には、多様なグローバル社会において必要なコミュニケーション力を備えるとともに、日本や地域の歴史・文化を学び、自らの地域に立脚したアイデンティティを持ちながら、相手の文化を理解し価値を認め合うことができる人材が必要です。さらに、既存の枠組みにとらわれず主体的にチャレンジする精神と社会に対する責任感等を持ち合わせた人材が求められています。
 新しい県立大学、地域の中核となってビジネス・公共の分野でイノベーションを創出し、持続可能な豊かな社会に向けて地域や企業を牽引していく人材育成に資する大学にしていきたいと考えております。
 また地域課題にこたえ、個性ある地域づくりを行なう拠点として重要な役割を果たしていくことができる大学を目指していくと考えております。
 専門的資格取得についてのお尋ねについてお答え申しあげます。昨今の厳しい就職状況を背景として、資格の取得を目指す大学生が増えていますし、大学もその支援に力を入れる傾向があると承知しています。他方で、資格にも様々なものがあり、一概には申しあげられませんが、資格の内容によっては社会のニーズや学生の期待ほどには企業が重視していない、社会のニーズも少ないという場合もあります。大学教育本来の目的は、4年間の学びを通じて論理的思考力、コミュニティ能力あるいはチームで働く力など社会人として必要な基礎的能力を身につけることであると考えております。資格の取得については学生が自分の就職あるいは将来のキャリアをしっかり考え、それを実現する手段として資格を取得していくということには意義があると考えています。
 次に、管理栄養士、栄養教諭の養成についてです。管理栄養士、栄養教諭については地域や学校における栄養指導や食育を通じて、県民の健康増進に重要な役割を果たしていると考えています。健康長寿長野県として誇るべき強み・特色です。こうした強みを継承発展させていくということは県政の大きな課題でもあります。健康長寿も含めて県政課題に対応していくということは新しい大学においても重要な課題だと考えております。社会的な必要性・ニーズあるいは県内他大学との関係性等もふくめ、新しい大学がどのような形で貢献していくことが望ましいか十分検討し構想を取りまとめて参りたいと考えております。

<石坂議員>
 目指す大学の知事のご答弁は、今までもさんざん聞いてきたご答弁なんですが、私があえて今回お聞きしましたのは、「長野県の発展に」という部分で長野県らしさの発信は、知事の目指す像のどこにあるんでしょうかという、あの素案に本当にそれが感じられないということが私たちも納得できない点なんですが、目指す大学像で長野県らしい発信を知事はどういう方向に求めていこうとされているのか、その点お答えいただきたいと思います。
 それから確認ですが、資格の取得も大学の重要な目的、それを活かす大学にされるおつもりがあるのかどうか、お願いします。

<阿部知事>
 長野県らしさと資格の取得というお尋ねです。
 大学の問題、これは県政に資するという点ももちろん必要だと思いますが、それ以上に今日本の大学教育全体の問題。すなわち、入るときは難しいが入ってしまうとなかなか本格的な学習をしていないんじゃないか、あるいは大学の数についても議論がありますが国際的な水準から見ればまだまだ日本の大学進学率はそれほど高いほうではないという現状もあります。
 そういうなかで、長野県の県立大学としてもちろん地域に根ざしたということは私は必要だと思っていますが、他方で素案でも掲げておりますように勉学の志を全うする大学でなければならないと。さらに、主体的に課題解決できる、これは単なる座学だけではなくて実践的な力を養えるような大学にしていかなければいけないと考えております。そういう観点で、この特色というのは県政課題に対応していくという観点だけではなくてやはり大学そのもののあり方についてもしっかり踏み込んだ構想にしていく必要があると考えています。そういうなかで、まさに教育県であり続けてきた長野県としての大学の特色をしっかり打ち出していきたいと考えています。
 資格の話については、文部科学省でも高等教育のあり方がさまざま議論されています。さきほども申しあげましたが、今高等教育が抱えている問題の一つはやはり人材の受けてである産業界あるいは社会と少し意識がずれている部分があるんじゃないかと思っております。さきほど申しあげましたが、資格の問題、大学側は学生達のニーズに対応して資格取得に対して力を入れてきているという部分はあります。ただ、経団連等のアンケートを見ると、企業側のニーズとは必ずしも一致していない場合もあるという状況です。資格取得を一義的な目標に掲げるのではなく、先ほど申しあげました、やはり基本的な力をしっかり身につけさせていく大学にしていくということが重要だと思います。ただ、もとより資格取得について全く関係ないと思っているわけではありません。社会的なニーズをしっかり踏まえた上で、必要な資格については取得していくということも必要だと思いますので、さまざま今学部学科のあり方も含めてご意見をいただいております。そうしたご意見を真摯に検討するなかで方向付けをしていきたいと考えております。

<石坂議員>
 最後に一点。基本構想案策定を延ばしたことでリセットは困ります。20年来検討してきた県民の悲願です。良い案を作るために今の時間を大切にしながら、しかし一日も早く4年制大学を県民の喜ばれるものに作るんだということで、期限はいたずらに延ばさない。これをお約束していただきたいと思いますが、そのことをお聞きして私の全ての質問を終わります。知事に伺います。

<阿部知事>
 構想の取りまとめにむけて検討すべき部分は大変多いと思っています。様々な皆様のご意見をしっかり受け止めて、多くの皆さんに理解いただける、そして50年後100年後目指して本当に長野県を引っ張っていける人材育成できる大学にしなければいけないと思っております。そういう意味でしっかりと多くの皆さんとも対話を重ねながら構想を取りまとめていきたいと思っていますが、いたずらに時間をかけることなく、しっかりとした方向付けをできる限り早くしていきたいと考えております。