2012年6月定例会 6月27日 一般質問 石坂千穂

1、浅川ダムの安全性について
2、麻栽培の振興について
3、生活困窮者の支援について
4、教育環境の整備について

1、浅川ダムの安全性について

1、 昨年10月から実施された安全性の調査は、東日本大震災後の新しい視点を生かしたものか。調査方法は適切なものと言えるか。
2、 調査結果に異なる見解がある中で、安全の最終判断をした責任者として、知事は説明責任を果たすべきではないか。

<石坂議員>
 浅川ダムの安全性について、お伺いします。
 東日本大震災以後の日本は、大震災から1年3ヶ月たった今でも、日本のあちこちで地震が発生しているように、日本列島全体が活動量を増しています。そして、今まで動かないとされてきた断層が動いたり、新たな断層が発生したり、断層の長さが予想していたものより長かったことがわかったりして、多くの専門家が、従来の固定観念にとらわれず、新しい視点で見直すことの重要性を指摘しています。最近では、産業技術総合研究所が、これまであまり注意されなかった全国の長さ15キロ以下の小規模な活断層を詳細に調べ直した結果、全国で47断層が従来の評価に比べ、平均で約1.6倍長いと見られることを明らかにしました。長野県内では、山ノ内町付近の須賀川断層、横倉断層、小諸市の滝原断層がこれに含まれているとし、調査にあたった産総研の吾妻主任研究員は、「今回長野県内で判明した断層はすぐに大きな心配をする必要はない。ただ、注目されていない断層でも地震につながる可能性が無いわけではない」としています。
 知事は、昨年9月県議会での私の質問に、「県民の皆さんの中には東日本大震災の発生ということもあって、FV断層について不安を感じている方もおられると思っていますので、こうしたことから今回、説明責任を果たすべく改めて掘削を行いましてダム敷およびダム敷以外の場所も含めて、FV断層の安全性の再確認を行っていきたいと思っています」と答弁され、10月から調査が実施されました。重要な事は、大震災後の県民の不安に答える調査を行なうと言う点と、県民への説明責任を果たすと言う点です。
 昨年10月から今年の3月まで実施された浅川ダムの安全性の調査は、新たな活動期を迎えたとも言われる東日本大震災以後の状況を踏まえた、新しい視点を生かした調査だったと言えるのでしょうか。また、その調査方法は適切なものだったのでしょうか。以上を、建設部長にお伺いします。

<建設部長>
 浅川ダムの安全性についてのお尋ねでございます。
 まず、東日本大震災後の新たな視点を生かしたものであったかという点についてです。
今回のFV断層の安全性の再確認は東日本大震災の発生を受け、FV断層に不安を感じている方を含め県民によりいっそうの責任を果たすため、独立行政法人産業技術研究所の専門家に調査を依頼して実施したものであり、大震災を契機にしたものであります。なお、政府の地震調査研究推進本部、地震調査委員会によりますと、東日本大震災後に地震発生確率が高まった断層が全国で5ヶ所あることが発表されておりますが、浅川ダム近傍の長野盆地西縁断層帯につきましては評価が変わっていないことを確認しております。
 なお、活断層の調査方法につきましては改めて検証が必要となるような新たな知見は出ていないと認識しております。
 また、調査方法が適切であったかという点についてですが、この調査ではダム建設工事現場内でFV断層上に堆積するほぼ全ての地層をくまなく詳細に調査しており、調査方法は適切であったと考えております。

<石坂議員>
 そして、県の言う、ダム建設に直接関わっていない公正な第三者である独立行政法人、産業技術総合研究所の佃研究員は、県の浅川ダムF―V断層の安全性の調査に対する最終見解として、「断層運動を全くクリアには否定はできないものの、明確な断層運動があったという証拠は見られない」「F-V断層は単独で動く断層とは考えられない。万が一動く可能性があるとしたら、長野盆地西縁断層帯が動くときに一緒に動く可能性を考えた方がよい」と説明しました。最終コメントでは、随所で、「本当に断層運動ではできないかと言うと、絶対できないと言うことはなかなかいえないので、その点はどうしても、最後はその現象を全く否定すると言うわけにはいかないと思います」とか、「ただ一方で、断層運動でもできないわけではないと言う最後の不安はちょっと残る。そこはどうしても解消できないと言うところですけれども」とか、「これ自体もまた断層運動と関連が無いかというと、それもまた全くゼロではないと言うことなので、全くこれを否定できるかと言うと必ずしもそうはいかないです。・・・(中略)・・・全く否定できるかと言うとそうではないという、ちょっと辛いところではありますが」とか、「ただ一方で、全くクリアな、動いた形跡が全くないと、明確な露頭というか、地層の現象は確認できていません。なので、いちるの不安はあります。それは正直なところです」などと述べています。
 一方で、信州大学名誉教授の小坂共栄先生と理学博士の松島信幸氏は、あらためてF-V断層は明確な活断層であると阿部知事と佃研究員に公開質問状を出しています。県が調査を依頼した専門家も、「いちるの不安がある」「全く否定するわけにはいかない」と述べ、専門家の中でも調査結果に異なる見解がある中で、ダム建設には支障がないと安全の最終判断をしたのは阿部知事です。二度にわたる住民への報告会、説明会では、その知事の出席がないことに、参加者からの不満が多く出されました。今回の判断の責任者として、知事は安全を判断した根拠について、自らの言葉で流域住民に説明する、しかるべき機会を作り、説明責任を果たすべきではないでしょうか

<阿部知事>
 浅川ダムの安全性、FV断層の再確認についての説明というご質問です。
 再確認の結果につきましては専門家の見解も踏まえて今年の3月27日の会見で私自身から、判断にいたる考え方、経過説明をいたしました。この件につきましては、「再確認」と称しているように、今までの考え方と違う知見があるのかどうかということでやったわけでありますけれども、これまでの県の見解と同様に安全性が再確認されたわけでありまして、地質・断層についての技術的知見を有する建設部のほうで2回にわたり説明会を開催させていただいて、住民の皆様方にご説明をいたしました。私のほうからは、このFV断層の安全性については質問がなくなるまでちゃんと、途中で切ることのないように、時間がかかってもやるようにということを指示させていただいて、時間をかけて丁寧に県民の皆さん、住民の皆さんにご説明させていただいたと考えております。従いまして県としての説明責任については十分果たさせていただいていると考えております。

<石坂議員>
 今回の一連の調査について、多くの県民は、「公正な第三者に調査を依頼し、説明責任を果たす」という知事の言葉で、実際に調査にあたっていたのがいわゆる公正な第三者といわれる産総研の専門家だと受け取っていたと思います。
 しかし、実際に調査したのは県であり、県のコンサルタント業者で、その調査結果の資料を県の担当者がつくばの産総研に持参しては説明すると言う作業が繰り返されたというのが実態で、5月20日に5時間にわたって続けられた住民説明会では、初参加者の住民が、「ダムを造りたいと言う県が自分で調査して、その結果に見解をもらうと言うのでは、第三者による調査とは言えない」と、繰り返し指摘して、本当の意味での第三者による調査を要求しました。うがった見方をすれば、県にとって都合の悪い調査結果や資料は持参しなければ良いと言うことにもなりかねないわけですから、今回の調査そのものへの信頼性が揺らいでいるわけです。
 私は、県民の信頼を得るためには、知事が繰り返し言われる「再確認」ではなくて、「再検証」をと要望してきましたが、改めて、県民の納得できる再検証を求めたいと思います。知事、いかがでしょうか。

<阿部知事>
 浅川ダムについては、私は念には念を入れて、いろんな取り組み、確認をしてきたつもりでありますし、その間、建設部の職員との間でも相当踏み込んでやり取りをしました。いま石坂議員がおっしゃるような形でいけば、建設部の職員は信用できないから知事が全部どこでもやれと、出て行ってやれという話のように私には聞こえるんですが、建設部の職員も私の意を解してしっかりと取り組んでもらっています。そういう観点で、私としては先ほど申しあげましたように、今回の安全性の再確認については建設部のほうにも十分説明を丁寧にするように指示して、その通りにやっているというふうに考えていますので、これ以上私がお話をしても同じ説明にならざるを得ないと考えております。
 従って、石坂議員から繰り返しご要請ありますけれども、今の時点で私は、十分説明責任を、県として、今回の件については果たさせていただいていると考えております。

<石坂議員>
 時間がありませんので具体的なことは触れませんけれども、主張が真っ二つに分かれているままなんですね。どんなに時間をかけても、これは、言い張る側と指摘する側が相容れないという状況です。でも知事は新しい内水対策の説明会には自らおいでになったじゃないですか。ですから今回このような見解があるなかで、最終的に安全だと判断して建設継続、続行を指示されているわけですから、ぜひ知事自身の言葉で、住民説明会においでいただきまして、安全と判断した根拠について説明をしていただきたいと、強く要望しておきます。

2、麻栽培の振興について

  1. 麻の栽培には大麻取締法による規制があるが、麻栽培を振興するに当たってどのような課題があるか。また、課題解決のための取り組みを進めていただきたいがいかがか。
  2. 県では独自の品種改良によって安全な品種を開発するなどして麻栽培の振興を検討していただきたいがいかがか。
  3. 県下にはかつて麻の栽培が盛んな地域があった。以上のような課題があるが、麻栽培の振興に取り組むつもりがあるか、知事の見解を伺いたい。

<石坂議員>
 麻栽培の振興についてお伺いします。
 麻は、かつては米などと同じ用に一般農家で普通に栽培されていた作物で、長野県内でも美麻、麻績などの地名が示すように盛んに栽培されていた地域もありましたが、現在は大麻取締法による規制の対象であり、長野県では原則的には栽培は許可されていません。長野市に合併した旧鬼無里村でも、かつては畳糸の材料として主力作物のひとつとして栽培され、全国の畳糸のほとんどは鬼無里村で生産された時代もあったと言われています。麻で財をなした豊かな村であった鬼無里村では、その豊かな財で豊かな文化を育み、現在民族資料館に展示されている芸術的にも優れた屋台なども作り、楽しみました。
 刈り取った麻を乾燥させ、お釜でゆで、剥ぎ取った皮から繊維をとり、裂いた糸をつなげてよりをかけ、雪にさらして畳糸に完成させるという伝統の技を、子ども達に伝えていこうと、現在鬼無里小学校に麻をゆでるお釜も設置され、子ども達にお年寄りが伝統の技を伝えるイベントが取り組まれていますが、原料の麻は栃木県鹿沼産です。何とか、原料の麻栽培も地元でできるようにしたい、できれば鬼無里の歴史と文化を作ってきた麻栽培を復活させたいと言う願いを持つ人々もいます。
 麻は、皇室などの神事にも使われ、相撲の横綱の綱、弓の弦、太鼓などにも使われ、夏は涼しく冬は暖かい着物や衣服の優れた材料として幅広く使われて来ました。麻の栽培には大麻取締法による規制がありますが、麻栽培を復活し、振興するに当たっては、どのような課題があるのでしょうか。また、長野県での麻栽培が復活できるよう、課題解決のための取り組みを進めていただきたいと思いますがいかがでしょうか。健康福祉部長にお伺いします。

<健康福祉部長>
 議員ご指摘の、麻を栽培するに当たっての課題等についてお答えします。
 麻には大麻、亜麻、これは色でいう亜麻色の亜麻ですね、それからマニラーサ、こういった複数の種類がありますが、かつて長野県内で多く栽培されていたのはこのうちの大麻にあたります。議員ご指摘の通り、大麻については大麻取締法という法規制があります。大麻を栽培しようとする者については都道府県知事の許可が必要ということです。
 このため県では、この件では審査基準を定めておりまして、栽培地の面積の妥当性、盗難防止対策、こちらの整備等の条件を全て満たして上で、なおかつ伝統文化の継承など大麻栽培を必要とする社会的流用性や合理性が認められる場合に限り、許可をするという取り扱いとしております。
 大麻を栽培することによって大麻の乱用が拡大するということはあってはならないと考えておりまして、乱用による保健衛生上の被害を未然に防止するという観点から、これらの基準に照らして厳正かつ慎重に判断したいと思っているところでございます。

<石坂議員>
 先日、日本共産党県議団は、麻の栽培面積で全国の9割、繊維採取量で55%という栃木県鹿沼市に視察に行ってきました。来月末には収穫期を迎えるという麻畑は、大人の背丈を越える高さで広がっていました。県の農業試験場で、7年かけて品種改良した「とちぎしろ」という無害化した品種の種を県が管理して農家に配布し、数年たつと毒性が戻るため、農家からの麻の葉の日常的なサンプル提出を義務付け、チェックする体制をとっているとの事でした。長野県として独自の品種改良によって安全な品種を開発するなどして麻栽培の可能性、振興を検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。農政部長にお伺いします。

<農政部長>
 麻栽培の振興についてのお尋ねです。
 県内では麻栽培を希望されている議員ご指摘の皆様方の主たる目的をお聞きしますと、信州麻とか山中麻というふうな名前でかつて大麻の栽培が盛んに行なわれていた本県の文化や生活技術の伝承ということを主たる目的として活動されていると。経済栽培としての振興を目的としていないとお聞きしています。
 また、麻の栽培については先ほど部長からもご説明ありましたが、大変厳しい規制の状況下にございまして、仮に、低毒性の麻に改良した大麻であっても、これを経済作物として栽培することについての栽培者免許は下りないと認識しております。
 こうした状況下においては、農作物としての栽培として麻の栽培を振興することは極めて厳しいと考えております。従いまして、県としてその前段となる品種改良などの試験研究を行なうことも現在のところ考えておりません。

<石坂議員>
 麻の栽培には、今健康福祉部長、農政部長からお答えいただきましたように、さまざまな課題がありますが、しかし新しい光をあてて振興作物としての可能性も十分あると私は考えております。長野県の農業試験所が今までも優れた技術でさまざまな優れた農産物を産みだしてきた。そういう能力を持っているわけですので、ぜひ新たな課題として検討していただきたいと思っています。
 鹿沼市の話ですが、最近までは非常に手間暇かかる仕事を若い人が嫌がって、生産者も高齢化した、そして若い人たちはズッキーニの畑に変えてしまった人もいる。でも最近これが大いに見直されて、息子さんが継ぐようになった、お孫さんも継ぐようになった。そして麻薬との関係ですが、品種改良した麻畑というのは、ジャガイモやねぎの畑のように柵もなく、誰でも入ることができ、かつては東京あたりから夜中に麻薬の材料にしたいということで盗みに来たり、見回りや見張り番をしたりして大変だったらしいのですが、今は無害化に近い品種改良がされていますので見張り番もしなくて良いという環境のなかで普通の畑として栽培されています。
 そうなってなぜ息子さんやお孫さんが継ぐようになったかというと、手間暇はかかるが非常に利益になるということです。組合長さんは農林水産大臣賞を、今年二度目をとりまして、その賞をとった麻は数十万円で売ってほしいという方がいて、それはさる方のスーツになったということですが、農水省が農林水産賞を出して奨励している作物を、どうして長野県で産業として取り組むことができないのか、私は非常に疑問でもあります。乗り越えなければならない課題はたくさんありますけれども、ぜひ検討していただきたい。知事のご見解を伺います。

<阿部知事>
 麻の栽培についてのご質問です。各部長もお答え申しあげたように、麻については大麻取締法での厳しい取締りがあるということで、単純に地域の振興で良い悪いという判断だけでは済まない状況です。
 私は、横浜にいた時もわざわざ長野県から麻の振興をやってらっしゃる方々がお越しになって、いろいろ麻にまつわるお話等をお聞かせいただいた経過もあって、信州は麻という名前がついている地域も多いわけでありますし、そういう意味で、心情的に分らない部分もないわけでもないというわけです。
 他方で麻薬という形のなかで様々な厳しい規制を解消していかなければならないものでもありますので、ぜひここは地域振興に取り組まれている皆様方に県としてどういう関わりが可能なのか検討していきたいと思いますし、少しコミュニケーションをとらなければならないのかなと考えております。
 ただ、先ほど共同の話で少し出てきましたが、健康福祉部は規制側でありますから、規制側に共同しろというのはなかなか難しい話ですので、どういう対応をすればいいのかということも含めてよく考えて。まずはやってらっしゃる皆さんの思いを我々も伺うということから始めなければならないと考えております。

3、生活困窮者の支援について

  1. 平成24年2月23日付の厚生労働省の通知を踏まえた、電気、ガス等の事業者と自治体福祉担当部局との連絡・連携強化はどのように進められているか。また、同通知は、自治体の担当部局で情報を一元的に受け止める体制の構築について触れているが、実態はどうなっているのか。
  2. 情報を得た担当部局が生活困窮者に行なう支援として生活保護が必要となる場合は、適切な支援を実施してほしいがいかがか。最近問題となった芸能人の母親の生活保護問題等を過剰に受け止めて、行き過ぎた指導にならないような配慮が必要と思うがいかがか。

<石坂議員>
 生活困窮者への支援について、健康福祉部長にお伺いします。
 日本の相対的貧困率は2010年で16%、6人にひとりが貧困ライン以下ということであり、先進諸国といわれるOECD(経済協力開発機構)加盟の30カ国中、メキシコ、トルコ、アメリカについで貧困者の割合が高い国になっています。今年になって、札幌市、さいたま市、立川市で餓死や孤立死するいたましい事件も相ついでいます。国においても2000年4月以降、6回にわたって、電気・ガス事業者との連携強化による生活困窮者の把握を求める「通知」を出しており、今年平成24年2月23日付で、改めて厚生労働省社会・援護局長名で「生活に困窮された方の把握のための関係部局・機関等との連絡・連携強化の徹底について」の各都道府県知事あての通知が出されています。

 私も、かねてから、税金や公共料金の滞納などが始まった最初の段階で生活困窮者の実態を把握して必要な支援につなげるゲート・キーパーの位置づけを県の職員研修にも位置づけてほしいと要望してきましたが、現在、長野県では、厚生労働省の通知を踏まえた、電気、ガス等の事業者と自治体福祉担当部局との連絡・連携強化はどのように進められているのでしょうか。また、同通知は、自治体の担当部局で情報を一元的に受け止める体制の構築について触れていますが、実態はどうなっているのでしょうか。

 また、情報を得た担当部局が生活困窮者に行なう支援として生活保護が必要となる場合は、適切な支援を実施してほしいと思いますが、いかがでしょうか。健康福祉部長に伺います。

<健康福祉部長>
 生活困窮者の支援体制についてお答えします。
 議員ご指摘の通り、ライフライン事業者と自治体の福祉担当部局との連携については本年2月、それからいろんな通知を統合した通知が5月に、厚生労働省の通知が出されておりまして、県内では庁内の連絡会議を開催する、それにまた情報共有する、それから地域で支援を必要とされる方を対応する市町村、生活保護を担う福祉事務所等に対して、関係部局・機関との連携強化について通知したところです。
 また、情報の一元化という問いですが、現在ライフライン事業者から自治体の福祉担当部局への連絡先が明確でないという指摘もあることから、今後は福祉事務所で情報が集約されるという体制をとりたいと思っておりまして、そういうことでライフライン事業者に徹底してまいりたいと考えているところです。

 次に生活保護についてお答えします。
 現在県や市の福祉事務所では生活困窮者から相談を受けた場合には生活保護につなげるための支援を行なっているところです。現在生活保護については、扶養義務や支給水準など様々な課題が指摘されていることは承知しておりますが、受給者の方や、申請をされる方が無用の不安、懸念を抱くことがないように、生活保護が最後のセーフティネットとしてきちんと機能することが大事だと思っておりまして、運用に当たっては適性に対応してまいりたいと思っております。
 現在厚生労働省におきましても、制度の見直しとか、あるいは生活扶助の水準の検討がなされていると承知していますが、このなかでも、今後とも生活保護というのは支援が必要な方には、適切にちゃんと保護をしていくものであると確認されておりますので、私どももこの考え方にのっとってきちんと対処して参りたいと思っております。

<石坂議員>
 通知の中身は徹底していただいて、情報の一元化もされているということなんですが、それでも残念ながら長野市でも孤立死、発見が遅れているものも起こっています。ぜひ、いっそうきめ細かくご指導をお願いし、また、情報把握もお願いしたいと思います。
 最近問題となった芸能人の母親の生活保護問題でも、マスコミ報道や国会質問では、人気のお笑い芸人であること、年収が5000万円だと言うことばかりが過剰に強調されました。しかし、この芸人の場合、全く仕事がないときに母親が生活保護を受給し始め、その後も福祉事務所と相談しながら仕送りもし、差額支給を受けてきたと言います。いわゆる不正受給であるのかどうかは、冷静に、憲法25条が規定している生存権を保障する、権利としての生活保護である事を明らかにして見極めていかなければなりません。リーマン・ショック以降の長引く景気低迷、非正規雇用の増大や派遣切り、東日本大震災後の生活再建や復興もままならず、国民生活の困難が増大するのに比例しての生活保護の増大は、政治と社会の責任でもあります。今回の芸能人の母親の問題などを過剰に受け止めて、行き過ぎた指導にならないような配慮も必要と思いますが、部長いかがでしょうか。

<健康福祉部長>
 生活保護の運用についてお答えですが、議員ご指摘の通り、行き過ぎた指導によって真に必要な方に生活保護が支給されないということはあってはならないと、これは私もその通りに考えておりまして、その点につきましては、これは運用をきちんとやっていかなければいけないと思っております。

<石坂議員>
 小宮山厚労大臣は、国会で、「着実な扶養義務の履行につなげたい。生活保護制度を見直す議論をしている。」と答弁しましたが、これは裏腹な危険も持っているわけです。
 生活保護を受けざるを得ない人たちは家庭環境も複雑な場合が多く、扶養の強要によって、これまで以上に家族関係がこじれ、DV被害者や虐待を受けてきた人たちが加害者の扶養を強要されることになったり、加害者の影におびえる人たちに生活保護の申請をあきらめさせることにもなったり、最悪の事態につながりかねません。
 先進国では、例えばイギリスでは、医療費は国民全員が無料、低所得者は大学教育も無料、人口の19%が生活保護を受けています。郵便局の窓口に生活保護申し込みハガキが置いてあることも知られています。フランスでも、人口の9.8%が生活保護を受けています。日本では今年3月の生活保護受給者が210万人を超えて「過去最多」と騒がれていますが、人口の1.65%です。
 長野県生活と健康を守る会の事務局への最近の報告では、ご近所や知り合いからいただいたお米や野菜まで、収入とみなして報告するようにと言う指導が県内のある自治体の生活保護担当者からあったということです。ささやかな助け合いや思いやりの善意まで、収入認定して保護費から差し引くと言うことであれば、生活保護受給者の人間としての尊厳も傷つけかねず、大変残念なことです。御答弁にありましたように、くれぐれも、法の精神が適切に生かされる具体的な血の通った運用を進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。

4、教育環境の整備について

  1. 教職員の残業、持ち帰り仕事、休日出勤の実態はどうなっているか。健康状態の実態はどうか。
  2. 正規、非正規の採用実態とその推移はどうなっているか。標準法、定数との乖離の実態はどうか。
  3. それらの改善のために、どのような手立てをとっているか。

<石坂議員>
 教育環境の整備について、教育長にお伺いします。
 5月22日に、県庁講堂において、中期総合計画に関する意見交換を議題に長野地方事務所管内の市町村長と知事の懇談会が開催され、私も傍聴させていただきました。その席上、小川村の村長さんから、今年、小川村に配置された教員の半数が講師であること、雇用期間や待遇の不安定な講師という身分で、いったいどれだけ本腰をすえて子どもたちの教育に取り組めるのかが疑問だ、是非、このような事態を改善して正規雇用の教員を増やしてほしいと言う趣旨のご発言がありました。現場の実態はそんなことになっているのかと、私もいささか驚きました。また、地元の小中学校の多くの先生方をはじめ、お会いする先生方は、授業や部活、進路指導や校外活動の指導などでいつもとても忙しそうで、最近は精神的に病んで休暇をとったり、退職する方もおられます。

 そこでお伺いしますが、教職員の残業、持ち帰り仕事、休日出勤の実態はどうなっているのでしょうか。また、仕事のストレスが健康に与える影響の実態については、どのように把握されているのでしょうか。

 また、教職員全体に占める非正規職員の割合とその直近の推移はどうなっているのでしょうか。義務教育学校、高等学校及び特別支援学校ごとの標準法と定数との乖離の実態をお伺いします。

<教育長>
 教育環境の整備についてのお尋ねです。
 まず、教員の残業、持ち帰り仕事、休日出勤の実態についてのお尋ねです。
 教員の残業についてですが、今年5月に取りまとめました教育に関するアンケートにおきまして小中学校教員の勤務日一日あたりの平均残業時間は2時間という結果が出ております。
 また、県立高校につきましては、平成16年11月に行なった調査の中で1ヶ月あたりの残業時間が全日制で38・9時間、定時制で6・6時間、通信制で11時間という結果が出ております。
 次に持ち帰りの時間ですが、勤務日一日あたりの平均持ち帰り時間は小中学校で25分となっておりますが、県立高校については調査を行っておりません。
 なお、休日出勤の状況については、日数は把握しておりませんが、小中学校における休日一日あたりの平均残業時間は持ち帰り時間も含めますと、2時間38分、また県立高校における1ヶ月あたりの週休日の勤務時間は15・4時間という調査結果が出ております。
 仕事のストレスが健康に与える影響についてですが、精神疾患に至る要因を平成22年度に調査したところの状況を申しあげますと、業務の多忙化・多様化によるストレスの増大、児童・生徒や保護者との関係に加えて、職場環境、個人的理由などが複合的に重なっておりまして、仕事のストレスと健康との関連性につきましては、一つの要因に限定することは困難と認識しております。
 平成23年度の長期療養休暇休職者の人数は289名でして、うち、精神系疾患によるものは139名で、半数を占めております。
 次に正規・非正規の割合と直近の推移についてのお尋ねです。公立小中学校の非正規教員の割合は教員総数に対し、平成23年度の14・1%から平成24年度には14・2%となっておりまして、30人規模学級編成の充実や児童生徒支援などの指導にともない、近年増加傾向にあります。
 県立高校につきましては平成23年度の6・6%から平成24年度には6・5%と減少しております。これは新規採用者を93名から121名に増やしていることによるものです。
 特別支援学校については、同じく12・0%から10・2%に減少しております。これは新規採用者を25人から30人に増やしていることによるものです。
 標準法定数との乖離についてのお尋ねです。県の予算により措置されている教諭にかかる予算定数につきまして標準法の定数の確定している平成23年度について申しあげますと、公立小中学校については法定数を上回っておりますが、高等学校については予算定数が3530人で、法定数との差が28人となっております。マイナスという意味です。特別支援学校については予算定数が1262人、法定数との差が、これは何回も触れていますが、287人です。

<石坂議員>
労働組合の調査の表などいただきますと、ちょっと持ち帰り仕事の時間などがかなり大幅に多かったりして違うのですが、いずれにしても今教育長にお答えいただきましたように、全体としてかなり残業、持ち帰り仕事が減らない状況であることなども明らかになっています。
また、お答えいただきましたように、公立小学校のいわゆる講師、それから非常勤講師については、数も比率も増えている、ここがとても問題だと私は思いました。こういう実態を、今お答えのなかでも教員を増やしたので減ったというお話もありましたが、教育委員会として改善のためにどのような手立てをとってきたのか、これからとろうとしているのか、そのへんについてお答えをお願いします。

<教育長>
 改善のための手立てについてのご質問です。
 教員の残業、持ち帰り仕事、休日出勤に対する対策については、ノー残業デーやノー部活デーなど時間外勤務縮減の取り組みを進めたりするほか、いっそうの職務の効率化、重点化、整理、これに努めております。また平成20年度に導入した週休日の振り替え、代休日の指定期間の拡大、本年4月に導入した県立高校における勤務時間の割り振り等、制度面からも時間外勤務縮減に向けた取り組みを進めております。
 仕事のストレスが健康に与える影響を改善する為の手立てにつきましては、公立学校共済組合と連携を図りまして、健康管理体制の充実、健康診断等の充実、教職員の自己管理への支援、この3つを柱として取り組みを進めております。
 また、各学校における安全衛生委員会等を活性化させ、健康診断受診率のアップ、支えあう学校の構築など、職員が健康で日々の職務に従事できるよう、職場環境の改善に取り組んでおります。
 いわゆる定数との乖離についてですが、正規教員の採用については、長期的な児童生徒数の減少や退職者数を見込みながら決定しているところです。小中学校においては大幅な採用数の増加は困難な状況です。また、退職者の多い高校、あるいは児童生徒が増加している特別支援学校については、新規採用者を順次増加させていまして、非正規率の改善に努めているところです。
 教職員の定数改善については、今ちょっと触れましたが、本県の公立小中学校については小人数学級を推進しており、30人規模学級を中学校3年まで拡大するとしているところですが、国における学級編成基準は小学校1年が35人基準とされているため、本県の取り組みの成果を踏まえ小学校2学年、3学年への拡大を要望しているところでございます。
 高等学校については各学校の実情に応じ、特色ある取り組みに対して加配するほか、魅力ある高校づくりと学校規模と配置の適正化を進めるために、第一期高等学校再編計画を着実に進めながら、定数改善についてもあわせて努力して参ります。
 特別支援学校については、平成21年度予算において児童生徒数の増加にともない、法定数との差、いわゆる乖離が拡大しないように教員を配置するルールを定めて取り組んできたところですが、引き続き、法定数と予算定数との乖離解消に努めてまいりたいと思っております。
 今後も児童生徒の教育環境の充実、教職員のモチベーションや力量の向上につながる職場環境の向上に努力してまいりたいと考えております。

<石坂議員>
 ただいまお答えいただきましたように、厳しい財政状況のなかで、標準法との定数の乖離を埋めるためのこの間のご努力には心から敬意を表したいと思います。
 この間、長野県では、教員や警察官の不祥事という残念な出来事がありました。ともに、立場上、県民に規範を示す指導的立場の職業についている人たちの不祥事だっただけに、県民に与えた失望感は大きなものがありました。職業への自覚と倫理観の向上のための当事者のいっそうのご努力をお願いするとともに、仕事に本腰を入れて取り組める安定した身分の確保、過度なストレスを生まないための長時間勤務や多忙からの開放、そのために必要な人員の確保などに、関係当局のいっそうのご努力をお願いいたします。
 この点では知事にも、予算措置などぜひご配慮いただきますように、お願い申しあげます。
 いずれにしましても、教育現場でも、様々な県の職員の現場でみなさんが生きがいを持ってがんばっていただき、県民サービスが向上することを誰もが願っているわけですので、そんな長野県を目指して、私たちも議会を通じていろいろなご提案も申しあげ、がんばっていきたいことを申し添え、以上で私のいっさいの質問を終わります。