2012年2月定例会 一般質問 2月27日 藤岡義英

1、自然エネルギーの普及促進について

2、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の問題について

3、水資源保全対策について

1、自然エネルギーの普及促進について

<藤岡議員>
 日本共産党県議団の藤岡義英です。一般質問を行います。

 まず自然エネルギーの普及促進について質問します。
 県が自然エネルギーの普及を目指し、地域に身近なエネルギーの事業化を支援する「1村1自然エネルギープロジェクト」を始めるという新聞記事を見て大変嬉しく思いました。すでに地域資源を大いに活用しながら自然エネルギー生産を進める循環型地域経済の追求が日本各地ですすめられています。
 確認になりますが、今年から長野県は自然エネルギー先進県を目指していくということでよろしいのでしょうか? 環境部長にお聞きします。
 このプロジェクトは県が「自然エネルギーを活用した地域の社会・経済の活性化」をすすめるために、市町村や、民間企業、NPOなどを後押しする事業だと理解しました。ただ長野県自身がどんな自然エネルギーを生かした先進県となるのか、見えてきません。どこまで地域資源を引き出し生かしていくのか?どれくらいの量の自然エネルギーを生産し、自然エネルギーの比率を高めていくかなどの、目標数値が定められていないからではないでしょうか。
 山梨県では、太陽光発電、太陽熱発電、小水力発電、木質バイオマス熱利用など種類別に、実際にエネルギーとして利用可能な量を計算し2020年までの「中期的な導入見込み量」などを定め、市町村、民間団体、そして個人への自然エネルギー普及の支援を行なっています。
 長野県も目標をできるだけ早く定め、エネルギーの種類ごとの推進イメージを分かりやすく示すべきではないでしょうか?また、自然エネルギーによってどの程度のCO削減を目指すのかも示すべきではと思います。遅くとも国が買取価格を決定した頃には、定める必要があるかと思いますが、環境部長お答えください。
 「1村1自然エネルギープロジェクト」では、個人の取り組みの後押しについては触れられていません。他の都道府県では自然エネルギーを推進するにあたって市町村や民間団体を後押ししながら、同時に個人による太陽光発電の設置などにも補助制度・融資制度をつくり支援を強めています。
 これまで私たちの会派や他の会派からも何度も個人向けの太陽光発電の導入促進のための助成制度の実施を求めてきましたが、知事は制度導入に消極的でした。知事が位置づけた「自然エネルギー元年」の年ですから、思い切って個人への後押しもプラスしてこそ自然エネルギー先進県になるかと考えますがいかがですか。知事お答えください。
 つづいて自然エネルギーをいかしての、観光振興政策について質問します。日本共産党県議団も視察してきました岩手県葛巻(くずまき)町は、人口約7700人の酪農の町。15基の風力発電が回っています。その発電量は年間5600万キロワットで約3千の全世帯が使う電力の180%を作り出し、今や多くの観光客が訪れています。要因は「ミルクとワイン」に「自然エネルギー」が加わり、町おこしを後押ししたと言われています。
 県は自然エネルギーの積極的な活用を観光振興とも結びつけたものに発展させるよう検討してほしいと思いますがいかがですか。知事お答えください。

<環境部長>
 自然エネルギーの普及促進に関するお尋ねでございます。
 まずこれからのエネルギーのあり方は地域分散、地産地消型への転換が求められております。太陽光、小水力、木質バイオマス、地熱など本県の強みである豊かな自然エネルギーを活用した地域づくりを市町村、企業、NPO等と様々な  主体と連携しまして「1村1自然エネルギープロジェクト」等によりまして、先進的な取り組みをすすめてまいります。
 また2点目の自然エネルギーの目標についてであります。自然エネルギーの固定買取価格の制度の施行、これは今年の7月と予定されているところでございます。従いましてこの買取価格は、その周知期間も考慮して事前に決定されるものと見込まれております。県といたしましては、県内の自然エネルギーのポテンシャルまた買取価格を踏まえた今後の導入可能性について検討を行なったうえで、自然エネルギーの導入目標を織り込んだ先進的なエネルギー需給戦略を来年度中に作成してまいる方針でございます。
 そして、この戦略策定のなかでエネルギーの種類ごとの目標やまたこの目標を達成する為の体系的な推進方策について具体化をはかるとともに、お話のエネルギーの導入によるCO削減量についても示してまいりたいと考えている所でございます。

<阿部知事>
 自然エネルギーの普及促進についてのお尋ねでございます。
 まず、太陽光発電助成制度、私はあまり積極的でない答弁をずっと繰り返させていただいているわけでありますけれども、もし本当にやるんであればもっとだいぶ前にですね、やらなければいけない施策だと私は正直思っております。いままさに余剰電力の買取価格も21年度の11月から引き上げられ、近年設置コストも下がってきている中で、太陽光発電については着実に設置件数伸びてきているという現状があります。むしろより広い県民への普及をどうするべきかということこそ考えなければいけないわけで補助金出せば確かにその分は拡大しますけれどもそれでは本当に補助金があればやるけれどもなければやらないということであっては、私はいけないというふうに思っております。そういう意味で今回「自然エネルギー信州ネット」これも長野県独自の取り組みだと思います。官民協働でいろいろな地域で取り組みをすすめてもらおうという、いわば土壌作りをしてきているわけであります。そういう意味で、即効的な効果がパッと出てきているわけではありませんけれども、しかしながらこれからの自然エネルギーを拡充していく県、地域をつくっていく上でのベースが徐々に多くの皆さんの参加のもとにできてきているという状況です。そうした自然エネルギー信州ネットの中で、初期投資ゼロで毎月一定額の支払いにより導入を可能とする太陽光発電のビジネスモデルの研究もすすめているところであります。自然エネルギー自給コミュニティー創出支援促進事業、今回の予算の中でもご提案をさせていただいているわけでありますので、むしろ単純に補助金を出してということよりは新しいビジネスモデルこれは民間のみなさんの智恵と力も借りながら形づくることによって太陽光発電の導入促進をはかっていきたいというふうに考えております。
 次に、観光振興と結びつけた取り組みということであります。私も長野県のイメージは、非常に美しいクリーンな県というイメージがありますので、そういう意味で自然エネルギーと結び付けていくことは大変重要だというふうに思っております。私もだいぶ前になりますが葛巻町を訪れて風力発電とかバイオマス発電とか、そうしたもの見させていただいたところでありますけれども、環境意識の高い旅行者層の誘客を行なっていくということは、これは長野県にとっても重要だというふうに思っております。
 今回の予算の中にも例えば電気自動車を活用した観光地づくり、都会から来てもらえるためにはNEXCO等の協力も得なければいけないわけでありますけれども、そうしたものをすすめるとともにエコツーリズムをはじめとして、環境と観光を結びつけるそういう視点を意識した取り組みを支援充実させていきたいというふうに考えています。

<藤岡議員>
 是非、自然エネルギー先進県にふさわしく普及促進のための数値目標を来年度できるだけ早く定めていただくよう要望します。
 自然エネルギーを観光振興に結びつける政策ですが、石川県の例も紹介しますと、奥能登で再生可能エネルギーの普及に向けたモデル事業を始めるそうです。能登町の農家民宿群に小水力発電を導入し電気の「地産地消」に取り組み、世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」を、自然エネルギー先進地とすることでイメージをさらに高め、観光客拡大を目指しています。さらに小水力発電のモデル導入を環境教育のモデル教材として売り込み、修学旅行などの招致も検討しています。そのような計画も共に検討していただくよう要望します。
 個人向けの太陽光発電設置のための補助制度導入についてですが、知事は「だいぶ前に導入すべき制度だった」とのことですが。全国流れとは全く違います。現在都道府県で実施しているのは38県と毎年増えています。昨年から新たに3つの県が個人向けの住宅用太陽光発電設備導入のための支援事業を始めています。導入していないのはたったの9県です。一桁です。
 ちなみに、大阪府は融資制度を平成24年度から実施すべく現在議会で審議中だそうですが、もしこの議案が成立すれば実施県は39県となり、残り8県となります。
 ちなみに長野県は8つの県に囲まれていますが、山梨・新潟・群馬・埼玉・富山・静岡・愛知の7つの県で補助があります。導入していないのは岐阜県と長野県だけです。
 他県の様子を調べて、わかったことは個人向けの補助制度もドンドン広がっていることです。知事の消極的姿勢は、自然エネルギー先進県を目指す姿勢ではないと私は感じてしまいますが、ぜひ県が補助制度を導入すれば市町村も個人も励まされます。ぜひもう一度検討できないのか、知事の見解を求めたいと思います。

<阿部知事>
 太陽光の助成制度についての再度のお尋ねでございます。
 県としていろんな行うべき事業がある中で、私はですね、先ほど特別支援学校の話もございましたけれども、いろいろ優先順位をつけていく中で、やはり自然エネルギーの普及拡大というのは補助金頼りじゃない制度をつくっていく、確かに多くの県がやっているということは、それはその通りかもしれませんけれども、しかしながら、補助金頼みでの制度ということではなくて、やっぱりこれは地域の自立をうながすというのが私の自然エネルギー普及拡大の趣旨でもありますから、そういう意味で新しい仕組みづくり、ビジネスモデル、こっちのほうがよほど難しいわけでありますのでぜひそちらのほうに力をいれた取り組みをすすめていきたいというふうに思っております。

2 東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染の問題について

<藤岡議員>
 つづいて原発事故による放射能汚染の問題に移ります。まず、先月28日に佐久地域で行われた放射性物質を含む廃棄物の埋立問題についての県主催の説明会について質問します。「約300人の参加者からは不安の声が相次いだ。」と様子が報道されました。質問時間に入ると次々と手があがり、延長して行われました。発言した8割9割の方から「埋立されることへの懸念」「納得できない反対」との意見であったと、私は受けとめていますが、説明会で出た意見をどのように受け止めているのか、現在の対応及び、今後住民の合意と納得を得るために、第2回目の説明会を開催されるかなどの検討をされているのか、環境部長お答えください。
 当日の説明会に知事も副知事も参加されませんでした。美しい自然や景観をもち、観光客も多く訪れる長野県で初めて放射性物質を含む廃棄物埋立の受け入れを始めた佐久地域で、第1回目の県主催の説明会が10ヶ月経ってようやく開催されたわけです。東信地域の不安解消のために、知事自ら直接説明にこられるものだと残念に思いました。知事として県民の思いをどのように受けとめ、今後の対応をどうされるのか。答えてください。

 つづいて、全国で問題になっている震災ガレキの広域処理について質問します。東日本大震災で発生した岩手、宮城両県の震災がれきの一部を両県外で受け入れるよう環境省が呼びかけている広域処理についてですが、被災地の復興のためには震災ガレキの処理は不可欠であり、通常の廃棄物については全国的に協力することが望ましいことと考えています。
 しかし原発事故によって問題は複雑深刻化しています。岩手県・宮城県の災害ガレキについても、放射能汚染されたものがあるからです。放射性物質を含むガレキに関しては、県民が安全性や環境の面で様々な懸念を持つことは当然です。そうした声に県は誠実に応える必要性があり、慎重な対応と住民合意が必要と考えます。
 県民の不安の原因は「原子炉等規制法では放射性物質として扱わないごみの基準を1キロあたり100ベクレル以下と定めているが、震災後に国が示した指針では焼却灰の埋め立て基準は同800ベクレル以下」という国の2重基準と、原発事故対応をめぐる国への不信感にあることを指摘します。
 こうした状況を踏まえ、県として放射性物質を含む震災ガレキについて、どのように対応するつもりか、見解を知事に伺います。

 次に、原発事故による損害賠償の問題について質問します。前回の議会でも、県旅館組合の皆さんから、原発事故による損害賠償に関する政府の支援で、長野県も対象県に加えて欲しいとの要望を紹介しました。
 県内各地で「干ししいたけから」「薪から」「堆肥に使う予定の落ち葉から」放射性物質が検出されるなどの被害、除染作業、廃棄物の処理、そして風評被害も含めて様々な形での被害が出てきています。
 すでに県は「放射線の相談電話の窓口」や「放射性物質に関する相談窓口」などを開設され大変評価される対応をされていますが、賠償問題での相談窓口も必要になってきたのではと考えます。栃木県では東京電力による損害賠償に関して、観光事業者や商工業者等を対象とした県の相談窓口を開設しています。長野県も同様の対応を行い、国や東電に賠償責任を果たさせるべきだと考えますが、知事の見解を伺います。

<阿部知事>
 放射能汚染の関係でございます。
 先日の説明会に起きまして放射性物質を含む廃棄物の受け入れについて、様々なご意見、不安の声が寄せられているというふうに報告を受けております。
 国が示している考え方について必ずしも地域のみなさんの十分な理解がない状況ではないかというふうに改めて感じております。昨年の12月12日に県として全国知事会としては1月の6日に、処理の安全性基準の根拠を明確に示すよう、国における責任ある対応を求めてきている所であります。県としても国が示した基準だからいいですよというふうに単純にやっているわけではないわけでありまして、独自のモニタリング等も行なっているわけでありますので、そうした県としての取り組みも行う中で県民の皆さんの安心安全というものを確保していきたいというふうに思っております。
 それから災害廃棄物の広域処理についてであります。
 災害廃棄物の処理につきましては、放射性物質についての不安等から処理がなかなかすすんでいないという状況にあるわけであります。これは、国において国民の理解が得られるように十分な説明を尽くしていくというということが、私は重要だと思いますし、一定の考え方示しているわけではございますが、そもそも放射性物質は、原子力事業所以外に存在することをいままで想定していなかった、国の法体系自体が想定していなかったわけでありますから、そういった意味ではよりきめ細かな対応というものが私は必要だというふうに思っております。もとより東北地方に対する協力支援というのは、これは行なっていくことは日本全体で東北の復興を支えていかなければいけないわけでありますが、長野県の状況を申しあげれば県内の廃棄物からも放射性物質が検出されているという状況の中で、まだその一部の処理をどうしようかと現状もあるわけであります。まずは県内の汚染廃棄物の処理を優先的に行ないたいというふうに考えております。
 それから、損害賠償問題への県の関与ということでございます。
 原発の損害賠償手続き、被害を受けた方が東電に直接損害賠償請求を行なうという当事者間交渉を原則としているわけでありますが、ただ農協等の生産者団体とか中小企業団体が損害賠償請求のとりまとめを行なうということはできる形になっております。そうした観点で、例えば本県でも牛肉の風評被害についてはJA長野県グループが協議会を設立して賠償請求の準備をすすめているわけでありますが、そうした所に県もオブザーバーとして参加していっしょになって取り組みをしてきているところであります。また、きのこについても、これは県が説明会を開催して東電が培地等の検査費用の賠償をする方針を示したところでありまして、今後請求が行なわれる見込みであります。
 県がすべて取りまとめると、これはなかなか正直言って難しいというふうに思いますが、いま申しあげましたように関係団体と連絡調整をはかって、国や東電に対して早期に賠償を行なうよう強く求めていくという、いっしょになって取り組んでいくということはこれからも行なってまいりたいというふうに思っております。

<環境部長>
 先般県が主催した説明会についてのお尋ねでございます。
 1月28日に佐久合同庁舎で開催をいたしました放射性物質を含む廃棄物の埋立処分に関する説明会に於きましては、約300名もの多くの住民の方にご参加をいただき、その関心の高さを実感したところでございます。
 この説明会の席では、放射性物質を含む廃棄物の受け入れにともなう安全性への不安や、健康面、周辺環境への影響懸念するご意見など多く出されたところでございます。
 このため継続的にモニタリング実施をし、その結果を公表することによりまして周辺住民の方の安全安心の確保をはかることが重要であると改めて認識をしたところでございます。
 そしてまたその一環として説明会での中でご要望もございまして、2月18日に県が実施をするモニタリングにつきまして、約50名の住民の方の立会いのもとに実施を致しました。敷地境界やあるいは場内における空間放射線量と実際に一緒に確認をしていただきまして安全性についてそれなりの理解がいただけたのではないかと思っているところでございます。
 一方、その説明会の中に於きましては施設の周辺で農業を営んでいる方からは、むしろ風評被害を心配する声、あるいは処分場のことだけではなくて内部被爆による健康不安の声など様々な意見がございました。従いまして、次回の説明会につきましては、どのような範囲で、どのような方法で開催するのがよいのか、検討してまいりたいと考えている所でございます。

<藤岡議員>
 今後も様々な賠償問題が出てくると予想されます。被害にあわれた方々に寄り添う立場で、窓口設置も含めた対応をぜひ検討していただくことを再度要望いたします。
 広域処理についてですが、放射性廃棄物を移動させることは、それだけ汚染の範囲を拡散することになります。信州の美しい自然や景観、水資源を守れません。放射性廃棄物の処理はできる限り現地で行うことが鉄則です。「東北を助けたい」という意見もありますが、日本列島全体を放射性物質汚染地帯にしてしまうおそれもあり、慎重に考える必要があります。
 今月19日、新潟県知事が「どこに市町村ごとに核廃棄物場を持っている国があるのか」「国が環境整備をしないといけない。国際原子力機関(IAEA)の基本原則で言えば、放射性物質は集中管理をするべきだ」とコメントしていることも紹介しておきます。
 被災地への支援「東北を助ける」支援は、福島の子どもたちを空気と水の綺麗な長野県に一定の期間受け入れるなど、別の形で積極的に行っていくべきだと考えます。これからも慎重な対応を強く要請します。
 佐久地域での放射性物質を含む廃棄物埋立問題については、地域の不安が解消されないまま事態がすすんでいます。地域住民の合意と納得をえる対応をしていただくよう再度強く知事に求めます。
 長野県で出た放射性物質を含む廃棄物に関しては、しっかり管理ができる処分場に一時保管を行い、将来、国と東電の責任で最終処分場を設置させ、その施設に県内の廃棄物を運ぶことを提案します。
 県外の放射性物質を含む廃棄物については、説明会の様子を見ても受け入れ拒否は当然だと考えますが、知事いかがですか。
 第二回目の説明会を開催し知事みずから直接説明に来るべきではないでしょうか、もう一度答えてください。

<阿部知事>
 放射性廃棄物の受け入れの問題については、まずは県内でも放射性物質を含んだ廃棄物が生じている状況ですから、それへの対応、このこと自体も関係の皆さんのご理解を得なければすすめられないというふうに思っておりますので、まずはそれをしっかりと対応していきたいというふうに思っております。
 被災地からの瓦礫の受け入れというのは、国がよりきめ細かい配慮というかですね、住民の理解、あるいは全国の都道府県の理解が、なかなか進まない要因の一つは、8000ベクレル以上、以下ということで白黒線引きしてしまってですね。8000ベクレル以上は国が責任をもって対応しますと、それ以下のものはこれは普通の廃棄物と同じですと、管理型の処分場で対応して下さいという形になっている訳でありますけれども、先ほど申しあげましたように、かつてはそんな基準はなかった、事故後そういう基準になっている訳ですから、ただでも放射性物質に対する不安感がある中で、もっとていねいな対応ときめ細かい説明というものを行なうことが必要だというふうに思っております。こうした点は国にも知事会の場でも私からは直接関係大臣にもお話をさせていただいているところでありますけれども、引き続きそうした考えは国に伝えていきたいと思いますし、ただ放射性物質も、いま県内に存在している放射性物質と同じレベルのものも東北にはいっぱいあるわけでありますので、そうしたものをどうするかということについては、これはまず県内の廃棄物をどうするかということを考えながら視野には置きながら取組まなければならないだろうというふうに思っております。
 いずれにしても国全体あるいは政府の責任をもってですね、もっと真剣に進めていただきたいなあというのが私の率直な意見であります。
 それから、直接、私が出向いて説明会に参加してはどうかというご質問でございます。これは先ほど環境部長からもご答弁しましたけれども、今後どう対応するか、これは住民のみなさんのお気持ちとか、お考えとか、あると思いますので、そうしたものを十分お伺いしたうえで対応を考えたいというふうに思います。

3 水資源保全対策について

<藤岡議員>
 つづいて、水資源保全対策についての質問に移ります。近年外国資本による森林買収を契機として、水資源の保全対策の必要があると佐久地域の市町村からも声が上がっています。県としても地下水保全のための条例制定を含めた対策を検討されるとのことですが、まず実際に外国資本等による地下水の大量取水や汚染などの事例があったのかどうか?環境部長お答えください。
 また、過去に県内でゴルフ場などのリゾ−ト開発や産業廃棄物最終処分場の設置等に伴い、水道水源の保全が問題になる中、多くの県民の皆さんの運動が実り平成4年に長野県水環境保全条例が制定されていますが、現在の状況から見てこの条例に不十分な点はあるのでしょうか。あるのであれば、この条例を改正すればいいと考えますが、環境部長お答えください。
 御代田町では環境保全条例が制定されています。「地下水の保全」という項目があり「地下水を採取するため、井戸を掘削しようとする者はあらかじめ町長の許可を受けなければならない」となっています。許可の基準も「水道法に定める水道事業の水源に支障を及ぼさないこと」とあり、取水規制もあります。このように進んだ環境保全条例を制定している自治体を参考に、県の条例でも同様に踏み込んだ対応をお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。知事お答えください。

<環境部長>
 地下水の大量取水の事例、さらには水環境保全条例の改正についてのお尋ねでございます。
 まずこの外国資本等による地下水の大量取水の事例、これにつきましては県内において現時点でそのような事例は把握しておりません。
 次に水環境保全条例の改正についてでございます。現行の長野県水環境保全条例、これは水環境保全総合計画の策定、あるいは水質の監視や水道水源保全地区の指定などによりまして水環境の保全対策の総合的推進をはかることを目的に平成4年3月に制定をいたしたものでございます。この条例では保全が必要と認められる水源につきまして、市町村長からの申し出によって水道水源保全地区に指定をし、開発行為等から水源を保全する等を目的に、ゴルフ場建設など一定の開発行為を規制いたしております。しかしながら今日的な課題となっております外国資本等による水源地の独占、あるいは水ビジネス等による大量取水による水資源の枯渇、こういった事態には対応できない内容となっております。
 こうしたことから、あらたな制度設計にあたりましては環境審議会の中で法律の専門家にも入っていただきながら、どのような内容を盛り込むのか、まずそれを議論していただき、そしてその上でそれにふさわしい条例の形態、お話にございました現行条例の改正でいけるのか、あるいはあらたな条例化が必要なのか、こういった点につきましてもあわせて検討してまいりたいと考えているところでございます。

<阿部知事>
 水資源の保全に関係して、県の条例でも踏み込んだ対応をというご質問でございます。私も長野県の水資源、これは県民共通の貴重な財産だというふうな観点から、その保全、できる限りの対応をしなければいけないというふうに思っております。
 そういう意味で、今後環境審議会で検討してもらいますけれども、これは規制のあり方を考える上で現行法制度との兼ね合いの中で、どこまで踏み込めるかということを、しっかりとご議論ご検討いただくということが重要だというふうに思います。これは条例をつくっても裁判で負けるような話になっては元も子もないわけでありますので、そうしたところの見極めというのもしっかり行なうということが私は重要だというふうに思っております。
 地下水の取水規制については御代田町はじめ45市町村、条例等で対応しているところでありますので、この取水規制については市町村の規制でどこまで対応していただくのがいいのかどうか、広域団体である県レベルで取り組むべきことは何があるのかということを、市町村のみなさんとも十分協議した上で対応していく必要があるというふうに思っています。

<藤岡議員>
 知事はできるだけ「ふみこんだ条例」にと答弁されました。とても賛成ですが、心配な点があります。
 TPP参入で日本の水資源が狙われているのではという問題です。昨年11月参議院予算委員会で自民党の議員がTPPの「ISD条項」についての質問をしました。アメリカの民間企業がカナダ政府に対しミネラルウォータの取引に関し、105億円の賠償を求めた事例を紹介しました。これは、カナダブリティッシュコロンビア州政府による輸出停止措置に対抗する訴訟でした。TPPの取り決めは、国内法では規制することができないという問題提起でした。
 当然、TPPに加入すれば、日本における水資源に関しても同様の問題が発生する可能性があります。水資源保全条例をせっかくふみこんだものを作ったとしても、この条例が「非関税障壁」だと、外国資本に訴訟を起こされ、水資源を奪われてしまうかもしれません。こうした問題がすでに国会で議論されているわけですから、しっかり県としても情報収集を行い県民に問題提起すべきです。
 TPPをとるのか?水資源を守るのか?本気で水資源を守る気があるなら代表質問で、このTPPの問題について情報がないからわからないといった、私はのん気な答弁だと感じてしまいましたが、こういった答弁が許されるのかと思います。国に対しておかしい。ISD条項は許されないと強く知事は言うべきではないでしょうか。知事にこの問題についての見解を最後に求めて、私の一般質問を終了します。

<阿部知事>
 TPPについては、これは私どもとしても、できるかぎり情報収集をしっかりしていこうというふうに思っております。その上で県として国に対して言うべきことについてははっきり物を言っていかなければいけないというふうに考えております。