2010年6月定例会 一般質問 6月23日 びぜん光正

  1. リニア中央新幹線について
  2. 大企業による下請け切り対策と雇用の確保について
  3. 障害者差別の根絶をめざして
  4. 県道床尾大門線の大門JRガードでの死亡事故対策について

1 リニア中央新幹線について

<びぜん県議> 東海旅客鉄道株式会社(以下JR東海)は2007年4月、リニア中央新幹線の東京―名古屋間を2025年度に開業する意向を示し、5兆1千億円といわれる建設計画を会社負担によって行う方針を決定しました。この間議会でもルートについての論議が先行してきましたが、世界最先端の技術による莫大な資金が必要な事業には多くの問題点が指摘されています。
 先ず、5兆1千億円の建設費用はJR東海による負担としても、国交省の鉄道局長の私的諮問機関である「中央リニア新幹線基本スキーム検討会議」は東京大阪間の建設費用は7.7〜9.2兆円、車両費が0.6〜0.7兆円としてますが、とくに東京、名古屋、大阪への乗り入れは地下40メートル以上の軌道の大深度地下敷設であり、莫大なコストの要因と言われています。さらに、長野県でのルートは距離短縮のために仮に南アルプスを貫通するルートをとった場合は、 全線のトンネル率は80〜85%にもなると予測されています。
 また、駅舎についてJR東海は東京から名古屋まで沿線の各県に1駅ずつ中間駅を建設するとしていますが、中間駅の建設費として1駅あたり地上駅は350億円で、地下駅で2200億円との試算を公表しました。ここで問題なのが、中間駅は全額地元負担を要求していることです。そこで企画部長にお尋ねしますが、この地元とはどの範囲と説明されているのでしょうか。また、仮に最短距離で考えると、南アルプスを貫通するルートと言われますが、南アルプスの貫通の許可権者は誰になるのでしょうか、企画部長にうかがいます。

<望月企画部長> リニアについてご質問2点いただきました
 まず中間駅の費用負担に関するおたずねです。
 ここで申し上げたいのは中間駅の建設費用について全額地元負担といっているのはあくまでもJR東海の一方的な主張です。したがって、決定事項ではないということをまずもって申し上げます。しかもお尋ねの地元の範囲につきましてはJR東海もまだなんら明言しておらず、県として正確にお答えできる状況にはございませんが、JR東海は今までの説明の中で、やがてリニアの営業地帯、建設地帯となることを表明している立場から、中間駅設置にともなう具体的な負担については今後協議を重ねていくという形で表明しているため、その過程で一定の考え方が示されてくるのではないかと考えています。
 なお、建設費用の負担問題、中間駅ですけれども、これについては今月4日に開催された国の交通政策審議会の小委員会における沿線地帯からのヒアリングがあったわけですが、長野県からは村井知事、神奈川、山梨、岐阜県、それぞれから知事が出席しましたが、ここも全員そろいまして、JR東海も負担すべきではないかと、中間駅の費用について、こういった意見が出されたところです。
 今後小委員会で議論が続くと思われますが、沿線地域が納得できる考え方を示していただくと期待しているわけです。

 つぎに南アルプスを貫通する場合の許可権者というお話しでございます。
 アルプスを貫通する場合の許可権者ははっきり言ってございません。
 ただ、この場合には様々な許可というものが必要になってくると思われます。
 そこでリニアについての今後の形を述べてみますと、現在進められています審議会の審議を経ましてその答申を受けて国において整備計画が決定されます。そのあと、国からの建設指示にもとづき環境影響(  )が実施され着工にいたると、このような流れになっています。
 そして実際に工事を進める際には自然公園法や森林法、河川法など工作物の新築ですとか、開発行為等を制限する個別の法令等についてそれぞれ所定の手続きが必要になると考えます。
 したがって、現時点では具体的に詳細なルートが決まっていない段階でもございまして、正確なことは申し上げられませんけれども、例えばCルートの場合、トンネルが国立公園の特別地域の直下を通ります。こういったことから自然公園法に基づく、環境大臣の許可、こういったものがまず必要になるし、トンネルの坑口付近、出入り口ですが、そこが仮に保安林に指定されていれば森林法に基づく農林水産大臣、あるいは知事の許可、保安林指定の解除、こういったものが必要になってくるということです。
 この他、トンネルだけじゃなくて、工事用道路も当然必要になってきますので、場合によれは自然公園法、あるいは森林法、河川法、砂防法、こういったものについての知事の許可等も必要になることもありうると考えています。
いずれにしましても着工に向けまして様々な許可等について所定の手続きが必要になるかと、現時点ではこんなふうに想定しています。

<びぜん県議> 先日、共産党県議団は飯田市で開催された、リニア問題シンポジウムに参加しましたが、その中で指摘されている点についてお聞きしたいと思います。
 それは、トンネル掘削自体は技術的には可能ではあるが、全線の掘削に関わる期間と費用はこれまでの同地域のトンネル掘削の経験値からも、発表されたものの倍はかかるといわれます。
 地質的に赤石山地は全域が海底で堆積した粘土や火山砕屑物が複雑な断層関係で折り重なった地質体で、変形して頻繁に繰り返す逆断層が折り重なる地質構造であるといいます。ここに糸魚川―静岡構造線、中央構造線など列島を代表する第一級の構造線が複数並行し、ここに風化しやすく崩れやすい蛇紋岩帯が存在し、難工事が予想されています。またトンネル掘削による膨大な量の地下水の流出と川の枯渇問題、そして莫大な量の排出土の処理も非常に困難であり、単に谷を埋めるような山間地の造成地盤にするようなことは、土砂災害を誘発させる問題にもなるといいます。さらに流出するヒ素やクロムなどの重金属による水・土壌等の環境汚染が危惧され、飲料水や、伊那谷の温泉施設への影響も懸念しています。
 現状でリニア計画は不確かな内容しか公表されずに企業論理で進行しており、通過想定地域とその周辺はリニアに夢と未来を描いていますが、一方で景観や水、土壌などの問題があり、地質環境と自然環境の面からの検証が必要です。そこで事前に県としてアセスを行う考えがあるか環境部長に答弁を求めます。

<和田環境部長> 県として事前にアセスメントを行う必要があるのではないかという質問です。
 環境影響評価は事業者が自ら行うことを大前提としていまして、県が新幹線鉄道の事業体になることは通常想定されませんので県として環境影響評価を行うことはありません。
 また、この議論につきまして、県が事業者に対し事前に環境影響評価を行わせることは事業者に法律と条例の二重の負担をかけることなどから長野県環境影響評価条例は適用しないこととされております。
 なお、環境影響評価方法書や準備所を作成する過程におきまして、地域を管轄する知事が意見を述べることとされておりますので、調査の項目や内容に対し、技術委員会や市町村長等の意見もふまえ、県として必要適切な意見を述べてまいりたいと考えております。

<びぜん県議> ただいまのご説明でありますと、一方的な試算で明言していないということでありますけれども、仮に長野県も地元とする場合に、なんらかのかたちで負担も想定がされてくるかと思います。一般的な駅舎等の建設にあたっても地元、市なりの負担というものが発生しているというなかで、負担割合というものもまだ示されていないとは思いますが、一民間企業の行う事業に対して、莫大な建設費用負担をすることに県民的な合意が得られるのか、疑問を呈したいと思います。実験線の山梨県でも笛吹市での補償は山梨県でも出しているということですが、今後想定される移転などの補償は誰が出すのでしょうか。

 また環境・観光の世界的スポットであるスイスアルプスの南北を縦貫し、2017年完成を目指して建設中の世界一長い57キロの「鉄道トンネル」ゴッタルト ベーストンネル建設はスイス国民の投票で決められたというが、観光・環境立県をめざす長野県としても県民投票で賛否を問う努力をすべきではないか、環境部長に伺います。

<望月企画部長> 移転保障等についてのお尋ねです。
 原則的には事業主体・建設主体であるJR東海がやるものと考えています。

<和田環境部長> 本県の中ですね、特に南アルプス国立公園があるということでございまして、ご指摘のように、自然面でも環境面でも非常に本県にとって関心事であるということは承知しております。
 ただ、ご提案の県民投票ということになりますと、非常に技術的な面から始まりまして、実現性につきまして、やや疑問な点もございますので、わたくしどもとしましては今後の研究課題の1つとさせていただければと思います。

<びぜん県議> JR東海は巨大プロジェクトを進める一方で、中央線とくに木曽谷方面は今では駅員もいない、冬の暖房も撤去された駅がほとんどになってしまいました。報道では伊那市議会でも「飯田線やあずさを含めてどうしていくのかの方が重要」という意見も出ています。これらからも地域住民の足を先ず守ることをリニアの前にやるべきことがあるのではないかと、JR東海に申し入れていただきたいが企画部長の答弁を求めます。

<望月企画部長> 既設の鉄道路線の利便性の向上等に関するお話しです。
 飯田線につきましても毎年地元の要望をお聞きしながら各鉄道会社にお伝えしておりますし、個々にそういった形で徐々にではありますけどもダイヤ等も変わってきているという状況でございます。引き続き要望してまいりたいと思っております。
 また、中央東線につきましては高速化の促進広域の期成同盟会が平成20年にできておりまして、そういった形で年に1度、いろんなご要望をお聞きする中でJR東日本あるいは国交省に強く要請しているところです。
 引き続き、沿線地域の産業経済、あるいは日常生活に欠くことのできない路線でございますので、そういった面からも鋭意努力して参りたいと思います。

2、大企業による下請け切り対策と雇用の確保について

<びぜん県議>  今、安曇野市内でセイコーエプソンの下請け3工場が発注停止を言い渡され、全員解雇、閉鎖に追い込まれる深刻な事態が進行しています。3工場合わせて約200人の解雇者、家族など関係者を含めれば約800人といわれる暮らしに影響する重大な事態となっています。
 そのうちの一社、従業員47人の安曇精工は35年に亘ってセイコー時計のムーブメントの組み立てを行う心臓部の仕事をしてきましたが、そうした下請け企業への仕打ちです。この職場の危機に声を上げたのは労働組合で、3月8日には「あきらめるな!みんなの力を結集しよう」「セイコーエプソンによる安曇精工つぶしを許すな」と立ち上がりました。
 セイコーエプソンは資本金532億円、連結売り上げ高1兆1224億円の大企業です。一方の安曇精工はセイコーエプソンからの下請けの割合は全売り上げの90%を占めており、今回の発注停止により下請け企業・従業員はもちろん、地域経済への著しい影響は計り知れません。
 こうしたことから労働組合は安曇精工経営者を激励しながら、エプソンとの交渉や安曇野市長をはじめ市議会、そして経済産業省や公正取引委員会へも下請中小企業振興法違反で申し入れ、中小企業庁長官にも直接要請を行うに至っています。安曇野市長もセイコーエプソンに対して要請し、安曇野市議会では昨日、同労働組合らが提出した陳情が採択され、意見書が提出されるなど進展しています。

 そこで商工労働部長に以下3点について答弁を求めます。

  1. セイコーエプソンの安曇精工への業務発注撤退に伴う対策について状況をどう把握されているのか、このケースは下請け業者に対する発注量を大幅に変動させないよう配慮するなどとした下請中小企業振興法、また下請の責めに帰する理由がないのに下請け事業者の給付内容を変更させるなどの下請代金支払遅延等防止法のいわゆる下請二法違反ではないのか。
  2. セイコーエプソンに対して関連下請け会社に対する業務の引き揚げの中止と、引き続く業務の確保を求めるよう要請をすべきではないか。
  3.  関連下請け業者に対して新たな仕事や雇用の確保などに県としても支援を行うべきではないか。以上商工労働部長に伺います

<黒田商工労働部長>
 親企業による下請け取引停止への対策と雇用の確保に関するご質問です。
 今回の受注停止の動きにつきましては承知しておりますが、一連の状況につきましては地方事務所、あるいは労政事務所を通じまして情報を収集しております。
 現在は、受注者と発注者の間で発注に関し継続して交渉を行っている段階というふうに伺っています。引き続き地元の窓口となっております安曇野市を通じて情報収集に努める所存です。

 つぎに下請け二法に関するご質問です。
 この法の解釈につきましては、最終的には違法か否かという判断につきましては法制上、主務大臣の判断によるということでありますので、直接立場にないものでありますが、せっかくのご質問でございますので、わたくし個人としては、事実を見ますと、親事業者側から下請け事業者側へ一定の期間を持って取引停止の予告がなされておりまして、また、関係者をまじえて話し合いが続けられているということから、一定の配慮はされているのではないかなと認識しているところです。

 2点目の親事業者に対して要請すべきというご質問です。
 厳しい経済情勢に鑑みまして、県では昨年の12月、そして本年5月、下請け事業者の利益の保護を目的といたしまして、県内の発注事業者あるいは経済団体に対しまして下請け取引の適正化について文書で要請しているところでございます。
 ご指摘の件につきましては、現在、さっき申し上げましたとおり、企業間で主体的な協議が行われている段階でございます。
 また、親事業者が所管いたします中小企業庁へ経過を説明しているということを踏まえまして、県としては引き続き状況を注視してまいりたいと考えています 。

 関連下請事業者の仕事の確保に関しましては、長野県中小企業振興センターの受発注取引推進員、この方が昨年の5月から当該企業を定期的に訪問いたしまして新たな事業分野の活動に協力しているところです。
 こういった関係のなかで発注開拓、あるいは販路開拓に関しましても引き続いて支援してまいりたいと考えています。雇用の確保につきましては、現在交渉が進行中でございますので、長野労働局、ハローワーク、地方事務所等を通じまして情報収集に努め、適時適切に支援してまいりたいというふうに考えています。

<びぜん県議> 今、エプソンは仕事が無いといいながら、従来月産200万個の生産数を300万個に増産するため、現在安曇精工では3月までに打ち切るはずであった仕事を12月まで延期し、この8月からは24時間稼動の2交代制にすると聞いています。このように増産しながら工場の閉鎖をおこなわせるような異常な状態を放置しておくのでしょうか。

 また、04年2月議会では、パナソニック関連企業の閉鎖問題を取り上げた高村議員へ、当時の産業活性化雇用創出局長は、労働者の「最後の1人まで面倒をみるよう企業に要請する」と答えましたが、商工労働部長もこれを食い止めることはもちろん、そのようにしていただきたいのですがご答弁をお願いします。

<黒田商工労働部長>
 個々の企業ガバナンスの問題につきましては県の行政といたしましては特にコメントを差しはさむつもりはございません。
 また、雇用に関しましては、今交渉中でありますが、長野労働局、ハローワーク、地方事務所を通じて十分な情報収集に努めまして適時適切な対応を図ってまいりたいと考えております。

3、 障害者差別の根絶をめざして

<びぜん県議> 先ごろ精神医療4学会は「うつ病などの精神疾患を国家的課題として対策を講じるべき」との公式見解を発表し、統合失調症やうつなど精神疾患の増加を警鐘しています。
 長野県の精神障害者数は02年の19198人から09年の31197人へと1.86倍化となっています。一方でこれに伴う精神障害者保健福祉手帳の発行数の推移は02年の3823人から09年の12274人と交付人数は3.21倍とはなっていますが、精神障害者数からみれば10人あたり2人から4人程度となっています。
そこで健康福祉部長に伺いますが精神障害者保健福祉手帳は交付されると各種サービスが受け易くなったり、2006年からはこの手帳を持っている場合、障害者雇用の対象として企業などでの雇用率に算定されるといいますが、取得が進まない要因はどこにあると考えられるのでしょうか。

 先日私は精神障がい者の方々の集まりに参加させていただき、統合失調症をかかえながらも大手企業に就職されている方の講演を聞きました。自分にあった仕事にやりがいをもち社会参加することで、人間らしさの回復にもつながっている姿に感動しました。同時に参加された同じ悩みを抱える方々からは就職に際し、会社に自分の障害のことをオープンにするかどうかというところが問題となりました。ただでさえ職の無い時代で、オープンにすることで就職を断られてきたことの「差別」を痛いほど体験してこられたことが出され、手帳を持ってもオープンにすることに躊躇する実態がありました。
 そこで、障害のある方がこのような偏見や誤解のために社会生活の様々な場面で不利益を余儀なくされていないか、長野県としても実態調査を行っていくべきではないかと思いますが、健康福祉部長の答弁を求めます。

<桑島健康福祉部長> 精神保健福祉手帳についてお尋ねをいただきました。
 平成22年3月の精神障害による入院患者は4536人、通院患者25645人となっておりまして、ここ数年、入院患者は減少傾向、通院患者はよこばいで推移しております。
 一方精神保健福祉手帳の発行数は13329となっておりまして、このうち平成21年度の新規発行数は1453件です。前年度に比べて28件増加していることから、精神障害者に比べて手帳の数は相対的には増えていると考えています。
 精神疾患は治療により症状が回復することもあり、手帳取得の進み具合、交付具合を的確に判断することはなかなか難しい状況にございますけれども、議員ご指摘の通り、精神障害に関する社会の理解不足によってこの制度がなかなか進まないということも考えられると、否定はできないと考えています。
精神障害者の福祉手帳の問題として、身体障害者手帳や療育手帳に比べまして各種支援策がなかなか遅れているということも挙げられています。
県といたしましては、精神障害者が安心して暮らせるよう、国や県内の公共交通事業者に対し運賃割引の協力を要請するなど、支援策の強化に努めますとともに、心の健康づくりに関する研修会等を通じまして、精神障害者に関する県民や社会の理解の促進をさらに積極的に図ってまいりたいと考えています。

 不利益に関する実態調査をということでご質問をいただきました。
 県では毎年、長野県障害者運動推進協議会をはじめとした障害者団体との懇談会等を通じまして、障害のある方々が地域で暮らしていくうえでの困難さや必要な支援について障害のある方々の生の声を、わたくしどもお聞きする機会が多数ございます。
 各地域では障害当事者や関係機関で構成します自立支援協議会におきまして、障害のある方々の実情を把握しているところでございます。
 さらに加えまして県下10圏域に設置されています障害者総合支援センターにおいても、地域で暮らす障害のある方々のさまざまな相談に応じています。
 ちなみに21年度は14300人の方々からのべ11万4千件あまりの社会生活の心配ごと、権利擁護に関すること、教育、就労に関する相談などございまして、戸別訪問を行うなどより個々の障害者の方によりそった対応をさせていただいております。
 このように県ではさまざまなチャンネルを通じまして、障害のある方々のニーズを把握してきたところです。例えば、金銭管理が苦手で、地域生活が困難であるとか、あるいは悪徳商法の被害についての相談等を聞くところでございまして、相談活動を通じて成年後見人制度の利用に結びつけるなど、障害者が社会生活上で不利益を被らないよう取り組んでまいりたいと考えます。

<びぜん県議> 精神障害者の判断が非常に難しいということも分かりますし、いきつくところは障害者の権利をいかに養護するかということであろうかと思います。障害者の権利について国連の「障害者権利条約」は08年5月に正式に発効しました。日本でも早急の批准が求められ、日弁連などの取り組みも強まっています。同時に地方自治体でも取り組みがはじまっています。千葉県では「誰もがありのままにその人らしく地域で暮らす」を実現するためには、県民全体で不利益の解消に取り組むよう、共通理解の醸成やルール作りをしようと2006年、全国に先駆けて、「障害のある人も無い人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」を制定・施行しました。今年北海道でも「北海道障がい者条例」が施行され、さらに続く県が出てきています。そこでこれらの先進事例に学び、長野県でも条例の制定をすべきと考えますが、健康福祉部長の答弁を求めます。

<桑島健康福祉部長> 障害者差別を禁止する条例の制定についてお尋ねをいただきました。
 障害を理由とする差別を受けることなくそれぞれの人が尊厳を重んじられ、自らの能力を最大限に発揮することができ、障害のある人もない人も誰もが地域で安心して暮らすことができる社会の実現をすることが障害者施策の基本と言うふうに考えます。しかしながら、障害者に対する理解はまだ十分とは言えず、障害者が暮らしにくい面があることも現実でございます。
 障害者の差別を禁止し、その権利を保障するためには基本的には法律の整備が必要であるというふうに考えまして、現在国の障害者制度改革推進本部において障害を理由とする差別禁止を、これは仮称でございますが、平成25年度法案提出にむけて検討が進められているというふうに聞いております。県としてはこうした動向を注視しているところでございまして、ただちに条例を制定するというところではなく、相談支援の充実を図り、障害者のニーズにきめ細かく対応するとともに、障害者週間や障害者の地域生活を支援するためのフォーラム等によります広報、啓発活動を通じた相互理解の促進を積極的に推進してまいりたいと思います。

4、県道床尾大門線の大門JRガードでの死亡事故対策について

<びぜん県議> 塩尻市内の県道床尾大門線、いわゆる旧中山道ですが、交通の要衝として木曽地域と塩尻市中心部、さらには中京地域から諏訪方面への車両の流入も多い県道です。この県道の最も狭隘であるJR中央線のガード部において、5月9日に死亡事故が発生してしまいました。亡くなられた方のご冥福を祈りながら質問します。
 この問題について私は04年06年にもとりあげましたが、同JRガード部について当時の土木部長はここについては「交通安全対策で対応する」と答弁され、蛍光灯の増設や歩道を1.5メートルにしてポールを設置していただきましたが、一方の車道部分は3.9メートルと一層狭くなり、片側交互通行になっています。
 5月9日、この拡幅された歩道上を自転車で走行中のお年寄りが車道側に転倒し走行中の軽トラックに衝突して亡くなられました。統計データでは同箇所での人身事故はここ10年余りで9件あり、今回初めて死亡事故が発生してしまいました。道交法の緩和で交通弱者による歩道の自転車走行が可能になったそうですが、今回の事故をふまえて同地点の安全対策をいかにお考えか県警本部長の答弁を求めます。

 また結果的にこの間の交通安全対策で対処をしていただきましたが最悪の死亡事故になってしまったことについて道路管理者の建設部長はいかにお考えか答弁を求めます。

 従来より私はガード部の拡幅を提案しましたが、事業化には多くの課題があるとの答弁でしたが、今回の死亡事故を契機に、求められている車道と歩道の分離 をすることが必要であると考えますが、そこで歩行者用トンネルの設置を実施し、歩行者の安全確保と同時に通勤時間帯の渋滞と片側交互通行の解消をはかるべきであると考えますが建設部長のお考えを伺います。

<小林県警本部長> 5月9日、塩尻市大門(  )におきまして発生いたしました交通死亡事故の対策等についてご質問をちょうだいしました。
 ご指摘の交通事故の事故発生現場におきましては、これまでも歩行者や自転車の安全を確保するため、道路管理者において、樹脂ポールの設置とカラー舗装により車と歩行者の通行部分を明確にするなどの安全対策がとられておりますが、本県死亡事故を受け、あらためて、本年5月25日、再発防止策を検討するための現地診断を、地元警察署、建設事務所、塩尻市、地元区長、交通安全協会のみなさまにお集まりいただきまして、実施いたしました。その際、出席者からは、歩道と車道の分離、歩道の拡幅、段差の解消といった意見が出され、道路管理者において、すでに段差の解消を図るなどの措置が取られていると承知しております。
 今後とも関係機関と連携を図りながら、交通事故抑止のための諸対策に取り組むとともに、本年は、本件事故のように高齢者が犠牲となる交通死亡事故が増加していることから、特に高齢者の死亡事故防止を重点として交通安全活動を推進してまいる所存です。


<入江建設部長> 県道床尾大門線大門JRガード下において発生した死亡事故に関してのお尋ねです。
 平成18年当時、地元の皆様からいただきました大門JRガードの交通安全対策に関するご要望に基づきまして、道路管理者として各対策を実施してまいりました。
 具体的には、歩道部を0・5メートル拡幅、車道と歩道を分離する樹脂ポールの設置、歩道舗装の滑り止めカラー化、および、車道外側線のしんどうタイプ化など、考えられる安全対策について、精一杯努めてきたところであります。
 このようななかで今回死亡事故が発生してしまったことについては誠に残念なことであり、亡くなられた方に対し、心からご冥福をお祈りいたします。

 次に、根本的安全対策に関するお尋ねです。
 今回の死亡事故を受けまして、さる5月25日に地元警察署、地元関係者の方々、県の松本建設事務所が合同で事故現場の確認と対策の検討を行いました。
 このなかで、道路管理者は歩道入口の段差解消、樹脂ポールの修繕、ガード内の照明の改善などの対策を行うことといたしました。
 この方針に基づき、すでに歩道入口の段差解消に着手しており、残る対策についても迅速に対応してまいります。
 なお、歩行者用トンネルの設置につきましては現地がJR塩尻駅に近接し、きどうじきが広いことから、延長の長いトンネルになることが予想され、利用者の防犯対策や財政上の問題など課題が多く、現時点においてはきわめて難しい状況と考えております。
 このため、県といたしましては、現存の安全対策に全力を尽くしてまいります。

<びぜん県議>  このガードは非常に古い造りでありまして、先ほども耐震の橋梁の話がありましたが、半分以上はレンガ造りであります。老朽化しているということも含めて、耐震と言う観点からも早急な取り組みが必要ではないかと思いますが、 これについての建設部長の再度の見解を求めまして、私の質問を終わります。

<入江建設部長> このJR橋に関しましてはJRの所有物であるため、耐震対策に関してはJRが責任を持つと考えていますが、必要があれば、JR等とも相談させていただき、必要な措置を対応させていただきたいと考えています。