2009年9月定例会一般質問 9月29日  和田あき子

1、 浅川ダム建設中止について

2、森林の災害防止機能を高めることについて

3、農業再生、食料自給率の向上について

1、 浅川ダム建設中止について

(1)入札の中止について

<和田県議>
 鳩山内閣の発足直後、前原国土交通大臣が国直轄ダムにとどまらず、全国143の国庫補助事業で計画、建設中のダムおよび導水路を含めて見直しをする方針を示しました。この方針を受けて、改めて浅川ダム計画も見直しの対象にするという報道がされました。私たち日本共産党県議団は長年にわたって住民のみなさんとともに浅川ダム建設に反対をしてきたことが、ダム本体入札直前で見直しされる可能性ができたことを歓迎するものです。
 知事および建設部は総選挙後、9月7日に行った共産党県議団とトライアル信州の「浅川ダム入札手続きの中止を求める申し入れ」、また10日の共産党県議団の「9月議会前の申し入れ」の段階では「計画通り粛々と行う」として私たちの申し入れ当日の9月10日に浅川穴あきダムの工事契約の入札公告をしました。しかし、鳩山政権発足直後の18日に前原国土交通大臣が、全国143ダム事業の見直しを表明したことで、状況は流動的で今後の見通しが明らかになっていません。現段階でこのまま10月に入札を行う予定を一旦中止するべきではないでしょうか。建設部長に伺います。
<入江建設部長>
 和田県議から3点ご質問をいただきました。順次お答えさせていただきます。
 一点目の浅川ダムの入札に関するお尋ねでございます。浅川の治水対策につきましては、県は平成12年にダム事業をいったん中止し、その後住民参加、また学識経験者のご意見も伺いながら、森林整備や遊水地、ため池貯留、放水路など、様々な治水対策を立案し、検討を行ってまいりました。その結果、確実性、経済性、効率性に優れ、自然と調和する最善の治水対策として、治水専用のダムと河川改修を組み合わせていくことがもっとも望ましいという判断に至ったわけでございます。現時点では、現在進めております、浅川ダム建設事業を予定通り進めることとしております。
(2)ダムに依らない治水のあり方について

<和田県議>
 そもそも、村井知事以前の県政で議会や専門家・住民参加で議論に議論を重ねてダムに拠らない治水すすめてきたことが、村井知事の下で急転直下。「穴あきダム」へと方針を転換した経緯については、県民は説明を受ける機会がないまま、例えば浅川の流域協議会などの開催を求めても一向に開催されないまま、浅川穴あきダムの計画は「ダム建設ありき」で手続きがすすめられました。多くの流域住民はダム建設について反対や疑問、不安を持っています。
また「浅川穴あきダム」本体発注、建設着手するとして今年3月の予算議会には、工期は平成21年度から28年度、今年度は17億円、来年度以降の予算として債務負担行為120億円が出されましたが、その段階でも昨年行われた水理模型実験の結果報告が委託業者からされず、詳細設計も出されない。まったく詳細が示されないまま今年度本体発注をする予算だけは計上するなど、強引にされてきました。
 「浅川穴あきダム建設」計画を白紙にもどし、新河川法の精神で住民参加でダムに拠らない治水のあり方を考えるべきではないでしょうか。
<入江建設部長>
 二点目の住民参加による治水対策の検討に関するお尋ねでございます。
 浅川につきましては、先ほど申し上げました通り、森林整備などの様々な治水対策につきまして、住民参加、学識者の参加により検討会を行ってまいりました。平成13年から平成14年にかけましては、長野県治水・利水ダム等検討委員会の浅川部会に特別委員として、浅川流域に関係する住民の方に入っていただき、ダムあり、ダムなしを含め、検討をしていただきました。また平成15年には、浅川の治水・利水対策につきまして住民と行政がともに考えていくことを目的に浅川流域協議会を設置し、現在まで17回開催し、その中で委員ご指摘のダムに依らない河川改修原案、および流域対策原案についても検討をしてまいりました。

 浅川につきましては、このように住民参加のもと、様々な治水対策を検討し、そして国との協議を進めてきたところでございます。その結果、ダムに依らない治水対策では実効性のあるものに至らず、現在の治水専用ダムと河川改修による組み合わせが最善の対策であるという結論になり、その後公聴会や流域協議会などの開催などにより、地域住民の意見を伺ったうえで、平成19年8月に河川整備計画の認可を受けたところでございます。
(3)河川管理予算の増額について

<和田県議>
 また、国政の転換を機に、県の厳しい財政、限られた河川予算のなかで、果たしてダム建設が最優先で行わなければならない事業なのか。治水対策の優先順位・内容を検討する機会と捉えるべきではないでしょうか。
 国レベルの一級河川の河川整備計画―信濃川水系千曲川でも30年確率です。その30年から40年確率での河川整備の進捗は、全国では6割程度といわれていますが、県内は4割にとどまっているとお聞きしています。
 今年の夏の諏訪地方で被害が発生した降雨災害や長野地域でも戸隠や信濃町など各地の河川で災害が発生しています。県内全体の河川改修や治水対策をする上でも、100年確率での浅川ダム建設が最優先、重点的にされなければならない事業とは思えません。
 県が管理する一級河川の維持管理予算の増額を行い、堤防の改修・修理、河川敷内の土砂の浚渫、流下能力を高めるために草木の除去など、日常のこまめな管理が必要です。
 日常の河川管理を含む河川改修・維持予算の必要性について、建設事務所では「維持管理費等の予算執行にあたっては、緊急度の高いものから対応し、効率的・効果的な執行に務めておりますが、予算の必要額は年々増加傾向にあるため、サービスレベルの維持に苦慮していると問題点が示されています。例えば、長野建設事務所の河川維持費は、平成17年度に1億2,194万円が平成20年度はわずか7,865万円と、4年間で6割も減少しています。
河川予算の優先順位も長野県全体の必要性・緊急性を冷静に検討し見直しをするべきと思います。建設部長にお伺いします。
<入江建設部長>
 続きまして、三点目の河川の維持管理予算に関してのお尋ねでございます。河川の維持管理予算は、河川に堆積した土砂の除去、また河川内の立木伐採、除草などを行うためのものであり、河川の状況などを把握する中で、治水機能確保などを観点から優先順位を検討し、順次事業を実施しております。
 この河川の維持管理にかかる予算につきましては、毎年度おおむね5億円程度の予算を計上しており、県全体また建設部としての予算の規模が減少傾向にあるなか、ちなみに現在はピーク時の平成7年度の時の半分以下の予算となっておりますが、平成21年度当初予算においても維持管理予算につきましては、平成7年当時のピーク時の予算を上回る5億8000万余の予算を確保しております。また、今県議会においても、補正予算に県単維持費として、4億9000万余の増額をお願いしておりますが、これまでにも各年度の支出の状況を踏まえ、必要に応じ補正予算を計上し、適切な維持管理に努めてきております。今度につきましても、河川改修、ダム建設など、必要な治水対策を確実に進めるとともに、河川施設がその能力を十分に発揮できるよう、河川の維持管理につきましても、積極的に取り組んでいきたいと考えております。
<和田県議>
 穴あきダム計画になってからは、住民参加の十分な議論はされていないと申し上げております。来年度予算が不明なまま、ダム本体100億円の予算、これを入札を行うという先の見通しが不明なままで行えば、参加事業者に対しても、不誠実と思います。
 長年にわたり省庁ごとに予算確保のため事業を作り出し、ダムなど計画当初の目的が社会情勢・社会環境の変化にかみ合わなくなっても、見直し・中止をせず、住民の疑問や反対に耳を傾けることもせず強引に進める。こういう今までの公共事業のあり方が問われ、国民の強い批判で政権が変わったということを県は受けとめるべきと思います。

2、 森林の災害防止機能を高めることについて  

(1)間伐の遅れた森林への対応について

<和田県議>

 次に、2006年7月や今年8月の豪雨災害では間伐が遅れた森林が被害を拡大させたことについてお伺いします。
昨年度、耕作放棄地全体調査が行われ、長野県では耕作放棄地は15,000ha余、そのうち森林・原野化して農地に復元して利用することが不可能とされているのは6,600ha余と4割を超えています。この森林・原野化した農地というなかには杉やカラマツなどを植林して森林の状態になっている箇所が見受けられます。耕作がされず地目が農地のままで、本来やってはならないがカラマツなどが植林されているところで、間伐が遅れた森林がどの程度あるのか、農政部長にお伺いします。
<萩原農政部長>
 耕作放棄地の面積についてのお尋ねでございますが、昨年度市町村が実施いたしました耕作放棄地全体調査において、森林・原野化しているなど、農地として復元して利用することが不可能な土地と区分されました面積は、6,626haとなっております。
<和田県議>
 ただ今、ご答弁6,600ha余と。その中で、カラマツなど植林されているものがどの程度あるのか、これについては、正確に全体がつかまれているということではないようであります。林務サイドでも森林税導入に際して、調査を若干した経緯はあるのではないかと思われますが、農政か林務か、いずれにしても問題点を明らかにして、対処していくことが大事ではないかと思います。そのために実態調査をする必要性があると思います。この点を林務部長にお聞きしたいと思います。
<轟林務部長>
 農政部長がお答えしました耕作放棄地の6,626haのうち森林化になっている部分の実態調査をしてはどうかとのご質問でございます。これにつきましては、農政部が6,626haにつきまして、今後農地として管理するかどうか、今後各市町村と連携して調査をし、進めることになっておりますので、この調査を農政部と連携しながら、調査結果を踏まえた中で検討していきたいと思っております。
(2)「災害に強い森林づくり」について

<和田県議>
 2006年7月豪雨によって県内で尊い命が失われ、人家を飲み込んだ土砂災害から、「災害に強い森林づくり」のため県と関係研究機関で設置された「森林の土砂災害防止機能に関する検討委員会」の委員長をされた信州大学農学部の北原教授から先日、石坂議員・小林議員と一緒にお話をお伺いしました。そこで、岡谷市湊地区 小田井沢周辺の事例を示して、比較的集落に近く、傾斜が緩い斜面は、過去に耕地として使用されていたところが多く、耕作の終了とともにカラマツ等を植林したまま放置されて荒廃森林となっている。このような森林は耕作地由来の区画が小さい個人所有地であり、地目は畑などのまま推移し、整備から取り残されてきた場合が多く、平成18年7月豪雨で災害が発生、または災害を助長してきたと指摘されています。
 また、北原教授は適切な樹種と適切な管理がされている森林は災害に強く、発生した土石流を受けとめる力もあること」など、災害防止のためにも集落周辺の森林化している個人所有の小さい区画の耕作地についても、間伐など森林整備をする必要があると指摘されました。
 林務部が県内各地で取り組みを進めている里山整備では、防災の視点が盛り込まれています。防災、集落の安全を確保するために、問題が専門家から指摘されている農地が森林・原野化している、荒廃森林の間伐を促進することはできないのか。またその際、森林税の活用は可能か。林務部長にお聞きします。
<轟林務部長>
 山林化した森林の間伐促進についてでございます。ご指摘の通り、森林の間伐化を行うことは、防災機能を高める上で、極めて重要であるということは確認されていることでございます。このため農地が耕作されず、放置化され山林化している場合で、今後とも森林として管理していくことが、適当な森林につきましては、間伐等を進めていくことが必要になっております。
 そこでこれらの森林につきましては、すでに周辺の里山森林と一体的に整備する場合には、森林づくり県民税を活用して間伐への補助を行っているところでございます。今後はさらに、先ほどお話しましたように、農政部との一層の連携のもと農地法などにおける必要な手続きを進め、森林法第5条に定められる地域森林計画対象森林に編入することで、公共造林事業等を導入して間伐が推進できるよう市町村等に働きかけてまいりたいと考えております。
一方森林づくり県民税を活用し、地域の皆さんが主体的となり森林所有者の同意を得て、地域の里山を一体として整備する取り組みなどにつきましても、引き続き推進を図っていきたい。そう考えております。
<和田県議>
 森林税が積極的に活用されるというご答弁をお聞きし、大変頼もしく思っております。団地化を進める際、農地の所有者が農用地の転換手続きなど、これを行うよう、丁寧なご説明など、大変ご苦労かと思いますが、今後とも促進を進めていただきたいと思います。

3、 農業再生と食料自給率の向上について

(1)農業経営への支援策について

<和田県議>

 次に、農業についてうかがいます。県内でも全国的にも各地で地域の農業を守ることや遊休荒廃地の解消の取り組みがされています。
 宮城県「鳴子の米プロジェクト」はこのままでは山間地の米作りが消えてしまうと、米生産者が持続可能な米価1俵18,000円を保障するために、地域の旅館・ホテルを巻き込んで、地産地消でがんばっています。グリーンコープふくおかなど生協活動でも生産者と消費者をつなぎ、安全な農産物の確保と農家経営の安定を実現しています。県内でみても、長野市の地域奨励作物支援事業や農業公社が始めた「ながのいのち」をはじめ、佐久市や大町市の「菜の花で遊休農地の解消と安心できる菜種油の生産」、「スローフード木曽」、その他にも地域食材を生かして加工・販売をする女性グループなどなど地産地消の取り組みはすばらしいものがあります。地域と行政が連携して、地域の農業を再生し、生産費をまかなえる価格で農家経営の安定をめざすような取り組みを県としてどう支援しているのかお聞きします。

<萩原農政部長>
 農業経営の安定に対する具体的な取り組みについてのお尋ねでございます。農業者の経営安定のためには、農産物の大層を担っております市場流通に加えまして、契約栽培だとか、直売だとかこういう多様な販売チャンネルの開拓だとか、付加価値を付けた販売戦略が極めて重要だと考えているところでございます。このため、県では県オリジナル品種などの有望品種、または品目の導入を積極的に図っているところでございまし、収益性の高い、競争力のある産地づくりを進めるとともに、農産物直売所を核にいたしました、地域内流通の支援など、多様化するマーケットに対応する施策を進めているところでございます。また国の制度であります水田経営所得安定対策、農業共済制度、野菜の価格安定対策事業などを活用する農業経営安定対策を引き続き行ってまいるとともに、リンゴにつきましては、本議会に予算案を提出させていただいております、リンゴ緊急需給調整特別対策事業により支援をしてまいりたいと思います。

(2)長野県の特徴を捉えた所得補償制度創設について

<和田県議>

 価格の暴落で農業経営が大変厳しくなっています。景気の悪化による消費の冷え込みも要因にあると思いますが、米や果樹、そして豚肉の価格暴落で共通しているのは、生産物が過剰に市場に出回っていることだと言われています。しかし、米は価格安定のためと国内の水田面積の4割も減反を続けても、米価は下げ止まりません。最近は豚肉の価格が昨年秋以降下落を続け深刻な事態であると全農の方や生産者からお聞きしていたところですが、先の9月25日に農水大臣が6年ぶりに「豚肉調整保管」を発動すると報道がされました。豚肉の国産の在庫が過去20年で最大水準3万トンを超えていると報じられています。りんごなど果樹についても同様なことが言われます。
 しかし、日本の食料自給率は1960年代に80%近くあったものが、いまは40%を下回っている。国産農産物を過剰生産しているわけではないことは明確です。農産物の輸入品目を広げ、WTO農業協定の受け入れ後、日本の主食である米までもミニマムアクセス米輸入が強行されるなど、輸入規制を緩和し、価格を市場まかせで政府が責任を放棄してきたことが、農産物価格の暴落を招き、農業生産を衰退させ、自給率の低下、後継者不足、耕作放棄地を増大させ、農業だけでなく地域経済や農村集落、そこではぐくまれた文化をも崩壊させてきたのではないでしょうか。
 赤松農水大臣は民主党が掲げた戸別所得保障について、平成23年度から実施すると明言しました。来年度には一部地域でモデル事業を先行実施するとか、従来の減反政策は見直すなどと言われています。この点については、国の出方を待つのではなく、長野県農業は耕地面積の小規模な農家が多いことや、兼業が8割近いこと、中山間地など条件不利地が多いことなど、厳しいなかでがんばって地域の特産品を生み出し、多様な農業生産をしている。こういう長野県農業の特徴を捉えて、今回所得補償制度が農村集落への支援や食の安全確保、農業者と消費者の利益にかなう制度になるよう、県から国に具体的な提案をしていくべきではないでしょうか。この点を農政部長にお聞きします。
<萩原農政部長>
 農業者への戸別所得補償制度についてのお尋ねでございます。新政権によります、本制度によりまして、平成22年度、来年度制度設計を行って、23年度からスタートすると、いうことで聞いておるわけでございますが、特に長野県につきましては中山間地帯を数多く抱えているところでございまして、一般的に生産費が全国に比べて割高になりやすいとこういう状況でありますので、本県の農業者にも十分配慮をされるように国の動向について注視してまいりたいと思います。
(3)日米FTA締結について

<和田県議>
 最後にFTA(日米自由貿易協定)は農産物輸入自由化を加速させ、農水省の試算で食料自給率が12%に下がり、お米は82%減少する可能性があると示されております。日本の主食、お米が壊滅的になるおそれがあります。政府に日米自由貿易協定締結を行わないように県からも意見をあげるべきではないでしょうか。以上農政部長にお伺いします。
<萩原農政部長>
 次に、日米FTA交渉についてのお尋ねでございます。WTO交渉を始め、FTAにつきましては、米をはじめとしました、重要品目につきまして、もし関税が撤廃された場合には、日本農業につきまして、たいへん大きな影響があると認識しております。このため県では、これまでも知事会などを通じまして、長野農業はもとより、経済に影響を及ぼすことのないように、慎重に交渉に臨むよう、要請をしてきたところでございます。特にアメリカにつきましては、農産物の輸入金額の三分の一を占める最大の貿易相手国であることから、日米FTA交渉は政府の今度の対応を注視しつつ、食料安全保障や農業のもつ国土保全などに配慮し、国内の農業・農村の振興が損ねないよう、これからも機会をとらえて、国に提案・要請してまいりたいと考えております。
<和田県議>
 先ほどの部長の答弁の中で、国の動向を注視してまいりますとお答えいただきましたが、国の動向を注視するにとどまらず、県から積極的に長野県の農業の特性を捉えて、ここできちんと保障がされるようなそういう提案をぜひして欲しいと思いますので、ぜひお願いいたします。
 春は五穀豊穣を願い、秋は実りに感謝して営々と地域で受け継がれてきたお祭りがおこなわれております。今年もあちこちでお神楽の音色が聞こえております。秋祭りがにぎやかにおこなわれている。こういう中で、実りの秋、豊作がこころから喜べる。こういうことを願って私の質問を終ります。