2009年6月定例会 一般質問 6月26日 石坂ちほ

1.消費生活条例について

2、セーフティ・ネット貸付について

3、県職員の「天下り」について

4、浅川の治水について

1、消費生活条例について

(1)審議会、救済委員会の設置状況について

<石坂県議>
 最初に、長野県消費生活条例制定後の現状についてお伺いします。
 長野県消費生活条例は、高齢者や障がい者などの社会的弱者をターゲットとした悪質商法をはじめとする消費者トラブルの複雑・多様・巧妙化の中で、消費者の権利尊重の立場からの条例制定を求める請願が平成18年6月県議会で全会一致で採択され、その後の検討委員会の検討を経て、平成20年6月県議会で条例案が可決、公布され、今年の1月施行されました。同じ1月、新たに消費生活室も設置されました。
 せっかく制定された条例が、時代にふさわしい役割を果たしてほしいと心から願うところですが、施行から約半年が過ぎましたが、条例がみずから定めた体制作りが遅れているのではないでしょうか。
 条例は、第8章、第38条、第39条で、委員15名以内で長野県消費生活審議会を設置すると定めていますが、どうなっているでしょうか。また、第5章、第23条、24条で、委員5人以内で長野県消費者被害救済委員会を設置するとされていますが、委員の選任はじめ、条例に基づいた体制作りはどうなっているのでしょうか。企画部長にお伺いします。

<望月企画部長>
 消費生活条例の関係のお尋ねでございます。
 まずは消費生活審議会でございますけれども、この審議会は知事の諮問に応じて消費者施策に関する重要事項を調査・審議する。こういった一つの権能と、もう一つは知事の諮問事項以外についても、独自に意見具申できると、こういった二つの機能を有しておりまして、非常に県民の消費生活の安定・向上を図るために、大事な機関だと思っております。現在、消費生活に関して識見を有する者、それから消費者、事業者、それぞれから候補者名簿をリストアップいたしまして、個々に信任をお願いをし始めているところでございます。早急に立ち上げてまいりたいと思っております。
 それからもう一点。消費者被害救済委員会でございますけれども、これにつきましても、現在のところ、あっせんですとか、調停を付託するような事案は生じておりません。なにかありましたならば、知事がこの委員会に付託するというような形になっておりますけれども、委員の選任につきましては、先ほどの審議会と合わせまして、人選を進めると、こういう手はずになっております。現在開始しているところでございます。
 それから、先ほど体制作りということでお話がございましたけれども、消費生活室の設置、これはご案内のとおりでございます。それから県庁内の関係課で兼務体制をしまして、12の課・室でございますけれども、連絡会議を立ち上げて、そういった形で部局間連携をまず強化をしております。
 それから4月にはこれも補正予算でお願いしましたけれども、不当取引調査員、警察官のOBの方ですけれども、こういったこともすでに4月に開始しまして、悪質事業者等々の指導・処分を行う体制を強化しております。順次体制作りを進めてまいっておりますので、それに従いまして実効性のある施策を実行してまいりたいと、このように考えております。以上であります。

<石坂県議>
 現在リストアップしていただいて、「早急に」というお話でしたが、たまたまこの制定後の半年間、問題となる製品事故や事案がなかったからいいのですが、もし、何か起こったら諮問する組織がないわけです。これでは条例を生かした対応はできないと思います。条例が施行されて半年たつわけですので、審議会も救済委員会も早急に設置していただかなければ、「仏作って、魂入れず」で、条例が泣いていると思います。いつまでに設置していただけるか、お答をお願いしたいと思います。

<望月企画部長>
 審議会、救済委員会、合わせて7月いっぱいを目途に設置を考えております。ただ、体制につきましては、それぞれ審議会の趣旨、あるいはもちろん救済委員会、事案がないとだめですので、それについては7月という限定的な期限は申し上げられません。以上でございます。

2、セーフティ・ネット貸付について

(1)勤労者生活資金緊急融資制度の利用状況について

<石坂県議>
 次に、繰り返し要望しているセーフティネット貸付についてお伺いします。
 先の見えない厳しい雇用情勢の中で、昨年度末に長野県が創設した離職者向けの勤労者生活資金緊急融資制度を、私たちも大変歓迎し、この制度で路頭に迷う人が減ることを心から期待していました。
 しかし、運用状況は、3億円の予算が用意されているにもかかわらず、5月末までの相談件数449件、貸付できたのは33件で総額1,183万円とお聞きして、大変残念な思いです。現在までの利用状況はどうなっているのでしょうか。この制度は、深刻な雇用情勢に見合ったものになっているのでしょうか。商工労働部長にお伺いいたします。

<黒田商工労働部長>
 石坂議員から、勤労者生活資金緊急融資制度、これの利用状況と情勢に見合った制度か、というご質問を頂戴いたしました。
 この融資制度を開始しました、本年1月15日から6月23日、この利用状況を申し上げますと、申し込み受付件数が83件、融資実行件数が37件、融資総額が1,300万円余となっております。
 いままでの経過を踏まえまして、詳しくご説明申し上げますと、取扱いを始めました1月から、3月初めにかけては、融資実行件数は少なかったわけでありますが、中には貸し付け要件や審査が厳しくて利用しづらいであるとか、あるいは貸し付け要件を緩和してほしいこういった声が寄せられておりました。そこでこの窓口となっております長野県労働金庫と協議いたしまして、その中でご協力いただきまして、少額融資については、運用面で弾力的な取り扱いを行うと致したところでございますのは、ご案内のとおりでございます。
 こうした対応によりまして、先ほど37件と申し上げましたけれども、そのうち1月から3月までの3か月間、この融資実行件数は13件でございました。これに対しまして、4月以降、先ほど申し上げました6月23日までの3カ月弱でございますけれども、これの融資実行件数は24件と、かなり増えているわけでございます。

 離職を余儀なくされた方々への支援策として、この融資制度のほかにも国あるいは社会福祉協議会などにおいても、様々な融資制度が用意されている、そういうような中におきましては、労働金庫という金融機関を窓口とするこの種のものとしては、一定の効果をあげているのではないかと私はそう思っております。
 以上です。

<石坂県議>
 それで改めて商工労働部長に申し上げたいのですが、ちなみに、長野県のホームページで、失業者向けの生活資金の貸付制度を探そうとした場合、なかなか見つかりません。探し出すのが困難です。「相談窓口一覧」を見てもありません。「融資、給付、助成」、ありません。「申請」にもない。県の組織を知らない普通の県民が、「雇用」を検索してこの制度にたどり着くのは、なかなか至難の業です。「100年に1度」と言われるこういう状況の中ですので、ぜひホームページの改善を、困った人が見たらわかるような、そういうホームページに、例えば、「生活資金に困った人はこちらへどうぞ」とか、そういう入口があるようなホームページに改善していただくことなどはいかがでしょうか。

<黒田商工労働部長>
 お答えいたします。大変いいご提案を頂いたと思っております。課題を持ち帰りまして、早速検討をしたいと思っております。

(2)セーフティーネット貸付の創設について

<石坂県議>
 県の勤労者生活資金融資制度が借りられない人たちの中には、税金などの滞納者、多重債務者がいます。失業したり、仕事や収入が減った結果、滞納や借金が増える結果になったわけですが、滞納が始まった段階での丁寧な対応で、減免措置の活用や、利用できる制度の紹介で、自立して生活再建ができたはずの人たちもいるのではないでしょうか。
現在、先進的な地方行政の現場では、多重債務相談の窓口と、福祉部門や徴収部門などの専門部署の間で「庁内ネットワーク」を構築し、総合的な生活再建支援を提供しようとする取り組みが行なわれています。
 くらしに困った低所得者向け融資を高金利ビジネスにゆだねてきた歴史に区切りをつけて、資金は自治体が提供し、運営は民間のプロが行ない、債務整理は法律家など専門家が確実に行なう仕組みに、民間金融機関の資金も加えるという生活再建資金の貸付を、最後の砦の生活保護にいたる前に、是非ともセーフティーネット貸付として実施していただきたいのです。企画部長にお伺いします。

<望月企画部長>
 セーフティーネット貸付についてのお尋ねでございます。新たなセーフティーネット貸付については再三ご質問をいただいておりますけれども、ご案内のように多重債務者対策協議会のメンバーの中で、弁護士会、司法書士会、企業関係団体、こういった形で検討を重ねてまいるところでございます。再三申し上げておりますけれども、原資の確保ですとか、それから過去に債務整理をしているがゆえに、審査が非常に難しいというような問題、それから貸し倒れ時のリスク、ないところもあるというお話ですけれど、そういうリスクの負担問題、こういった様々な負担も加えまして、去年からの経済雇用情勢が非常に厳しいということでなかなか制度が出来ないというのが正直、現状でございます。

 そういった中で、国が示した「多重債務問題改善プログラム」の中に位置づけられております、生活福祉資金ですけれども、ご案内のように緊急の小口資金、金額が小さいですが、これは一昨年制度改正を行いましたところ、昨年度は157件、それから1,370万円という形で件数・金額とも3倍の伸びを示しております。
 こうした中で、これまで国に対しましてもこの生活福祉資金の有効活用による、なにか制度が出来ないかということでお願い申し上げてまいりましたけれども、全国的な整備でございますが、これにつきましては今回の国の「経済危機対策」、第1次の補正でありますけれども、ここで「総合支援資金(仮称)」ですが、そういった制度を創設すると。そして連帯保証人の緩和ですとか貸付利子の低減化といった形で現在の生活福祉資金貸付事業を抜本的に見直して、拡充すると。実際には今年の10月あたりを目指して、今国で制度化に向けて進んでおります。
 こういったものができればですね、私ども非常に大きな力を発揮していただけるんじゃないかなと、実は思っているわけでございます。
 先ほど石坂議員から、ご提案頂戴いたしましたけれども、自治体間で原資を預託して民間の金融機関から貸し付けて、いろんなサービスをまた提供していく制度でございますけれども、基本的にはございますけれども、じゃあいざとなったときに、その貸付原資を誰に負担をするか、岩手のように全市町村がしている場合もございます。県だけでやるのか、市町村だけがやるのか、あるいは国からお金をもってくるのか。そういった課題も実際にはございます。それからお金を貸しておくだけでなく、実際にその後の生活支援のサポートをどうするかといった問題もあると思います。こういったものももろもろありますので、結局他県でも手を出せないというか、進まない状態であると私どもは思っております。そうした中で、いずれにしても県だけでできる問題ではないということで、国、関係機関と も今後一緒になって取り組んでいくことが必要だと思っております。

 私が非常に期待しておりますのは、例の国の資金、新しい制度でございます。これが、まだはっきり定まっておりませんから、こういった動向も見守りながら、引き続き多重債務者対策協議会こういった関係機関とも、連携しながら、研究してまいりたいと思っております。以上でございます。

<石坂県議>
 それぞれの部門のご努力で改善が図られていることは大変うれしく思います。しかし、私が申し上げたいのは、本当に困った方が、借りられる制度がないということなんです。

<石坂県議>
 それから企画部長に改めてお伺いしたいと思うのですが、確かにお話がありました通り、生活福祉資金も保証人が要らない小口のものも、運用の改善が図られてきていたり、それから先ほどお話がありましたように、10月くらいから、金融庁がかなり柔軟な生活福祉資金のメニューを今検討していただいているということで、私はそれには期待をするものです。
 あわせて、私はどうしてもお話をしております、県も一定の資金を出したり、それから福祉部門、徴収部門、多重債務部門が体制としてもネットワークをつくって、税金がどんどん払えなくなったり、借金漬けになった状態で救済するというのは、本当に大変なんですよ。その入口のところで、救済できるシステムという点でセーフティネット貸付を含めて、そういう制度があったら、そうでなければ今の状況では生活保護で救済しなければならない人が急増するのは目に見えています。
 そうなってからの立ち直りは、本当に困難ですから、それ以前に救済できれば、生活を立て直して、納税者になって、県にも市町村にも貢献できる人になるわけですから、そういう意味で原資の問題、それから貸し倒れ、いろいろ難しいことがあるということは繰り返し伺っているんですけれども、たとえば現実に行政と金融機関が協調しまして、セーフティーネット貸付をしている、私が申し上げなくても、企画部長はご存知の上で、おっしゃっていると思うんですけれども、例えば岩手県消費生協、それからコープ福岡、コープ熊本、それから栗原市で新しく始めた「のぞみローン」、こういうところでは、たとえはコープ福岡では、組合員向けに生協が原資を出しておりますけれども、運営費は、福岡県が出しております。栗原市の「のぞみローン」は、行政が原資を出しております。
 共通しておりますのは、いま紹介しておりますところは行政も噛んでセーフティーネット貸付をしているところで、貸し倒れはすべてゼロなんですね。ぜひ、こういう事を検討していただきたいと思うことと、繰り返しになりますが、徴収部門と福祉部門と徴税部門の連携の体制、これをぜひ作って頂きたい。検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

<望月企画部長>
 様々な課題は申し上げた通りでございます。それで、岩手の話がございましたけれども、あそこはゼロではなくて、1%に満たない0.3%〜0.4%の貸し倒れが生じております。一般的には7%〜8%というのが、相場だそうです。ただあそこの制度は、同居している家族というか、そういった方を連帯保証人にするという特異な制度でございまして、そういうシステムもございます。引き続き研究させていただきたいと思いますし、社会部とかですね、徴収する場などと連携するのは当然のことですので、協調してやってまいりたいと、こういうふうに考えております。

<石坂県議>
 生活立て直しを前向きに支援して、新たな納税者を作ると、こういう踏み込んだ支援をぜひお願いしたいと思います。

3、県職員の「天下り」について

<石坂県議>
 次に、いわゆる、県職員の退職後の再就職、いわゆる「天下り」について、総務部長にお伺いします。
 県職員として培った経験や専門性が再就職先で生かされることは大切なことではあります。官僚の「天下り」について、国民の批判があるのは、再就職の入り口で、その仕事は同等の能力を持つ一般の人ではできない仕事なのかと言う公平性や、「天下り」した官僚の処遇が、一般の常識からみて優遇されている場合や、「天下り」そのものが、その団体や企業への事実上の圧力になっていたり、逆に公共事業の受注を有利にしたりする不公正さと一体になっている場合です。
 その意味で、長野県では、現在、「長野県退職職員の再就職に関する取り扱い要領」が、県職員の再就職に関する統一的な基準とされているところですが、さらに県民の納得するルールとして見直し、それを明文化して実行するべきではないかと考えますが、総務部長の見解をお伺いします。
<浦野総務部長>
 職員の再就職に関するお尋ねでございます。ご指摘のように、職員の再就職に関しては、その適正を図るという事で、「長野県退職職員の再就職に関する取り扱い」に依っております。
 その中では、先ほどの公平さ、あるいは優遇といった点、あるいはそういった点について、どういうふうに決めているかというと、まず外郭団体の関係を申し上げますと、団体から要請があった場合に、あっせんといいますか、紹介をすると。したがいまして、団体の方でお望みにならなければ、ケースがございますけれども、他の手段、公募等の手段で人を求めるということもございます。また、処遇の関係でございますけれども、団体での退職手当は支給しない、あるいは功労金といったものも支給をしないと、いうふうに定めておりますし、在職の期限も65歳までとするといった規定になっております。
 さらに給与につきましては、常識的な金額になるように上限を定めておりまして、各団体にお願いをいたしております。そういう意味では、優遇と言われるまでもなかろうかなと、こんなふうに思っております。
 また、民間企業への再就職について申し上げますと、入札参加資格を企業に対しては、個別の紹介を行ってはならないこと。それから、再就職した職員には、退職後3年間、県への営業活動を自粛ということで、名刺営業等のことが出来ないと、いうようなことを条件にしております。再就職に関して一定の制約を設けております。
 また全体と致しましては、本庁課長級以上で、退職したすべての職員の再就職先、住居を毎年4月に調査致しております。そういう意味では透明性の確保にも努めております。そういうことからすると、現段階で直ちにこの規定と言いましょうか、取扱い要領を大きく改正するようなことは考えてはおりません。これに沿って、公平性やあるいは透明性を確保して適切に運用していきたいとこんなふうに思っております。
<石坂県議>
 例えば、取り扱い要領では、「給料または報酬の額は、当該再就職者の退職時における給与月額および共済年金の額を考慮して団体が県と協議のうえ決定するものとする」とされていますが、とても誤解を生むと思います。これは、本来、団体の規定に基づく支給で良いのではないでしょうか。
 また、指名登録業者への再就職の場合、退職後3年間は県への営業活動を自粛し、誓約書を県に提出するとされていますが、国土交通省では平成17年10月以降、直轄工事受注企業への幹部職員の再就職の自粛を実施していることからも、退職後3年間と限定せず、県への営業活動は原則自粛とするべきではないでしょうか。総務部長に、再度お伺いします。
<浦野総務部長>
 給与月額の関係でございますけれども、職に応じてという事でございまして、上限額、あくまで上限額でございまして、ただちなみに申し上げますと、県の特別職を退職者では月額30万円を限度と、上限額という事ですので、その中で団体とお話をして、決めていくということになろうかと思います。
 それから3年間の再就職の関係でございますけれども、県の場合は3年間という期限かもしれませんけれども、入札参加資格を要するものということで、非常に幅が広いということになりますので、ほとんど県内の企業が対象になってしまうというようなことすら出てまいりますので、そこまではということで、そういうような規定になっております。
<石坂県議>
 いまの総務部長のお答には納得はしていないんですけれど、雇用情勢厳しき折、機械的な公務員叩きをするつもりも毛頭ないんですけれども、ぜひ時代にふさわしい見直しをお願いをしておきたいというふうに思います。

4、浅川の治水について

(1)住民説明会について

<石坂県議>
 最後に、浅川と千曲川の治水についてお伺いします。
 県は、今年の4月に浅川ダムの詳細設計を発表し、約2年ぶりに再開された浅川流域協議会と、豊野、浅川の2箇所の住民説明会で説明しました。私は、そのすべてを傍聴させていただきましたが、両会場とも、新年度の区長さんをはじめとする役員の皆さんがほとんど出席されたと言うことで、会場いっぱいの参加者でしたが、参加者からは、ダム建設への不安や、疑問、批判の声が圧倒的で、ダム建設に賛同する意見を述べたのはひとりだけ、住民の納得できない思いだけが残りました。
 このような状態で、このままダム建設を進めてもいいのでしょうか。民主主義の問題として大きな疑問ですが、建設部長の見解を伺います。

<入江建設部長>
 浅川ダムに関するお尋ねでございます。浅川ダム詳細設計の住民説明会の開催につきましては、ダムの安全性や模型実験の条件設定について様々なご意見を頂いたことは承知しております。県はこれまで浅川ダム計画の各段階で住民説明会を開催するなど、ご理解を頂くべく、説明をしてまいりました。それらを通じ、説明してきましたとおり、浅川ダムにつきましては、地質調査など十分な調査や科学的根拠に基づいた模型実験を実施し、十分な安全性・機能を有するダムとして設計しております。浅川の中流部は、市街地化・市街化が進んでおり、洪水により甚大な被害が発生する危険性があることから、1日も早い外水対策を講ずる必要があり、浅川ダム建設事業につきまして、本年度本体工事を実施して推進してまいる所存でございます。

(2)試験湛水時の危険性の検討について

<石坂県議>
 住民説明会では、改めて浅川ダムの安全性への疑問の声が多く出されました。「もし地滑りが起こったら、県は保障してくれるのか」という質問に対し、「そういうことが起こらないような対策をする」と言う県のお答えでしたが、奈良県川上村の大滝ダムでは、地滑りの危険性を指摘する住民や専門家の声を振り切って、「現在の技術は充分な対策をすれば大丈夫」と建設したダムが、試験湛水後に次々に亀裂を生じ、今なお対策工事に追われていますし、ちょうど1年前に起こった宮城県荒砥沢ダムの地震発生による大規模な地滑りも、「地震発生の可能性ゼロ」とされていた監視対象外の断層で地震が発生し、ダム建設の調査・設計段階で左岸の地滑りが確認されており、試験湛水後の供用開始時に右岸地滑りの崩落があり、対策工事がいまだ行われています。
 大滝ダムでも、荒砥沢ダムでも、それぞれ問題が起こってから、「予見は不可能だった。想定外の事態だ」と説明されていますが、ダムが計画されてからのそれぞれの経過を知れば、果たしてそれぞれの場所がダム建設の適地であったのかどうかは、改めて検証されなければならないのではないでしょうか。
 浅川ダムのダム湖は地滑り地ではないとの説明ですが、ダム湖周辺が地滑り防止地域であることは紛れもない事実です。試験湛水時の危険も含めて、どのような検討がされたのか、お伺いします。

<入江建設部長>
 続きまして、浅川ダム貯水池の地滑りに関するお尋ねでございます。浅川ダム貯水池、上流端にある地すべり地を含む貯水による不安定化が想定される斜面につきましても、これまで調査ボーリングや調査横抗などの地質調査の十分な調査を行ってきております。それらの調査を基に、試験湛水時の水位の低下を含む、貯水の影響を考慮した押え盛土坑などの抑止杭などの対策坑を講ずることとしております。

(3)浅川・千曲川合流点付近の内水対策について

<石坂県議>
 今、ダム建設の賛否をこえて、浅川流域住民が最も切実に願っているのは、最下流の千曲川合流点付近で、毎年のように引き起こされる内水災害の緩和です。住民説明会では、「来年度から検討に入る」と答弁されましたが、内水対策の具体的な実施の時期はいつになるのでしょうか。建設部長にお伺いいたします。

<入江建設部長>
 浅川内水対策の実施時期に関するお尋ねでございます。浅川内水対策につきましては、平成19年8月に認可された河川整備計画の中で、外水対策とともに排水機場の整備や土地利用のあり方など、科学的観点からの検討を行う事を位置づけております。内水対策の実施に向けましては、遊水地などを含む内水対策全体の計画を確定し、地域の皆様のご理解を得る必要があることから、現在、県、長野市小布施町の行政機関による検討会議を本年4月に開始したところでございます。またこの検討会議にご意見も踏まえて平成22年度には専門のコンサルタントによる調査を行い、具体的な対策を検討することとしております。いずれにいたしましても、浅川内水対策につきましては、ダムと河川改修による外水対策を進めながら、必要な調査・検討を進め、早期に実施に努めてまいります。

<石坂県議>
 建設部長から「十分な調査と科学的根拠に基づいた模型実験をやっている」というお話でしたけれども、地質調査、ボーリングや横抗を掘って、コアを取って、専門的な知見から調査をしていただく、そのデータはほとんど70年代から80年代、つまり前々知事のはるか前にやられたデータで、ご存知のようにその当時掘って頂いた横抗はすでに潰れておりますし、入れない状態になっています。
 この数十年経過してくる中で、再調査を求める声も地域住民からある中で、その意味での十分な地質調査は決してされていないと、私は認識しておりますけれども、その点について改めて建設部長の見解をお伺いしたいと思います。

<入江建設部長>
 地質調査は10年以上前のものであり、再調査が必要であるというご質問がございました。
地質調査につきましては、昭和46年から平成11年まで、長期間かけて十分な地質調査をこれまで行ってきたと認識しており、再調査は必要ないと考えております。

<石坂県議>
 それから科学的根拠に基づいた模型実験ということですけれども、あの実験は極めて限定した実験でして、つまりダムの最下流にある常時水が流れる洪水吐が詰まらないかと、いうところだけにある意味では着目した、マッチ棒状の流木に見立てた木片とそれから16cm以上の石は下に流れてこないという前提のもとに、同じ粒の大きさの砂を流して、「詰まらなかった」と、こういう実験でありまして、いま安全性の問題で様々な問題を他県で起こっている不幸な事態を事例を申し上げましたけれども、試験湛水のときに、同様なことが起こるんじゃないかと、そういう疑問に答える科学的根拠に基づいた模型実験にはなっていないと思いますが、いかがでしょうか。改めてご見解をお伺いいたします。

<入江建設部長>
 模型実験に関する再質問がございました。
 浅川ダムの模型実験の件ですが、模型実験は概略設計で検討した形状を基に、ダムによる所定の洪水調整効果が得られるかどうかを確認するとともに、土砂や流木が貯水池内でどのように移動形態を示し、常用洪水吐にどのような影響を与えるかを調査し、ダムの諸データを詳細設計に反映させることを目的としております。
 いま、流木や土砂が不適切ではないかとのご意見もありましたが、これは物理学的に相似則などを考えて適切な流木ならびに土砂などの条件と考えており、模型実験も適切なものであったと考えております。以上でございます。

<石坂県議>
 奈良県の大滝ダムは3,480億円もかけて建設をしましたが、その後試験湛水後にひびわれが起こり、白屋地区80戸が全戸移転をしました。その対策に270億円をかけました。さらに大滝地区、迫地区が地すべりを起こし、160億円で対策をしました。ダムが完成したのは、平成15年ですが、3箇所の地滑り対策に今なお追われており、完了予定で次の試験湛水は平成24年の予定ということです。ダムが完成してから10年間も、ダムをつくったがための地すべり対策に追われ、また試験湛水で地すべりが起こったらどうするのでしょうか。際限のない事業費の投入になり、安全性を損なわれ続けることが、浅川で繰り返されない保障があるのでしょうか。建設部長のご見解をお伺いします。

<入江建設部長>
 地すべりに関する再度のご質問でございますが、これまで繰り返しお答えしたとおり、これまでの地質調査で十分足りるものと判断しております。

<石坂県議>
 いずれにしても地域住民は納得していませんので、このまま本体着工に入ることのないよう、新たに納得のいく住民説明会をやって頂けるかどうか、お答を頂きたいと思います。

<入江建設部長>
 住民説明会を再度行ってくれるのか、というご質問でございました。今後とも、たとえば工事着手など、必要に応じて住民説明会は行います。

(4)千曲川の中抜け区間の国直轄化について

<石坂県議>
 知事にお伺いします。今朝ほど、小林東一郎議員からも、千曲川の県管理区間の国直轄への編入についてのご質問がありました。もともと、浅川が千曲川に自然流下できていれば、現在、浅川で引き起こされている下流域の内水被害の主な問題は解決できることを考えれば、千曲川の改修促進は流域住民の切実な願いでもあり、2月県議会での和田あき子県議の質問に対する北沢建設部長(当時)の答弁でも、千曲川河川事務所の改修・維持・環境改善の予算がここ10年間で約7割に落ち込んでおり、なかでも改修予算は約3割に激減。平成19年度でたった13億円、県管理区間にいたっては災害復旧費を除けば、維持費500万円で堆積土の除去、河川環境改善費400万円で流木の伐採をやっているにすぎません。
 9,000m3/s(トン)の同等の改修を、国に管理が編入されなくても、河川整備計画をつくってやるんだと、建設部長も答弁されましたけれども、本当に本腰に据えてちょうどいま千曲川河川整備計画策定中ですので、知事には先頭に立って国管理への編入のため、頑張って頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。そうならなかった時には、本当に9,000 m3/s(トン)に匹敵する国レベルの河川整備計画、千曲川の県管理区間でやっていただけるのか、あわせてお伺いいたします。

<村井知事>
 千曲川の改修促進と県管理区間の直轄管理化についてお尋ねを頂きました。千曲川は国土保全上、特に重要な河川でありまして、その改修促進は大変重要であるという認識は、私も強く持っております。だいたい、千曲川のような河川は水系一貫した管理が必要でありまして、県管理区間も含めて、国による一元管理が本来は望ましい、私はそう思っております。小林議員にもお答え申し上げてきたところでありますが、千曲川の改修促進や直轄管理区間の編入につきましては、信濃川水系河川整備基本方針を策定する際の、社会資本整備審議会、それから国土交通省との調整会議などにおきまして、従来とも要望を重ねてきております状況であります。今後とも国に対しまして、機会があるごとに要望してまいる所存でありますが、一例でございますが、丹羽委員長を座長とします、分権推進委員会で、国の直轄事業をどんどん地方に移譲すべきではないかという議論がございました際に、私も意見を述べる機会がございました。その際に、例えばこの千曲川のごときは完全に国が直轄でやってもらわないとこまる事業なんだということを取り分けて強調した経過もございます。

<石坂県議>
 住民の命と安全がかかっておりますので、ぜひよろしくお願いしたいことと、直轄管理に編入されなかったときは、9,000 m3/s(トン)の整備計画、必ずやって頂けますねということについてはお答頂いておりませんので、知事にお願いします。

<村井知事>
 9,000 m3/s(トン)で流下出来るような、体制に持っていくということを物理的にやらなければならないことだと、考えておりますが、しかしこれが本当に県管理で出来るのかということになりますと、率直に行って難しいと思いますけれども、国の直轄に持っていくという努力をしていきたいと思います。