2008年9月議会 一般質問  9月29日 小林伸陽

1、高校生への自衛隊員募集のダイレクトメールについて

 通告にしたがって、質問を行います。
 多くの父母の皆さんから、自衛隊員の募集案内がダイレクトメールで高校卒業予定者に送りつけられていると、怒りの声が寄せられています。高校生に求人案内が直接送られているが、他の業種でもこの様な事例はあるのか、又、子どもたちの意見をよく聞き、真剣に進路指導に当たっている教師からも、不安の声が寄せられています。未成年の子どもたちに直接ダイレクトメールで募集を行うことに教育長はどの様に考えておられるかお尋ねします。

 次に、ダイレクトメールで送られた情報は、県の要請で市町村が提供し、県が送付していると聞くが長野県はどうか。閲覧が認められている氏名・住所・生年月日・性別の4情報以外、県の指導で、健康状態・技能免許・世帯主の氏名・職業、本人の続き柄・電話番号などが提供されている事例も報じられています。
 全国的に見ると情報提供は神奈川県では閲覧だけで0%、東京都3%、長野県は全国トップの100%の自治体が提供していると聞きます。4情報以外の情報提供のために、自衛隊と協定を結んでいるところも有るようですが、長野県はどうか。又、市町村に手引きを出しているか、市町村への指導の中身はどうか。4情報の閲覧以外の情報の提供は個人情報保護条例及び、個人情報保護の観点からも問題はないか。
 総務部長にお尋ねします。

<山口教育長>
 自衛隊の募集についてのお尋ねでございます。ご指摘の他の職業でのダイレクトメールによる募集につきましては、承知しておりません。就職指導につきまして、県教育委員会と致しましては、求人の公平性を考慮しまして、毎年文書により、民間企業と同様な募集活動を行うよう、自衛隊長野地方協力本部にたいし、要請するとともに、自衛官の募集に係る連絡会議等の場におきましても、同様の趣旨の徹底を要請しているところでございますので、支障はないと考えております。


<浦野総務部長>
 自衛隊員の募集のダイレクトメールのお尋ねでございます。ダイレクトメールの発送は、県が行っておりませんで、県が行っていますのは、はがきの印刷を行っていまして、それを自衛隊長野地方協力本部で住所を確認をし、対象者に送付をするということをやっております。それがまず一点。
 それから、長野地方協力本部が市町村に提供・依頼をしております情報は、住所・氏名・年齢・性別の4情報に限定されておりまして、県内の市町村がそれ以外の4情報の個人情報の提供はなかろうかと思っております。また、県では特に情報提供にあたっての指導と申しましょうか、具体の指導は致しておりません。
 住民基本台帳法11条第1項では、「国、または地方公共団体の機関は、法令に定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に住民基本台帳の閲覧を請求することができる」というふうに規定がなっております。総務省におきましても、自衛隊地方協力本部が自衛隊法に基づき行います、募集事務は今申し上げました住民基本台帳法の法令に定める事務に該当すると判断をして、文書で通知をしております。したがいまして、自衛官の募集事務のために住民基本台帳を閲覧するといったことは、法律上問題なかろうかとこのように考えております。
 また、個人情報保護の関係でございますけれども、県内の市町村が行いますこうした一連の手続きでございますが、それぞれの個人情報保護条例に基づき、ご判断いただいていると、このように考えております。
 いま申し上げましたように、一番最初に申し上げましたが、ダイレクトメールの送付は、自衛隊地方協力本部で行っております。送付費用は県が出しているものではありません。

 教育長は民間企業と同様にやれという申し入れをしているにも関わらず、そういうことをやってないと。それが問題ないということは、私はあまりにも答弁の中身が食い違っているんじゃないかという風に思いますし、また県がこの財政難の中で、費用を出してやるなどとは、私はやめるべきだと強く申し上げて次の質問に入ります。

2 浅川の穴あきダムと河川整備計画について

 浅川ダムの模型実験を見学してきましたが、浅川流域の皆さんの一番心配していることは、善光寺地震や地附山の地すべり、論電ヶ谷(ろんでんがや)池の崩壊など過去の歴史を振り返っても、又、現在でもダムの水没地域には、一の瀬地すべり等、幾つもの地すべりがあり、上流にも地すべりが発生している。しかし、県は「地すべり対策を講じるので大丈夫」、「土石流は地形からダムサイトまで到達しない」との前提での実験でした。流木は3種類の箸、土砂の流入もふるいにかけた砂を流すだけ、現状にはまったく即していない。

 ここに浅川の稲田大橋下流の二枚の写真があります。昨年6月に撮った写真と9月に撮った写真です。通常の雨でもこれだけの土砂と大量の石が流れてきます。これが前と後です。このように大変大きな石と土砂が大量に流れ込んでいる。まさか石が下流から遡って来たものではないでしょう。
 通常の雨でも1m程度の穴は閉塞の危険があります。ダムサイト近くでの地滑りが発生すれば排水の穴どころか、ダムも埋めてしまうというのが、宮城県荒砥沢ダムの教訓です。
 今回の実験が住民の不安を解消できる実験とはかけ離れています。想定される事態に対応した実験であったと言えるのか、建設部長にお尋ねいたします。

<北沢建設部長>
 ダムの実験がこの土砂ですか、土砂の流下を防ぐものかどうかというご質問かと思いますが、浅川ダムの模型実験は、概略設計で検討した形状を基に、ダムによる所定の洪水調節効果が得られるかを確認するとともに、土砂や流木が貯水池内でどのような移動形態で動くかを示し、常用洪水吐きにどのような影響を与えるかを確認し、ダムの設計に必要な諸データを得て、詳細設定に反映させることを目的としております。
 この土砂の発生なんですけれど、これについては浅川本線の横に南浅川という後背している河川、議員も御承知かと思いますけれども、そこから発生したのかも知れませんが、ダムは洪水調節。ですから、土砂を止める砂防施設とは違いまして、洪水施設、いわゆる100年に1回の洪水が来たときに調節をすると。いうのが治水ダムの目的でございます。ですので、私どもの今回実験したのは、いわゆるその水理の確認と閉塞するだろうと思われる土砂が本当に穴を閉塞するか、流木が閉塞するかを検証したものでございます。

 ですから、住民の不安にこたえる実験では全くなかったということになると私は思うわけです。
 岩手・宮城内陸地震の被害を受けた荒砥沢ダムを調査にいってまいりました。現地の説明には農林水産省東北農政局整備部の大沢次長、森地質官、宮城県栗原地方ダム総合事務所畠所長さんらの説明を頂きました。今回の左岸上流の地すべりの規模は、長さ1,300m幅800m、高さ140m、推定移動土砂量は6,700万立方m、貯水池への流入量は洪水調節流量350万立方mを超える420万立方mにも及び、土砂流入により2.42mの津波が発生し、ダム直下で食堂と宿泊施設を経営している店主は「地震直後ダムサイトに駆け上がると、一面にものすごい白煙が立ち上り噴火していると思った。これまで見たこともないダムの洪水吐きから大量の水が滝のように流れ落ちていた」と、当時の様子を話して頂きました。
 ダム上流部の現場は崩落した山肌が一面に広がり、おびただしいダム湖への流入物は想像をはるかに超えるものでした。流木は山のように重なり合い、大木が立ったまま山と共に滑り落ち、橋や護岸のコンクリートなど入り乱れ、数十トンもある大石がごろごろしている様を見、地震、地すべり、土石流のすさまじさを実感しました。

 問題は「地震発生の可能性がゼロ」の断層で起こったことです。浅川ダムサイトのF-V断層は活断層で有るか無いか意見が分かれています。本当に安全であると言えるのか。

 二つ目は荒砥沢ダムでは、建設時にダムサイトで地すべり対策が行われており、試験堪水に五年もの歳月をかけ、供用開始後にもダム湖右岸に地すべりが起こり、三億円もの対策工事が行われています。地すべり地周辺へのダム建設の安全性は本当に大丈夫なのか。地震発生時の影響を真剣に検証すべきです。
 すでに調査した奈良県大滝ダムもしかり、地震も地すべりも考えられない所で発生しているのに、善光寺地震を経験し、ダム建設地は地すべり地域となっているのに強行することに、疑問を益々強くせざるを得ません。建設部長も現地を調査し地震発生時に及ぶ影響を再検討すべきではないでしょうか。建設部長にお尋ねします。

<北沢建設部長>
 荒砥沢ダムの付近に発生した地すべりに関しまして、地震による浅川ダムの影響に関するお尋ねかと思いますが、現在の調査指針・設計書に従い、建設されたダムは、近年の大地震でもその機能を損なわず、十分な安全性が確保されております。浅川ダム建設予定地は、善光寺地震の震源に近いことから、地震に対して十分考慮した設計をして、進めております。
 荒砥沢ダムの地すべりの斜面崩壊につきましては、国の機関が調査に入りまして、「地震を契機に地質上割れやすいほうに滑ったもので、ダム貯水池の水位関係から判断すること、ダムが地すべりを有したものではない」と報告がなされております。浅川ダムは、常時水を貯留しないダムであることから、地震時に貯留している確率は極めて低いものだと考えております。この点が荒砥沢ダムと最も異なる点でございます。貯水池内の地すべりや斜面崩壊につきましては、これまで十分な調査を行ってまいりました。必要なものについては、対策を実施いたします。

 いまも言いましたように、浅川ダムは善光寺地震や地すべりが現に発生をして大変心配されていると。しかし、荒砥沢ダムを見れば、そういう危険がなかったと言われる地域で起こっていることを部長はどのように考えているか、再度お尋ねします。

<北沢建設部長>
 浅川ダムに地震が影響あるのではないかという再度のご質問でありますけれども、文部科学省地震調査研究推進本部による主要活断層帯の長期評価、これが策定日が平成20年1月1日ですけれど、長野盆地 断層帯の地震規模M7.4〜7.8程度の発生確率は、100年以内でほぼ0%と発表されています。それから、善光寺地震は1847年に発生しております。善光寺、先ほど申しました、長野盆地断層帯の活動間隔は、800年から2,500年と言われております。
 ですから、今後早くて640年後、遅くて2,345年後に発生すると言われております。それと何度もご説明しておりますが、現在浅川ダム本体の下には活断層はありません。

 県の大仏ダムや国の戸草ダム、川辺川ダムなどの中止は歓迎します。県が浅川ダムを中止する方針を示した以後、ダムに代わる代替案がないと県議会は大激論が展開されました。知事は代替案が示せないことは、県民の生命財産を守る上でも許されないと、浅川の整備計画はダム建設以外にないと、県民の理解が不十分な中ダム建設を決定しました。
 先日の答弁で明らかにされたように国は、財政的事情も考慮して次々と代替案も無いままに大型ダムを中止して、見直しを検討しています。
 議会前の信濃毎日新聞の社説では「住民の安全に係る大事な問題だ。地すべり対策などを含め、様々なケースを想定し、一つ一つの疑問に丁重に答えるのが県の責務」とし、「賛成、反対の立場にとらわれることなく、より科学的で公正な視点からの議論を県会に求めたい」と論じています。県の財政状態からも、川辺川ダムや戸草ダムの様に一旦中止して、再検討するよう知事の英断を求めますがいかがでしょうか。

<村井知事>
 ダムを作るか作らないか。これはそれぞれの地域の事情、状況というものを総合勘案して、判断すべきものだと思っております。したがいまして、他のダムにおいて、中止あるいは延期というようなものがあったとしても、浅川についてどうかというものはそれは浅川ダムの問題として判断すべき問題だということを申し上げた上で、浅川の中流域は、大変急速に都市化が進んでいる地域でありまして、洪水発生時に、想定される被害が著しく増大し、早期の治水対策が必要であります。この状況に対して、一日も早い対策を講じるのは河川管理者つまり長野県知事でありますが、河川管理者として当然の責務だと存じます。
 浅川の治水対策につきましては、経済性、効率性、確実性、環境の観点から、治水専用のダムと河川改修とを組み合わせてというのが最も優れていると判断したものでございまして、現在河川改修を進めておりますが、ダムによる洪水調節が前提でございまして、河川改修のみでは治水対策は完成しません。このことから、河川整備計画の認可を得て、鋭意進めているところでございまして、これと総合してご判断を頂きたいと思います。

 熊本県知事は国が計画している川辺川ダムの反対。その理由は「球磨川流域にとっての宝だ」と。現在流域住民は、川を守る選択をしたと。しかし浅川は専門家の意見でも本当に危険な地域に作るダムなんだと。川辺川ダム、大仏ダムその他の中止したダム以上に最も危険と思われるところにダムを作るんだと。ここでしっかり考えて頂きたいと思います。

 次に、浅川の改修は地域住民の皆さんの切実な課題です。ダムに反対している皆さんも賛成している皆さんも、浚渫(しゅんせつ)や未改修箇所の早期改修が共通な願です。現在の進捗状態と今後の浚渫、改修計画はどのようになっているのかお尋ねします。利水から撤退した長野市が納めた負担金は、今後いつまでにどの様に解決を図かるかの二点を建設部長にお尋ねします。

<北沢建設部長>
 浅川の河川改修の進捗状況に関するお尋ねでございます。浅川の河川改修は千曲川の合流点から12.2kmが計画されております。平成19年度までに長野市稲田遺跡の西山田橋の約10.6kmの改修工事が下流部の河床掘削を除き、完成しました。工事の進捗率は85%となっております。本年度、平成20年度は引き続き上流の長野市、檀田遺跡の北部幹線橋付近までの約500mの改修工事を予定しております。全体の河川改修の完成は、ダム完成の時期と整合を図る予定でございます。
 長野市への負担金返還に関するお尋ねでございますが、従前の浅川ダムは、長野市の水道用水を確保する多目的ダムであったため、水道事業者である長野市から約5億6000万円の負担金を受領しております。しかしながら、現在は洪水調節のみを目的とした治水専用ダムへと変更したことから、これまでに受領済みとなっている負担金につきましては、返還することを前提に長野市と協議を進めているところでございます。現時点で返還の時期等の詳細につきましては、まだ決まっておりません。

 建設部長におかれては、荒砥沢ダムや大滝ダム、現地調査を任せるのではなくて、自分からも行ってしっかり見て検討することを強く求めておきたいと思います。

3、県立病院の地方独立行政法人化と地域医療計画について

 次に、行政機構審議会の答申に対する、感想について知事にお尋ねします。
 答申では「県立病院としての役割を果し続けるために」の中で、「知事が人事権、予算編成権、予算執行権を持っていることから以下のような制約とそれに伴う諸問題が生じている」と次のように指摘。「柔軟な職員の増員・配置できず、事務・技術の人事も現状を考えず定期異動。さらに、高度・複雑化する医療技術・医療システムや診療報酬改定等の医療制度改正などに、的確に対応できる専門的能力のある人材の育成確保に支障をきたした。各セクションのリーダー等に権限をきちんと与えた上で、適切な評価と処遇が出来ていない。柔軟で経済性の高い病院経営を行えない」と極めて厳しい指摘です。
 この中身は病院だけでなく本庁全体、現地機関にも当てはまるものと思われます。知事はどのように受け止めたのかお尋ねします。
 一般社会ではこのような厳しい指摘に対してそれを改善することが、責任者の第一次的責務です。知事がその指摘に応えず、県立病院を何の改善策も示さないまま、反省もなく、独立行政法人に移行することは、あまりにも無責任と思いますが、知事の感想と対応をお聞かせください。

 県立病院独立法人化の検討を進めるにあたって、移行時期を22年4月と明記している、これでは検討ではなく準備を始めるということでは有りませんか。移行に伴う事務的作業はいつから始めるのか、職員からも不安や疑問の意見が続出しています。移行の期限を撤回すべきと思いますが病院事業局長の見解をお尋ね致します。

<村井知事>
 先般、村上議員のご質問にもお答えしたところでありますが、行政機構審議会からは、「県立病院が現在抱える様々な課題を解決し、今後も良質な医療サービスを安定的に提供するためには、地方独立行政法人とすることがもっともメリットが大きいと考えられる」という趣旨の答申を頂いたわけでありますが、その前に議員ご指摘のような、小林議員ご指摘のような、様々な問題点の指摘がありました。
 ただ現在われわれが持っている手段をいくら組み合わせてみても、その厳しい指摘に応えられない。一方では大変医療の体制整備というのは、緊急を要するわけでありまして、そのよってきたる所以につきましては、私も先日いささか所感をのべたところでありますけれども、いずれにいたしましても、医師をはじめとした医療スタッフの確保が、病院経営の大変大きな課題となっているわけではありますが、現在のたとえば、一例をお話ししますと、地方公営企業法の一部適用では、制約が大きくございまして、限界があると。私も運用をしていてしみじみ感じておりまして、そういう意味で、これは一つの例でありますけれども、いろいろ比較する中で、地方独立行政法人というかたちになれば、自由度がずっと広がる。そのほうがはるかに適切ではないかというふうに感じているところであります。
 県立病院の果たすべき役割というのは、要するに地域の皆様に安心で質の高い医療を継続して提供するという、その一事であります。そのためにどうしたらよいか。このために病院事業局を中心によく検討するように指示したところでございまして、いわゆる地方独立行政法人という形態は一義的なものではありません。いろいろこの中で属性を明確にしていくこともあるだろうと思います。そういうことを現在の県立病院の実態に合わせてよく吟味していくことがこれからの作業であろうと。それも急がなければならない。このように思っている次第であります。

<勝山病院事業局長>
 地方独立行政法人への移行時期に関するご質問です。今日の病院を取り巻く状況を考えますと、ただいまの知事のお答にもありましたように、できるだけ早く経営形態を見直すことが必要だろうと思っております。
 一方県立病院の地方行政独立法人化についてはいろんな議論があります。関係する方々からの意見をお聞きし、丁寧に対応していく必要があるだろうと思っております。また、地方独立行政法人に移行するには、定款の作成、中期目標・計画等の策定、人事給与、および予算会計制度の構築等、膨大な事務があります。こうしたことから、行政管理検討委員会では、今後事務方が具体的に地方独立行政法人化の検討を進める上での目標移行時期として、平成22年4月としたものです。今後関係する皆様のご意見をお聞きしまして、検討を進めた上で、県として最終的な判断をしていくことになろうかと思います。
 現在は移行するかどうかの検討を進めるという段階です。この検討を進めた上で、さらに具体的に地方独立行政法人化を選択されましたら、この準備が進められることになろうかと思います。現在は、地方独立行政法人化の検討を進めるという段階です。

 「22年4月」と明記されているわけですから、これに間に合うようにはいつから事務的続きを始めるのかということをお尋ねしているんです。

<勝山病院事業局長>
 さきほどお答えいたしましたけれども、現段階はですね、地方独立行政法人化を選択肢の一つとして、主要な選択肢の一つとして、検討を進めるという段階です。したがいまして、現段階で地方独立行政法人化だけを目的とした準備が始まっているわけではありません。現在は法人化の検討を進めている段階です。そして、現段階での平成22年4月というのは、これはあくまで目標移行時期です。これについても今後検討を進めるということになります。

 それでは22年4月が移行時期というが、決まっていないというふうに判断してよろしいんですか。

<勝山病院事業局長>
 先ほど申し上げておりますけれども、「平成22年4月」というのは、目標移行時期ですね。したがって、われわれとしては、これはひとつ与えられた期日だと思っておりますが、現段階では、地方独立行政法人化の検討を進めている段階。そのようにご理解いただきたいと思います。

 「ボイス81」木曽地域会議で、木曽病院院長は知事に「独立行政法人になったら私は耐えられないからやめます」と述べられたとお聞きします。また県立病院で働くみなさんも参加している県職員労働組合も独立行政法人化に明確に反対しています。「地域医療を守るための議論ではなく、財政改革が出発点。1,500人の職員の削減が真の狙い」と指摘。経営効率が優先され、住民負担の増加がつながりかけない。医師や看護師の人材確保は疑問。県立病院で働く職員は現在の独立行政法人化は現場の実態が分からないままの議論。これでは職員のモチベーションは低下させる。公益企業法の一部適用から、全部適用で経営改善を図ることを提案としています。こうした意見を聞くことこそが、知事の役割ではありませんか。
 独立法人化が行き詰ったら、どのように対処するのか知事にお尋ねします。

<村井知事>
 いま、小林議員からご紹介のようなご見解もあろうかと存じます。そういう意味では、そのようなご意見も含めて、いろいろなご意見がこの問題についてはありますから、それにもしっかり耳を傾けながら、いわば合意を関係者の間で合意を形成する。それには相当時間がかかりましょう。しかし、医療の危機というのは、これはまさに看過できない危機でございます。そういう意味では、時間をかけていればいいという問題ではありません。だから可及的速やかにという意味で、平成22年4月。それまでにともかく独立行政法人化をして、きちんとした新しい体制でこの県立病院の医療体制を再構築しようということで考えているわけでありますから、ご理解を頂きたいと思います。

 第五次保険医療計画での、上伊那圏の基準病床数についてお尋ねします。第四次計画では上伊那はベッドの不足地域でした。基準病床数より300余ベッドも不足、その結果諏訪圏や飯伊圏などの病院に患者が行かなければならず、何とかベッドの確保をしなければと医師会などと協力し、取り組んできた一人として、今回の第五次計画は理解できません。これまで不足していた上伊那が52床も上回り、飯伊地区が130ベッドの不足地域となりました。その原因が上伊那圏から患者が流出していることが原因と言われています。これではベッドの不足地域は益々患者が圏外に行かなければならず、圏外に行けば行くほど基準病床数が減らされる。これでは地域医療は守られません。人口比で見れば飯田圏は179床上回り、上伊那圏は364床も不足になります。当然、こども病院などの特殊ベッドは考慮し、人口にふさわしい基準病床数にすべきと思いますが、第五次計画の算出根拠と今後の見直しについて、伊那保健所長も務め上伊那の実情にも詳しい衛生部長にお尋ねします。

<渡辺衛生部長>
 基準病床数の算出根拠についてお答えします。基準病床数につきましては、医療法に基づきまして、二次医療圏ごとに療養病床と一般病床の基準病床をそれぞれ積算し、それを合算して算出しております。一般病床につきましては、5歳刻みの年齢別人口に退院率と平均在院日数をかけたものから、又の医療機関からの流入患者数、また他の医療機関への流出患者数を加減致しまして、それを病床利用率で割って必要な病床数を算定しております。また療養病床についても、同様に5歳刻みの年齢別人口に、入院・入所利用率をかけまして、介護施設で対応可能な数を差し引き他の医療圏からの流入患者数、またの医療機関圏への流出患者数を加減してから、病床利用率で割って算定いたします。
 この計算方法に基づきまして、年齢別人口などをあてはめて計算した結果、上伊那地域の基準病床数は1,359床となったわけでございます。上伊那地方は人口構成が比較的若いことに加えまして、他の医療圏への流出患者数が今回は大きかったために基準病床数が他の医療圏より少なくなりました。
 見直しということについてでございますけれども、この医療計画というのは、5年に一度という形になりますので、5年後に見直しという形になります。

 次に、現在の医療崩壊は県立病院の独法化などで改善できるものでは有りません。昨日は銚子市民病院の閉鎖のニュースが報じられました。昨年一年間で、全国で50もの病院が倒産し、県下でもいくつかの病院が閉鎖、縮小に直面しています。警察も消防も県民の命を守る最前線で頑張っています。医療も県民の命を守る最前線です。医療の分野だけが独立採算制を求めてられても、県立病院の設立目的から見ても成り立つはずがありません。医療への公的支援を削り続けてきたのが、医療崩壊の原因です。政府の社会保障費を年2,200億円もの削減に国民の怒りが爆発しています。県医師会も削減撤廃の決議も行っていますが、知事の所見をお聞きいたします。

<村井知事>
 私に対しましては、政府の社会保障費の年2,200億円の削減、これが医療崩壊の原因ではないか。これについてどう考えるのかというご趣旨かと思いますが、それは県医師会でこれの削減撤廃の決議がされていることはよく承知しておりますが、それにしても政府も金がないんですね。この間、藤沢議員にも申し上げましたけれども、要するに医療費がOECDで一番低い水準になっちゃってる。それは国庫負担が、重いものですから、どんどんどんどん減らしてきた。その一環なんですよ。もう要するに節約をしてそのしわがよっている。これは私は否定しようもありません。その通りだと思います。
 ただ、国の社会保障費におきましては、要するに「骨太の方針2006」で「19年度以降、5年間で1兆1,000億円。毎年度2,200億円減らす」と、抑制するということを決めておるわけでありまして、これは平成21年度の概算要求基準におきましても、堅持されている事でありまして、やはりそういうことで、絞っていかざるを得ないのでしょう。
 しかし、一方来年度予算では、緊急性や政策効果が特に高い事業につきましては、重点配分するために、重要課題推進枠、約3,300億円を新設しておりまして、これを用いて厚生労働省では、社会保障の機能強化のための「緊急対策5つの安心プラン」などに1,860億円を要求しております。これによりまして、医師確保対策などを推進するとしております。
 したがいまして、こういう減らすという方向とこのような形で増やすという方向の両方で最終的のどうなるのかということを国の年末の予算編成を現実に見てみないとなんとも言えないということであります。いずれにしましても、県としては、今後社会保障費をめぐる国の動きを注視してまいりますとともに、県民の医療や福祉の充実に向けて必要な施策や予算措置を国に対して強く要求をしてまいりたいと考えているところであります。

 「ワーキングプア」と言われる働いても働いてもまともに生活ができない層がどんどん拡大されている一方で、庶民の生活を直撃する原油の高騰や食料、家畜の飼料の高騰は深刻です。その原因が、世界を股にかける「投機マネー」と呼ばれております。知事は企業の負担を増やせば、企業は海外に逃げだしてしまうといいますが、カリブ海のケイマン島の人口40,000人の小さな国があります。ここに80,000社の企業が登記をされているようです。一つのビルに18,000社。日本の投機会社も名を連ねているそうです。
 いま世界の投機マネーは、5,000兆円を超えると言われ、空前の規模です。そのマネーが情報も公開されず、規制も受けず、課税もされず、世界の商品価格を暴騰さて、企業買収を激化させ、庶民の生活を脅かし、そこで得た暴利の一端が日給10億円という投機マネーの仕掛け人達の報酬になっていると報道されています。こういう人たちには減税で、庶民には消費税増税では社会はなりたちません。
 経済通と言われる知事は、このことについてどのように考えているのか、お尋ねいたします。

<村井知事>
 ケイマン島のみならず、いろんなところで「タックスヘイブン」というのがありまして、議員ご指摘のようなことがあることは百も承知であります。そういうことがあったとして、それじゃあケイマン島をつぶすことができるか、ということでありまして、それはできないんですね。そうであれば、我々はどういう選択肢があるのか。そういうことで、先日のようなことを申し上げたわけであります。そんなこと百も承知の上で政策を我々は提言しているわけであります。

 このような無秩序な経済を認めて、それに改善を求めるのではなくて、それに対応することになれば、私は矛盾はますます激化をせざるを得ないと。収入は増えずに、格差はどんどん広がる。「おむすび一つ食べたい」と言って命を絶つような人がいるなかで、片方は1日10億円の所得。こんな格差を認めた上で、それにどう対応していくのが知事の考えとは私は思えません。本当に県民の暮らしを守る、県民の命を守る、こういう観点からもそういう無秩序な経済的な仕組みを正すことにもっともっと力を入れるべきだと思いますし、そのことが長野県の活力ある県政をつくる上で大きな障害になっていることは間違いないし、医療の問題でも自由化、民間、こうなっていくと医療外負担の拡大は際限なく広がっていきます。
 ある病院では、1日個室に入院すれば、25万円だそうです。こんなことでは地域医療は絶対に守れない。こういう格差の是正こそが私はいま求められているんではないかというふうに思います。
 そういう点でも、経済通と呼ばれる知事は消費税に固執するなどではなく、不公正の税制の改善や格差の是正こそ、全力をあげて取り組んで頂くことを強く求めて私の質問を終わります。