2008年2月議会  3月14日 藤沢のり子

廃棄物の適正な処理の確保に関する条例案反対討論

 議題30号 廃棄物の適正な処理の確保に関する条例案について反対の立場から討論いたします。
 2年前の2月県議会に提案された信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する前条例案に替わり、改めて提案された新条例案は条例の性格そのものを大きく変質させての提案となりました。条例案が排出事業者の責任の明確化、自社処理の規制など評価すべき取り組みもあり、すべてを否定するわけではありませんが、党県議団は県民の不安を招き、廃棄物に対する基本的な視点が欠落している条例案を容認することは出来ません。
 以下主な反対の理由について述べさせていただきます。

 まず一点は発生抑制と資源化という廃棄物行政の基本姿勢が貫かれていないということです。
 出たゴミを適正に処理することは当然のことですが、根本的な解決のためには廃棄物を極力出さない発生抑制と資源化が不可欠であるということは幾多の取り組みを経ての今日の到達点であり、社会的な共通認識となっています。全国的にも半数近くの県で盛り込まれた発生抑制や資源化条例が、県と事業者、県民によって共有されています。それなのになぜ当県はこの時点で出たゴミを適正に処理するための条例に限定するのでしょうか。この遅れた発想は社会的にも理解がされないのではないでしょうか。

 二つ目には県民の大きな不安を招いている施設建設に住民の意志反映の仕組みが弱められたことです。
 長野県はこれまで行政指導という形ではありましたが、住民の立場に立って施設建設の申請に当たっては住民同意という仕組みを作り強引な建設促進に歯止めをかけるための努力をしてきました。県は新条例案の提案にあたり住民同意書制度は法的根拠のないものであり、又同意書そのものを巡ってトラブルも発生していると同意書に疑義を唱え始めていますが、長野県行政書士会の皆さんが県外の大手産廃事業者の県内での建設促進に歯止めをかける役割は大きい、県外業者からの長野県内に処理施設を作りたいという問い合わせにたいし、住民同意が必要というとあきらめるケースが多いとの体験をお話いただいたことを私は一般質問でもご紹介いたしましたが、県民にとっても長野県の環境保全にとっても大きな意義があったことは確かな事実として受け止めるべきであります。
 今回の条例ではこの住民同意制度を無くして、代わりに施設建設の許可申請の前に住民と市町村長への説明責任を果たさせる事業計画協議制度という仕組みが作られましたが、これまでの審議を通しても住民同意制度と同様の建設の可否に係る住民の意志を担保できるものではなく、手続きを踏んでいけば法を犯していない限りたとえ町村長が先頭に立って反対しても県は許可手続きをとるということでした。審議の過程で市町村長のご意見は尊重するとの見解を示さざるを得なくなったことは、県民の世論への受け止めであるとは思いますが、しかし、その保障が明確に示されたわけではありません。
 確かに住民同意を許可要件にしてはならないという法解説や国の指導もありますが、法の制約の中でも県民の立場に立って住民同意制度を要綱などに活かしている県は20数件に及んでいることは県自体が認めているところであります。住民同意制度はまだまだ不十分な国の環境保全基準に対し、住民が自らの命や健康を守るための自己防衛であると共に地域づくりの選択権、自治権を保障するものであります。公害調停での紛争解決というお話もありますが、費用は住民負担になり、これまで行われた調停の経過を見ても実効性に乏しいことも指摘されております。

 安全な施設建設は当然のことですが、地域の皆さんにとって大切にしてきたふるさとの山を水源地を廃棄物の処分場にはしたくないという思いを正当な理由がないなどと非難することは出来ません。
 現在産廃施設建設が持ち上がり町を上げて反対している信濃町や飯縄町、立科町の皆さんにとって大きな支えである住民合意制度を無くさないでほしいという要請は切実な願いであり、今議会にも町議会の議長さんをはじめ町議の皆さん、関係住民の皆さんが大勢傍聴に訪れ審議の成り行きを見守られています。私たち長野県議会は前条例以上に問題を含んだ新条例は今議会での採択を見送り県民の代表として県民の願いに応える条例とするための努力をすべきではないでしょうか。

 以上反対の理由と県議の皆様への理解をお願い申しあげ討論といたします。