2006年12月県議会

12月18日 高村京子議員

議第2号「真の分権社会の構築に資する
道州制に関する意見書」案、反対の討論
議第2号「真の分権社会の構築に資する道州制に関する意見書」案に、共産党県議団を代表して反対の討論を行います。
 平成12年の地方分権一括法制定以後、平成の市町村合併がいっせいに強行的に進められつつある中、第27次地方制度調査会は道州制の検討を内閣総理大臣に答申し、平成16年3月から第28次地方制度調査会において道州制の具体的な姿が検討され今年2月にその結果が答申されました。
 この内容をみますと「道州制は、広域自治体のあり方を見直すことにより、国と地方双方の政府を再構築するもの」と位置づけています。つまり単に都道府県の合併や再編ではなく、それをテコに国のあり方と市町村の大再編を行おうというもので、戦後最大の大改編と言うべきものです。
 安倍首相は、三年以内に「道州制ビジョン」の策定の方針を出すなど、政府与党内で後方を置き去りにした検討論議が進められていることに、県内外各層から懸念や不安の声がおこっていることは当然です。
 12日の一般質問で古田県議も触れられたように、地方制度調査会が示した区割り案は「北関東信越・または北関東」の枠組みは、飯伊地方にとってメリットがなく、地域をあげて反対しておられること。村井知事が「都道府県はなくなってもいい」と発言され、長野県としての枠組みにはこだわらないとも受け取れる姿勢を示された事に対し、「もっと全県的視点を持って進めるべき」と注文をされました。
 日本経団連のいわゆる「奥田ビジョン」や、政府の「日本21世紀ビジョン」が道州制構想を打ち出していますが、これは国家の役割を外交や、司法・金融などに重点化し、アメリカや財界の要求にこたえられるように国家の機能を強化する一方で、地方制度を身近で親切な行政から、財界の経済活動にとっての支障をなくし、大型プロジェクト事業などを進めやすくする機構にするというものです。
 地方制度調査会の答申も、まさにこうした財界の道州制構想と一致するものです。
 現行の都道府県を再編して国の出先機関と省庁の仕事の一定の部分をもって来て、十程度の道州を作る一方、一万人以下の町村を更に合併を進め、
 全国3百程度の自治体に再編してその自治体に都道府県の仕事の多くを引き受けさせる方向です。
 今の身近な市町村役場・行政が無くなり、今でも身近とは言えない県が道州へと更に遠ざかって行くことになります。
 基礎自治体は、経営効率を理由に行政の多くの仕事が「官から民へ」と進められることになるでしょう。
 「官から民へ」では、建築における耐震設計偽装問題が起こり、小泉構造改革の弊害を露呈しました。医療や福祉分野でも自己責任を求め国と都道府県の責任をあいまいにしてきました。また、「三位一体」改革と称しての地方自治体に対して地方交付税等の財源の削減は、合併してもしなくても地方自治体の財政を苦しめています。
 全国で3200から1800に減少した市町村合併、長野県は120から81になりました。それぞれの住民が真剣に出した結論を尊重し、合併した自治体も自立を選んだ自治体にも長野県がどのような支援をすることができるのか、そのことにこそ県として果たす今日的大きな役割があると思います。
 国の更なる合併推進政策や現在の都道府県の役割を縮小させながら、道州制に向けて拙速な論議を進めるなら、広域的な地方公共団体としての役割を果たすことはできなくなります。
 国のこれまでの動きは広域的な地方公共団体の広域化、巨大化であり地方自治体の本旨である「地域住民の健康と福祉の増進」からはますますとおざかります。全国を10程度の道州に分けるとすると1200万人もの広域自治体は、これは自治体としての住民自治を保障し得ないものです。
 道州制を目指すタウンミーテングは今年になって福岡・大阪・稚内でおこなわれましたが、福岡ではやらせ質問があったことが福岡県議会で発覚いたしました。
 この国の形をやらせ質問で論ずるより、国民の暮らし応援の自治体を尊重した都道府県と国の役割をこそ再確認すべきではないでしょうか。
道州制をめざした論議は、すでに破綻し国民いじめが明らかとなった経済財政構造改革を突き進む方向であり、日本の未来をますます希望の無いものへと進むものであることを指摘して反対の討論と致します。