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2003年 7月議会
 石坂議員の「一般会計補正予算案」賛成討論(7/18)
 第1号一般会計補正予算案に賛成の討論を行ないます。
 7月定例県議会に提案されました補正予算案は、一般会計16億5,752万4千円で、今回の補正を加えた一般会計予算は9,373億4,398万7千円となります。
 このうち歳入は、国庫支出金3億2,678万円、繰入金10億9,356万1千円などとなっていますが、国庫支出金は、新世代地域ケーブルテレビや携帯電話鉄塔助成などの情報化推進事業に、繰入金は、緊急雇用創出特別基金からの繰り入れで、今回の補正予算が雇用創出への対応を最重点にしていることが反映されています。
 今回の補正予算の特徴として重要なことは、「財政改革推進プログラム」による方針のもと、新たな借金となる県債をいっさい増やさず、厳しい財政状況のもとでも、福祉・教育・環境・雇用への予算の重点化が図られていることです。従来、「景気の下支え」や「景気対策」の名のもとに、補正予算での公共事業の積み増しが行なわれ、そのことが結果として県内景気や県内業者の雇用拡大に大きな効果をあげられないばかりか、県債残高をうなぎのぼりに増やし、県財政を硬直化させてきたことを思えば、このことは、財政健全化にとっても、県民要望実現にとっても、極めて重要なことだと思います。
 田中知事は、議案説明のなかで本年度の財政見通しについて、「県税収入については、総額として3年連続での減収が見込まれ、地方交付税につきましても国の減額を受け、前年度に比べてマイナスとなることが予想される」と述べています。
 今県議会で議員提案による「三位一体の改革に関する意見書」を全会一致で採択いたしましたが、国は地方への責任ある税財源移譲の根拠も保障も示さないまま、補助金の縮減・廃止や、地方交付税の財源保障機能の見直しなど、地方財政にとっては認められない方向を目指そうともしています。このような厳しい状況の中にあって、新たな借金をできる限り増やさず、限られた財源を有効に生かすという立場で、公共投資を見直し、福祉・教育・環境・雇用を重視した「財政改革推進プログラム」の着実な推進が、いっそう強く望まれます。
 
 次に、歳出についてです。
 まず知事の議案提案でも述べているように、今回の補正予算では、「雇用問題を最重要課題と考え予算を傾注した」という雇用対策では、緊急雇用創出特別基金を活用し、10億9,356万円余が計上され、そこから創出される雇用人員は述べ71,000人日と見込まれています。このうち、18の県事業の中には、建設産業の構造改革を支援するため、「建設産業支援コーディネーター設置事業」と、「建設産業雇用対策森林整備事業」が提案されています。建設業からの他産業への転換に関連して、中小企業融資制度資金のメニューの中に建設業新分野進出支援資金が創設されましたが、今回の補正では、建設事業者が農業分野に進出する場合に、金融機関が行った融資に利子補給をすることも提案されています。建設産業から農業分野に進出することへの批判や、不安も語られましたが、この日本で、大企業の工業製品の輸出による貿易黒字の解消のため、農産物の輸入を拡大し、ヨーロッパやアメリカではあたりまえの主な農産物の価格保障さえ無く、本来基幹産業であるはずの農業をこれほどまでに荒廃させてきた自民党政治にこそ批判を集中するべきではないでしょうか。もちろん農業の現状も、決して甘いものではないからこそ、自然豊かな長野県で、荒廃農地をよみがえらせ、基幹産業として成り立つ、誇りと生きがいの持てる農業の振興策を考えることは、ますます大切になっているのではないでしょうか。
 
 また、短期雇用という制約はあるものの、福祉・医療、環境に加え、ヤミ金融の被害相談・情報集約事業として専門的に相談に応じる相談員の配置を行い、学校周辺をはじめとした地域の警戒・パトロールを行い、犯罪を未然に防止する警察支援要員の配置など県民の安全を守る対策が実行されることとなっています。
 長崎県の中学生による幼児を死亡させた事件では、県民にも大きな衝撃が広がっています。県内での児童虐待も相変わらず深刻ななかで、県として、子どものありのままの声を暖かく受け止め、子どもと一緒に考えるチャイルドライン、つまり子ども専用電話ですが、この活動への経費を助成するための予算も提案されました。
 砥川流域では住民参加で総合的な治水・利水対策を検討する「流域協議会」も発足しました。今回の補正予算では、町からの提言に基づいて砥川流域の森林整備前後の保水力の変化を調査し、洪水防止機能の評価・検証を行うとともに今後の森林整備方法を検討するため、「みどりのダム森林保水力調査事業」予算も組まれ、新たな挑戦が始まろうとしています。
 教育の分野では、飯田高校生徒刺殺事件検証委員会の提言に基づいた、学校で重大な事故が発生した場合に被害者等へアドバイザーを派遣するなどの支援体制を整備することにもなります。

 今、長野県は、深刻な借金依存財政からようやく抜け出す道を歩み始めました。95年決算での県債依存度は20.2%、96年決算では19.4%だったものが、2000年度決算では11.2%、2001年度決算では11.8%となり、2003年度は今回の補正後での県債依存度が12.7%となる見込みです。県の借金、県債のほとんどを占める普通債の残高は、吉村前知事と田中知事の交代時に1兆5857億円とピークでしたが、そのピーク時と比べて2002年度末、つまり昨年度末見込みは443億円の減、今年度末見込みは現在のところ970億円の減となります。
 今議会の議論の中で、昨年度、単年度の実質黒字が約98億円でたのだから、「財政改革推進プログラム」を見直すべきだとのご意見がありましたが、増え続けるばかりだった県の借金が、ようやく少しづつ減る傾向になり始めた今、この「プログラム」を着実に進めてこそ、年間予算をはるかに上回る深刻な県の借金を減らし、財政再建をはかることができるのではないでしょうか。
 今回提案されました補正予算が、その意味で、厳しい県の財政状況のもとで、財政再建と雇用対策を中心とした県民要望を同時に実現していこうという立場で編成されていることをなによりも評価して、賛成の討論といたします。

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