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2003年 7月議会
 藤沢議員の「部落問題請願書」反対討論(7/18)
 日本共産党県議団を代表して「長野県部落解放審議会答申にもとづく部落問題の根本的な解決と人権政策の確立を求める請願書」についての反対の討論をいたします。
 本請願の趣旨は現在もなお根深い差別意識は残っており、悪質な差別事件は後を絶たないとして、環境、教育、生活面での格差の是正など残された課題を一般対策でなお引き続き実施が必要との部落解放審議会の答申に基づく対応を県に求める内容であります。私たちは差別は基本的に解消されてきており、これ以上の特別扱いは逆差別につながるものとしての立場に立って不採択に賛同いただくよう呼びかけるものであります。
 長野県の同和行政はこれまで部落開放同盟の圧力に屈し、自治体としての主体性を失い、東日本一不公正、乱脈と言われてきました。五千万円を超える解放同盟への団体補助金をはじめ同和関係の運動団体への補助金は他の県民の自主的な団体への補助金とは比較にならない異常に高額のものでした。更に二月県議会の石坂議員の質問で明らかにされたように解放同盟の役員には啓発事業人件費、営農指導人件費、小規模事業者経営指導員人件費相当分として、解放同盟県連幹部に支給されていたことも判明してます。
 事業委託費としても別枠で支出されるなど二重三重の支出がされてきましたが、これがどのように使われてきたのか県民にはほとんど公開されてきませんでした。
 公共事業についても優先的に対応されてきたのは業界では周知のことであります。
6月27日に、県から複数の現場に当然配置すべき現場代理人を常駐させていなかったことから建設業法違反で処分を受けた佐久地方の同和事業者は他の建設事業者が仕事が減少している中、同時にいくつも請負っていました。
 このような状況にあった長野県の同和行政を正し、自治体としての主体性をもって公正で民主的な方向へと転換を図ることは長野県としてのこれからの大きな使命であります。
 田中県政は今着実にその改革への歩みを始めており、田中知事は今年度を持って、基本的には同和対策を終了するとの方針を打ち出しています。
 私はこの請願が田中知事の改革を押しとどめようとするものであり、部落問題の根本的な解決にとって障害にこそなれ前進を阻むものであるということを申し上げておきたいと思います。
 さてそこで差別解消への現状認識についてでありますが、請願書にあるように本当に差別は根深く現存し、悪質な差別事件が後を立たないのでしょうか。                       
 現状はどうなのか検証してみたいとおもいます。
 7年前に出された国の諮問機関である地域改善対策協議会総括部会の報告では部落差別の現状認識について次のようにのべています。
 住宅、道路等の物的な生活環境については改善が進み、全体的には同和地区と周辺地区との格差は見られない。同和問題に関する差別意識は着実に解消に向けて進んでいる。としています。
 このことは又長野県についてもいえることであります。
 10年前の長野県と長野県教育委員会の同和地区実態調査報告書ですら同和地区の住宅や生活環境整備は一般とほとんど格差は認められず就職、進学など部落出身であることを理由にした差別はほとんどないとのべています。
 また、部落差別の象徴のように言われてきた結婚問題は地区内に居住する20代の夫婦は約80%が地区外の人と結婚しており、残りの20%の夫婦も縁あって結婚したものが圧倒的となっています。地区外に暮らしている夫婦の地区外の人との結婚の割合はもつと高くなると思われます。 
 この傾向はその後更に進み、長野市の資料によると平成2年以降の婚姻についてみるとすべて差別を受けたことはないと回答しています。
 このように長野県においては部落差別は実態としてほぼ解消してきていると見るべきです。
 この30数年の間に国と地方自治体によって同和対策事業に約14兆円、長野県でも県と市町村合わせれば、2千数百億円を超えるお金が費やされてきましたし、県民の努力が民主的な世論を醸成してきています。
 総務省が昨年の3月を以って同和対策を終了するとしたのもこの現状認識の上に立ってのことであります。
 県部落解放審議会の答申が就労、教育等における課題があり、依然として差別事象が後を立たない現状としていますが、実態を反映したものではありません。
 差別事象とされていることも賎称語を用いた落書きのたぐいが圧倒的で、誰が誰に書いたかもわからないものです
 もし、部分的に差別があったとしても個別の教育的な対応で十分解決できるもので あります。
部落問題の解決とは同和地区と地区外の様々な格差を無くすことは当然のこととしてその垣根を取り払い国民としてひとつに溶け合うことであり、旧身分などを理由にした差別が社会的にも受けいれられない状態になることではないでしょうか。
 当県における現状が県民的には基本的に解決されている中で、差別があると繰り返し尚特別な施策を要求することは県民の理解は得られるものではありません。
 この横暴を許しておけば県民の間に特別な人々としての存在になり、差別意識の解消にとって最大の障害となるでしょう。
 又、行政の側も特別な人々の存在を固定し続けることになり、地域の住民からは逆差別を指摘され、差別感情を再生産する土壌を作り出すことになります。
 同和だから特別扱いはしない。そのことこそ真の差別解消につながることを確信するものであります。
 差別や人権問題は思想、信条、性別など様々な分野に広がる多岐にわたる問題であり、憲法にもとずく基本的人権の尊重、擁護をはじめ、世界人権宣言、子供の権利条約などに示された民主主義の原理に基づき解決が求められているものであります。     
 県議会が、開かれた公正な県政と民主主義の前進のために良識を発揮され、この不当な請願に反対をされるよう期待しまして反対の討論といたします。

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