2013年11月定例会 一般質問 11月19日  小林伸陽 

1.消費税増税について

2.TPPについて

1.消費税増税について

<小林議員>
これから質問する項目は、国政の問題ですがしかしこれらの問題は県民の暮らしや経済にとって計り知れない影響を及ぼす問題であり、県政も避けて通れない重大問題です。そこでお尋ねします。
知事は国の財政や県財政から見て、消費税の増税は必要との見解をこれまで示してきているが、今回の提案説明では消費税引き上げに伴う景気の下振れリスクの懸念を表明されました。県内経済は依然として低迷し県民の不安はさらに広がっています。消費税の引き上げで国、県の財政がどの様に改善されると予想しているか、消費税率引上げについて知事の考え方をお尋ねします。
過去の消費税の導入から税率の引き上げ後の国の税収総額の推移を見てみますと、消費税が導入された翌年の税収は60.1兆円あったのに、その後毎年税収は減りつづけ、平成6年には51兆円と大幅に減り、9年の5%引き上げ時には53.9兆円あったが、その後さらに減り続け、21年は38.7兆円と激減、その後若干増えはじめと言え、24年は42.6兆円、消費税の導入から税率引き上げごとに税収が減り続けています。
県のこの間の税収の推移と、8%時の県税収の見通しと、県の購入する物件や公共事業に対する消費税の負担はどのくらいになるのか、県立病院だけでも7億2千万円とも言われています。県内全体でどのくらいの税になるのか、総務部長にお尋ねします。
税収の減少は景気の後退が大きな要因、増税に伴う県内経済に及ぼす影響について商工労働部長にお尋ねします。

<阿部知事>
消費税についてのご質問であります。私は安心できる社会をつくっていく、安定した社会保障制度を構築していく、そうした観点で消費税の引上げはやむを得ない選択だと思っております。今のままの財政状況続けていくということはいろんな意味で持続可能性が損なわれるわけでありますので、しかしながら他方で、経済に対する影響あるいは、昨日もご答弁申しあげましたけれども中小企業や低所得者の皆様への影響、そうしたことをしっかり踏まえたうえで経済対策等の対応をしていくことが必要だと考えております。

<総務部長>
消費税率の引上げによる県の収支等への影響ということでお尋ねをいただきました。
まず歳出の増です。県は消費税の申告義務のある企業会計等を除きまして納税義務を負いませんので、事業執行にあたって負担する消費税額を区分するための会計処理というようなことはしておりません。このためあくまで理論的に計算すると、という前提でございますけれども、平成25年度一般会計当初予算について課税対象である物品調達、工事発注の歳出にかかる消費税額を機械的に試算いたしますと、税率が5%では50億円程度、8%になりますと80億円、税率引き上げの影響額は従いまして30億円程度になると試算しております。
続きまして県の収支への影響ということでございます。歳出面につきましてはただいま申しあげましたように、物品調達ですとか工事発注等にかかる消費税負担が増加するということになります。また今般の社会保障と税の一体改革によって、社会保障の充実が実施されるということになっておりますけれども、その具体的な制度設計あるいは県の財政負担が明らかになっていないというのが現在の状況でございます。
歳入面でございますが、平成26年度は、地方消費税は40億円程度増加する見込みでございます。しかし税収の増加に応じて地方交付税等は減少するということも考えられるということになります。いずれにしましても、年末に決定される地方財政対策においては、地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額が確保されるものと考えております。
今後、国の新年度予算や地方財政対策を注視する必要がありますけれども、現段階では消費税率の引上げは本県の財政収支に大きな影響を及ぼすものではないという想定をしております。
続きまして、増税後の県税収入の見通しでございます。県税収入は県内外の経済情勢や社会動向の影響を受けるとともに、税制改正による税制度の変更によって大きく変動いたします。
例えば消費税が導入されました平成元年でございますが、バブルの好景気によりまして県税収入は右肩上がりで推移しております。また、地方消費税が創設された平成9年当時、税制面では住民税の特別減税があったという状況の中でございますけれども、企業業績が堅調に推移したことから県税収入全体は増加をしていたというのが過去の状況でございます。
税率の引上げによって景気の腰折れが懸念されるというところでございますが、その影響を緩和する為の減税措置を含む各種経済対策が講じられるとされているところです。県税収全体への影響ということになりますと、景気の動向に大きく左右されるという面が強いことから、現段階で見通しをはっきり申しあげることは難しいと考えております。

<商工労働部長>
消費税の県内経済への影響についてのご質問でございます。
景気の変動は複合的な要因が複雑に絡み合って影響を及ぼすために、今回の消費税増税に伴う動向のみを取り出して、殊県内について正確に予想することは難しいものと認識しております。
そのなかで本年10月1日に政府の経済財政諮問会議がまとめた報告書では、来年4月の消費税増税の国内経済の影響につきまして、駆け込み需要とその反動によって経済に変動を生じさせる、家計の消費に影響を及ぼす、企業活動に一定のコストを生じさせる、こういったことを通じましてマクロ経済に影響を及ぼすという報告となっております。
国ではこの来年4月以降の景気の下振れリスクに対応致しまして、持続的な経済成長に結びつけるために、来月上旬にも5兆円規模の経済対策を策定し、平成26年度予算とあわせて補正予算を編成することとしております。
県内企業は経営体制が脆弱な中小企業、小規模企業が多いことからも、消費税の円滑かつ適正な転嫁を図るとともに、県と致しまして国の経済対策の有効活用を図りながら経済の活性化に取り組んでまいりたいと考えております。

<小林議員>
国の消費税の導入時には60兆円もあった税収が51兆円に減り、5%増税後はさらに加速して42.6兆円まで減る。とうとう国の借金は1000兆円という大台になりました。今の答弁をお聞きしても、県税収入にあまり影響はしないだろうということでありますし、支出は新たに30億円くらいの増になるのではないかと。決して消費税増税が県税の改善にもならず、深刻な不況を生み出すことは、すでに過去の消費税導入時、5%引上げ時に繰り返し試されずみの状況であります。
こういうなかでも消費税を引き上げることには、私は断固として反対すべきだと。知事の再考をもう一度お尋ねします。

<阿部知事>
消費税の増税、これは私は先ほどもご答弁申しあげましたように、財政の持続可能性そして安定した社会保障の充実、そうした観点ではこれは避けて通れないことだと考えております。ただ、他方で配慮すべきところにはしっかりと配慮して経済対策等取り組んでいくという前提のなかで、消費税率の引上げ、これは地方財政にもプラスに寄与するわけでありますので、私どもとしては、この県民の皆様方、国民からいただいた増税分をしっかり有効に活用していくというところに責任を持ちながら対応していきたいと考えております。

<小林議員>
消費税は増税して他の減税をする、こんないい加減な税制はないと私は思います。消費税の増税に断固反対することを表明しておきたいと思います。

2.TPPについて

<小林議員>
次に、TPPについてお尋ねします。政府は年内妥結をめざしていますが日本を除く参加国全てが関税全廃を求めており、農業重要5品目の除外は極めて困難とし、重要5品目の中で関税撤廃品目の検討作業に着手との報道もされています。加工品や調整品の関税撤廃は現実なものになってきています。知事は情報が乏しく対処が難しい、政府の交渉を見守りたいといいますが、政府は年内妥結を目指しており黙って見守ることは許されません。TPP参加について現時点の知事の所見を改めて伺います。
重要品目の除外は極めて困難な局面を迎えています。長野県の農業に責任を負う農政部として全面的な影響試算すべきではないか、部長の決意を再度お尋ねします。
医療分野では自由診療の導入や営利企業の参入が心配されていますが、健康福祉部長の所見を伺います。
また建設では、入札制度の自由化、現在でも浅川ダムなどは24億3000万円以上となり、WTO案件として県の制度で入札できません。TPP参加になれば最低制限価格や地域貢献度評価などは出来なくなり、県内業者に及ぼす影響は甚大です。これらの影響について建設部長にお尋ねします。

<阿部知事>
TPPについてのご質問でございます。
TPP交渉協定に関して、私ども、決して黙って見守っているわけではありません。わが国の産業経済、国民生活に影響を及ぼす懸念があるわけでありますので、県としてこれまでも、国民の真の利益の確保に全力を挙げるよう国に対して強く求めてきたところでありまして、今現在でもこの考え方に変わりはありません。

<農政部長>
重要5品目を入れた場合の本県農業への影響試算等についてでございます。
さる5月8日に公表いたしました県試算におきましては、農業生産額への影響試算にあたりまして、コメや乳製品などの重要5品目については、政府与党がこれらをしっかり堅持していくという方向で交渉をしていることから、関税が全て撤廃され全く何らの措置も講じられない前提での計算は保留をさせていただいたところでございます。
現在TPP交渉が進むなかにありますけれども、政府は重要5品目などの聖域の確保については、国会の衆参農林水産委員会の決議を踏まえ、国益を守りぬくよう全力を尽くす考えで交渉するとしているところでございまして、現時点におきまして、重要5品目についての県での影響試算をする状況にはないと考えております。
県といたしましては引き続きコメ・麦・牛肉・豚肉・乳製品等の農林水産分野の重要品目を関税撤廃の例外とするなど、国民の利益確保に全力をあげていただくように国に強く要請してまいります。

<健康福祉部長>
医療制度への影響についてお答え申しあげます。
日本は7月のマレーシアにおける第18回の交渉会合から交渉に参加しておりますけれども、現時点で公的医療保険の分野につきましては具体的な交渉は為されていないものと承知しております。9月に行なわれました、国から全国知事会への説明によりますと、TPP交渉において国民皆保険制度についてはそもそも議論の対象になっておらず、また医薬品の特許期間の延長につきましてもあまり進展がない状況ということでございました。現時点では制度のあり方に影響が与えるものではないと考えております。
しかしながら、国民皆保険制度は国民の生活に大きな影響を及ぼす課題でもありますことから、今後交渉の対象項目にご指摘の自由診療とか公的保険制度、こういうことが入ってくるかどうか、引き続き政府交渉の行方を注視していきたいと考えています。

<建設部長>
TPPと県内建設産業への影響に関するお尋ねでございます。
これまでの国の説明や報道では、政府調達の分野の交渉においては参加国に市場開放を求めているものの、国内の地方自治体の発注する公共工事を解放するとの情報がございません。こうしたことから現時点では県内の建設産業に影響を及ぼすものではないと推察しておりますが、海外企業への市場開放に関しましては国もTPP交渉参加国から調達基準額の引下げを求められる場合は慎重な検討が必要になるとしておりますので、引き続き政府交渉の状況を注視してまいりたいと考えております。

<小林議員>
ただいまの答弁でTPPというのは全ての障壁を取り除くのが大原則で交渉しているわけですから、それを全く考えられない答弁で、私は大変心配であります。
農政部長にお尋ねします。6月にも質問致しましたが、答弁の中身が十分理解できずに議事録を読ませて頂きました。その時の農政部長の答弁は「JA試算と県の試算の違いについてJAのなさいました試算は、JAグループはそもそも全ての組合員が農業者でございます。組合員の皆様方の今後のあり方を現在のような情勢を勘案し『慮って』計算されたわけでございます」と答弁されました。「慮る」を広辞苑で調べてみたら「よくよく考える」「思い巡らす」とありました。
要するに、JAは長野県農業の将来をよくよく考え、思い巡らせて試算されたと答弁されましたが、県農政部は長野県農業を慮る気持ちは無いのですか、お尋ねします。もしあるとしたら、なぜ影響試算から最大の懸案である5品目を除くのか見解をお示しいただきたい。ほぼ確実と言われる重要5品目の加工品、調整品の関税撤廃の影響が長野県農業にどの位になるのか、改めて農政部長にお尋ねします。

<農政部長>
JAの皆様方の気持ちと、農業者の皆様方のお気持ち、そして私ども農政を応援させていただく農業分野の職員としての気持ち、これは同じでございます。農業者の皆様方がご自身の業務を縮小しなければならないような状態になることを大変心配になっておられますことは、私どもも重々承知しております。
そうしたなかではございますけれども、国のほうでは5品目含めてしっかり守るという姿勢で現在におきましても交渉していると、閣僚の皆様方も公言されている状況下において、県行政として具体的な数値として影響試算という形で公表することは控えたいと申しあげているところでございます。

<小林議員>
9月5日に報道された信濃毎日新聞の「阿部県政3年間の検証の中で」の中身は、5月20日午前の県庁内の一室、職員らが慌しく資料の修正作業に追われていた。その発端はTPPによる長野県農業の影響額の公表の朝、資料を見た自民党県議側から県幹部への申し入れだった。「重要品目に関税撤廃の例外となるのを前提に試算されるべきだ」。7月の参議院選挙を控え、試算の公表がTPPに反発する県内農業関係者らに動揺あたえることを懸念していた。知事は試算の段階では重要品目を含めた公表に傾いていた。だが、申し入れを受けて修正を指示した、との報道がされているがこの報道に間違いないか、農政部長にお尋ねします

<農政部長>
新聞報道の中身につきましては、ただいま議員からご説明のあったようなことが報道されていますことは私も承知しております。報道の中身について成否をここで申しあげることは控えたいと思いますけれども、私どもの考え方が反映された形として知事にご判断いただいて、農業関係の5品目の数字を算定しないとしたことについては事実でございます。

<小林議員>
これでは長野県農業を慮っているのではなくて自民党を慮って試算を発表したと、これでは長野県農業を守ることは到底できないと思いますが、知事のこの点、記事についての見解をお尋ねします。

<阿部知事>
TPP交渉参加による、TPPの農産物への影響についての試算、考え方については先ほど農政部長から申しあげたとおりであります。政府としてはこの重要5品目の聖域の確保に全力をあげるということで交渉し続けているわけでありますから、私どもとしては政府の取り組みを応援していかなければいけないだろうと思っております。私は自民党にあっても共産党にあっても、私自身が適切だと判断させていただいた方向で県政を進めさせていただきたいと考えています。

<小林議員>
消費税の増税問題でもTPP参加の問題でも本当に県民や長野県農業を守る立場で私は真剣に考えていただきたい。政府がやっているからそれを見守ると言うんではなくて、政府のやり方に断固反対する姿勢を貫くことを心から訴えて、私の質問を終わります。