2012年6月定例会 7月6日 和田あき子

議第7号 緊急事態基本法の早期制定を求める意見書、反対討論

議第7号 緊急事態基本法の早期制定を求める意見書に反対の立場で討論を行います。

 東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所事故の発生は、政府関係者の「想定外」という言葉に象徴されるように、我が国の緊急事態への対応の不備を明らかにさせるものとなった。諸外国においては、大規模自然災害時には、非常事態宣言を発令し、政府主導の下に災害救援と復興に対処している。と意見書案にあります。
 我が国においては、伊勢湾台風当時の災害の教訓から国に防災や大災害に関わる全面的な法のないことを反省し、非常事態宣言に類する法として、「災害対策基本法」が制定されたことをはじめ、「大規模地震対策特別措置法」「原子力災害対策特別措置法」などすでに法律は存在しています。「災害対策基本法」、第一条 には、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定める等政府主導で対処する旨が明記されています。
 にもかかわらず、大震災・原発事故の初動の遅れ、自衛隊・警察・消防が機動的、機能的に対処できなかった問題は、政権の統治能力・危機管理能力の問題であり、現行法が有効・適切に行使されなかったことが最大の問題です。
 未曽有の大規模自然災害の上に、人災である原発事故が起きました。原発事故は「安全神話」にどっぷりつかり、原発事故そのものが「想定外」であり、地震・津波による全電源喪失の可能性を指摘する意見を聞き入れず、対策もしなかったが苛酷事故を起こし、原発事故の事実やスピーディによる放射性物質の流れる方向を知りながら、国民に情報を隠す事態で被害を拡大させました。今回、制定を求めている緊急事態基本法は緊急事態を理由に地方自治や国民の基本的人権の侵害の範囲を大幅に拡大するという問題があります。原発事故後の事態を想起させるものです。
 2004年(平成16年)に、自由民主党、民主党、公明党の三党により緊急事態基本法の制定について合意がなされたものの、いまだ制定の見通しはたっていませんが、この法律がなかったことで不測の事態が生じているわけではありません。
 自然災害を有事や戦争・テロと同列視し、憲法に保障されている基本的人権や地方自治の侵害の範囲を大幅に拡大することがあってはならないと考えます。3・11大震災を政治的に利用して、緊急事態基本法を制定しようというのは、一日も早い復興、原発事故の収束、そして脱原発を願う被災者の思いを踏みにじることになります。
 以上を申し上げ緊急事態基本法の早期制定を求める意見書に反対の討論といたします。