2011年6月定例会 一般質問 6月29日 和田あき子

  1. 臨時職員の処遇改善について
  2. 住宅リフォーム助成制度について
  3. リニア中央新幹線について
  4. 浅川ダムの安全性について
  5. 浅川の内水対策について

1 臨時職員の処遇改善について

<和田県議>
 まずはじめに、臨時職員の処遇改善についてお尋ねします。
 行政改革がすすむ一方で長野県の臨時・非常勤職員は1200名にものぼります。短期雇用・繰り返しの任用など不安定な雇用の状況におかれながらも県行政のために貢献されておられます。この臨時・非常勤職員の処遇改善について、私は2月県議会で、通勤手当が現行では交通機関利用で1日300円、車等の交通用具を使用する場合は1日100円となっている問題について、総務省からの通知の趣旨を踏まえて通勤費は費用弁償、つまり実費支給を求めました。総務部長から「総務省の通知の趣旨を十分に踏まえて、適切な処遇のあり方を検討していきたい」と答弁がされました。その後適切な処遇のあり方を検討されたと思います。あらためて総務部長の認識、検討の状況をお伺いします。

<総務部長>
 臨時職員の処遇改善についてのお尋ねでございます。
 議員ご指摘の通り、2月議会におきましてご質問にお答えをしたとおり、非常勤職員の通勤費用については、報酬額などを含めまして勤務条件全体の中でとらえる必要があると考えております。総務省の通知の趣旨を十分に踏まえまして、適切な処遇のあり方を検討していきたいと申し上げましたけれども、これは検討をしてまいりたいと考えております。

<和田県議>
 あれから時間もたっているのにそういうことだったのかと、ちょっと残念です。ぜひ実費支給を早期に実現するように、組合との交渉もあると思いますが、ご検討を加えて実現していただきますよう要望しておきます。

2.住宅リフォーム助成制度について

<和田県議>
 経済対策としての住宅リフォーム助成制度は、経済波及効果が実証されています。2010年4月時点では県下3市町村のみで実施でしたが、昨年度中の補正で実施、または2011年度当初で実施は31自治体になりました。さらに長野市などいくつかの自治体はこの6月議会に補正予算が提案され、県内で実施している自治体は約半数にのぼります。
 傾向を分析してみますと2点の特徴があります。
 1点目は、県内19市は今年度内の予定も含め、ほぼ全市で実施される一方、58町村についてみると23自治体の実施、割合にして4割程度にとどまっています。
 2点目は、住宅リフォーム助成制度が活用されている自治体、例えば上田市、飯山市、小布施町や箕輪町など助成制度の申請受付直後に予算枠いっぱいの申請がされたところでは、複雑な条件や煩雑な手続きをなくし、地元業者への仕事発注が要件と、簡素化されていることです。
 この特徴を見て、私は財政規模が小さく実施が厳しい町村の応援にもなり、さらに経済効果を発揮する制度として「経済対策としての」住宅リフォーム助成制度を県として実施をするよう、再度、知事に強く求めたいと思います。
 昨年11月議会以来、再三にわたって県が制度を実現するようもとめてきました。知事も検討を各部局にするようにと言われています。今年度の早い時期に実施にふみきるべきと思いますが、知事にお伺いします。

<阿部知事>
 住宅リフォームの助成制度についてのお尋ねでございます。この場でも申し上げているかもしれませんけれども、リフォーム制度は単なる経済対策だけではなく、限られた県財政のなかで、やはり明確な政策目的が必要だと考えております。関係各課からはワーキンググループをつくって検討中であります。私も中間で報告等受けていますが、長野県の気候風土に適した住宅の普及をどうしていくか、省エネあるいは自然エネルギーの活用に特化したリフォーム制度はどうか、あるいは耐震化、震災対策がありますので、耐震化の向上に向けたリフォームはどうか、あるいは県内企業の活用、いろんな意見がまだ出ている段階です。他方で、国のエコポイント制度が7月末着工分で打ち切りとなることを受けて、秋以降に新しいポイント制度を創設するということが検討されているという報道もあり、国の動向を見ていく必要があると考えております。県として住宅リフォームに対しての効果的な支援のあり方については、引き続きしっかりと検討したうえで、十分な議論を行って、しっかり目的をもったうえで進めていきたいと思っております。

<和田県議>
 このリーマンショック以降に県が行ってきた緊急の経済対策は平成21年1月補正から今年度の1月補正で1188億円行いました。これはやはり経済対策ということをからめてぜひ検討してほしい。成功の秘訣は、複雑・煩雑な手続きをなくす、地元業者への発注、これが要です。ぜひ、いつまでも検討を重ねるのではなく、実施に踏み切っていただきたいと思います。

3.リニア中央新幹線について

<和田県議>
 5月27日、国土交通大臣は、JR東海に対してリニア中央新幹線の建設指示を出した。これを受けてJR東海はほぼ3年かけて環境影響評価を行い、2014年には工事に着手し、2027年には東京―名古屋間を開業したいとしています。
 その後の、マスコミ報道は、「時速500kmのリニア並みの速さ」で計画が進行しているように思えてなりません。
 いままでリニア中央新幹線についての議論はおもに、どのルートになるかが中心的にされていました。そして、JR東海がより直線的なルートとして南アルプスを貫通し、飯田周辺を通過する案が示されて以降は中間駅が飯田周辺のどこになるかということに関心が移った感があります。
 私は、大震災から2ヶ月あまりの時期に示された整備計画が、本当にこのまま突き進んで良いのかと多くの疑問を持つものです。そして、計画全体、東京―大阪間9兆3百億円、東京―名古屋間5兆4300億円の建設費をJR東海が全額自己資金だからと、国は建設指示を出してもよいのでしょうか。いっぽうでは、東日本大震災から鉄路復旧のメドも立たないでいるのにというのが率直な思いです。
 それは、国交省の交通政策審議会がおこなったパブリックコメントにもあらわれています。
 昨年、2010年7〜8月は「早期に整備すべき」が134に対し「整備に反対、計画を中止または再検討すべき」はわずか12でした。これが大震災後の今年4月〜5月には16:648と劇的な変化になっています。
 
 知事は議案の提案説明で、昭和48年の基本計画決定以来、その実現に向けて取り組んできた長野県にとっても、大変大きな節目として建設促進をといわれました。
 南信地域が高速交通網をということは、現状の交通網から見てたしかに出ているわけであります。
 しかし、これだけの国家的巨大プロジェクトが果たしてどういうものなのかについて、県民はほとんど情報を得られないままです。整備計画が示された段階でも多くの疑問があるのではないでしょうか。リニア建設にあたって、国・地方自治体の財政負担や採算性、環境への影響、超伝導技術や電磁波の安全性、消費電力量など多岐にわたり情報を提供して、議論を起こすことが大事ではないでしょうか。県として県民に対して、今回の計画のすべての情報を明らかにし、県民的に考える機会、議論の場を設けていくべきではないかと思います。企画部長いかがでしょうか。

<企画部長>
 リニア中央新幹線に関する情報、あるいは県民的な議論の場ということでご質問をいただきました。これまでもリニア中央新幹線に関しましては県といたしまして、国あるいはJR東海に対して、地方負担であるとか、環境への配慮、安全性等々につきまして様々な対応を求めてまいりました。また、これらの課題への対応等については地域と意見を交換することが必要だろうということで、今月、諏訪、木曽、飯伊、上伊那の各地とJR東海との面談を設定してきたところです。また、今月21日には、全県的にリニア中央新幹線建設促進長野県協議会を開催いたしまして、その総会においても決議をいたしまして、国やJR東海に改めて求めているところでございます。
 言うまでもなく、リニアに関して技術的・専門的な情報を持つのは建設主体であるJR東海が第一です。県民の皆様のリニア中央新幹線に対する疑問等については、今後もJR東海において十分な説明を行うことが必要だと考えております。ご指摘のありましたように国家的プロジェクトであるリニア中央新幹線の建設にあたりましては、地域の理解と協力が不可欠であるということですので、JR東海に対しては丁寧な対応を求めてまいりたいと考えております。
 なお、リニア中央新幹線のご指摘のような情報については、国の交通政策審議会の審議に使用されました、安全性、採算性、消費電力等々の資料を県のホームページからアクセスできるようにしておりまして、県としても出来る限りの情報提供には努めているところです。今後とも、こういった取り組みは続けていきたいと考えております。そして県民のみなさんもリニアに対する理解を一層深めていただけますよう努めてまいりたいと考えております。

<和田県議>
 国土交通省の審議会の議論の中身はホームページで見ることが出来るということでしたが、やはりもっと開かれた場で議論するということが大事ではないでしょうか。
 まず1つには、建設主体はJR東海であるが、駅の負担は地元というけれどもどこが東京―名古屋間の建設費5兆4300億円。全額自己資金でまかなうとしながら、品川、名古屋、新大阪以外の中間駅建設は地元負担という点。
 2つ、リニアによる経済効果はどのくらい見込まれるのかということ。
 3つ、巨大プロジェクトで、果たして採算の見込みは合うのかどうか。東海道新幹線とリニア中央新幹線が併走する状況で利用客が倍増すれば両路線とも経営が維持できると思いますが、経済や人口の動向で利用者の増加は見込めず巨大な赤字路線になり、結果的に赤字を国民負担にされる心配はないのかどうか。
 4つ、大変心配されるのは環境への影響です。今後、環境影響調査が実施されますが、すでに南アルプス国立公園には希少植物(キタダケソウ、チョウノスケソウ)や天然記念物の生息が確認され、この自然保護と後世に伝えるため「南アルプス世界遺産登録推進協議会」の取組があるなかでリニアと自然保護は両立するのか。地下水への影響はどうなのか。
 5つ、日本で最大の構造帯フォッサマグナを横切り、南アルプスに長大なトンネルをつくる。しかも、東日本大震災後、心配が増している東海地震の震源域を通過することをどうとらえるのか。
 6つ、震災で原発ゼロの世論と節電の動きがあるなかで、さらに低エネルギー社会へと国民の意識が大きく変化しています。にもかかわらず、リニアは逆行するように、消費電力は新幹線の3倍といわれる大量電力を消費することに国民的理解が得られるか。
 県はこういう問題に回答が出来ないのですから、国やJR東海に説明責任を果たすよう、もっと開かれた議論の場を保障していただくよう県としてお願いしたいと思います。
 そしてこの問題でいきますと、「リニア中央新幹線の整備全体を県全体の交通体系、とりわけ中央本線や飯田線、さらには高速道路からのアクセスなど中南信地域の交通体系の充実・強化につなげていくことが重要だ」と知事も言われていますが、国交省の交通政策審議会がおこなったパプリックコメントも震災の前後で大きく変化していることは先ほど述べたとおりです。やはり東日本大震災にまなび、リニアよりも、中山間地をかかえ、陸の孤島と称される県内実情をふまえ公共交通網を整備することが大事なのではないでしょうか。今ある公共交通を守り、改善することが今本当に大事なのではないでしょうか。この点から、企画部長もう一度ご答弁をお願いします。

<企画部長>
 今回の震災と、そういったものを踏まえたリニアと公共交通のあり方についてご質問を頂戴しました。
 今回の震災につきましては国の交通政策審議会、中央新幹線小委員会におきまして、東日本大震災を踏まえた中央新幹線に関する審議等が行われているところでございまして、そういった審議を経たうえで答申が出されたものと承知しております。またこれとは別に、国におきましては、鉄道構造物耐震基準検討委員会を設置しまして、東日本大震災をふまえた鉄道構造物の耐震基準についての検証が行われています。このようなリニア中央新幹線自体の安全性に関する検討のほか、地震対策としまして、交通政策審議会ではむしろ今後予想されます東海地震などの災害リスクに備えるために、日本の社会・経済を支える大動脈であります、東海道新幹線の二重系化、いわゆる代替路線を備えるということですが、その必要性が高まっており、リニア中央新幹線の整備は極めて重要としているところです。
 県としましては、国やJRに対して、先ほど申し上げたように長野県協議会の決議におきましても早期着工のほか、安全性に対するさらなる検討と対策の強化を求めているところです。
 リニア中央新幹線に対する期待は大きく、東海道新幹線の二重系化としての役割から、リニア中央新幹線については今後も早期着工を求めていくべきものと考えております。
 あわせて、県内の公共交通には様々な課題があることも承知しております。こういったことも同時に、その在り方をリニア中央新幹線の活用も含めまして検討すべきと考えております。そのうえで、リニア中央新幹線や平成26年度に金沢まで開業が予定されております北陸新幹線をふまえた新たな総合的な交通ビジョンの策定を検討してまいりたいと考えております。

<和田県議>
 JRに移りましてもうけ最優先で進んでしまう公共交通の在り方はおかしいと思いますので、ぜひ再検討をお願いしたいと思います。

4.浅川ダムの安全性について

<和田県議>
(1)東日本大震災や福島第1号原発事故をめぐっては、「想定外」「人災」と言う言葉が飛び交い、その評価をめぐっては、今後の様々な角度からの検討が必要であることは言うまでもありませんが、重要な事は、原発の安全神話がもろくも崩れ去ったのをはじめ、すべてのことで「絶対安全」はありえないのだという前提での誠実な検討が求められていると言うことです。今回の大震災の惨状を目の当たりにして、浅川流域の住民や多くの県民の皆さんから「浅川ダムは本当に大丈夫か」と言う不安の声が改めて寄せられています。善光寺地震や長沼地震、論電ガ谷池の決壊や地附山地滑りの歴史の経験が改めて思い起こされ、「断層はあるが活断層ではない。」という県の説明に疑問や納得できない思いが広がっています。
 東京電力は、2007年10月の中越沖地震で刈羽原発で事故を起こした際にも、地震の後に刈羽原発に影響を与える断層を「新たな活断層が確認された」と発表しましたが、今回の大震災後も、震災前には確認されていなかった複数の活断層があったと公表しています。取り返しのつかない災害や被害が出てから、「やっぱり活断層だった」と言われても、何の意味もありません。専門家や住民から危険性の指摘を受けながら、事実上それを無視して、その結果被害が起これば、明らかな人災です。「想定外」と言う無責任な言葉で責任逃れをすることは、県民の命や財産に関わる問題で絶対に許されません。
 この立場から、東日本大震災、長野県北部地震を経験した今、改めて、浅川ダム周辺の地質や断層の評価をしなおすべきだと思いますが建設部長いかがでしょうか。

(2)地質学者は、フォッサマグナは日本一の活構造帯であり、長野盆地西縁部はフォッサマグナ内では第1級の構造線であること。最近の地震発生状況から見て、M7クラスの内陸直下型の強い地震に襲われる危険性が高い、と指摘しています。その長野盆地西縁部を含むフォッサマグナをちょうど斜めに横切っている新潟県津南町から松本を結ぶ津南―松本線の北端に位置する栄村で、今回断層が40センチずれて、震度6強の地震が起こりました。今回の地震後、牛伏寺断層は日本国内で危険度の大きくなった断層と位置づけられましたが、津南―松本線の関わりも含め、地震の想定は当然検討していかなければならないものと思いますが、浅川ダムの地震に対する想定はどうなっているのでしょうか。
 浅川ダムの安全性に疑問や不安をもつ専門家や流域住民は、従来から安全性の徹底した検証・調査を県に求めてきました。治水・利水ダム等検討委員会の報告でも、浅川にダムなどの構造物を作る時には、あらためて安全性の検証をすることを求めています。しかし、この間行なわれた専門家による検討は、主要には70年代に行なったボーリング調査や横坑調査のデータを文献で読み取っているのみで、新たな調査はいっさい行なわれていません。私たちは、今までも繰り返し、最新の知見での必要な地質・断層の調査を求めてきましたが、今回の大震災を経て、改めて県は真摯にこの声を受け止めて、過去の「ダム建設ありき」の再確認ではなく、県民の納得できる安全性の徹底検証のための調査を行なうべきではないでしょうか。

<建設部長>
(1)浅川ダムの地質や断層に関する評価の見直しについてのご質問を頂戴しました。
 3月に発生しました東日本大震災と長野県北部地震を受け、東北・北陸・関東エリアの治水や発電、農業用ダムを含めた414基のダムにつきまして、それぞれの管理者が発生直後に臨時点検を実施しております。これらの結果を取りまとめました国土交通省の発表によりますと、浅川ダムと同じ形式の219基の重力式コンクリートダム全てにおきまして、管理上支障のある被害は報告されておらず、重力式コンクリートダムの安全性について再確認されたところでございます。
 浅川ダムについては、これまでにも十分、地質調査、断層調査を行っているところから、改めて浅川ダム周辺の地質や断層の評価を見直す必要はないものと考えております。
 
(2)また、地震のことでご質問を頂きました。文部科学省に設置された地震調査研究推進本部におきまして、既往の地震データをもとに主要活断層帯の長期評価を行っております。これによりますと、長野盆地、西縁断層帯を震源とする最大の震源は、善光寺地震の推定マグニチュード7・4を上回るマグニチュード7・8を想定しております。県では平成20年度の実施した浅川ダムの詳細設計にあたりまして、想定されるマグニチュード7・8を用いて地震時における解析を行いまして、安全性をこれによって確認しておりますので、改めて再調査する必要はないものと承知しております。

<和田県議>
 昨日のニュースによれば、今回の地震で決壊し、死者7名を出した福島県藤沼ダムが、復旧のめども立たないまま、新たな土石流の危険に見舞われているとのことです。福島県では、今回の地震で、藤沼ダムのほか、3月に358億円をかけてパイプラインが完成した国直轄の羽鳥ダムの堤体にひびが入り、3200ヘクタールの水田への灌漑用水提供が不可能になったのをはじめ、福島県内745箇所の農業用ため池が決壊したり、亀裂が生じるなどして大きな被害を生んでいます。改めて、ダムの地震時の安全性の検証は、先ほどは大丈夫という話でありましたけれども、もう一度確認をしてほしいことであります。
 
 知事も栄村の地震で大量の土石流が発生した中条川を視察されましたが、中条川上流の山は高さ200メートル、幅200メートルの山体崩壊が2箇所で発生しました。私は、現場でその様子を見たとき、岩手・宮城内陸地震で荒砥沢ダムの周辺の山体崩壊とまったく同じだと思いました。

 さらに、26年前の地附山で、老人ホームのお年よりの人命を奪い、多くの家屋を飲み込んだ地すべりと同じような山体崩壊でした。これは地震によっておこったわけではありませんが、そして、地附山地すべりは県のバードラインの開発によって引き起こされたと裁判で原告が勝訴しました。
 知事、改めて申し上げます。「絶対安全」「大丈夫」はありません。
 この震災を受けたのち、浅川ダム建設は一時中止して、この前、机上での論点確認作業をして結論を導き出したということですが、再度じっくりと、実際の調査も行い検証をし直すべきではないでしょうか。断層、地質、さらに地震に関して最新の知見で、またダムありきの専門家以外にも広く専門家の意見も聞くなどして検証をしていただきたいと思います。知事いかがですか。

<阿部知事>
 浅川ダムについての検証という話です。
 改めて申し上げますけれども、ご質問のなかにダム建設ありきではないかという話ですが、それはこの場でそんなことはないと明確に否定させていただきたいと思います。
昨年、論点再確認作業をしたわけですが、これまでにも断層や地質の調査を行ってきたわけですし、論点再確認作業においても専門家の意見を聞きながら安全性について検証をしたところです。話の中に東日本大震災、栄村の例を引用されていましたが、東日本大震災後、断層・地質・地震に関してその設計あるいは調査の手法等に関して改めて検証を行うという新たな知見は現れていないと認識しております。

5.浅川の内水対策について

<和田県議>
 浅川で近年起こっている水害はすべて千曲川に浅川が流れ込めないことでおこる内水災害であることを県自身も認めているにもかかわらず、ダム建設が進められる一方でなかなかすすまない内水対策に、内水被害に苦しんできたか下流流域住民はやりきれない思いでいっぱいでした。ようやく今年5月末、県から内水対策案が発表され、今住民説明会が始まっています。排水ポンプの増強と下流から1.5キロメートル区間の堤防の嵩上げ、商業施設周辺の二線堤と言うこの内水対策が実施されれば、住宅地の床上浸水は無くなるとのことですが、その時期はいつ頃を予定しているのでしょうか。建設部長にお伺いします。

<建設部長>
 内水対策についてのご質問をいただきました。内水対策をいつまでに実施するかというお話です。内水対策につきましては、地元の皆さんのご理解がいただければ今年度から概略設計あるいは測量等にも入りまして、浅川ダムのポンプは今21トンの増強しようということで考えております。そのうちの7トンずつ、3度、増強しようと考えておりますけれども、少なくとも7トンについてはダムが完成する平成28年度までには整備を進めていきたいと考えております。その後順次整備を進めていくということで考えておりますので、最終的には何年ということははっきりしておりませんけれども、28年以降も引き続き21トン増強を実施する予定です。それができれば床上浸水は防止できると考えております。

<和田県議>
 福島原発で安全神話は崩れ去ったと言っているにも関わらず、新たな調査はしない、絶対に安全だと感じる、その気持ち、神経が私には分かりません。やはりここはしっかりと、今まで積み上げたデータもあるかもしれませんが、再度最新の知見による調査・検討を求めたいと思います。
 そして内水対策についてですが、ダムは5年後に完成するのに、その時は21トンのポンプ増強のうちの7トン分という説明であり、その後順次進めるということでしたが、残りの14トンについてはいつになったらできるのか分からないという段階です。内水被害に苦しみ続けるのは下流、これでは、内水被害に苦しみ続けている下流域住民は救われないのではないでしょうか。住民説明会や流域協議会でも相次ぐ意見や要望が出されているように、対策案の計画段階での住民参加を保障されなかったことから、今回の案がなかなか理解を得られないということではないでしょうか。この対策案の段階的、計画段階で住民参加を保障し、もう一度計画を練り直す。現実的な有効策である遊水地も視野に入れ、総合的な内水対策を検討するべきではないでしょうか。建設部長にお聞きします。

<建設部長>
 内水対策につきましての遊水地についてですが、前回15年、19年に流域協議会から意見をいただき、18年2月に提起した時からもご意見をいただいております。今回遊水地も視野に入れまして、技術的な見地から検討いたしました。遊水地を設置しなくとも、今回、排水機場のポンプ増強、堤防のかさあげ、二線堤の3点の対策によりまして、既往最大の被害となりました昭和58年9月の台風10号の同規模の洪水によりまして宅地部の床上浸水被害を防止するという目標は満たされるということでして、現在の計画のなかでは遊水地の計画は位置付けをしておりません。
 内水対策につきましては、今後も5月末から6月上旬について、地元の役員のみなさん方のご意見も伺いましたし、6月21日には地元の住民の皆様に説明をいたしました。さらには6月23日には、浅川の流域協議会にも説明を行ったところです。
 今後もよりきめ細かく地元地区のみなさん、9地区のみなさんに説明会を行いまして、相互に理解を深められるよう努力をしてまいりたいと考えております。

<和田県議>
 改めて内水対策について部長に伺います。先ほど、7トンの範囲はダム建設と同じ時期にできあがるというご説明でした。この説明を聞いて、流域協議会や地元の説明会のみなさんはどんなご意見を出されたのか、私は参加しませんでしたので十分には分かりませんけれども、浅川最下流で繰り返し内水被害に苦しんできた皆さんは、またも県からだまされた、裏切られたという思いではないでしょうか。最初はダムを造れば災害がなくなると言っていたわけです。地元の人はこれでダムができれば水がつかなくなると信じてダム建設に協力してきました。その後ダムは外水対策であり内水は防げないと言われてきました。そして今回示された案は穴あきダムをつくることによって内水被害を助長する。その部分をダム完成までにはなんとか穴埋めをしようという案ではないかと言われれば、これは県の対策について本当に地元の人たちは理解できないのではないかと思います。この点について建設部長に再度伺います。

<建設部長>
 住民の皆様への説明会でのご意見ということですが、この7トン(増強)を28年度までに行うということを説明申し上げました。ダムを造ったときに、ダムによって耐水時間に悪い効果が出るということでいきますと、1・5時間ほど伸びるということがありましたので、この7トン(増強ポンプ)を設置することによって1・5時間は解消されまして、さらに4・5時間ほど短くなるということで、ダム完成までには、少なくともダムによる悪影響は解消できるとご説明しました。
 そのなかで、あと21トンまで、いつまでやるかということについては、得にご意見はでませんでした。多かったのはやはり遊水地の問題とか、農地にまだ浸水するということがございまして農地について何らかの対策を講じてほしいというようなご意見が出まして、今後も県の考え方につきまして丁寧に説明していきたいと考えております。

<和田県議>
 流域住民の皆さんをはじめ県民が今抱いている不安に対して、説明をすれば済むということではなくて、しっかりとその流域住民の皆さん、県民の皆さんの不安に応える形でもっと真摯に耳を傾けてほしいということを申し上げて私の質問を終わります。