2011年1月臨時県議会 質疑  1月20日 和田あき子

2011年1月臨時県議会 質疑

 <和田県議>
 日本共産党県議団を代表し、臨時議会に提案された補正予算、並びに経済・雇用対策について質疑いたします。

 2008年秋の世界的な金融危機は、実体経済に深刻な影響を及ぼし、長野県内においても輸出や投資の需要の減少によって雇用が目に見えて悪化しました。県として経済対策を速やかに実施するため、2009年1月臨時県議会で対策をして以来、昨年も同様に1月臨時議会で公共事業の前倒し発注、切れ目のない経済対策はじめ雇用などの対策を行ってきました。再三にわたって経済対策・雇用対策を行ってきましたが、厳しい経営状況でご苦労されている地元業者の皆さんや就職先が見つからないまま焦燥感に苛まれているという現状のなかで、3年連続の臨時県議会になるわけです。国の補正予算や経済対策の基金等を活用するために提案された補正予算案について以下4点についてお伺いします。

 まず、今回の補正予算は「暮しの安心確保」「雇用の安定確保」「県内経済の下支え」その他国の補正予算関連と区分されて提案されました。補正予算の編成にあたり、知事は、長野県の雇用と経済の現状をどのようにとらえておられるのでしょうか。また、再三にわたって実施してきた県の経済対策が県内経済・雇用創出にどのような効果をもたらしたのか県としてどのように検証され補正予算に反映されたのか知事にお伺いします。

 次に、今回の国の補正予算の特色として、地域活性化交付金があります。国は地域活性化交付金などを最大限活用し、平成23年度当初予算との一体的な編成により、1つ、社会的に困難に直面している方への支援。2つ、切れ目ない経済・雇用対策を実施するとしています。特に地域活性化交付金3500億円のうち1000億円を「住民生活に光をそそぐ交付金」と名付けて、自治体が本来住民の皆さんにとって非常に重要な行政分野だが、なかなか今まで光が当たっていない分野があったとして片山総務大臣は、「例えば、消費者相談、消費生活センターなどの経費、これには当然人件費も含むこと。さらにDV被害者対策や自殺予防対策、児童虐待など立場の弱い方、声の小さい方々に対する行政に力を入れ、そういうものに光を当てて対応することによって雇用も発生することも期待して光をそそぐ交付金を計上した」と述べています。県では今回、光をそそぐ交付金により提案された、犯罪被害者などへの支援や自殺防止対策の拡充などはいずれもハード対策での提案になっています。片山総務大臣が言われているように「光をそそぐ交付金」の趣旨にそって、必要な雇用、自治体における雇用、スタッフの充実のために活用するという検討をされたのか知事に伺います。

 厳しい雇用情勢のなかで、昨年実施した新卒未就職者等の人材育成の再度の実施、さらにパーソナル・サポート・モデル事業の実施など歓迎するものです。

 緊急雇用創出基金を活用しての雇用の実態についてお伺いします。昨年の臨時議会において雇用創出基金による雇用の実態については事業の進行途中で実態の把握がされていない状況でしたが、その後実情の把握はされたことと思いますが実態についてお伺いします。
 緊急雇用創出基金を活用してのとりくみはあくまでも景気回復・雇用情勢が好転するまでのつなぎ的に雇用を創出するもので、短期的、一時的な雇用です。このような雇用だけでは生活をしていくうえでの不安定な状況を解決できるものではありません。経済対策をしても思うようには景気が回復せず、雇用情勢の改善が進まないなかで、基金を活用して実施する、つなぎ的な短期雇用のほかに、本来は常用的な雇用に置き換えていくことが望ましい介護などの分野では、継続的な雇用、正規雇用につながるように取組むことが必要と思いますが、知事にお伺いします。

県として公共事業を前倒しで切れ目なく事業量を確保する、地元業者の仕事になる生活密着型の公共事業を実施されてきましたが、さらに、私は11月県議会で住宅リフォーム助成制度への県の支援を提案させていただきました。地域の仕事確保と地域経済循環のために、11月県議会で建設部長も住宅関連産業は裾野が広く、県内経済への経済波及効果が大きい産業であるとの認識をしめされました。 仕事確保が厳しい今こそ住宅リフォーム助成制度を実施すべき考えますが、今回の補正予算編成にあたり、「住宅リフォーム助成制度」を経済対策と位置づけて実施に向けて検討されたのかどうか、建設部長にお伺いし、1回目の質疑とします。

<阿部知事>
 和田議員のご質問に順次お答えしてまいりたいと思います。
 まず経済雇用情勢の認識、あるいはこれまでの効果検証ということでございます。さきほどもお答え申し上げました通り、現下の経済雇用情勢、引き続き、各種指標等見ても厳しい状況であると認識しております。これまでの経済雇用対策の補正予算につきまして、議会の議決もいただきながら、できるだけ地域の企業が受注できるような配慮もしつつ、切れ目なく対応してきたところでございます。これも先ほどご答弁申し上げましたが、倒産件数の減少や将来に向けた取り組みといった、次のステップに向けた明るい兆しというものも見えております。一定の効果は出てきているものと考えております。しかしながら現在景気は足踏み状態にあるわけでございます。なんとかして景気を回復軌道に戻すために、新年度当初予算と一体的な編成で今回の補正予算をご提案をさせていただいたところでございます。
 
 つぎに、住民生活に光を注ぐ交付金の関係でございます。1月の補正予算案、2つの地域活性化交付金のうち、住民生活に光をそそぐ交付金につきましては、犯罪被害者等への支援、自殺防止対策、そうした社会的困難に直面している方への支援として、約7千万円、知の拠点づくりとして高校や県立図書館などの図書の充実に約3200万円、さらには試験研究機関の研究充実設備等の更新に約5億円あてております。今年度、残り約3カ月ということがありまして、先ほどお話ありました、具体的な雇用につながる事業、今回なかなか盛り込むことができなかったところでございますが、来年度以降、この基金にいっぺん積み立てるわけでありますが、この基金を活用して、新年度予算におきましては、ご趣旨にかなうような、地域の雇用にも関係するような事業構築を行って参りたいと考えております。
 
 次に、緊急雇用創出基金を活用した、緊急雇用創出基金事業、ふるさと雇用再生特別基金事業、こうした基金を活用した雇用の状況ということでございます。全体では、平成21年度までに、県事業、市町村事業合わせて5039人の雇用を創出しました。本年度は6692人の雇用を創出する見込みでありまして、合計では、11731人の雇用創出になる見込みでございます。基金事業での雇用期間が終了した方々の再就職支援はハローワークにおきまして、一般求職者と同様に行われるわけでありますが、県としてもジョブカフェ信州の緊急雇用相談窓口や緊急求職者サポートセンターにおいて、こうした求職者の皆様へのきめ細かな支援に努めているところでございます。
 基金事業の活用による雇用、これはあくまでも一時的に公的部門での雇用創出ということでございます。シェアのほとんどを占めております、民間部門での継続的な雇用につなげるものであると考えておりまして、そのためには景気の一刻も早い回復が重要だと考えております。
 このため、切れ目のない経済対策によりまして県内産業の振興を図っているところでございまして、今回の補正予算によりまして、引き続きさらなる対策の推進を行っていきたいと考えております。


<建設部長>
 住宅リフォームの助成制度に関するお尋ねでございます。11月定例会でご提案のありました、経済対策のための住宅リフォーム助成制度は、個人資産の形成に一律税金が使われることになるため、慎重な対応が必要であるとお答えしたところであります。本県は寒冷地域であり、環境面に配慮した住宅が必要不可欠であることから、従来から住宅の省エネ化などを促進するリフォーム工事を助成するなど、社会的な課題に応じた住宅施策を実施しているところであります。引き続き、これらの施策を積極的に進めるとともに、制度の充実に向けて関係部局とも連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

<和田県議>
 経済は、ゆるやかに景気が回復しているという見方もありますが、それは昨年、国のエコポイント、エコカー補助金などによる駆け込み需要やアジア諸国の回復した景気によるものであり、本格的な景気回復ではないことから、依然として雇用情勢は5%台の失業率であり、有効求人倍率は前年より改善されたと言っても0.62倍にとどまっています。昨日マスコミ等で全国的な大卒内定率は68.6%と、1996年以降最低と報じられましたが、長野県の大卒内定率はさらに15%も下回る53.8%と大変深刻です。
 国の基金による緊急雇用創出はあくまでも短期的なものです。また、新たな「住民に光をそそぐ交付金」も単年度の措置で、片山総務大臣は「線香花火みたいになってしまったら継続的な雇用に結び付かない。来年度の地方交付税の中で自治体における雇用、スタッフの充実ができやすいような仕組みを考えたい」と言われています。国に対しても安定した財源に基づいて雇用できる仕組みを求めて意見をあげて欲しいと思いますが、知事にお伺いします。

 さらに全国以上に厳しい雇用状況の下で、継続的に正規雇用で働くことができるような県独自の施策や民間に雇用を促すことになるような施策が必要と考えます。

 これは一部かと思いますが、先ほど建設部長からもお答えいただきました住宅リフォーム助成制度でありますが、県内の足元から県内経済の活性化が図られる大変有効な事業と思われます。ぜひ経済対策として、関係部局とも連携を図り、仕事おこし、雇用創出につながる制度として知事も検討を加えていただきたいと思いますが、知事のご所見を伺います。

<阿部知事>
 2点ほどご質問いただきました。まず安定的な雇用が出来る財源手当て、国の制度を要請していくようにというご主旨でございます。私は基本的には、財源も含めた地方分権を進めていくことが重要と思っております。先ほども基金の使い勝手の悪さというご主旨のご質問がありましたが、やはり地方で本当に必要と思われる事業を充分な財源の裏付けの下に構築できるよう、地方財源の充実について、引き続き強く国に求めたいと思っております。
 2点目の住宅リフォームの関係でございます。これは先ほど建設部長から基本的なご答弁をさせていただきましたけれども、制度の充実に向けて、私は、ぜひ各部局またがって検討していってもらいたいと思っております。住宅リフォームの観点は、例えば地球温暖化対策、環境の観点、あるいは地震対策等の安全性の確保といった、耐震化対策を含めた安全性の確保、いろいろな観点がございますので、これは長野県としての政策目的を明確にして考えていくということが重要だと思っておりますので、建設部のみならず関係部局挙げて、どうした対応が今求められているのかということについて、十分検討していきたいと考えております。

<和田県議>
 住宅リフォーム助成制度については関係部局を挙げてご検討いただけるというご答弁でしたので、ぜひ新年度予算編成に向けてこれも検討していただきたいと思います。
 入江建設部長は繰り返し、住宅リフォーム助成制度等、個人の資産形成に税金を投入することになりかねないということも言われておりますが、国、国土交通省の住宅生産課住宅振興室長は2009年12月、住生活基本計画にあるように、個人の私的財産にとどまらず、個人住宅は社会性を有しており、公費を投入しづらいという考えは一般的ではないということも言われています。この際、今までのように個人資産の形成につながるというようなことだけで切り捨てないで、一層経済対策としてこれを行っていただくようご検討いただくようお願いを申しあげて質疑を終わります。