2010年2月定例会   3月12日 高村京子

平成22年度長野県一般会計予算(案)の反対討論

<高村県議>
 議第1号 平成22年度長野県一般会計予算(案)に対し、日本共産党県議団を代表して反対討論を行います。
来年度予算規模は、8,615億円、対前年度比293億円103%増で3年ぶりに増額しています。一昨年秋に始まった世界同時不況は現在も進行中で、県内の地域経済とくらしを直撃し、県税の大幅減収などで、県財政はいっそう厳しくなっています。
 地方交付税で全額補填される保障のない「臨時財政対策債」を対前年度比57.9%増の834億円、過去最高額を組んでいることは問題です。私どもが一貫してきびしく指摘をしてきた行政改革推進債の活用をしないことや、普通債の344億円削減は当然です。しかし県債発行予定額は11%増の1,411億円となり、県債発行を元金償還の範囲内にとどめ、県債残高を縮減するとした知事の公約は守れなくなりました。
借金の総額は、普通債1兆2,066億円、特例債4,540億円での合計額は1兆6,606億円となり、吉村知事時代最後に積み上げた借金と同じ額に膨れ上がります。県は「実質的な県債残高の縮減」と説明していますが、10年前の県予算規模は1兆円時代の1兆6,000億円であり1.6倍の借金でした。しかし現在は県予算規模の約2倍もの借金となっており、基金も取り崩され100億円もない事態であります。県財政は今までかつてない危機的事態に陥っています。
 限られた財源をいかに県民の暮らしの向上につなげるのかがきびしく問われています。医師確保対策の強化や精神救急医療の充実、周産期母子医療センター運営事業やガン総合対策の推進など医療分野の充実、また全県で4,800人も入所待ちの特別養護老人ホーム等107箇所の整備などに86億円、福祉人材確保事業など福祉充実を図ることは、県民の切実な願いが反映されたものとなっています。

 一方で県は、遷延性意識障害医療費給付事業対象者98名のみなさんの医療費に自己負担を導入します。弱い立場の人々の支援を冷たく切り捨てるやり方は納得がいきません。今年10月からの実施は見直すべきです。

 経済・雇用対策では、ものづくり産業応援助成金の助成対象を拡大し、研究所立地の優遇措置を拡充して雇用の確保を図るとしていますが、平成21年度は、県内で、226件前年度比20%増の企業倒産があり、誘致する企業の数倍もの倒産がありました。地域を支えて頑張っている中小零細企業の応援をもっと親身になって取り組む事が求められています。
 私たちは、地域密着型の公共事業への転換を一貫して主張してきました。施設耐震改修促進や道路・橋梁改修などの生活に密着した事業に重点をおき、地元業者優先の入札制度への改善を一層図るよう要望します。教育分野では、日本共産党県議団も求めてきた特別支援学校の不足していた教員が80人増員されることになりました。国民の運動で実現した高校授業料無償化の実施は、家庭の収入によって高校進学や卒業に格差や差別をさせない教育の機会均等を保障するものであり、政府の英断を大いに歓迎するものです。しかし長野県は、いままで私立高校の低所得世帯に助成をしていた1億円をこの機会に便乗してばっさり削減しました。京都府では、国からの補助にさらに9億8,000万円も上乗せして、私立高校の教育の向上と父母負担の軽減を図るとしています。長野県のやり方は、私立高校の父母生徒の負担や気持ちに沿わない冷たい姿勢であり、誠に残念です。補正での改善を強く求めます。また、中高一貫教育については、さまざまな問題をはらんでおり、県民的合意がない中で、屋代高校の施設整備にかかることは拙速であり問題ではないでしょうか。

 新年度予算には盛り込まれていないものの、既に活用された行革推進債のため、組織再編、県立病院の地方独立行政法人化、県営施設の指定管理者制、高校再編などで、1550人の職員削減を前倒しで実行し、通勤費が100円しか支給されない官製ワーキングプア状態を放置するなど、県民サービス低下につながりかねない組織・財政運営には、到底納得できないことも、この予算に賛成できない大きな理由です。

 さて、一番の問題は、浅川穴あきダム建設本体工事着手の問題です。知事は議案説明の中で「流域住民の皆様の生命と財産を水害から守るべく、早期完成を目指してまいります」といわれました。しかし多くの流域の住民や県民は、「浅川ダムは地すべり地域に造るダムであるうえに、造ったら危険なダムになる。地すべり対策や日常管理にどれだけ税金を投入する事になるか計り知れない」と不安を持っているのです。
 52億円の低入札となっていますが、本体に10億円その他で30億円合計40億円も地すべり対策につぎ込む無謀なダムです。更に4億5千万円の債務負担行為も予定しています。ダムの財源は、来年度予算の半分の12億5,000万円は国庫支出金としています。一般財源は1億5,000万円で、県債で11億2500万円を盛り込む計画です。
 住民監査請求にかつてない3,445人が参加し、浅川ダムの中止を求めるなど、切実な流域住民や県民の声に心を寄せない県の強引なやり方は到底納得できません。このままダム建設を進めるなら、県民の更なる怒りを巻き起こすでしょう。私たちはこのような県民の皆さんと、浅川ダム建設反対運動でいっそう力を合わせる覚悟です。
 村井知事には、もっと「県民の暮らしに向き」に心を寄せていただきたいと思います。県下各地では、反貧困暮らしと雇用を守る支援活動が行われ、多くの人々が失業者や困窮者の救済に当たっています。
 知事は、一般質問の答弁で「税金を逃れようとすることは、社会的には最も憎まれる悪事だ」といわれましたが、このような困窮状態にある人々を悪人呼ばわりするのでしょうか。
 また、知事は消費税の増額を国に求めていますが、1日1食でしのぐ人からも取る消費税は血も涙も無い悪税です。
 消費税増税は止め、大企業に応分の社会的責任を国に求めていただきたいと思います。強く国に働きかけて下さい。

 最後に、日本共産党は、健全財政を目指しながら、県民の暮らし応援の温かい県政への転換をめざして全力を尽すことを表明し討論と致します。