2010年2月定例会  一般質問 2月26日  毛利栄子

  1. 中小企業の営業を守る下請け二法の厳格な運用について
  2. 子宮頸がん予防ワクチン接種について
  3. 高校図書館の充実について

1、中小企業の営業を守る下請け二法の厳格な運用について

<毛利県議>
 中小企業の営業を守る下請け二法の厳格な運用について知事並びに商工労働部長に伺います。
 輸出依存度の高い製造業を中心とする長野県経済は依然として大きな低迷の中にあり、製造品出荷額は6年ぶりに前年比7.5%のマイナス、現金給与総額は271億円の減少と厳しい数字が続いています。
 昨年、負債100億円を超える製造業の大型倒産は全国で14社あるなかで、長野県の企業が2社入るという大変な状況で、底なしの悪化を続けています。とくに製造業の集積する諏訪地域にとって、倒産件数の増加率は平成21年度は前年比ほぼ3倍と県平均の2割を15倍も上回っており、地域経済に深刻な影響を与えています。
しかしながら、東洋のスイスと言われた町工場の精密・電子の優れた技術は他のどこにも劣らない素晴らしいものをもっており、関係者の努力で続けられてきた「諏訪圏工業メッセ」などを通じて全国・世界へと発信され、なんとしてもこの危機を乗り越え、「ピンチをチャンスに」頑張っていこうと懸命な努力が続けられています。
 日本の中小企業は事業所数で9割、雇用で7割を担い、付加価値の5割を生み出す文字通り「日本経済の主役」として地域経済を支え、雇用を守って頑張ってきました。その中小企業がいまほとんど仕事がなく、週休3日、4日は当たり前で昨年県が行った「中小企業経営実態調査」でも8割近い事業所が前年同期と比べても業況は悪いと答えています。
そのうえ一方的で横暴な買いたたきにあい、泣き寝入りしているのが実態です。諏訪市内でお聞きしたある事業所は、「昨年1月から4月は仕事量が激減し、売り上げが8割も落ちて人件費も出ない状況だった。7月から暮れにかけては5割まで回復したが、それでもやっていけない。もともと短納期で少量の生産をしているが朝9時ころ図面のFAXが来て、午前中に加工してほしいという。大企業が在庫を持たない方針をとっている為に、いつ仕事が入るかわからないが、入るときは急がされる。それでも仕事をもらえるだけでもありがたいのでどんなに無理をしてもなんとか対応している」
 別の業者は「プリウスの自動車部品を作っているが、昨年春に増産体制に入って、なんとか仕事がでたが単価を30%切り下げろという。それでは困るので、交渉して25%にしてもらったところ、年が明ければさらに25%下げろという。製造単価が全く守られていない。おかしいと思っても、振興基準の問題を親会社に言うのは大変なこと。自分の生存が危ぶまれる」とやりきれない思いを語っています。
 そこで商工労働部長に伺います。今お話した例はほんの氷山の一角ですが、横暴・違法な下請けいじめは横行しています。県は下請け業者のこの様な実体をどう把握し、どう対応しようとしておられるのでしょうか。また、国では「下請け駆け込み寺」を作って告発の受け止めや相談に乗り、必要とあれば親会社に不十分ながら指導をしています。県としてもまず「下請けホットライン」などを設け、被害にあっている業者の相談にのり、県民の声をきちんと受け止めるべきではないでしょうか。また、単価や納期の問題でアンケート調査などを行い、実態の正確な把握をしてほしいと思いますがいかがでしょうか。

<黒田商工労働部長>
 県内中小企業の下請けの実態把握・対応、さらにはホットライン、それからアンケート調査と3点ご質問をいただきました。
 長野県は多くが、中小の下請け企業でございまして、厳しい経済状況あるいは海外からの安い商品の流入、あるいはデフレこういった厳しい条件の中で、激しいコスト削減に努めているということは、私も十分承知をしているところでございます。

 議員のご質問は、3点ございましたが、一括してお答えいたします。
 まず、下請け取引の実態把握ということでございますけれども、県内中小企業の下請取引の実態につきましては、長野県中小企業振興センターに寄せられる個々の取り引きに関する相談であるとか、あるいは下請取引条件調査、こういったものの報告を通じて把握しているところでございます。ちなみにセンターに寄せられた相談に関しましては、今年度(平成21年度)ですが、1月末現在で、29件寄せられております。
 また、受注単価や取り引き条件などについて、議員からもお話しがありました登録受注経営動向調査、これを年に4回(3か月に1度)実施をいたしまして、親企業の下請代金の支払い方法、あるいは受注単価であるとか、取り引き条件、こういったものについて、情報収集に努めているところでございます。
 こういった実態を踏まえまして、「対応を」ということをでございますけれども、ただいま申し上げました振興センターにおきましては、公正取引委員会と中小企業庁との連携のもとに、下請相談を行っておりまして、毎年講習会等も開催いたしまして、法律の周知を図っているところでございます。
 またこれもお話がありました通り、平成20年4月から振興センターに「下請けかけこみ寺」というものを設置したところでございまして、無料弁護士相談の利用、あるいは国への相談等により事案の解決を図っているところでございます。また、県の立場からは、下請事業者の利益保護のために、昨年12月親事業者や経済団体に対しまして、下請取引の適正化を文書で要請したところでございます。
 つぎに、ホットラインのご質問でございますけれども、ただ今申し上げました「下請けかけこみ寺」、ここでは電話による相談も受け付けておりまして、中小企業のみなさまに幅広くご利用いただけるよう、制度の周知に努めているところでございます。
 アンケート調査についてご質問がありました。アンケート調査につきましては、先ほど申し上げました下請取引条件調査、これは納期であるとか、あるいは基本契約書の有無であるとか、代金の受け取り方法、こういった項目につきまして調べるものでありますが、これは来月、この3月にも実施をしようと考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、今後も下請けの実態把握、下請けかけこみ寺の周知等々に努めてまいる所存であります。

<毛利県議>
  いま商工労働部長からお答えを頂きましたけれども、中小企業振興センターに設けられている下請けかけこみ寺は、国の中小企業庁の委託事業で受けているものであって、しかも長野県は外部にお願いしたことを、もう一回ワンクッション置きながら情報を得るというような構造になっています。私が申し上げたいのは、長野県の商工労働行政として、きっちりこの事態を正面から受け止めていただいて、告発をたくさん集めることを中心にしてですね、国に対して下請け二法の厳正な実施を求めていただきたいということをお願いしたいと思います。

 次に知事に伺います。下請け重層構造は日本独特の生産システムで2次、3次、4次と下へ下へ負担が押し付けられ、大企業は優越的地位を利用して常に低い単価、ゆとりのない納期で下請けに仕事を押し付け、生産の調整弁として都合よく利用し、資本金10億円以上の大企業はこの10年間で内部留保を200兆円も増やしてきました。
まさに、この利益を下請け業者や労働者に還元させる公正なルールを作ることが行き詰っている今の景気を真正面に転換していくのに必要不可欠ではないでしょうか。
 下請け業者の保護のために、「発注時の契約書の交付と保存、受注品の受け取り拒否や契約代金の減額、支払い代金の遅延」などを禁止した「下請け代金法」や「取引単価は…合理的な算定方式にもとづき、下請け中小企業の適正な利益を含み、労働時間の短縮等、労働条件の改善が可能となるよう下請け事業者及び親事業者が協議して決定する」と振興基準を定めた「下請け中小企業振興法」などがありますが、これを厳格に運用させ、違反した親企業にはきちんと是正勧告をし、下請けが泣き寝入りせざるを得ない現状をきちんと変えていくことこそ大事だと思います。
そこで、知事に伺います。下請け業者が親企業の無法な下請けいじめに対し直接交渉することは、「だったらお宅にはだしません」などしっぺ返しが危惧され、大変勇気のいることでなかなか難しい問題があります。
 県として先ほど提案した「下請けホットライン」などに寄せられた情報をきちんと集め、国に対して下請け二法を厳格に守るよう要請し、是正をさせていくことが、油にまみれながら技術力を駆使して、地域経済を支え、ものづくりの現場で精いっぱい頑張っている業者の思いに応える道だと考えますがいかがでしょうか。

<村井知事>
 
国に対する下請け二法の遵守の働きかけについてお尋ねを頂戴しました。
 下請け二法の遵守につきましては、中小企業庁と公正取引委員会が協力して、法律の周知徹底や相談体制の強化を図りつつも、悪質な違反者に対して、適切な対応を行っていくと、私は認識しております。この制度や運用に問題がありましたら必要に応じて国に要望してまいります。

<毛利県議>
 下請け二法の遵守についてございますが、平成20年度国の制度として開設している「下請けかけこみ寺」に4,797件の相談があり、親会社270社に対して、12億5,000万円の返還を指導したそうです。下請け二法は発注時の契約書面の交付と、2年間の保存義務を課していますが、交付も保存もなければ、証明が難しいとされてしまいます。もし親会社が書面交付違反ということになっても、罰金だけで終わり、下請けはなんの回復措置もないのが実態です。そして指導はあっても、そのことをきちんと守るかどうかということが十分守られていないというのが実態であります。下からの告発事例をたくさん集めて、声を上げていくことが大事ではないかと思っております。
 そして2004年の法改正以後、買いたたきの是正勧告は、日本中でたったの1件ということですから、先ほどの告発、訴えがあることに比べれば、まさにこの下請け二法が具体的に親会社から買いたたきや短納期ということで、大変な思いをしている下請け企業の実態を救うものにはなっていないと言えるのではないでしょうか。
 事実上の骨抜きの運用になっています。個々の企業の努力には限界があるので、ぜひ政府が抜き打ち的な調査などを行うなどをして、実効あるものになるよう折にふれて国に厳格な運用を求めていただきたいと思います。

2、子宮頸がん予防ワクチン接種について

<毛利県議>
 次に、子宮頸がん予防ワクチン接種について衛生部長に伺います。
 長野県のがんによる死亡率は、昭和59年以来県民の死亡原因のトップとなり、3人に1人ががんで亡くなられています。
 がんは「早期発見・早期治療」が重要であり、検診率の向上と精度をいかに高めるかが課題となっています。新年度予算では「がん議連」の提案も受け止めていただき、さまざまな対応をとっていただいたことは歓迎しますが、早期発見に有効な、がん検診の受診率は最も高い胃で34%、最も低い子宮で23.7%と平成24年までの県の目標値50%にするにはかなりハードルが高い状況です。
 この様なもとで、予防が可能ながんが「子宮頸がん」です。子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスであり、おもに性交渉によって感染するそうですが、画期的な予防ワクチンが開発され、日本でも昨年末に承認・販売され、接種されるようになりました。
子宮頸がんは20〜30代の女性に急増しており、乳がんを抜き、発症率が一番高いがんとなり、年間15,000人がり患し、初期は症状がなく、進行すると子宮の摘出手術が必要となり、妊娠や出産に影響を及ぼすばかりか、3,500人が亡くなっているといいます。10歳代の女性がワクチンを接種する事で感染のほぼ100%を防ぐことができるといいます。日本産婦人科学会や日本小児科学会も公費負担での普及を推奨しています。
 しかし、ワクチンは皮下注射で6カ月間に3回接種する必要があり、保険がきかないため全額自己負担で4〜6万円もかかる事がネックになっています。全国的には新潟県魚沼市で小学校6年または中学1年を対象に全額補助、埼玉県志木市で小学校6年から中学3年を対象に全額補助、また松川町では新年度(2010年度)から、中2、3年生を対象に半額補助と公費助成が広がっており、長野県下の母親たちの間で、公費助成を求める声が高まっています。
 そこで、衛生部長に伺います。若い女性を子宮頸がんから守るために、県としても予防ワクチン接種の広報を充実させること、また、財政的負担となるワクチン接種に対し、補助制度の創設を検討してほしいと思いますがいかがですか。

<桑島衛生部長>
 子宮頸がんの予防ワクチンに関してご質問を頂戴いたしました。子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウィルスは15種類ございまして、多くの場合は性交渉により感染をすると考えられてございます。昨年12月に発売されたワクチンは、このうちの2種類の感染予防を想定してございまして、子宮頸がんのうち、このウィルスが占める割合は、日本では50%〜70%くらいということでございます。また長期にわたって、効果があるかどうかという確認が十分できていないということで、完全に子宮がんを予防できるわけではないと認識しております。それゆえに接種後もがん健診を受ける必要があるとされてございます。
 また、10歳以上の女性が接種対象となりますことから、性教育との関連でございますとか、保護者等の理解や協力が必要と考えております。このため国におきましても、任意接種である子宮頸がんワクチンについて、接種の促進方法や予算措置等を含めまして、どのような方策が効果的か総合的に検討していくこと必要とされております。
 したがいまして、県といたしましては、広報や補助制度につきましても、国の検討状況を十分注視してまいりたいと考えてございます。

<毛利県議>
 がん健診や性教育などとを絡め合わせながら実効ある対応をしていくという部分は部長のおっしゃる通りでありますが、この問題で言いますと、目下効果を確認をするということでありますが、親の経済力で接種に格差がでてくる可能性があります。民主党は09年の総選挙で「子宮頸がんワクチンの…任意接種に対する助成制度を創設します」とマニュフェストで公約していただいていますので、ぜひ国の制度として1日も早く実施できるよう要請して頂きたいと思います。

3、高校図書館の充実について

<毛利県議>
 次に高校図書館の充実について教育長に伺います。
 ネットや携帯依存が強まるなか、いま改めて活字に触れ、読書することの重要性が強調されてきています。おりしも今年は「国民読書年」。国会では衆参両院が「文字・活字は人類が生み出した文明の根源をなす崇高な資産、これを受け継ぎ発展させて心豊かな国民生活と活力あふれる社会の実現を」と国民読書年に関する決議をあげています。
 長野県では早くから県立高校図書館に「専任・専門・正規」の学校司書を配置し、一人ひとりを大事にしたサービスを心掛け、子どもたちや教職員の貸出・予約・資料相談に親身に対応し、頻繁に利用されることを通じて実をあげてまいりました。
先般は就職活動をする生徒には履歴書を書く相談などにも応じている様子が過日のNHKテレビで辰野高校の実践として紹介されたところです。高校図書館は心身共に大きく成長する世代にあって生徒や教職員の教育活動、人間性をはぐくむ活動に大きな役割を果たしてきたと思いますし、先般教育長は「必要不可欠な役割を果たしている大事な機関」であるとおっしゃいました。その大事な公立高校の学校司書に対して、いっそう不安定な雇用形態を導入するとおっしゃっているわけでありますけれども、そうすることで学校図書館の機能の充実が図れるのかどうか、教育長のご見解を伺います

<山口教育長>
 
高校図書館の果たす教育的役割・意義について、お答えいたします。
 高校の図書館は、学校教育に必要な資料を収集し、生徒や教員が利用することによって、学校の教育目標の達成に寄与するとともに、生徒の健全な教養を育成する場であります。
 子どもたちにとって本を読むことは、想像力を培い、思考力を育み、自らを高めていく大切な機能を持っていると考えております。
 議員ご指摘のように、様々なメディアが登場しており、情報を得る方途は拡大・多様化しておりますけれども、「活字離れ」が進むいまの時代だからこそ、読書はいっそう重視されるべきであり、生徒の自主的主体的な活動を支援する学校情報センターとしての役割も含め、学校図書館の役割の重要性は少しも減少していないと思っております。

<毛利県議>
 学校図書館充実の歴史は、そこにいかに「専門・専任・正規」の職員を配置するかがカギをにぎる歴史だったと思います。教育長は村上議員の質問に、高校図書館職員に「新たな雇用形態として司書資格をもった行政嘱託を考えている」と答弁されました。いっそう不安定な雇用形態を導入することで、「必要不可欠」な役割を果たしている学校図書館の機能の充実がはかれるのか。教育長の見解を伺います。

<山口教育長>
 次に、学校図書館の職員についてのご質問でございます。村上議員の代表質問にお答えしました通り、県立高校における学校司書の業務につきましては、行政機構審議会民間協同専門部会におきまして、業務の質や必要な知識を勘案して、民間委託が可能な業務に位置付けられ、よりスリムで効率的な運営方法を検討していくことが求められております。
 しかしながらいま申し上げましたように、高校図書館の重要な役割に鑑み、教育委員会といたしましては、民間委託の方法ではなく、専任の学校司書を配置することが必要であると考えておりまして、新たな雇用の形態として、司書資格を有する行政嘱託職員に転換していこうとしているところでございます。この司書資格を有する行政嘱託職員につきましては、更新することにより一定期間の勤務が可能になり、ある程度の継続性が確保できる形態となっておりますし、「司書資格を生かしたい」という雇用ニーズにも働く場を提供するようになっているものであります。また、専門的な知識や経験を生かすことで、図書館教育に寄与いただけるものと考えております。
 いずれにしましても、図書館教育の充実につきましては、学校教育の全体の中で、考えていかなければいけない重要な問題と認識しております。

<毛利県議>
 教育委員会におかれては、平成17年には新たに「文字・活字文化振興法」なども制定され、いっそう国民的な活字文化への位置づけが強調されている状況も考慮し、県立高校図書館が果たしている役割の重要性について、先ほどご答弁いただいたように、理解・意義づけをされているようですので、新たな雇用形態の行政嘱託を導入することについては、関係者との話し合いを慎重に行ってほしいと思いますが、そのことについての教育長の答弁をお願いします。

<山口教育長>
 
関係者との話し合いについてのお尋ねでございます。職員団体等の関係者の方々とは、昨年の4月以降、ご理解を得るために、粘り強く話し合いを行っているところであります。今後も丁寧な対応に努めながら、出来るだけ速やかに結論を出していきたいと考えております。