2009年2月定例会  3月16日 高村 京子 

議第35号「地方独立行政法人長野県立病院機構評価委員会条例案」及び議第48号「地方独立行政法人長野県立病院機構定款の制定について」反対討論


 議第35号「地方独立行政法人長野県立病院機構評価委員会条例案」及び議第48号「地方独立行政法人長野県立病院機構定款の制定について」に反対の立場で討論します。

 反対の理由には大きく3つの問題があるからです。1つ目は、あまりにも独法化への移行を拙速、強引に進めようとしていること。2つ目には、効率優先がなじまない、それぞれの役割を持った県立病院の運営管理に、経営効率を強く求める組織に変えようとしていること。3つ目には、県民や病院職員、労働組合からの不安や疑問に答えていないことです。

 共産党県議団は12月県議会で、県民・地元住民へ説明が全くなされていないことから、住民への説明会を求めてきましたが、早速年明けの早々の1月6日から13日と駆け足で6回の説明会が行われました。全県で参加者は合計でも410人と少なく、また多くの疑問や不安の声が出されました。「地方独立行政法人になれば、医師も看護師も集まり、今よりずっと良くなる」など夢のような説明をされ、「いいことばかりのはずがない。かえって不安になる」「説明を受けたことで、理解したということではない」などの意見も出ていました。
 こうした県民の声の一方で、1月23日の部局長会議では、平成22年4月からの県立5病院および介護老人保健施設を一括して地方独立行政法人に移行すること。法人の種別は一般非公務員型とする実施案を決め、2月19日の本県議会に提案しました。 県職員労働組合から議会に対し反対してほしいとの要請も出され、病院職員からも多くの疑問や不安も出されている中、本日3月16日採択など、とてもできるものではないと考えます。

 共産党県議団では、この間、全国初めて2004年に地方独立行政法人化した大阪府の病院機構や来年4月から移行を検討している神奈川県を調査しました。
 大阪では足かけ4年にわたる準備期間があり、府民や労働組合との繰り返しの交渉を積み重ねた中で移行した経過があります。やはり経営効率優先が徹底され、コスト管理と職員の身分格差が拡大しました。経営改善したものの、知事が橋下知事となり、いっそうの経営効率を煽られています。看護師の確保は年間19回もの募集をしても、必要な人員が確保できず、むしろ過酷な現状から去って行く看護師が後を絶たない現実をお聞きしました。
 大阪では長野県とは違い、高度専門医療機関であり、周辺にも大病院があるところであり、山間地のへき地医療や政策医療をそれぞれ担う長野県立病院とは機能が大きく異なっています。
 04年に国立病院機構として独立行政法人化した上田の長野病院では、25年も前から私も非常勤職員として働いていた経過がありますが、常勤的に勤務していた非常勤約20人がいっせいに解雇されました。また、いま麻酔科や産婦人科等の常勤医師が確保が困難ななか、この4月からは7対1看護体制を維持するために、病棟からさらに2病棟100床が閉鎖されます。
 県は「国立病院機構とは違う」、「大阪の事例とは違う」、「長野はいい病院運営を目指す」と説明されますが、いま県立病院をどうするのか、県立病院の経営形態を決める歴史的大切な場面にあるのに、県民の率直な疑問や、患者さんの医療・看護に精いっぱい従事されている職員の不安に正面から応えず、拙速に地方独立行政法人化を推し進めようとすることでは、独法化になった場合、今後大切な場面でも本当に県あるいは理事者が、県民や職員の声に誠実に対応していくとは信じられません。 法人理事会の権限が強まり、住民や職員の声が十分反映されるのか疑問です。また知事が変わったり、いっそう県財政が危機的事態になったとき、はたして本当に今までどおりの繰入金が保証されるのでしょうか。法人理事者・病院職員には、いっそうの経営効率が厳しく求められるようになるのではないでしょうか。

 2007年に成立した「地方財政健全化法」によって、自治体病院会計と連結した指標が用いられ、病院が赤字であれば自治体全体の財政指標も悪化することになり、多くの自治体は赤字病院を抱えたくないために、自治体から病院を切り離すことを検討しています。全国に約1000ある自治体病院のうち3分の2が今、赤字経営となっています。
 今まで政府が推し進めてき低医療政策によって、公立病院、民間病院問わず、多くの病院の多くが、経営が行き詰まり、存亡の危機にさらされています。今の県立5病院も同じ環境の中にあります。病院自身が衰弱状態にあるのです。県立病院の灯を消してはならない、県民の命と健康を守ろうと必死に奮闘していただいている医師や看護師はじめ職員の皆さんの大きな支えによって今の県立病院は成り立っています。

 今大切なことは、地方独立行政法人への移行を強引に推し進めるのではなく、わが県立病院を県自らが懐に抱え、病院職員とともに、この困難をともにし、県民の皆さんのあたたかい応援を頂きながら、病院運営に展望を切り開くことではないでしょうか。
 県議会議員のみなさまが、拙速な結論を出さないでくださいますよう心から訴えまして、反対の討論と致します。