2009年2月定例会 代表質問 2月26日 小林伸陽

1、西松建設による裏金報道について

2、不況対策について

3、新年度の予算編成について

4、商工業の振興について

5、農業の振興について

6、林業の振興について

7、社会保障に充実について

8、医療政策について

1、西松建設による裏金報道について

 最初に、右近参事の突然の訃報に、心からお悔やみ申し上げますと共に、ご冥福をお祈り申し上げます。

 それでは、最初に日本共産党を代表して質問します。最初に知事にお尋ねします。本日の報道によれば、「大手ゼネコンの西松建設の裏金が知事周辺に1000万円渡された」、「時期は、知事が衆議院議員を辞めた2005年以降、知事選挙前後」と報道されています。知事は「政治資金は適正に処理している」と全面否定されていると言いますが、裏金は闇から闇に動き、適正に処理されないから、裏金といわれるのです。県民から疑念が生まれている中で、進んで自らを調査し、真相を明らかにすべきと思いますが、知事の所見をまず最初にお尋ねいたします。

<村井知事>
 
ただいま、右近君に対しまして、弔意を賜りましたこと、まず御礼申し上げます。その上で、ただいまのお尋ねでございますが、私は政治の仕事に携わりまして以来、いわゆる政治資金というのはある程度はやむを得ないものでありますけれども、その取り扱いについては、常に厳正に扱うように、20年にわたりまして、やってまいったつもりでございまして、かつてそのような問題を起こしたこともありませんし、怪しい金に手を出すというようなこともしたこともありません。どのようにして調べることができるのかも、率直に申し上げて知恵がありません。そのことをお答えし、私はともかく信じがたい嫌疑を受けたという思い、それのみであります。

 報道によりますと、東京地検特捜部に供述している中身は、「村井知事の周辺に1000万円が渡されたと供述」とありますが、逮捕されたのは、西松建設の元社長であります。おそらく元社長の供述と思われますし、また西松建設との関連が深い「新政治問題研究会」の政治活動費が「村井シンポジウム」に20万円支出されていることも記載がされています。こうした事実から見ても、県民の疑惑を解明するために、真剣に調査をしてこの疑惑をはらすことが、求められていることを強く申し上げ、知事の見解を求めながら、次の質問に入ります。

<村井知事>
 冒頭に先ほどお答え申し上げましたことに、さらに付け加えさせていただきますと、私は政治活動をやっておりました間、政治資金規正法に基づく報告を極めて丁寧、誠実にやっていたという自信がございます。その中から、先ほどご指摘の、私ももとよりいちいち覚えているはずもございませんから、そういうパーティー券かなにかの収入があったという事実は報道を通じて知りましたが、おそらくそれが全てではないかと思います。
 どうやったら本当にこのような疑念を晴らすことが出来るのか、苦しんでいるのが本当のところでございます。

2、不況対策について

(1)県内経済の動向と見通しについて
 次に県内経済の動向について、お尋ねします。世界同時不況は、一気に地方経済も崩壊させ、県内経済も深刻であります。中小企業は仕事量が、前年の30%台に落ち込む企業が多数を占め、決算期を迎えるなかで経営破たんに追い込まれる企業が生まれるのではないかと、その危険性を多くの金融機関も指摘しています。長野県経済の実態と今後の見通しについて知事の所見をお伺いします。

<村井知事>
 長野県の経済の実態と今後の見通しについて、お尋ねがございました。県内の経済状況は、県内産業を支える製造業を中心に、生産はかつてないほど大幅なかつ急速に減少し、雇用、所得環境の悪化するなど、危機的とも言うべき状況にあります。今後の見通しにつきましては、回復に向けた確かさは、いまだ感じられませんものの、日本はもとより、世界各国が協調した景気対策による早期実行による政策効果を行うことに、期待をしたいと存じます。長野県におきましても、豊富な地域資源や優位性のある技術の集積、信州の気性と勤勉性に富んだ県民の力などを活かし、次の上昇局面をいち早く捉えることができるように取り組んでまいりたいと考えます。

(2)不況のさなかの派遣切りを進める企業について
 私たちは現在の世界金融危機に端を発する、景気悪化の原因は、人間らしい労働のルールを破壊したこと、極端な「外需頼み」、特にアメリカに依存する脆弱な経済体質になったこと、証券市場を「外需頼み」の投機的市場にしたこと。派遣労働を1999年に原則自由化し、2004年には製造業にまで拡大したことにあり、安上がりの労働力と雇用の調整弁として、大量の非正規雇用を生み出し、大企業は巨額の利益を上げながら、真っ先に非正規社員を切り捨てることにより、深刻さを拡大しています。
 東レの名誉会長、前田勝之助氏は「企業の責任の第一は雇用を守ること」として、「正社員も非正規社員も相手は人間ですよ。人を尊重する経営をやらないと企業は長続きしませんよ。ああいうやり方は人間を道具と思ったり、部品と思っている」と厳しく批判しています。
 また、経済同友会の元専務理事の品川正治氏は「いまや同友会も経団連も、とにかく業績を上げた人がトップになるところが悲劇の原点だ。例えばキャノンは青森工場に5000人の社員がおり、その内正社員は3割、非正規社員が7割、いつでも首を切ることが出来る。そんな思いがあっての工場の人員構成だったと思うんです。そしてキャノンやトヨタがその先頭を切って派遣切りをやった恰好です。トヨタが貯め込んだお金は12兆円ともいわれています。本当だとしたら300万円の年収の人を、400万人雇える額ですよね。それでいて、真っ先に一番弱い人から切り捨てる。御手洗さんのふるさと、大分でも派遣切り。御手洗さんは恥ずかしくないのかと怒りさえ覚える」と、財界からもルール無き資本主義の崩壊と指摘され始めています。
 地方だけではどうにもならない課題も多く、無策な国政に対して、国民の怒りは大きく広がり、麻生内閣の支持率は一桁台に落ち込もうとしています。経済不況と政治不況で、今後の見通しもたたない。このような事態をどのように考えているか、国政でも中核を担ってきた経験を持つ知事の所見を伺います。

<村井知事>
 企業の社会的責任と総じてよろしいかと思いますが、そういうことについてお尋ねがございました。世界的な景気後退から、非正規労働者の雇い止め等により、離職を余儀なくされている方々が増えている現状につきましては、私も大変憂慮しています。企業にとりましては、世界的な需要後退による大幅な減産に追い込まれている面もありますけれども、雇用の場を提供するという社会的な責任を有しているということを深く認識して、雇用の維持に努めていただくことを期待したいと思います。
 こうしたことから、県では昨年12月24日に経営者協会、長野労働局、連合長野と連名で、雇用安定に向けて緊急のメッセージを発し、雇用の維持、安定につきまして、企業に要請したところでございますし、1月24日には全国知事会から国に対し新正規雇用労働者の処遇を改善するための法的整備の検討を要請したところであります。今後とも非正規労働者の処遇を改善し、日本の雇用慣行の中にきちんと位置づけることは、日本経済の再建のためにも急務である。私もそのように考えております。

(3)消費不況のさなかの消費税増税について
 知事は昨日、消費税は「公平で、景気に左右されない税である」として、消費税の増税を一貫して主張されています。消費税は何の収入も無い子どものミルク代から教育・食費・生活必需品にいたるまで課税され、寝たきりのお年寄りからも、生活保護世帯や非課税世帯からも同率で容赦なく取り上げる、逆進性の強い不公平の最たるものです。納税能力も無い人からも強制的に徴収できる仕組みです。
 その一方で「仕入税額控除」という仕組みから輸出企業には消費税の課税が出来ないとして、消費税の30%にも昇る4兆円が還付されています。トヨタ自動車1社だけで年間、なんと3,219億円の還付金が支払われ、豊田税務署など、輸出大企業の所在地の9つの税務署がなんと赤字というひどさです。その一方で、例えば医療の現場では、買うものには消費税が課税されているのに、消費税分を診察費には上乗せできません。
 福祉や教育現場でも、消費税の回収は出来ずに自己負担となっています。こうした矛盾と不公平に満ちた消費税の引き下げこそが、病院や学校の経営改善の道を開くものです。不公平を少しでも解消しようとするならば、医療や教育・福祉の現場にも、輸出企業と同じように還付すべきです。それが出来ないなら、輸出企業への還付金はやめるべきです。還付金が無くなるだけでも何と4兆円も国の増収になります。
 こんな不公平と矛盾に満ちた、消費税の増税は絶対に認められるものではありません。この深刻な消費不況の中で、税率を引き上げたら、どのような影響が生まれるとお考えているか、知事のご所見をお伺いいたします。

<村井知事>
 消費税について、私が累次申し上げていることにつきまして、ご付言がございました。
一番のお尋ねの問題にお答えする前に、福祉の手を伸べることを必要とする方々まで、消費税は負担を強いることになって、逆進的ではないかと。おっしゃるとおりであります。だから、その部分は、福祉を手厚くすれば、それで済むことなんです。
それから医療について、これは議員大変お詳しい部分でありますが、戻し税という付加価値税の世界で輸出還付というような当然の制度と、逆に、医療の世界は消費税導入のときに、非課税にしてくれと、いう大運動をされて、そして無理やりそういう仕組みを作っちゃったわけです。ですから、前段階で消費税がしっかり入っております機器を消費税込みで買った上で、提供する医療については消費税を転嫁することができないという、自ら招いたこの税の仕組みに対する無知の故に(のちに、「対して理解不足もあり、」と訂正)招来した問題点でありまして、これは私は制度を良く理解して、それにふさわしい制度を構築すればなんでもない話だと思っております。
 以上申し上げました上で、消費税の増税についてでございますが、経済や国民生活に与える影響を最小限にするべく、その実施時期ですとか、あるいは消費課税のあり方等を慎重に検討することは当然のことであります。現在の制度が、私はどこもかしこも全部正しいなんて思っておりません。いろいろ直すべき点があります。それをしゃべれというのであれば、いくらでもやりますけれども、時間の制限がございます。現下の経済危機の中にありましては、まず景気回復に向けたあらゆる取り組みが必要でありまして、景気の動向等をしっかりと見極めたうえで実施する。これが一番大事であります。これは昨日本郷議員にもお答えしたとおりであります。
 その上で、私がいままで申し上げておりますのは、それらを踏まえた上で、この消費税あるいは、外国の言葉で言えば付加価値税と呼ばれる税が、国民が将来にわたって安心して様々な行政サービスを享受できるための、負担を公平な形で行う数少ない手段であるだけに、臆することなく議論をして、広く国民の理解を求めていくことこそが肝要で、議論を避けるべきではない。そういうことを重ね重ね申しているということであります。

 消費税問題でありますが、いま国民の7割が反対をし、消費が落ち込んでいるこの時期に、増税とは何事か。そういう怒りの声もたくさん寄せられております。福祉の充実がされているなかではありません。福祉もどんどん切り捨てられ、そういう中で、国民が怒りを示しているわけであります。そういうこともなしに、消費税が引き上げをされる。このことに大変怒りをもっています。いま消費が落ち込むなかで、外国では消費税の減税すら打ち出す国も増えてきているわけであります。こういうことをしっかり踏まえて考えていただきたいと思います。

(4)信州ものづくり産業投資応援条例について
 また、信州ものづくり産業投資応援条例に基づく補助金や税の減免を受けた企業でも、700人余りの「非正規切り」が行われていると言われております。このような企業や、大型公共事業を県の事業として受注している企業に対して、雇用維持を求めるべきと思いますが、知事が直接出かけて、雇用の維持を働きかけるべきと思いますが、知事の決意の程を伺います。

<村井知事>
 まず不況対策の中で、企業に対する雇用確保に対する働きかけについてのお尋ねを頂戴しました。昨年12月24日に県庁に県経営者団体など、経済団体9団体のトップの方々をお招きしまして、12月22日にまとめた緊急経済対策の着実な実行と雇用確保についての協力要請をいたしました。また同日、先ほど申し上げたことではありますが、雇用安定に向けた緊急メッセージを発出したところでございます。
 商工労働部では、ものづくり産業応援助成金を交付した全ての企業に対し、文書により要請するとともに、企業を訪問し、交付要件となっている常勤雇用者の維持、確保を直接確認してきているところであります。今後も県内企業に対しまして、出来るだけ雇用の維持、確保について努力をされるよう要請してまいります。

(5)地方事務所単位での対策本部設置について
 不況は県内産業をも直撃しています。上伊那地方でも「派遣切り」にとどまらず、正規社員を削減する企業も生まれています。
 先日新聞でも報道されましたが「上伊那医療生協SOSネットワーク仲間の集い」を立ち上げ、相談会を開催したところ、日系ブラジル人の方60名が相談に駆けつけました。相談の中身は深刻です。明日の食事、子どものミルクをどうするか、糖尿病の治療中だが保険が無くて医者にもかかれない、水道のある公園などで車上生活をしていると、警察が巡回に来て追い出されてしまう。子どもの教育が出来ないなど、一刻の猶予もない皆さんでした。
 この相談会には多彩なメンバーがボランティアで参加いただき、問題の解決に取り組んでいただきました。出来る事から行動しようと、最も緊急性が求められている食料支援を呼びかけたところミルクやお米1800kg、ジャガイモや野菜など700kgが寄せられ、各地に配送され大変喜ばれています。しかし行政への相談の中身は多岐にわたり、窓口でたらい回しも生まれ、事態は深刻です。
直ちに県が現地機関でも対策本部を設置し、総合的な対策を講ずるべきです。年末に私たちの緊急の申し入れを行い、年末年始の休日を返上し県庁に各部局が共同して、ワンストップの総合相談窓口を開設し、県民から歓迎されました。しかしその後の不況の進行は、想像を超える速度と規模で広がり、危機管理部が想定している大規模災害に匹敵する事態です。これまでの大規模災害発生時と同様のかまえと覚悟で、次のような、緊急対策をとることが求められていると思います。総合支援窓口の設置と通訳の確保。支援物資の調達と支給の体制。住居の確保と子どもの教育。さらに、職業の斡旋と臨時的雇用の創出などです。
 しかし、これらの対策はそれぞれの出先機関が、個々で対応できるものでは有りません。国、県、市町村を含めた各出先機関を統括し、一元的な指導機関を作らなければ対応できません。県が指導性を発揮して対処すべきと思いますが、知事の見解をお尋ねします。

<村井知事>
 不況対策の県の指導性についてのお尋ねを頂戴しました。県内経済、ご指摘の通り、かつて経験した事のない危機的とも言うべき状況が続いているという認識はその通りでございます。
 昨年後半に、急速に悪化した経済、雇用情勢に対応するために、緊急経済対策本部を設置しまして、国に先駆けた緊急経済対策を速やかな実施をはかったところでありました、その際に設けましたワンストップサービスにつきましては大変ご評価を頂いた。この対策の一環として、市町村長や経済関係団体へは、私から協力要請もさせていただき、地域の実情を把握して、必要な追加支援策への反映を図るべく、市町村、ハローワーク、商工団体、そして金融機関等を集めまして、地方事務所の主催で、地域経済情報交換会というものを開催を致しております。今後ともこういった情報の交換の場を随時設けまして、地域における経済、雇用情勢を注視しながら、ただいまの議員のご提言にも留意しながら、適時適切な対応策を講じてまいりたいと考えます。

 先ほど知事の答弁を頂きましたけれども、今の深刻な経営危機、こうした中で、職を失いそれが原因で住宅ローンの支払いもできずに住宅も手放さなければならない。子どもの教育もあきらめなければならない。こういうみなさんが本当に増えているわけであります。こういう中で私は大いに情報の収集も必要でありますが、直ちに先ほど提案したような具体的な行動を起こしていただくことを強く求めておきたいと思います。

(6)介護、農業、医療などの人材確保について
 今、県民の暮らしを守る上でも、景気を回復する上でも、雇用の確保は最大の課題です。雇用の拡大には人材を求めている分野に、人材が集まる制度の構築が必要です。現在、人手不足が深刻な職種は介護、医療、農業の分野です。
 これらの分野は新しい分野ではなく、長年の経験が蓄積されてきた分野です。しかし、農業は年々収入が減少し、農業だけでは食べてゆかれない。後継者は育たず、年々衰退しているのが現状です。介護の分野も過酷な労働と、低い給与に離職者が後を絶たず、介護福祉士の資格を持っている、20万人の人が離職しているとも言われております。こうした背景を無視して、外国人労働者の確保や、派遣労働者の雇用などで、安上がりの人材確保では、決して解決できるとは思いません。それどころか低賃金と過酷な労働環境に拍車をかけるものです。安定した雇用の創出とは逆行するものであり、低賃金と苛酷な労働環境の改善が、何よりも雇用の創出の特効薬と思いますが、今後の雇用創出のうえで、正規雇用につながる対策をどう考えているのか社会部長、衛生部長、農政部長にそれぞれ見解をお尋ねします。

<和田社会部長>
 雇用の確保についてのお尋ねでございますが、介護に従事する方は、夜勤により身体的な負担を感じたり、腰痛など健康面の不安に悩むことも多く、その業務内容に比して、賃金等の待遇、あるいは評価が低いことが、事業所において人材が定着しない大きな要因であるとの、現場の多くの声を受けまして、県としても早急な改善を国に強く要望してまいりました。国ではこのたび、介護報酬の増額改定を行い、介護従事者の処遇改善につなげていくこととしております。県と致しましても、施設の経営主導あるいはキャリアアップ研修等により、労働環境の改善を支援をするとともに、若者や有資格者などの人材確保策も拡充いたしまして、需要が増大いたします介護分野における人材の安定的な雇用の確保に努めてまいります。

<渡辺衛生部長>
 医療分野の雇用につきましては、国の医療費抑制などの影響から、医師や看護師などの絶対数が不足致しておりまして、全国の病院で診療科の閉鎖やあるいは勤務環境のによります離職等が深刻化しております。医師・看護師などの確保等や養成、勤務環境の改善は、安全で質の高い医療の確保のために、緊急かつ重要な施策であると認識しておりますので、新年度予算におきましては、再就業の促進のための研修など、将来の事業に加えまして、分べん手当て等を支給する医療機関への緊急支援や短時間正規雇用の促進・推進、病院内保育所、運営費の補助額の増額など、新たに計上いたしまして、全力で取り組んでまいります。

<白石農政部長>
 農業での雇用対策でございますけれども、最近の雇用情勢の変化に対応するために、農業関係団体と連携いたしまして、「農の雇用緊急対策会議」を設置いたしまして、農業法人と求人者のマッチングを図るよう面接会等の開催してまいっております。また、農業法人におけます新たな雇用を促す「農の雇用事業」を積極的に活用いたしまして、雇用の創出と就農の促進に取り組んでおります。農業は、天候に左右され、作業が季節的に集中するなど、また専門的な技術力を必要とする産業でございます。このため農業改良普及センターや農業大学校での技術研修等の参加を促すなど、新規参入者の定着に向けた環境づくりを進めてまいります。
 さらに雇用主である農業法人の経営安定が重要でありますので、経営管理に関する研修機会、中小企業診断士などの専門家の派遣によりまして、農業法人の経営改善等を支援いたしまして、安定的な雇用につながるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

 それから社会部長、答弁を頂きましたけれども、いま経営者に指導をして、介護の分野や福祉の分野が、職員の給与を増やすというような実態では全くありません。今の国の政治に対してしっかりものを言って改善を図らなければ、ならないというふうに考えております。そういう観点に立って、質問を続けます。

3、来年度の予算編成について

(1)借金依存の予算編成について
 次に新年度の予算編成についてお伺いします。新年度予算案では、県税の大幅減収という事態に対処するため、当初予算では6年ぶりに1,271億円の県債を盛り込みました。対前年度当初予算との比較では、317億円の増額です。歳入に占める構成比でも15.3%にもなります。しかも、県債の44.4%にあたる部分は、臨時財政対策債564億円で、前年度の2倍もなり、新年度の元金償還額は1,149億円ですから、県債発行を元金償還額の範囲内にとどめ、県債残高を縮減するといってきた、村井知事の公約は果たせなくなりました。
 臨時財政対策債と減収補てん債を除いて勘定すれば「実質的な県債残高を縮減できる」と説明されていますが、これは臨時財政対策債を実質的に、借金とみなさないことを前提にしており、実態とかけ離れた議論です。県債残高をみても2009年度末の見込みでは、普通債は対前年度299億円減額となり、9年連続の減少です。普通債の縮小が図られる一方で、臨時財政対策債を中心とする、特例債等が増え続けています。臨時財政対策債の残高は2,759億円に達する見込みです。
 このような国のやり方は、当面、県で借金をし、あとで交付税措置するからと、あたかも全額が交付税で戻すように言われますが、基準財政需要額に算入するのに、地方交付税は増えていません。長野県でみれば2001年度から、2008年度まで普通地方交付税は毎年マイナスです。新年度予算では、このように多額の「臨時財政対策債」を予算化し、「減収補てん債」を見込んでいますが、今後はこのような借金に大きく依存する予算編成を続けるのではなく、地方交付税の抜本的な増額を求めるべきではないかと思いますが知事の見解を伺います。

<村井知事>
 来年度の予算編成について、いくつかお尋ねを頂戴しました。まず第一に、予算編成についてでございますが、特に臨時財政対策債等につきましての考え方を、私の方から申し上げさせていただきます。
 新年度の臨時財政対策債の発行額が、ご指摘のように564億円と、今年度の倍増を余儀なくされるのは、いまさら申し上げるまでもなく、本来は地方の財源不足は地方交付税で賄われるべきところを交付税の原資である国税が不足しているために、地方が肩代わりをして、借金をする。こういう形になっているわけであります。仮に、臨時財政対策債などの特例債の発行を抑制、あるいは発行をしないすれば、その分基金を取り崩すということになるわけですが、いまの県財政では、これは不可能であることは、十分ご認識いただけることと思います。通常債につきましては、ご指摘のとおり、ひき続き発行を抑制し、残高を縮減しつつあります。今後も地方が健全で安定した行財政運営を行えるように、財源不足の補填を過度に起債に頼らないような制度の確立と地方交付税の増額など、必要な一般財源総額の確保につきましては、知事会等を通じまして国に要望してまいりたいと存じます。

(2)国直轄事業の地元負担金について
 次に、国の負担金の見直しについて伺います。新年度予算案には、北陸新幹線の建設費の負担金として、29億4000万円が計上されています。マスコミ報道では建設資材高騰などで、今後の県内区間の増加分が約450億円にもなると、国交省が試算を明らかにし、県の負担額増加分も約150億円と見込まれています。
 新潟県の泉田知事は、同県が国から約220億円の増額を求められていることに、「十分な説明がない」として、支払いに応じられないとの見解を表明し、多くの県知事らが賛同しています。村井知事は、昨日も「よく吟味し、納得いくことであれば、負担するのは当然だ」と答えられています。現在でも県内区間の地元負担金の総額は、640億円という巨額です。村井知事も新幹線建設費の負担増をはじめ、国の直轄事業の負担金の見直しを求めるべきと思いますが所見を伺います。

<村井知事>
 直轄事業負担金等については、昨日改革・緑新の寺島議員の代表質問にもお答えしたとおりでございまして、私は制度論としては、それは直轄事業負担金という制度はやめたほうがいいと思っておりますが、しかし現実に地方の意見をちゃんと聞いてやる事業については、応分の負担をやるのはそれなりの理由があると考えております。
 それから、新幹線等につきましては、これは別にそんなに違うことをいっているわけではございませんで、私は十分で合理的な納得ができるなら払うと。今示されたところによりますと、ちっとも納得できないから払わないと。それだけの違いで、私はそんなに違わないと思うんですが、いずれに致しましても、ルールをきちんとにらみながら、実態を良く注視してまいることは、当然のことであります。

(3)浅川ダム建設の中止について
 今回の不況は、百年に一度の災害言われております。浅川ダムは今後、百年に起こりうる災害防止の対策として、新年度は17億円を計上しています。今後180億円も投入しなければなりません。国の事業の戸草ダムの建設費は2000億円とも、3000億円とも言われ、県の負担もその三分の一と巨額の負担です。
 優先順位の低い大型事業を見直し、今おきている深刻な不況対策や雇用対策、医療対策こそ最優先すべき課題です。大災害といわれる不況の現状を最優先し、公共事業は、この間の経済対策予算のように今まで以上に、生活密着型事業を最優先にし、ゼネコンの疑惑が持たれてきた、浅川ダムなど大型事業は、直ちに見直しをすべきと思いますが、知事の見解をお尋ねします。

<村井知事>
 浅川ダム等の大型公共事業の見直しについて、お尋ねを頂戴しました。減災対策や経済産業の活性化等のための社会資本の整備というのは、これは県政がどうしても担わなければならない重要な課題であります。社会資本の整備にあたっては、当然のことではございますが、「選択と集中」の考え方をもとに、限られた財源を有効に活用して、浅川ダムなど必要な事業は事業の大小に関わらず、着実に進めるべきものだと考えております。

(4)各種料金の引き上げによる増収について
 深刻な不況で、わが県の税収も大幅に落ち込み深刻な事態が生まれています。一月の臨時議会では緊急対策として、補正予算が組まれました。その予算の説明で知事は「暮らしの安定、生活者への支援、雇用の確保の3点を内容とし、従来の公共事業を中心とした経済対策とは一線を画して、産業から県民生活まで幅広く対応する」と、中小企業融資制度の充実や資金繰り対策など、切実な予算が組まれました。私たちも久しぶりに共感できるものであり賛成しました。今後もこうした予算の編成を期待をしています。
 しかしその一方、昨年の議会では、分べん料を始め県の多くの手数料や使用料が引き上げられ、新年度予算でも、県立学校の入学金、授業料をはじめ各種料金の引き上げが提案されています。前回の引き上げ増収分と合わせると、想定される額について総務部長にお尋ねします。

<浦野総務部長>
 使用料・手数料の改正による影響というお尋ねでありますが、今議会に提案しております使用料・手数料の改定分は、12条例案全部を合わせまして、平成20年度に比べ、500万円程の増となります。昨年の11月議会で、ご議決頂きました使用料・手数料の改定分を合わせますと、一般会計で2280万円余の増収でございます。また病院事業会計、企業会計でございますが、病院事業会計で5740万円余と見込んでおります。

(5)県民負担の軽減について
 国の悪政により、厳しい経済環境が県民の暮らしを直撃しているなかで、負担を増やすのではなく、県民負担の軽減こそ求められていると思いますが、知事の所見をお伺いします。

<村井知事>
 県民負担の軽減の問題につきまして、お尋ねを頂戴しました。使用料・手数料につきましては、行財政改革プランに沿って、「受益者負担の適正化を図る」という観点から、定期的な見直しを行いまして、行政サービスに見合った負担をお願いをしているところでございます。それぞれの金額につきましては、国や他の都道府県等の水準を勘案しながら、行政サービスの提供に必要な経費に基づきまして、設定を致しておりまして、私は受益に見合った水準をお願いしているものと思っております。
 なお、そういたしましても特に従来にしまして引き上げ幅に大きいものについては、経過措置を設けるなど負担感が大きくならないように、配慮をしているつもりであります。それから、授業料等につきましては、奨学金制度の活用のほか、所得の状況に応じまして、減免措置を講ずるなど、配慮をいたしているところでございます。

4、商工業の振興について

(1)制度資金、融資制度について
 県内中小企業の経営は深刻で、当面の緊急対策は資金繰りをどう乗り切るかが、大きな課題となります。一月に借り換え融資制度が作られ歓迎されていますが、制度資金の残額のみが対象であり、多くの企業主の皆さんから、市中金融機関からの借り入れも対象にしてほしい、との声がたくさん寄せられています。

 先日富山県の制度を調査してまいりました。富山県では制度資金だけでなく、市中銀行の借り入れも対象とし、金利も1.6%、1.3%など、長野県より低く大変皆さんが利用しております。銀行の理解が得られたのかと伺うと、銀行とは協議はせず県の判断で行っているとの事、また利用状態は毎週集約して実態に即した制度に改善している。災害支援の融資制度はあの地震災害2日後には創設し、支援をしているとその早い対応には感心してまいりました。
 県の融資制度の利用の実態はどの様になっているのか。もっと利用しやすい制度への改善と利子の引き下げを図るべきと思いますが、商工労働部長のご所見をお伺いします。

<荒井商工労働部長>
 県の制度資金に関するご質問でございます。県制度資金の借り換え制度につきましては、昨年12月に実施いたしました「緊急経営実態調査」や商工関係団体のみなさんからのご意見を伺う中で、非常に要望が強かったために速やかな対応に努め、この2月1日から、取扱いを開始したところでございます。
 この県の制度資金は、限られた財源の中で県内金融機関のプロパー融資に対しまして、補完的な役割を担っていることでございまして、プロパー融資については、それぞれの金融機関の判断において、行っていただくべきものと考え、対象を県の制度資金の残高に限定したところでございます。

 次に、中小企業融資制度資金の利用状況についてのお尋ねでございます。今年一月末現在では、全体では10,080件、846億4,000万円余の利用がございます。設備資金は落ち込む一方で、運転資金は大幅に増加致しております。特に、昨年の国の緊急保証制度の創設に伴いまして、この制度に対応しております「特別経営安定対策資金」の利用が、昨年12月には80億円で、前年に比べまして8倍余り、今年1月には、59億円でこれも前年に比べまして約10倍と。こういうことから、多くの中小企業の皆さんにご利用頂いている状況でございまして、トータルと致しまして、前年の12月に比べまして、金額ベースで全体で8%ほど増加している状況でございます。
 また制度資金の改善と金利の引き下げについてでございますが、これから年度末に向けまして、資金需要が増加していくと考えられますことから、貸付利率につきましては、前倒しで3月1日から原則として0.2%引き下げることと致しております。
 また平成21年度当初予算案の中では、融資目標額を今までの最高の1,150億円に設定を致しまして、このうち不況対策のメニューでございます「特別経営安定対策資金」の融資目標額を20年度当初予算の75億円から、350億円と大幅に拡大するとともに、運転資金の貸付枠を現行3000万円となっておりますけれども、これを5000万円に拡大するなど、拡充に努めてまいりたいと考えております。

 それから、商工労働部長でありますが、実情によく合った融資制度の構築をしていただきたい。その時々にその必要性も違ってきますし、また社会状況も違ってくるわけですから、ぜひ富山県の融資制度のように、柔軟性を持ち県民の要望にこたえる、積極的な姿勢で取り組みをしていただきたいと。この間も様々、前向きな取り組みをされてきた商工労働部でありますが、さらに一層の取り組みの強化をお願いをしておきたいと思います。

<荒井商工労働部長>
 
議員のお話をお聞きしておりまして、なかなか難しい問題だなと率直には思いました。ただ、富山県の例とかそういったものについては調べてみたいと思います。

(2)新分野への転換について
 また、新分野への転換も大きな課題です。先日、伊那食品の塚越社長さんは、「数年後には自動車産業も大転換がおきる、電気自動車が主力になるだろう、エンジンはモーターに転換、それに付随する部品も一変する。こうした分野の産業は、今から対応できるように技術開発に取り組まなければ脱落する。先を見通した技術開発や、産業展開の展望を示すことが、行政の大きな役割」との指摘が寄せられました。こうした新分野への転換や技術開発の支援をどの様に取り組むのか商工労働部長にお尋ねします。

<荒井商工労働部長>
 それから、新分野への転換等への支援についてということでお尋ねがございました。本県産業の振興にあたりましては、産業振興戦略会議によりまして、よく支援策を着実に転換していくことが肝要であると考えておりますが、一方におきまして、従来の加工組立型の企業が競争に打ち勝ち、より発展していくためには、付加価値製品あるいは部品の創出ができる企業へと、そうした転換が求められてもおります。こうした転換を図るにあたりましては、これまで培われてまいりました超精密、超微細部品の製造技術、あるいはナノテクノロジーなどの得意分野を一層向上させまして、さらには環境エネルギー、航空宇宙などこれからの成長期待分野への取り組みの推進が重要であると考えております。
 こうしたこともございまして、1月から総合技術環境センターから環境技術部を新設いたしまして、環境分野の技術開発等への支援に取り組むとともに、ナノテク・材料活用支援センター等におきましては、産学官連携によるカーボンナノチューブ、あるいは有機ELなどの新技術、新世代の実用化の製品化に向けまして、支援を強力に進めてまいりたいと考えております。以上でございます。

5、農業の振興について

(1)農業の多面的役割の評価について
 つぎに農業の振興について伺います。毒入りギョウザ事件、汚染米事件など食料の安全が国民的課題となり、さらに、生産国の輸出制限が行われ始めるなど、今後の日本の食料確保にも大きな不安が広がっています。その一方で、日本の食料の自給率は、40%と世界でも異常な水準に落ち込んでいます。耕作放棄農地は全耕地の1割近くに達し、高齢化と後継者不足も深刻です。
 平成元年の日本の農家数は422万9000戸あったのが、17年は284万8160戸と半減です。長野県も17万5637戸が12万6857戸と、4万8780戸も激減しています。現在の就農者も高齢化しさらにすすみ、減少が激化すると思われます。
 長野県農業の実態をどの様に把握されているか、また、農業の果している環境保全の役割、治水など多面的役割についてどの様に評価し、どの様に支援をしていくか農政部長にお尋ねします。

<白石農政部長>
 長野県農業の実態、農業の果たす多面的機能の評価及び支援についてのお尋ねでございます。本県の農業は担い手の高齢化による農業生産力の低下、産地間競争の激化によります農業所得の伸び悩みに加えまして、本年度は肥料などの資材価格の高騰や景気の低迷によりまして、農産物価格は総じて安値で推移するなど、様々な課題を抱えておりまして、大変厳しい状況にあると認識をしております。
 しかしながら、農業農村は、食料の生産のみならず、生産活動を通じまして水資源の涵養、農村景観の形成など、多面的な機能を有しておりまして、県民生活に欠かせない非常に重要な役割を果たしております。県と致しましては、農地・水・環境保全向上対策事業や、中山間地域農業を直接支払事業によりまして、農村環境を守るための活動や地域の特性を活かした農業生産を支援いたしまして、将来とも農業農村の多面的機能を発揮されるよう引き続き取り組んでまいります。

(2)所得補償・価格保障・地域奨励作物について
 農業は短期的雇用では成り立ちません。後継者不足が打開出来る根本的な解決の道でもありません。何十年も農業をやってきた皆さんが、「農業だけでは食べていかれない」と言っているわけです。こうした中で、新たな就農者を生み出すことは至難なことです。農業に就業しない原因を明確にし、その解決なしに安定的な後継者作りは進みません。
日本の農業を守り発展させるには、農産物の輸入自由化政策を転換し、農業で生活ができる価格や所得補償を実現しなければ、農業を守ることはできません。報道によれば、新潟県の泉田知事が米農家の支援モデル事業として、所得補償制度を全国で始めて試みると報道されました。
 その中身は水田農家の経営安定化を図るために、2009年度から、所得補償制度を試験的に始めるというものです。対象は10ha程度の経営面積を持つ農家や集落営農組織などの、主な従事者を公募で受け付け、対象者を決めるといいます。400万から500万円の「所得ライン」を設け、米価の下落などで実際の所得がそれに達しない場合に、差額を助成する仕組みです。また、中山間地活性化として農業生産法人に新規就農した場合、最高500万円の所得補償をするというものです。全国から注目されています。
 長野市では地域奨励作物支援事業に取り組み、大豆・麦・ソバの作付けに支援し、大きな成果を挙げています。農業再生産に必要な収入を補償することが、農業の振興には欠くことのできない政策と思います。長野県もこうした所得補償か、価格保障制度、または奨励作物等への支援に取り組むべきと思いますが農政部長にお尋ねいたします。

<白石農政部長>
 所得補償についてのお尋ねでございます。新潟県では、稲作農家への所得補償制度の可能性を探るために、県内の水田面積が、20〜30haの集落二地区で、所得補償の制度の有効性の調査、制度の効果などの検証、また改善事項の検討を行いまして、国への制度提言を行うと聞いております。
 県と致しましては、この所得補償制度の有効性に関する検証結果等の情報等を入手する等、その動向につきまして、注視してまいりたいと考えております。
 我が国の主食であります米の所得補償につきましては、国民の食料を確保する観点から、国において措置されるべきものということでございまして、県独自の所得補償は困難と考えております。
 本県と致しましては、引き続き水田経営安定対策や野菜畜産などの価格経営安定対策によりまして、農家の経営安定を図ってまいる所存であります。

(3)地産地消について
 県内各地で、学校給食などに地産地消を取り入れている自治体が増えています。しかし学校給食は一部に過ぎません。地域全体が地産地消に取り組む地域循環型の仕組みを作ることが、農業振興にも必要と思いますが、県としての考えについて農政部長にお尋ねします。

<白石農政部長>
 地産地消に取り組む地域循環型の仕組みの構築についてのお尋ねでございます。県では、昨年4月に長野県地産地消推進計画を策定いたしまして、直売所や学校給食、旅館、飲食店等における地場産物の利用促進を市町村などと連携して推進をしてきております。具体的には、学校給食でのさらなる地産地消を推進するための体制整備を教育委員会と連携して、推進しております。
 また、旅館、ホテル等における利用促進につきましても、地域ごとに供給する仕組みづくり、それぞれの構築を進めているところでございます。さらに地場産物の販売拠点となる直売所の年間を通じての品ぞろえの充実のために、直売所の総合流通システムの構築に向けて、取り組みを推進してまいりたいというふうに考えております。その他、地域の農産物を活用した加工食品の開発販売を促進することなど、生産者、消費者、食品企業なども含めまして、議会と協力を得ながら、地域内で農産物を循環する仕組みづくりに取り組んでまいりたいと考えております。

6、林業の振興について

(1)林業の取り組みについて
 次に、林業の振興についてお尋ねします。当面、間伐の促進が急務となっていることは当然でありますが、今後10年20年先に成木になる、資源の利用促進を今から展望し、対策が最も求められると思いますが、再生産できるエネルギー源としてペレット製品だけでなく様々な製品の開発、安い価格で提供できる建設資材の開発などに、今から取り組むべきと思いますが、現在の取り組みについて林務部長にお尋ねをいたします。

<轟林務部長>
 建築資材の開発、県産材利用の促進についてお尋ねでございます。長野県産材の利用を促進していくためには、高品質の製品を安定的にかつ適正価格で提供していくことが重要であると考えております。このため、県では平成20年度より建築部材の規格化と共通化により、コストの縮減に取り組むとともに加工流通や品質の向上に向けた体制の整備等ついて、関係業界と協力しながら検討を進めております。
 また建設部と連携して進める「信州ふるさとの住まい助成金」につきましては、消費者、工務店に周知が図られ、個人住宅での県産材利用の成果が上がってきております。今後公共土木、 公共建築への県産材利用も含めまして積極的に推進してまいりたいと考えております。

(2)県産材利用の情報提供・共有について
 現在県産材の利用が進まないネックに消費者、工務店、製材業者、森林生産者との情報の共有の不足が指摘されています。消費者にとってはプレハブ業者の展示場の多さに比べて、県産材の住宅の展示は少なく、木造住宅の良さが理解される環境は不十分と言われています。また提供する側でも、工務店ではまとまった材料の調達の困難さが指摘され、製材業者は需要の実態が分からず、県産材の備蓄は困難との声も聞かれます。そうしたミスマッチを改善し、川下から川上まで一貫した情報提供できるシステムの構築が求められていると思いますが、その後どの様に改善がなされたのか林務部長にお尋ねします。

<轟林務部長>
 伐採現場と製材所側等の情報提供を図る次世代型県産材供給システムにつきましては、平成19年度から、3年間の計画でその開発に取り組んでおります。このシステムでは、生産者側の丸太の供給情報と製材工場側の需要情報等をマッチングさせ、取り引きの機会を拡大させるとともに、現場から工場へ丸田を直送し流通コストの軽減を図ることを目指しております。平成19年度につきましては、現状を分析するため、事業者のみなさま、現場の作業員のみなさまに対する聞き取り調査を中心に進め、平成20年度はこれらの結果を基に、システムの構築を進めてまいりました。引き続き平成21年度には、現場での実証試験を行い、一貫した情報提供による林業の収益化の向上に貢献できるシステムとして完成させたいと考えております。

(3)捕獲員制度について
 中山間地の鳥獣被害は深刻であります。伊那市長谷(はせ)地区の農家のお年寄りは「農作物はすべて食い尽くされ、農家というのにお米まで買って食べなければならない」。また森林の中には皮が食い荒らされ、白くなった木が林立している異様な場所も各地に生まれています。夜間、鹿との衝突も相次ぎ、鹿の被害が拡大しています。
 こうした有害鳥獣の駆除、捕獲をしている猟友会の皆さんは高齢化し、上伊那でピーク時は2,000人いましたが、現在は500人と激減しています。その原因の一つに、狩猟税などの費用の負担が大変多いことがあげられております。昨年捕獲員の狩猟税の減免処置が行われましたが、捕獲員になるには高いハードルと市町村の認定が必要であり、活用できないのが実態であります。県内で何人の捕獲員が認定されているか、林務部長にお尋ねします。

<轟林務部長>
 鳥獣被害防止特別措置法に基づく対象鳥獣捕獲員の認定状況についてのお尋ねでございます。対象鳥獣捕獲員を認定するためには、市町村長が鳥獣被害防止特別措置法に基づく市町村被害防止計画を策定し、その計画の中で、もっぱら有害鳥獣の捕獲を目的に市町村長が市町村職員を指名、あるいは市町村職員以外の民間の方を任命するものでございます。現在まで63の市町村で市町村被害防止計画を策定しておりますけれども、これにつきましては、年間を通じまして、捕獲業務に時間を拘束されるなど、議員ご指摘の通り、条件が大変厳しいことから、現在まで指名・任命されている方はいないと確認しております。

 捕獲員の制度、県の条例も改正もして猟友会のみなさんに狩猟税の減免という提起がされたわけでありますが、これが一人も使われていない、半額に減免するというのに、一人も活用できないというこの制度の矛盾といいますか、こういう中で、先ほども言いましたけれども、猟友会のみなさんの負担の軽減を何としても実現を出来るように求めておきたいと思います。

<轟林務部長>
 県と致しましては来年度予算の中で、捕獲等猟友会の皆さんがする資材等の支援という形で、ま違った形ですけど、それを含めまして、やっていきたいということで、予算にお願いをしているということです。
 捕獲に要する資材、猟犬につけるGPSの資材、それから捕獲の部分の運搬資材、そういう形の部分で少しでも捕獲員の支援をお願いしたいということで、予算をお願いしています。

(4)狩猟に関わる免許更新・税の減免について
 個人が使用している車の運転免許にさえ、優良運転手には更新の年数が延長され、優遇制度があります。今後、有害鳥獣の駆除に参加した、猟友会みなさんの免許の更新期間の延長や税の減免をなんとしても実現してほしいと切実な猟友会員の訴えであります。私もこれらのみなさんが大変努力しているところに、減免の措置を取ることが、当然と考えていますが、総務部長にお尋ねします。

<浦野総務部長>
 狩猟税の減免に関するお尋ねでございますが、狩猟税の税率、あるいは減免につきましては、地方税法において、全国一律の規定とされております。したがいまして、県独自の定めというものはできないこととなっておりますので、ご理解を頂きたいと存じます。

 総務部長にお伺いいたしますけれども、先ほど収入、県民負担の増額が8000万円ほど増収になるという答弁でありましたが、こうした中で、浅川ダム17億円、これを1年先送りにするだけでも、私は十分に対応ができると思います。そういう中で、これから本当に深刻になっていく不況の中で、県民の福祉や生活を守るということが最優先にすべきだと思うわけであります。
 さらに猟友会の減免の課題でありますが、「国の制度で減免はできない」という答弁でありましたが、県が何らかの支援をする、仮に制度として減免ができなければ、そういうみなさんに県独自の支援策を、私は講じる必要があると思うわけであります。そういう点について、林務部長も含めてご見解を頂きたいと。

<浦野総務部長>
 使用料手数料に関しては、先ほど知事からも申し上げましたけれども、行政サービスをお受けになる方々に、その受益に見合ったご負担をお願いするものでございまして、浅川ダムの建設とは別個の問題だと考えております。
 それから、狩猟税の関係ですけれど、支援措置をということでございますが、税制として支援措置を講ずるというのはなかなか難しかろうというふうに考えております。

<轟林務部長>
 税法上の支援措置は難しいということでございます。県としましては、来年度予算の中で、捕獲等猟友会のみなさまがする資材等の支援という形で、違った形ですが、そういう点も含めまして、やっていきたいということで予算にお願いをしているということです。
 捕獲に要する資材、猟犬につけるGPSの資材、それから捕獲の部分の運搬資材、そういう形の部分で少しでも軽減を図れるような支援をしていきたいということで、予算をお願いしています。

7、社会保障に充実について

(1)社会保障費削減について
 社会保障の充実について、お尋ねいたします。現在、国は社会保障費2,200億円の削減を推し進めています。その結果、後期高齢者医療保険の創設、障害者自立支援法の制定、医療費の患者負担の増大、診療報酬の削減などが強行され、介護の現場からは低賃金と過重な労働が強いられ、医療の現場からも看護師の不足と定員の配置も少なく夜勤の連続、過重な仕事に倒れる看護師が急増しています。
県議会でも2,200億円の削減に反対する意見書が全会派一致して採択されました。県としても国に対してしっかりとモノが言える立場を貫いて頂き、2,200億円の削減を改めるよう力強く要望すべきと思いますが社会部長に伺います。

<和田社会部長>
 社会保障費に関する国への要請についてでございますけれども、社会福祉、あるいは福祉医療対策等におけます国の対応につきましては、これまで全国知事会の国への提案・要望、あるいは国民生活を守るための緊急決議等を通じまして、地方の実情や現場の声に十分に耳を傾けるようしてきたいところでございます。
 県議会の意見書採択を踏まえまして、昨年12月には衛生部長とともに厚生労働省に赴きまして、社会保障経費にかかる確実な財源措置、医療、福祉、介護サービスの安定的な確保について要望を行いました。社会保障に関しましては、国において継続して議論が行われておりますが、県民生活に大きな影響を与える重要な課題であることから、引き続き議論の動向を注視しますとともに適宜重ねて国に要請を行ってまいりたいと考えております。

(2)子育て支援・福祉医療費について
 子育て支援についてお尋ねします。全国各地で子育て支援の取り組みが進められています。東京都、山梨県、群馬県などの取り組みは大変参考にすべきものです。群馬県でも来年度予算で、中学卒業まで子どもの医療費の窓口無料化を拡大する予算が提案し、もちろん所得制限も自己負担金もありません。この不況で税収入の大幅な落ち込みは、長野県と同様です。県のスローガンを見ますと「子育てするなら群馬県」というものでした。
 それに引き換え長野県では、福祉医療費の自己負担金を1レセプトあたり300円から500円に引き上げが提案され、その事を知ったお母さんたちが、幼い子どもたちを抱えて議会に陳情に駆けつけております。「無料にして欲しいといっているのに引き上げるとはどういうことなのか」、「納税者の声が理解できないのか」、「世の中の動き逆行しているのではないか」と怒りの声が寄せられていますし、また、市町村長や市町村の担当者から、「この突然の引き上げにどうしても理解が出来ない、なんとか引き上げをやめさせてほしい」。私の地元の箕輪の町長とも「この引き上げをやめてほしい」。こういう要請も受けてまいりました。
 そこで伺いますが、福祉医療費給付事業検討会では、どのような検討を行ってきたのか、どんな審議がされたのかお尋ねします。今回の値上げ案の撤回を強く求めますが、知事いかがでしょうか。ぜひ引き上げをやめるようお願い申し上げたいと思います。

<村井知事>
 福祉医療の自己負担分の引き上げ案の撤回を求めるという話でございますが、福祉医療制度につきましては、県や市町村の財政状況が大変悪化する中、医療費の増加に伴いまして、福祉医療費給付額が急激に増加するということがございまして、制度の維持をどう図っていくか、非常に難しい課題だと認識をしております。例えば平成14年度から、19年度まで決算が出ているわけでございますが、この間31.1億円から、42.7億と給付額が、これ県の補助額ということで、増えておりまして、実額で11.6億円増額。こういうことでございます。
 そこで私どもは、こういう事態を押さえまして、平成19年度、長野県福祉医療費給付事業検討会を、ここで検討をしてもらいまして、その報告書を踏まえまして、県・市町村の上半期の税収状況なども勘案するなかで、福祉医療制度をどうやって維持することができるのか、これまで維持できないのではないか、そういう危機感を募らせたわけでございまして、検討会を再度立ち上げることとしたわけでございます。昨年の9月から、県市長会、県市町村会と協議を重ねてまいりまして、この制度を通じて、どうしたら今後も県民の皆さんにおおむね従前と変わらず医療サービスを受けていただくことができるのか、その方策として受益と負担のあり方、具体的には受給者負担の額について検討するために、12月に第一回を開催し、あり方を引き続き検討していただくため、そして実務担当者による幹事会を活用するなど、精力的な協議を行いまして、1月23日、検討会としての、結論を得て、報告を頂戴したところでございます。県と致しましては、実際各段階で、市町村でもいろいろな対応の検討の必要がございます。そういう意味で県としては、本年の10月から県として自己負担額を引き上げるということを考えざるを得ないという結論に立ち至った。こんな経緯でございます。ご理解と頂きたいと存じます。

 福祉医療費の問題でありますけれども、本当に地域のみなさん、子どもを抱えたみなさんが、「なんとかしてほしい」。こういう切実な要望であります。知事の答弁では、財政が大変厳しい中で、「極めて困難だ」ということでありましたが、群馬県では同じ不況に陥っている中で、あえてここで中学卒業まで窓口の全面的な無料化を実現しようという県もあるわけであります。私は大変知事の姿勢の違いを感じるわけであります。本当に切実な要望、そして地域の皆さんからも、自治体の窓口の担当者の皆さんも、首長の皆さんからも、強く求められているわけですから、ぜひ再考をしていただきたいというふうに思います。


(3)特別養護老人ホームについて
 次に、特別養護老人ホームの入所者は全国で40万人。その一方、入所待機者は38万人と入所者と待機者がほぼ同数に達しています。長野県内の在宅待機者も4,400人に膨れ上がっていると言われています。県の計画案では、770人の増床計画となっていますが、その根拠とそれでも不足する待機者3,630人をどのように対処されるのかお尋ねします。
私の住んでいる自治組織、常会と言いますけれども、25戸の集落であります。この構成を見ると一人暮らしの後期高齢者が5世帯、夫婦二人暮らしの高齢者世帯が4世帯と3分の1がこういう状況になっているわけでございます。今後、家族介護が成り立たず施設介護に頼らざるを得ない、こうした事態が生まれるのではないか。しかし現状では施設がこれほど不足し介護病床は全廃、療養病床はさらに削減。この事態を放置するなら老老介護、認認介護などといわれる事態がさらに拡大されることは火を見るより明らかです。県としてどう認識されているのか。今後の施設の目標値ついて、社会部長にお尋ねします。

<和田社会部長>
 特別養護老人ホームの待機者に関するお尋ねでございます。お尋ねの特別養護老人ホームの待機者は毎年3月末時点で、県内の特別養護老人ホームに入所申し込みをしている人の実数を把握しているものです。直ちに入所の必要のない予約的な申し込みも含まれていると思いますが、近年年とともに増加しておりますし、在宅の要介護認定者を対象とした実態調査でも、自宅で生活したいという方が6割を超える一方で、施設や共同住宅等への入所を希望している方が2割程度いることから、こうしたことを考え合わせますと、特別養護老人ホームをはじめ、介護施設の更なる充実が必要と、このように考えております。
 現在策定中の県の介護保険事業支援計画におけます施設の目標につきましては、保険者である市町村の意向を尊重し、市町村が必要と考える整備料を基本に県計画の目標値としていることとしています。現時点の数字を申し上げますと、来年度からの3年間で、特別養護老人ホームの770名分のほか、小規模特養で340名分の増、老人保健施設やグループホームなどの居住系サービスを合わせますと、約3,100名分の増を見込んでおります。県としては、この計画に定めますサービスが、確実に提供されるよう、市町村と連携しながら、取り組んでまいります。

8、医療政策について

(1)県立病院の独法化について
 次に、県立病院の地方独立行政法人化の提案がされましたが、あまりにも拙速すぎます。我が議員団は、すでに独法化された県外の病院も視察し、現状を見てまいりました。多くの病院が、人件費の大規模な削減を進めているのが特徴でした。医師や看護師の確保は法人化されたからといって進んでおらず、逆に退職者が増えているケースも沢山ありました。独法化が県の説明のように全てバラ色とは到底思えません。
 また、県立病院をはじめ地域の皆さんと懇談してきました。木曽病院では院長とも懇談し、院長は「これまでの病院の経営改善に取り組み成果を上げ、そのために2倍、3倍も働き黒字を出すことが出来た。『県立病院だから改善できない』ということはない」と言明されました。
地域の皆さんからは大きな不安の声が寄せられています。県が急きょ行った説明会もたくさんの質問や疑問が出されました。県立病院で働く職員が参加している労働組合からも反対の陳情が出されています。県はこうした現場や地域の皆さんの疑問や不安に誠意をもって回答されたのか、どの様な説明をされてきたのか、お尋ねします。疑問や不安の解消できたとしているならば、何をもって判断されたのかお尋ねします。
 前県政時代の高校統廃合問題では、県の拙速なやり方に県民の批判が集中しました。我が党県議団は条例の改正を提案し、拙速な統廃合にストップをかけよと議会のみなさんと頑張りました。県は反省をして、住民合意を原則とする方針を打ちだし、提案を撤回して、県民合意を得る新たな取り組みが始まる中で、統廃合問題も解決されつつあります。こうした経験からみても拙速な移行を改めるべきです。2月15日に須坂市内で市民のみなさんが開いた「須坂病院の独立行政法人化を考えるシンポジウム」でも、「このような重要なことを決める時には、もっと県民の意見を聞いてからにして欲しい」という意見が参加者から出されました。行政の説明責任を果すべきではありませんか。このような状況では今回の議会で定款を決めてしまうというのでは、あまりに拙速で、民主主義的手続きにも欠けているのではないでしょうか。病院事業局長にお尋ねいたします。

<勝山病院事業局長>
 県立病院の地方独立行政法人化に関するご質問がありました。県立病院の経営形態の見直しにつきましては、県からの諮問を受けました行政機構審議会で、一昨年の11月から審議を進めて頂き、昨年9月に答申を頂きました。県の諮問時点から考えますと、もう1年以上検討を行っているわけで、決して拙速に進めているわけではありません。昨日も本郷委員へのご質問にもお答えいたしましたが、病院職員に対して説明会を開催し、職種別の説明も行いました。
 また県立病院の地方独立行政法人化に向けた検討チームを立ち上げまして、繰り返して検討してまいりました。このような職員との討論を通じまして、おおむね理解を得られてきているのではないかいうふうに考えております。
 地域住民の皆様方へは、年明けに県内6か所で説明会を開催し、地方独立行政法人化は、県立病院が担っているへき地医療や高度専門医療などの不採算医療の提供体制の崩壊を防ぎ、今後も継続して地域に必要な医療を提供していくために行うものであることを説明してまいりました。県には政策医療を担う県立病院を維持していく責任があります。先ほどは佐々木議員からのご質問に対し、「知事から県立病院については、独立行政法人化後も、適正な経費を負担する」との旨の決意が示されました。患者の命を預かる県立病院の改革は拙速でも巧遅でもいけません。今日の病院を取り巻く厳しい状況を考えますと、一日も早く経営形態を見直し、県立病院の機能の充実を図っていくことが患者さんや地域住民の安心につながると考えております。
 県議会で定款案が可決されれば、中期目標の策定を進めることになります。この過程でも、住民の皆さんの意見を丁寧に聞きながら、県立病院の機能を十分果たせるように検討を行ってまいりますので、ご理解のほどお願い申し上げます。

 勝山病院事業局長にお尋ねしますけれども、昨年の12月議会でこの本会議でも独法化の議論が行われました。その際には、「独法化ありきではない。これから大いに検討をしていろんな選択を見出して行こう」という立場が表明されて、また総務警察委員会の中の集中審議の中でも「独法化ありきではない」。こういう説明も答弁もされてきたわけであります。
 こうした中で、わずかの期間に「すべてが了解され、それ以外にない」という結論に至った経過については、どう見ても理解ができません。本当に独法化が長野県の地域医療を守っていく上で、最善策かどうかもっともっと段階的に取り組むことがたくさんあると思いますし、「県立病院でやっても改善できる」、こういう意見も職員の中から出ているわけであります。その職員の、私は県立病院の職員のみなさんの意欲やモチベーションをどう高めるかということが、病院経営にとっても最も大切なことだと思うわけであります。そういう点でも職員の理解が得られるような、再検討を重ねて求めておきたいと思います。そういう点からも、私たちはそれぞれの地域の具体的な課題も調査を報告してきているわけでありますから、ぜひもう一度検討しなおす気がないかお尋ねを致します。

<勝山病院事業局長>
 県立病院の地方独立行政法人化についてのご質問なんですが、先ほども申し上げましたように、県立病院の地方独立行政法人化に向けた検討チームというようなものを県立病院の中に立ち上げまして、職員の諸君とずいぶん長時間にわたって議論を重ねてまいりました。その中で他病院との医療連携とかですね、それから研修体制の構築、病院のネットワーク化によって、診療機能を充実させる、それから医療職員の確保を図るべきという非常に強い危機感に満ちた意見が多く出されました。これは独立行政法人化の必要性があるということで、われわれも共通した認識に立っているんではないかと思っております。
 先ほども申し上げましたように、患者の命を預かる県立病院の改革というのはもちろん拙速であってはなりませんけれども、その一方巧遅であってもいけません。今日の病院を取り巻く環境が非常に厳しいという事は先生方みなさんよくおわかりのことだと思います。我々と致しましては、一刻も早く病院の経営形態の見直しと、県立病院の機能の充実を図っていくことこそが、患者さんや地域住民のみなさんの安心につながると思いますし、また県立病院の職員の方々に対する我々の責任を果たすことが必要に思いますので、どうかご理解をお願い致します。

(2)医師確保・地域医療について
 県内の医療の崩壊は県立病院だけの問題ではありません。産科病院や小児科病院がなくなる地域が続出し、地域医療が成り立たない地域が生まれています。銚子市立病院の閉鎖に見られるよう公立病院の倒産も生まれる深刻な事態です。
 長野県内でも県立5病院は40億円の負担金を支出し、それでも単年度で3億7,000万円赤字、県内にある市町村立及び組合立などの20病院には95億円の繰り入れをしているのに、単年度で75億円の赤字を計上しています。前年度より26億円の増加です。民間病院もこうした中で倒産する病院も急増しています。民間的発想で公立病院を活性化し、経営改善を目指すと言いますが、民間病院も極めて厳しい状況です。過疎地域が多い長野県ではさらに困難な課題であります。
 これほどひどい事態を生み出している原因は、診療報酬の削減と患者負担の増大により、受診抑制を生み出していることによるものであり、決して病院の経営形態の問題ではありません。県立病院の独法化で改善できるほど生易しい問題ではありません。また職員の増員や柔軟な手当の増額など、「自由度が増す」と強調していますが、出産に関わるスタッフの手当て増額を条例改正で実現したことや現状でも定数にふさわしい職員が確保できていないことを考えれば、経営形態を変えれば、これらの問題が解決できるとは言えないのではないでしょうか。県立病院の独法化を先行させるのではなく、市町村立病院や民間医療機関とも協力し、根本的な打開策を考えることが求められていると思いますが、衛生部長のご所見をお伺いします。

<渡辺衛生部長>
 地域医療崩壊の原因と打開策に関するご質問にお答えします。一口に地域医療の崩壊と申しましても、その状況は様々でございまして、またいくつもの要因が重なり合った結果として危機的な状況になっているものでございます。県ではこれまで、二次医療圏ごとに市町村や医療機関、医師会などからなる「地域医療検討会」を開催し、個々の地域の実情に即した対応策を講じてまいりました。また総じて地域において、安心で質の高い医療を提供するためには、その担い手であります医師をいかに確保していくかが喫緊の課題になっているところでございます。今後ともこれらの課題の解決に向けまして、市町村や関係機関と連携し国に対して、制度や予算の充実などを要望してまりますとともに、地域医療を守るためあらゆる手を尽くしてまいります。

 いま病院経営は本当に大変であります。特に医師確保の問題は、どこの病院でも大変深刻な事態を生みだしております。こういう中で、ひとつご提案を申し上げますけれども、衛生部長の考えかたをお聞かせ下さい。医師の確保も、今女性医師も大変多くなり、子育てが大変大きな課題になっております。また看護師も子育てが大変な課題であります。夜勤があり当直があり、こういう職場の皆さんは、24時間の保育の体制が大変求められております。この環境を充実することが人員の確保についても大変大きな課題であります。そういう中で、10圏域ぐらいに医師住宅の充実や24時間の保育のできる、そういう体制を県としてぜひ考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

<渡辺衛生部長>
 24時間保育につきましては、国の制度もございますので、どこかで手をあげて頂きたいと思っておりますけれども、現実には医療機関からやりたいという希望が出てこない、そんな状況にあります。たとえば1ヶ所の医療機関で持つには、ちょっと難しいかなと思いますので、その地域の何ヵ所かの医療機関がまとまって1ヶ所作るというような方法もあるとあるのではないかと、そんなようなことも考えながら、どこかでやれればいいなと思っている。そんなところでございますので、できるだけそのようなことが実現できるような努力はしてまいりたいと思っております。

(3)療養病床の確保について
 国は介護病床を全廃し、療養病床も半減させる方針で、診療報酬の大幅な削減を強行しました。その結果、療養病床では経営が成り立たず、閉鎖が相次ぎ、さらに老人保健施設へ転換すれば補助金を出す制度を導入して病床の削減に拍車をかけています。
 その一方で高齢化社会の進行は、療養病床の必要性をますます拡大しています。長野県の療養病床は全国的に見ても最低水準にあります。県として長野県にどの程度の療養病床が必要と考えているのか、今後療養病床の確保のためにどんな対策を講じようとしておられるか、衛生部長にお尋ねします。

<渡辺衛生部長>
 療養病床の必要数とその確保対策について、お答えいたします。療養病床は現在、医療型が2,541床、介護型が1,654床、計4,195床ありますが、昨年策定いたしました、長野県医療費適正化計画におきましては、国の基準を基に、後期高齢者人口の伸び率などを本県の実情を加味し、平成24年度末の療養病床の必要数を3,317床としたところでございます。一方昨年6月に実施した療養病床を持つ医療機関への意向調査によりますと、貸与未定も含まれますが、現時点では、この必要数を200床以上上回る状況にありますが、県と致しまして、医療機関の意向を尊重しまして、療養病床の確保に努めてまいります。
 今後も必要に応じまして、療養病床を持つ医療機関の意向を把握しながら、高齢者に対して必要な医療サービスや介護サービスが提供されますよう適切な対応をしてまいります。

9、教育問題について

(1)教育の機会均等について
 次に教育問題についてお尋ねします。深刻な不況は子どもたちの生活環境にも大きな影響を与えています。給食費が払えないから「もう、給食はいらない」と申し出る子どもがいるとの報道され、就学援助を受けている人もたくさん増えています。19年度の保護児童・生徒数は16,519人に達しています。また、退学する子どもも生まれています。親の悩みは深刻であります。外国人学校は、財政的負担にたえられず、生徒が激減し学校の閉鎖の危機にもさらされ、父母の皆さんも子どもの教育に大変な不安を抱いております。このような事態にどの様に対処されるのか、教育長にお尋ねします。

<山口教育長>
 深刻な不況の影響についてのお尋ねでございます。高校におきましては、授業料の減免を受ける生徒が増加しておりまして、また小中学校におきましても、市町村から就学援助を受けている児童・生徒が増加しているなど、深刻な現下の不況の中で、保護者の家計も苦しくなっている家庭も増えていると。こういう認識を持っております。
 こうした中、「児童・生徒が、教育を受ける機会が奪われることにならないか」とか、あるいは「伸びる芽が摘まれてしまう事にならないか」といったことを危惧しているところでございます。このため、経済的に困難な保護者のみなさまには、セーフティネットとしての授業料の減免や奨学金、あるいは遠距離通学費の貸与制度がございますので、ご活用いただければと、こういうふうに思っております。
 昨年12月に発表しました県の緊急経済対策の一環としまして、保護者への通知や教育委員会への公式ホームページへの情報掲載などの方法で改めて、制度の周知を図っているところでございますが、今後ともきめ細やかな運用に努めてまいりたいと考えております。

(2)基本的考え方について
 また、子どもの世界は競争にさらされ、全国一斉学力テストは最たるものであります。その結果を公表してさらに競争を激化させようとの論調も生まれています。こうした中で子どもたちは幾つもの塾に通い、学習についていかれない子どもは居場所もなくなり、不登校になるケースも増えています。教育の原点はみんなで助け合い、自分が社会にどう役立つ、どういう役割を果たすのかを見つけることであります。そのために学ぶことに喜びを感じることが必要と思いますが、教育委員長の教育に対する基本的考え方をお尋ねをいたします。

<矢崎教育委員長>
 教育に対する基本的な考え方についてのお尋ねでありますが、まず全国いっせい学力テストの結果を公表し、学校間・市町村間の競争を促すような扱いをすることは、全く考えておりません。あくまでもこの結果を、市町村教育委員会及び各学校が活用していく、自らの教育の成果と課題を検証し、保護者と情報の共有を図りながら、学習指導の改善等に役立たせることに意味がある。そういう考え方であります。
 そうした意味で、学習指導要領で示す内容が、一人ひとりの児童・生徒に身についたか、指導は適切であったのかを検証する全国共通の物差しは必要ではないかと、そのように考えております。その上で、一人ひとりの児童・生徒が「わかった、できた」という学ぶ喜びを感じ、個性を活かしながら伸びる力をいっそう伸ばす教育を進めてまいりたいと思います。教育の在り方として、教師と児童・生徒と真正面から向かい合い、児童・生徒が真剣に答える、地域がしっかりと学校を支えていく、そのことが基本であると、そのように考えております。

おわりに

 全国も、日本もまさにかつて経験したことのないほどの大変な不況であります。この不況を打開するには、県の具体的な様々な支援策が求められていると思います。県民の負担を引き上げるのではなく、県民の負担の軽減を図ることが最も求められていると思いますし、また現場の皆さんの声をしっかり聞き、理解を深めることなしに、働く意欲を引き出すこともできないと思うわけであります。そういう点からも、この厳しい県政の運営の中で、県の理事者におかれては、県民の声をしっかり聞き、県民の要望に正面から答えていく姿勢を強く強く求めて私の質問を終わります。