2008年11月議会  高村京子

議 第9号新人看護師臨床研修の制度化を求める意見書(案) 賛成討論

  議 第9号新人看護師臨床研修の制度化を求める意見書案について危惧される諸問題の改善を求めながら賛成の立場で討論を致します。
 近年「医療構造改革」のもと、入院日数の短縮や高度専門医療が求められ、看護職員の病院・病棟での看護業務は、煩雑多忙を極め、新卒看護師の退職が毎年平均で10人に1人にもなる深刻な事態になっています。
 また医療事故や訴訟問題を回避し、安全で、質の高い看護を提供するため、新卒看護師にも、基礎看護・知識だけでなく、実際の医療処置等の技術、現場で安全に配慮しながら自信をもって業務ができるための習得研修期間が必要となっています。
 しかし実際の病棟等の現場では、即戦力として新卒看護師が配置され、看護不足の上に新卒看護師の指導は、看護現場に大きな負担となっており、専任の指導看護師の配置や臨床研修期間の財政的支援を伴った「新卒看護師の臨床研修制度」を求める声が現場から強く要望されているところです。

 厚生労働省は今年度、新卒看護師臨床研修のモデル事業を全国30箇所近くで実施しております。この臨床研修の成果を検証して、卒後研修制度の確立さらに看護養成期間、教育年数の見直しなどの制度改正も視野にいれて、検討する方向を示唆しています。
 卒後臨床研修の制度化は必要な時期にきていると思いますが、そのためには、制度化にあたり、現場まかせ、個々の病院まかせでは解決できない多くの課題があります。

 日本医療労働組合連合会の2007年「看護実態調査」によると、「医療事故の原因」を看護師に聞いたところ一番が医療現場の忙しさ83%、2番が交代制勤務による疲労の蓄積40%、そして3番が看護の知識や技術の未熟35%、4番目には慢性的人手不足32%とアンケート結果は答えています。
 2007年の166回国会では「夜勤日数を月8日以内に規制するなど、看護職員確保法等を改正すること」を求める決議が全会一致で可決されています。しかし、政府はいまだこの制度改正に着手していません。
 日本の看護職員数は、欧米に比べてあまりにも少ない現実があります。ベッド100床あたりの看護職員人数は、アメリカで233人、イギリス224人、ドイツ108人、日本は何と54人です。
 7対1看護体制を取るために、病院間の熾烈な看護師確保競争が起きています。小規模病院では、看護師の確保は困難を極めており、看護師不足によるベッド閉鎖や若い看護師の疲弊や退職、さらに過労死も起きている過酷な事態をまず改善することは急務です。
 「医師の臨床研修制度」が医師不足の中で実施されていますが、病院・勤務員の医師不足をいっそう加速し、全国各地で地域医療の崩壊現象が発生し、深刻な社会問題になっています。あわせて度重なる診療報酬の引き下げにより、多くの病院が厳しい経営実態におかれています。また、準看護師養成を続けながら4年生大学への高度専門教育などへのシフトなど、チームワークが何より大切な医療・看護現場に矛盾を残したままです。

 以上述べましたように、新卒看護師臨床制度の実現に向けましては、次に述べる4点について先行して改善を行うことが必要と考えます。

1、看護職員の大幅な増員を行うこと。
2、診療報酬上での看護労働を適切に評価すること
3、看護師の資格を国家資格に一本化すること
4、夜勤や休日勤務を余儀なくされる看護師が、出産・子育てしながらも安心して働ける保育環境などを充実すること。

 以上のことが充実した上で、希望に燃えて医療看護現場で新卒看護師が生き生きと研修できる制度の確立を望み賛成討論と致します。