2008年9月議会 一般質問  9月26日 藤沢のり子

1 知事の政治姿勢について

2 雇用促進住宅への対応について

3 教育現場における民営化について

1、知事の政治姿勢(消費税率の引き上げ)について

 三日目の最後となると、知事もお疲れのことかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 国政に関する、一連の知事の発言について、質問いたします。知事は「記者会見などで度々消費税の引き上げが必要。それも出来るだけ早い時期に二桁まで引き上げるべき」と言明されていることに対し、県民も怒っていますし、私も看過できないと思い、以下消費税増税論に対する知事の政治姿勢を問いたいと思います。

 先ず第一に知事の消費税増税論は、「消費税の引き上げはすべきでない」という大多数の県民の意志にそむくものではないかということです。県世論調査協会が県民が抱える不安や暮らし向きを探る目的で8月に実施した調査の結果、「現在の不安」は「収入や暮らし向き」が58.8%で最多。また、原油や穀物など原材料価格の高騰について、暮らしに「かなり影響がある」とした人は66.3%に上り、「どちらかといえば」とを加えると、「影響がある」との回答は96.0%に上っています。そして暮らしの節約に迫られている現状も浮き彫りになり、「食費など家計費の節約」が77.8%でトップ。特に主婦層では84.0%に上っています。また、70歳以上では30.1%が「通院や医療費を抑える」を挙げ、正に命を削る節約の実態が明らかにされています。そして、これからの動向についても家庭の暮らし向きを「良くなっていく」と答えた人は4.4%にとどまり、「悪くなっていく」が68.8%と7割近くの人が今後も不安だと答えています。このように7割を超す県民は、現在食費など日常生活に係る家計費を削って何とか暮らしを支えている。そんな努力を押しつぶすような新たな増税は、たとえ社会保障の財源確保のためでもごめんと、消費税を引き上げることには、74.4%が「反対」、「賛成」の23.9%を大きく上回りました。そこで知事に伺います。消費税の引き上げが必要という知事の一連の発言は県民の引き上げ反対の意志にそむくものではないかと思いますが知事の見解を伺います。

 第二に消費税の増税は県民の暮らしを直撃するだけでなく、地域経済へも又大きい影響を及ぼすということについて伺います。県民のみならず県内経済界からも6割を超える経営者の皆さんから消費税の増税には反対の意志が示されています。県内の地域経済の落ち込みはその大元が消費の落ち込みであり、このことは法人税の減収にも現れています。このような時にさらに消費を抑制する消費税の引き上げが行われれば地域経済がどうなるかは自明の理であります。松本の経済界のトップの方が「消費税の引き上げを言う人は経済を良く知らない人だ」とおっしゃいましたが、多くの中小企業の経営者の皆さんの引き上げはすべきでないという声はまさに地域経済を支えている皆さんの真摯な思いであります。知事は消費税の増税が地域経済に与える影響をどのように考えておられるのか、伺います。

 第三に知事は「地方財政が大変だから消費税の増税が必要」と言っていますが、県民の暮らしと地域経済を犠牲にしたやり方で本当に良いのかという点です。知事は、7月の記者会見で「7月に横浜で開催された全国知事会の最大の成果は、47都道府県知事が全員一致して、消費税を上げなければならないという認識が一致したことだ。消費税を5%から引き上げ、地方消費税も今の1%から数%の水準までもっていかなければ地方財政がうまくいかないという知事たちの共通認識を明示したことは大きく評価したい」とおっしゃっています。私は知事会のこの認識には大きな誤りがあると思います。勿論地方財政を立て直すことは必要であり、知事さんたちの思いも分からない訳ではありませんが、しかし低所得者ほど負担の重い、それも命を削る思いで生活している県民たちに更なる負担を強いる増税によって県財政を作るというのは住民の命と暮らしを守ることを本分としている地方自治体の責務を投げ出すものであり、長としての責任が問われることになるのではないでしょうか。又、消費不況を拡大し地域経済を疲弊させていくことは地方財政そのものも危機に陥らせていくことになるのではないでしょうか、以上三点について知事の見解を伺います。

<村井知事>
 よくぞお尋ね頂いたという気持ちでございます。初めてゆっくりお話することができるという思いであります。消費税について、三つお尋ねを頂きましたが、一貫してお答えできるかと思います。

 現在、国、地方がともに疲弊している原因というのは、これは一体何か。これまでに結局税制の上で、給付に見合う負担のあり方をきちんと作り上げてこなかったわけでありまして、これにより給付と負担のギャップが生じて、福祉や医療、教育などの現場において様々な問題がでてきているというのが私の認識であります。
 私は2年前に、知事に就任して、一番最初に直面した大問題は医師不足という問題でした。本当に地域の医療が崩壊している。私は早速、当時の厚生労働大臣である、柳沢伯夫代議士を訪ね、「現場は、大臣、大変なことになっていますよ」と言いに行ったら、柳沢さんがですね、私に「村井さん、あんた何言ってんの。お互い一生懸命やってきたその結果がこういう事態じゃないですか」。こういうんですね。私は愕然としまして、それはどういうことかと言いますとね、結局医療費の国庫負担、つまり健康保険では負担できない部分を、これをずーっと税金で補ってきたんですよ。この部分がどんどん増えて、その結果国家財政上、どうしようもない状況になってきたから、私も柳沢代議士も、言ってみれば、財政に関わる仕事をずーっとやってきたわけでありますが、その場で結局医療費の抑制に一生懸命に取り組むしか道がないんだと、いうことでやってきたわけです。そのことを柳沢さんに言われた。医者を増やすと金がかかる。30年近くにわたって、医学部の定員の増員は認めない、ということで抑え込んだ。薬を処方されては大変だから、薬価を死に物狂いになって抑えた。何よりも保険診療の点数を一生懸命抑えた。これすべて医療費抑制のためですよ。こういうやり取りを柳沢さんとしまして、お互いに認識をせざるを得なかった。それはなぜか。簡単に言いますと、公にお金がないから、低負担でできることは、低福祉なんですよ。OECD諸国で、最も低い医療費支出はこうして実現したことなんです。教育だってそうなんです。公教育にかける費用というのは、今OECD諸国で日本が一番低い。子供がすくなくなってるとか、必要がなくなってきたからとか、そういうことではない。日本社会はそれほどまだ、少子化は進行してない。現実は教員の数を少なくする。正規教員ではなくて、講師で間に合わせるということをせざるを得ないことになっている。しかし、実際どうですか。教師は超多忙じゃないですか。みんなくたびれているんです。これも、公にお金がなくなったから、低負担でできることは低福祉なんですよ。まぁ、全国知事会の試算においても社会保障の関係費等が一層増加していくことによって、平成23年度には地方の財源不足は、約8兆円という規模にまで膨らみ、事実上地方は破綻するというショッキングな事実を指摘しているんです。これは事実です。

 ではこうしたギャップを解消するのに、どうしたらいいのか。どういった税目に負担を求めていくのかを考えてみますと、個人所得への課税というのは非常に問題があります。所得の漏えい、高額所得者が海外へ納税する、そういう事例がみられるように、課税客体補足の困難性や公平性という制度上の課題があります。ついでながら、朝日新聞が二度にわたりまして、この類の問題を最近指摘した記事をぜひご覧いただきたいと思います。一方、法人関係税というのは、日本の法人課税に実効税率は、諸外国と比べて高いという指摘、これはOECDで最高の水準になっている、ということを踏まえますと、景気に非常に影響されやすい、法人税というのは。事実、我々がいま直面している長野県の県税収入の下落は法人関係税の世界です。遍在性の高い税目であるということも考えなければならないと思います。そういうことも考慮すれば、所得課税の課題を補う意味で編み出された付加価値税としての消費税、そして地方消費税は、公平で景気に左右されない、そしてこれを拡充していくことに目を向けていくことは、私は当然だと以前から主張してきたことであります。まぁ、金持ちから、稼ぎの大きな人から税をとればいい、これは財政学的には本当に正しい。しかし、技術的には、本当に難しいことなんです。そこで、日本では消費税と呼ばれていますが、付加価値税という税が出来たわけで、これは大変新しい仕組みでありまして、1970年代ですかね、実施されるようになったといってよいかと思います。フランスに始まって、ヨーロッパ、そして北欧で非常に評価が高くなっているわけでありますが、商品に着目して税をとる、お金ってのはね、使わないでいてはなんの意味もない。最期は、あるいは三途の河を渡るのに、六文銭ですか、あればいいわけで。あの世まで持っていけない。そういう意味では、使うときにかける税という一番の取り柄というのは、逃げにくいんですよ。非常に公平なんです。フランス人は「メートル法と並ぶ、フランス人の世界人類に対する貢献だ」とまで言っています。日本は消費税の比重があまりにも低い。それを欧州並みとは言いませんが、もう少し引き上げたら様々な国民に対するサービスが提供できるんじゃないかというのが私の考えでありますが、これは私はまさに、県民の立場に立った政策を立てた場合に、医療、福祉、教育などの住民生活に不可分な行政サービスを持続的かつ安定的に提供していくことはなにより重要で、そのための財源が国・地方ともに確保できる税財政制度の構築が必要であるので、先の全国知事会の場所でも地方消費税の充実が不可欠であるという認識を47都道府県知事全員が持ったのはその故であります。そういう意味では、県民の本当の福祉を考えればこそ、私はあえて言いにくい事でありますけれども、このことを申し上げているわけであります。

 そして、経済に対する影響、地域経済に対する影響ということでありますが、これは当たり前のことではありますが、景気の動向でありますとか、それから複数税率等の適用などの制度上の問題、それから消費税でもなお欠陥があります。そのことについてもきちんとした修正をしなければならない。そういうことはやらなければなりませんけれども、私は将来にわたって国民が安心して行政サービスを享受できるために必要な新たな負担につきまして、避けることなく議論をして理解を得ていただかなければならないと思います。そういう時期にきていると申し上げたいのであります。時期とか、それからどんな形でやるとか、それは景気との絡み合いやら、いろんなことを考えることが当然であります。そういうことを考えるのが、まさに国政におられる方々の一番の責務でありますが、ただ地方の現場を預かっている身としては、これはもう放っておけない。あえて、こういう言いにくいことも申し上げさせていただいたわけです。機会を与えて頂いて感謝いたします。

 知事は「最大の問題は給付に見合う負担の在り方、これをきちんと論議してこなかった」と。社会保障にも、教育にも、財源が必要だと。これは誰しも思うことだと思うんですね。しかし、その財源をどのように生み出すのか、国民の立場に立ってやるかどうか。その政治姿勢が問われるんじゃないでしょうか。知事は「消費税の引き上げでやるべき」。つまり県民にさらなる負担を求めるというお考えですが、これは政府や大企業の考えと共通するものであり、社会保障の財源であっても、消費税の引き上げには反対を表明、どんな理由をもってしても、生活への展望が見えないもとで、増税などとんでもないと言っている7割を超える県民の立場に立たない政治姿勢と言わざるをえません。

 これまでも、福祉や社会保障の財源という名目で消費税が導入され、税率は引き上げられてきました。今年は導入されてから20年目に入りますが、この19年間で国民が支払った消費税は188兆円になります。消費税1%で2兆6,000億円の税収とすれば、毎年10兆円を超える税収です。しかし、社会保障費の自然増を毎年2,200億円減らし、年金、医療、介護、障がい者、生活保護など、社会保障のあらゆる分野で県民に負担増、給付減など、福祉の切り捨てを行ってまいりました。定率減税の廃止、先ほど個人所得の関係もありましたけれども、安心できる年金づくりが必要、基礎年金の国庫負担割合を引き上げるためと実施したにも関わらず、国の増収分2兆8,000億円の4分の1、7,000億円しか繰入しなかったんですよ。

 その一方で何が行われてきたか。国際競争力をつけるということで、この19年間で159兆円という、消費税の増収する額に相当する法人税が減収されてきました。消費税導入時に、国民には増税を押し付ける一方で、大企業には法人税率を40%から37.5%に引き下げた。99年には、30%と10%もの引き下げです。現にトヨタ自動車の経常利益と納税額の関係をみると、バブル期のピークであった1989年から2007年の18年間で経常利益は2.2倍、しかし納税額は0.8倍であり、所得税の最高税率の引き下げをはじめ、株の譲渡益や配当が20%から10%に減税されたことにより、トヨタの株主配当は7.7倍となっております。膨大な利益の正当な税負担、大企業や大金持ちへの行き過ぎた減税をやめるだけで年間7兆円の財源が作れるんです。知事は日本の法人税が高いと言いましたけれども、日本の企業は社会保障に対する大企業の負担率はヨーロッパでは最低であります。地方財政の困難な原因も、地方交付税の毎年の削減であり、交付税措置を約束したものが増えても、総額は減らしていくという矛盾の結果です。地方切り捨ての国の財政運営の改善こそ必要であり、また景気低迷と県民の生活難からくる税収面という問題は6割を超える個人消費が地域経済を支えていることからも県民の暮らしを応援してこそ持続的な県財政と地域経済の前進があると確信をするものであります。私は低所得者ほど負担の重い生活費に丸ごと税金をかけ、弱いものほど苦しめる財源の求め方ではなく、力のあるところからきちんといただく。責任を果たす。このことに道理があり、社会正義を貫く政治姿勢であると思いますが、ぜひこのことを知事には心に留めて頂くことを強く申し上げておきたいと思います。時間がありませんので次に入ります。

2、雇用促進住宅への対応について

 雇用促進住宅の対応について、お伺いいたします。一昨日は村石議員、福島議員からも質問がございましたが、私からも改めて質問させていただきたいと思います。
 雇用促進住宅は知事もご説明されましたように、1960年から雇用促進事業団が建設を始めたもので、全国で14万戸、長野県内でも約2000戸に居住しています。
 建設当初の目的の「移転就職者向け」から「仕事と住まいを求める人達を対象」に拡大され、雇用政策だけではなく、国の「住宅政策5カ年計画」にも位置づけられ、公営・公団住宅と同様に国の公的住宅政策の一つの柱でした。しかし、政府は「官から民へ」という特殊法人改革のなかで、住宅の建設、管理から撤退、全廃し取り壊し、民間企業にたたき売りする、という方針を一方的に決めたのです。そして当初の「30年かけて廃止」と言う方針がその後、平成33年度までの15年間に前倒しされ、さらに昨年12月には一方的に3年後の平成23年(2011年)までに一挙に全住宅の2分の1を前倒しで廃止をすることを閣議決定をしてしまいました。
 長野県内は以前に廃止決定された2箇所を除き、今年度打ち出された14箇所の850世帯が対象となります。今年4月からは新規入居を停止し、通知一枚での退去要請、しかも2003年11月以後の定期契約者はまともな説明もないまま、早ければ今年中に退去を迫られています。すでに移転先を探し、やむなく退去を決めた方もいます。今回の突然の退去を求める通知に、居住者からは「通知の紙一枚で何の説明もない」と怒りの声が上がっています。
 先日行われた須坂の雇用促進住宅居住者が開いた住民集会、党県議団として石坂団長と私も参加させていただきました。参加された居住者の皆さんからは、村石議員さんが述べられましたように、不安や怒りの発言が相次ぎました。母子家庭のお母さんからは「何とか住み続けるようにしてほしい。子供が転校したくない、と毎日訴える。助けて下さい」と切実な訴えが、また、県外から来て3年目と言うお父さんは「離婚後この地でやっと娘も落ち着いてきた。ご近所とのお付き合いも出来るようになり、娘と2人でこの地に根を張って生きていきたいと思っている。せめて義務教育が終わるまでこの地で生活できるようにしてほしい」と訴えられました。

 私ども日本共産党県議団は、実態を調査するための居住者に対する料金受取人払いによるアンケートを、8月末から実施しましたが、現在までに約100通の回答が寄せられ、ここにも切実な思いが沢山寄せられています。その中のお一人は、「民間アパートにいましたが生活できないので家賃の安いところにきました。これ以上家賃の高い所へは住めないし、引っ越すお金もありません。どうしても廃止、退去を強制するのなら私たちが生きていけるようにしてほしい。低所得者、弱者は死ねということなのか。どうしていいかも分からない。税金も年金もすべて払っているのに手紙一枚で人の人生をつぶしていいのか。政治って何なんですか」と訴えています。私は居住者の皆さんの、切羽詰ったこの切実な発言や声に本当に胸が詰まり、雇用促進住宅は決してその役割を終わっていない。必要な住宅であるとの思いを強くしたところです。
 知事もこのような状況を受け止められたのだと思いますが、村石議員へのご答弁では、特殊法人改革によって切り捨てる先がどうなるのかをしっかり見極めずに進めるやり方は問題であるとした上で、雇用促進住宅が未だ雇用促進のための役割を担っていることをお認めになられました。しかし、国に対して見直しを働きかけるべきではないかという要請に対しては「注視したい」とここにとどまり、明確なお答えがありませんでした。

 そこで知事に改めてお伺いいたします。県民生活を守る立場から、注視するだけでなく、雇用促進住宅は存続させるために力を尽くしていただきたいと思います。廃止計画は白紙に戻し、定期借家契約の再契約中止や普通契約者の更新中止は行わないよう国と機構本部に要請すべきと思いますが知事いかがでしょうか。

 さて、もう一点お伺いします。日本共産党県議団と国会議員団は、厚生労働省や雇用・能力開発機構長野センターなどに、繰り返し是正を申し入れてまいりました。その結果、9月9日、厚生労働省は 1.入居者に年内中に退去を求めることはしない、 2.又、今年中にはすべての入居者に対し説明会を開催する、 3.退去困難な事情のある場合は平成22年(2010年)11月末まで退去猶予や契約更新をするなど見直しを打ち出し、日本共産党国会議員団に正式回答してまいりました。国は廃止の方針を撤回しないまでも、余りにも乱暴な進め方を見直さざるを得なかったということであります。そこで説明会が始められるということですが、「見直しを知らない」という人が多いのが現状ですから、一刻も早く入居者にこの訂正通知を国の責任の下、徹底する必要があります。県としても、国に対し直ちに要請していただきたいと思いますが、知事のご答弁を頂きますようお願いいたします。

<村井知事>
 雇用促進住宅の廃止についてお尋ねを頂戴しました。国における雇用促進住宅の廃止方針につきましては、平成13年に「特殊法人等整理合理化計画」から始まりまして、いくさきかの閣議決定を経て、進められていることは議員ご指摘の通りでございます。先日、村石議員にもお答えしたことでありますが、この問題、もともと国の行政改革に伴うものでありますけれど、特殊法人を廃止するということだけが独り歩きしてしまいまして、それがどういう結果をもたらすのかというようなことが全く顧慮されないまま、本当におかしなことになったと思っております。閣議決定を経て行われています以上は、廃止計画を白紙に戻すことは困難ではないかと思っておりますけれど、県としては入居者の方々に不安のないようにすすめていくことが何よりも重要との立場から、雇用能力開発機構等に対しまして、住民に不安のないようすすめて欲しいという要請をしております。こうした中で、国では当初の方針を変更しまして、入居者に十分かつ丁寧な説明を行うとともに、高齢や低所得など、転居先の確保に困難を伴う場合は、事情を考慮して、最大2年間、平成22年11月末まで退去を猶予する措置を講じると、このように承知しております。

 それから国の方針変更を受けまして、その周知の問題でありますが、雇用能力開発機構におきまして、入居者説明会の開催など具体的な対応が図られていくと承知しております。そういった対応をよく見てまいりたいというように思います。

 廃止が独り歩き、おかしなことになっていると。知事は、この国の対応が本当に問題ありということはお認めになっているんです。それでしたら、ぜひこの廃止は撤回をすべきと国に要請をしていただけないかと、私は思います。
 私はかつてこの檀上から、郵政民営化のときに、知事は「これは本当に納得できない」ということで政治生命をかけて反対をされたと。それを心の中で拍手をした一人だという風に申し上げた経過がございますけれども、みなさん、ぜひですね、二年間だけではですね問題は解決しないんです。国は雇用促進住宅の廃止の理由として「公営住宅の整備が進んでいること」をあげていますが、入居要件は住宅の果たす目的が違うように同一ではありません。雇用促進住宅は保証人のない県外からの就業者や、また一人身の若年者など公営住宅の入居要件を満たさなくても入居できるという公営の役割があります。また、たとえ入居基準が満たされていても県営住宅に入るのは至難の業。可能性はほとんどないことは、先ほど建設部長も証明されました。存続させることこそ必要であることがいよいよ明らかになったのではないでしょうか。改めて知事には存続を国に要請していただくこと、そして大至急見直しの徹底を国に要請することを求めることについてですが、先ほど知事は説明会などの対応を見ていきたいとおっしゃっていましたけれども、説明会は10月中旬から始まるんです。でも、この見直しはほとんど入居者に徹底されていない。もうね、出なくちゃいけないと用意を始めている方もいるんですよ。ですから私はこの問題については、早急に一日も早く国がこれを徹底をするように知事に申し入れをしていただきたいと申し上げたわけです。この点も含めて、再度ご答弁を頂きます。

<村井知事>
 雇用能力開発機構の役割というものが、率直に申し上げて多くの方々の認識として「役割が終わった」と。したがって、機構を廃止するという話になっているわけですが、その運用するあの機構はなにも住宅だけを運用しているわけではありませんから、その住宅についてどうするのかというところが欠落していたということなんでしょう。そこのところにつきましては、すでに県としても雇用能力開発機構にたいしまして、「あんまり急激なことはやるな」「きちんと後始末はしろ」というようなことは言っております。そのことは再度申し入れをするように致します。
 しかしこの制度の廃止ということ自体をですね、見直せという話までは、これは雇用能力開発機構が「いらない」ということについては、大方の認識が一致していてそのうちの一部の機能だけについて着目する話でありますから、それはなかなかやりにくい話だと、そのように存じます。

 雇用能力開発機構の廃止の問題と住宅の問題、雇用能力開発機構が管理・運営している住宅の問題、この二つがあるかと思いますけれども、この雇用促進住宅というのは、公的な住宅なんですよね。だから、たとえ雇用能力開発機構が見直しされても、この住宅については国がきちっと責任を持つべきということを私は申し上げたいと思います。
 それから先ほど、早急に国に対して見直し、この問題に対してですね、通知をするように国に申し入れをしていただきたいということ、このことにたいする知事のご答弁がございませんでしたので、再度お願いしたいと思います。

<村井知事> 機構にたいしまして、きちんと説明をしろということも申します。

3、教育現場における民営化について

 それから、教育現場における民営化の問題について質問させていただきます。「民間との協働等による県の行政機構の合理化について」の行政機構審議会の答申では、民間委託が必要とされた分類の中に、学校の維持管理、特別支援学校の給食調理、そして学校図書館の管理運営、農場、家畜の管理など教育に係る業務が上げられています。この審議会の答申も参考にしながら県は最終的に結論を出していくわけですが教育現場における民間委託という問題についての県の見解を伺いたいと思います。
 先ず民間委託の留意事項として、競争性、透明性の確保ということから、委託先の長期固定化、業務の独占が生じないような措置に留意するとしていますが、短期間でそれも業務の委託を限定するということで、果たして教育活動を担っていくことが出来るのでしょうか。現業職員の業務も学校司書の業務も仕事の範囲を明確に区切ることは難しいし、何よりも日々生徒たちの成長に係っているのです。
 これらの業務はいずれの仕事も、教育活動そのものであり、生徒との深い係りと教職員との協働は欠かせない業務です。それを効率性だけで判断しても良いのでしょうか。教育長の見解をお聞きします。

<山口教育長>
 現業職員や学校業務の民間委託についてのお尋ねでございます。県立学校における現業職員と致しましては、県立高校には校用技師と農業技師を、また特別支援学校につきましては、校用技師、運転技師、機関技師、介助技師、給食技師を配置しております。これら現業職員の業務は、学校司書の業務ともども、多くの生徒の学習活動や校内活動に密接にかかわっておりまして、円滑な学校運営に欠かすことのできな役割を果たしています。
 昨日の野沢議員の学校司書の民間委託にたいするご質問にもお答えしたところでございますけれども、極めて厳しい財政事情の中で、学校現場においてもそれぞれの業務が果たしている役割を十分に考慮しながら、スリムでより効率的な事務執行を検討することが必要であると考えております。
 特に、一部の特別支援学校で、すでに民間委託を行っているスクールバスの運転や、給食調理の業務につきまして、今回決定された民間委託等の推進に関する取り組み方針においても、民間委託を推進する業務の具体例として、位置づけられているところであります。このため、これらの業務につきましては、今後、民間委託により、サービスやコスト面からの観点のほか、すでに委託している業務の評価、さらには学校現場の影響を踏まえて、検討していくものと考えております。
 また、校用技師や農林技師、介助技師につきましては、司書と同様に、外部への業務委託ということではなく、生徒との関わりを考慮し、現在の専任の正規職員の対応から、新たな雇用形態の職員による対応等、学校運営に支障をきたさない形での効率化を現場の意見も十分に聞きながら、検討してまいりたいと考えております。

 次に総務部長に伺います。民間に委託することが本当に必要であるのかどうかは業務担当の職員からの意見聴取や現場の実態をふまえての慎重な検証が必要であります。教育に係ることであれば尚更であります。教育現場の意見聴取や実態調査はしっかりやられたのか。現場の声を無視して一方的に進めることは教育現場には最もふさわしくないやり方であると思います。現場との話し合いはしっかりやっていただくことが必要であると思いますが、総務部長の答弁を求めます。

<浦野総務部長>
 民間委託の進め方についてのお尋ねでございます。行政機構審議会でのご議論でございますけれども、民間委託の判断基準、あるいは類型化といった基本的な考え方について総括的にご議論いただいたものでございまして、個々の業務についての適否をご審議いただいたものではございません。県の業務のうち、民間委託について検討が可能と考えられます業務を調査の上、部会に報告致しまして、これらの実態を踏まえまして、基本的な考えをご審議いただいたものでございます。県ではこうして、行政機構審議会からの基本的な考え方の方針を受けまして、民間委託等の推進に関する取り組み方針というのをこの9月に策定を致しました。その中でも今後の具体的な検討にあたり、個別の業務ごとの事情等にも十分に留意をするということを盛り込んでおります。今後、個別の業務について、検討いたしてまいりますけれども、職場に出向いたり、あるいは関係職員の意見聴取を行ったり、あるいは職員労働組合との話し合いを行って、該当する職場の状況を十分踏まえながら、民間委託等を進めてまいりたいというふうに考えております。

 教育長は、自らが教育の現場に立たれた方ですから、校用技師も農林技師も図書館司書も、その他の技師さんたちも生徒たちにとっては先生であり、子供達の成長に大きくかかっていることは、十分承知されていると思いますし、ご答弁の中でもその主旨がございました。コストの削減で教育力の低下を招かぬよう、最善の努力を求めるものですが、図書館司書について一点伺いたいと思います。
 昨日の答弁の中で、外部への業務委託をしないということは評価をするものですけど、「有資格者による新たな形態」による職員の対応をしているが、正規を非正規に切り替えていくことなのか、現場は納得しているのか教育長に再答弁をお願いします。

<山口教育長>
 まず、順序が逆になりますけれども、現場の納得の県につきましては、昨日の答弁と先ほどの答弁で申し上げた通り、現場の声を聞きながら、進めていくと申し上げました。今の再質問の中で、これを正規職員で行うべきではないかというお尋ねでよろしいんでしょうか。ちょっと聞き取れなかったんですけど。資格を持つというような形は前提でございます。現在の職員の正規であてているところと臨時のところと二つの形があるわけでありますけれども、そういったものから、今申し上げたような正規でない任用形態もあると。こういうことは考えております。

 教育長のご答弁のなかでは、非正規に切り替えるということもありうるということですよね。それではですね、このことについて知事に伺いたいと思うんですけど、知事突然ですみません。長野県はですね、非正規雇用が3分の1、非正規雇用の7割は200万円以下の収入であります。この改善については、知事もお認めにこの間なられましたし、担当課も努力をしております。県の職員の非正規化というのは、これらの努力を崩すものであり、また知事が政策として述べられております、県民所得の向上の政策と矛盾しませんか。以上で質問を終わります。

<村井知事>
 お尋ねは民間委託のお話と理解しておりますが、民間委託が直ちに非正規という話に直結するかどうかっていうのは、私はちょっと疑問があると思います。非正規雇用とおっしゃったんですね。という意味で、非正規雇用につながるというようなご指摘だと思いますが、私は民間委託というのは、直ちにそういう風になるとは思いません。ただ、いずれにしましても、このようなことをやりくりをしなければならないのは、要するに居るを測る術がないからでありまして、先ほどの私の同等の議論でありますけれども、歳入を少し膨らませないとどうしようもない状況になっているということをご認識いただければありがたいと思います。