2007年6月議会一般質問 6月28日 高村京子

1 助産師の活動支援について

2 後期高齢者医療制度について

1 助産師の活動支援について

 安心な助産師の活動支援について伺います。
 深刻な医師不足によって、一昨日は日赤上山田病院の閉鎖方針が出されたように、診療科の縮小・ベッド閉鎖など、地域医療が崩壊する深刻な実態が坂道を転がるように進行しています。特に産科は、すでに集約化された地域拠点病院においても、医師の離職が発生し更なる産婦人科の閉鎖や、少ない医師の過重労働のためにお産の受け入れを制限するなど、妊婦さんが生活圏域で、安心してお産ができない悲しい実態が広がっています。
 そこで伺いますが、県内での産婦人科医師の離職、病院産科の閉鎖や、お産の予約制限などの実態を県として、どのように認識されていますか。県が示す集約化・重点化で、本当に安心安全なお産は担保されるのでしょうか。衛生部長に伺います。

渡辺衛生部長答弁
 お答えいたします。各地で産科の休廃診が相次ぐなど県内の産科医療を取り巻く状況は非常に深刻な事態と受け止めております。長野県産科小児科医療対策検討会の提言の中で示されておりますように、産科医療の現状をこのまま放置した場合に予想される医療崩壊を回避するために、事実上ある程度集約が進んでいる現状を踏まえまして、安全安心なお産に24時間体制で対応できる最後の砦となるべき拠点を一つでも多く確保しようというのが、提言の考え方であると認識しております。
 こうした認識の元に、県、市町村、広域連合、医療機関、医師会、助産師会など、関係団体が連携し、地域全体で安全安心なお産の確保に取り組んで参ります。

 最近で産婦人科医は29人が辞めています。ここ3年間で閉鎖をした各診療科も含めまして、32科、診療が閉鎖されていますが、そのうち12、37.5%が産科で閉鎖されています。
 産科を扱う病院管理者は「医師が休む暇がない、予約制限をしないと安全を保てない、事故を防ぐために仕方がない」など悲痛な現状を訴えています。今現在産科医師の確保は大変厳しく、今後もさらに産科の縮小閉鎖が出る実態にあります。
 お産が集約化された中核病院ではますますお産件数が増え、緊急医療にも対応するなど、更なる医師の過重労働となり、実際には過酷で危険な状況が発生する事態になるのではないでしょうか。この事態を改善するために正常なお産は助産師にもっとかかわってもらい、少ない医師の過重労働を軽減する方向を真剣に検討する時期に来ているのではないでしょうか。
 日本共産党県議団としても繰り返し、この点を要望し、県としても院内助産所や助産師外来への支援を強めていただいていますが、出産は病気ではありませんので、妊娠から自然な出産、産後ケアへと一貫して助産師から援助を受けることにより、よりお母さんと赤ちゃんに優しい自然であたたかいお産が保障されると思います。このような取り組み状況はいかがでしょうか、衛生部長に伺います。

渡辺衛生部長答弁
 助産師の活用についてお答えいたします。助産師は分娩を扱うだけでなく、妊娠中から出産後まで継続的に検診や保健指導などを行いまして、母親と子どもを支援する専門職であり、産科医不足が深刻化している現在、その果たすべき役割は大きいものと認識しております。
 助産師がその能力を十分に発揮できるような環境作りが必要であることから、県としては新に助産師支援検討会を7月に設置し、助産師の支援策や、連携強化策を検討することとしたほか、院内助産所や、助産師外来などの普及に向け、最新の医療や助産技術に関する研修会などを開催していくこととしております。

 上田市の産院では、一昨年市民の大きな連帯の力で産院を守ることができ、今では年間700件以上もの驚異的なお産件数を、助産師を増やすことによってより安全で自然なお産への援助に務めています。また県内で開業助産師さんによる自然で豊かなお産の実践も営まれています。
 この様な実践に学び、県として意欲ある助産師が開業できるよう研修などの支援を充実させ、閉鎖した病院や診療所での助産院開設や、地域で助産所を開設できるような支援を、県は一層強く進めていただきたいと思います。
 妊娠から出産、産後の母子ケア、育児から子育て支援まで、助産師による一貫したケアは、赤ちゃんと子どもの命と健康を守り、母親も家族も安心できる環境となります。そして病院医師の過酷な労働の軽減ともなり、病院においては、より医療管理の必要なお産へと重点を移していただくことができます。
 この4月から医療法の一部改正によって義務づけられた助産所の開設に伴い、産科小児科病院・診療所の嘱託が義務づけられましたが、産科小児科確保は厳しく、開業のハードルはさらに高くなりました。県が率先して病院・診療所に協力を求めるなどの援助も必要です。
 少子高齢化の速度が全国より速いペースで進み、中山間地の多い長野県の実態に即し、助産師活動・開業への支援を強め、地域で安心してお産ができる先進県長野を目指して戴きたいと思います。知事にご認識と決意を伺います。

村井知事答弁
 只今高村議員から上田市の先例を引かれましてご提言を頂戴いたしました。私自身も私の兄弟みんな除算しのお世話になって家で生まれております。そういう意味では、ご議論は非常に私にはよくわかるわけでございますが、同時にやはりその時代、確かにお産によって母親が命を失うとか、あるいは赤ちゃんが非常にたいへんなトラブルに巻き込まれるとか、いろいろな事例があったことも事実でございまして、それが非常に慎重な対応を選ぶということになりまして、病院におけるお産というのは、かなり一般化したことも、これまた紛れのない事実だと思います。そういうところを、両方ともよく勘案をしまして、ご提案を頂いたことでありますけれども、現時点で深刻な医師不足の状況のもとで、医師のバックアップ体制を得ながら助産所を大切にしていくというようなことは、どのような形でできるのか、これはこれからもよく検討する必要があるだろうと思います。
  ただいずれにいたしましても,県としては地域でお産を担ってきた助産師のみなさんと、それから医師との密接な連携の元で安全で、安心なお産が提供される体制の構築をどのようにしていったらいいか、取り組んでまいりたいと考える次第でございます。

 お母さんは、在宅でも助産師さんのもとでも病院でも、命懸けで産むんであります。命懸けで安心してお産ができる長野県を目指していただきたいと思います。

2 後期高齢者医療制度について

 次に後期高齢者医療制度について伺います。
 来年の4月から75歳以上のすべての高齢者は、後期高齢者医療制度に加入させられます。県下81市町村の広域連合が実施主体となり運営され、あと9ヶ月余で始まる制度ですが、どのような医療制度になるのか、今現在までの準備状況と、いつごろ重要事項が決定され、どのように県民に周知がはかられるのか衛生部長に伺います。

渡辺衛生部長答弁
 後期高齢者医療制度についてお答えいたします。制度の周知につきましては、県では3月に実施しましたラジオ広報を今後も計画的に行う他、広報ながのけんや、県のHPなどを活用して、広域連合での準備状況などの情報を、県民のみなさまにお伝えして参りたいと考えております。
 なお、広域連合では5月に、全市町村に対しまして文書等で広報活動の実施を要請いたしました。今後は医療機関等にポスターの掲示を依頼する他、パンフレットの全戸配布を時期を見極めながら行う予定としております。また、被用者保険の被扶養者への周知を徹底するため、保険者協議会等を通じまして各医療保険者に対して制度のいっそうの周知を要請していくこととしております。
 また重要なことがいつ決まるかにつきましては、本日国から連絡がございまして、8月6日に厚生労働省で会議があるんだそうです。その中で、政省令についての内容だとか、あるいは保険料の算定について、あるいは制度改正にかかわる広報についてのお話があるそうですので、そのときにはかなり方向性が定まってくると思っております。

 6月からの住民税の大幅な増額請求に、県民の皆さんは驚きびっくりされています。連日市町村には、問い合わせと抗議が殺到しています。
 定率減税の廃止、年収125万円以下の高齢者非課税世帯に対して課税されました。70歳代のご夫婦世帯では、昨年15600円の住民税が今年は2倍の31200円に増え、連動して介護保険料や国民保険料の値上げで、一気に9万円台から19万円の負担になりました。約1か月分の年金がなくなりました。年民は目減りするのに「これでは暮らしてゆけない」、さらに医療費も介護費用も増えて「保険料を払っても医療や介護は受けられない」と多くの高齢者が不安と怒りの声をあげています。
 来年の4月からの、後期高齢者医療保険料は国が示した予測で平均月約6200円です。介護保険料約4000円とで、合計月に一万円以上もが年金からご本人承諾なく天引きされることになります。
 知事、戦中戦後を通し大変なご努力をされてきた高齢者に、このような高額の保険料を強制的に求める制度をどのようにお考えでしょうか。
 2000年の介護保険制度が開始されるときは、県も市町村も事業所も、介護サービスを提供できる施設開設に全力で取り組み、介護の受け皿を用意してきました。ところがいま、深刻な医師不足、看護師不足で診療科の閉鎖、ベッド閉鎖、救急の受け入れ中止、さらには、地域の病院閉鎖などが起こっています。  その上国は療養病床の削減政策を進めています。どこから見ても医療環境は悪化しており、いつでもどこでも高齢者が安心して医療が受けられる保障はまったく整っていません。
 知事に高齢者の立場に立っていただいてのご所見をうかがいます。

村井知事答弁
 
高村議員のご質問にお答えいたします。
 私も気がついてみますとあと数年でこの後期高齢者医療制度の対象になるということを突然気が付きましたので、そういう意味でも人ごとではないという想いであります。
 新制度では、現在被用者保険の被扶養者で保険料を負担していない方を含めて、原則として全ての被保険者に保険料を負担していただくという制度になるわけであります。ただこのことは、老人医療費を中心に、国民医療費が非常に増大している中で、世代間での負担の不公平が非常に強く指摘されている現状である、しかも今後人口が減少する一方で高齢化はさらに進むと予測される社会環境の中で、負担について納得しやすい仕組みをどうやって整えていくかという課題を解く中で、今度の制度というのはこの点を押さえたいと思うんですが、国民皆保険は維持する、これは堅持する、それから医療制度を将来に亘って持続可能なものにしていく、そういう観点から私はやむをえない選択だと、このように受け止めております。
 制度の運用を通じて改善すべき事項があれば、県として県民の理解が得られるように、さまざまな機会を捉えて国に対して意見を述べてまいりますことは、もとよりやぶさかではございませんが、大きな枠組みとしては、私は残念ながら我々打ち出の小槌を持っているわけではない。止むを得ざる選択ではないかと思っております。

 世代間の負担の公平といわれましたが、家庭の中にあっては、世代間の不公平はございません。みんな助け合ってじいちゃんばあちゃんの介護や医療の負担もし、また働き盛りの皆さんは低所得に苦しんでいる。こういう県民の皆さんの実態を知事はよく見ていただきたいと思います。
 高齢者の暮らしを守り、医療保障の観点に立って、国に対して高齢者の税負担が重過ぎることや、地域医療環境悪化の実態から、制度の中止や改善など強く国に求めていただくようお願いしておきます。
 高齢者医療制度の準備が進められていることを、県としても早急に県民や当事者となる75歳以上の高齢者に周知を図り、主権者としての意見表明を保障すべきではないでしょうか。また国保財源にも見られるように財政規模の弱い町村への県独自の財源支援や、少ない年金の高齢者が必要な医療にかかれなくなることがないよう、低所得者支援をおこなうべきと考えます。
 県は運営主体の長野県広域連合に指導助言ができます。国の制度をそのまま押しつけるのでなく、高齢者の生活実態と医療環境の現状とに配慮した医療保障制度となるように、助言や県独自の支援をしっかりとおこなっていただくよう求めます。また、国に対して真に高齢者医療保障制度とするための根本的な課題解決を求めるていただくよう、衛生部長に伺います。

渡辺衛生部長答弁
 お答えいたします。まず財政支援につきましては、保険給付に要する費用に関しましては、現行の老人保険制度と同様にその一部を負担いたします。またそれ以外に新たな支援といたしましては、法律に規定されておりまして、低所得者の方の保険料を軽減した場合などの費用だとか、あるいは高額な医療費の発生による広域連合財政への影響を緩和するための費用の一部を負担することとしております。さらに県に財政安定化基金を設けまして、見込みを上回る保険給付の発生等に対処することとしております。また現在広域連合に県から職員を派遣しておりますので、そのような形での事業運営を支援しているところでございます。
 今後具体的作業を進める中で課題等が生じた場合は、国に照会するなど、制度運用に支障をきたす事のないよう、必要な措置を講じて参ります。

 産科を閉鎖した病院の事務長さんが、病院の中に赤ちゃんの声が響かないことが本当に寂しいことだといいました。これは今県民みんなが思っていることじゃないでしょうか。
 安心して自分の暮らす地域でお産ができる長野県。そして長い間ご苦労していただいたお年寄りが安心して老後を過ごしていただける長野県を、ぜひ全力を尽くして取り組んでいただきますよう、私どもも頑張りますが、よろしくお願いをいたしまして、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。