2006年6月県議会

7月3日 高村京子議員

議第3号

    自衛隊のイラクからの速やかな完全撤退を求める意見書(案)提案説明

 議第3号「自衛隊のイラクからの速やかな完全撤退を求める意見書」の提案説明を致します。
 小泉首相は6月20日、約2年半に渡ってイラクに派遣していた陸上自衛隊の撤退を表明し,現在緊張した環境のなかで撤退作業が続いています。一方航空自衛隊については、イラク北部のバクダットやアサドなどアメリカ軍を中心とした実質戦闘状態の地域へ活動範囲の拡大を検討しています。
 アメリカ・イギリス軍は2003年の3月20日「イラクのフセイン政権に大量破壊兵器がある」として国連の決議もない中、一方的にイラクに戦闘攻撃を開始しました。しかし大量破壊兵器は今日まで見つからず、バクダットやファルージャなどへの無差別の空爆や掃討作戦で、罪のない市民、子どもや女性が今までに10万人以上もの人々が命を奪われ、生活が脅かされています。
 小泉首相はアメリカの攻撃をいち早く支持し、自衛隊のイラクへの派遣を決める国会では、どこが非戦闘地域かとの質問に「私に解かるわけがない」と答弁され、戦後初めて多国籍軍の一員として自衛隊に武器を装備させ、危険なイラクに派遣させました。一昨年アメリカ軍がファルージャ市民一千人もの住民を殺害したときも、小泉首相は「攻撃を成功させねばならない」と表明し、虐殺を後押ししました。戦争勃発から昨年末までに国外に逃れた避難民は90万人にもなり、医師や教師、技術者なども多く含まれ、まさにイラク国家の存立を脅かす、実質侵略占領状態に落ちいっています。市民のアメリカ軍多国籍軍への怒りが、反撃へと向かわせています。泥沼となったイラクでは、善良な市民の反撃がテロと報道され、本当のテロともう区別は付かない状況です。

 昨年9月パウエル前国務長官はラク戦争を正当化した自身の発言が「人生一番の汚点」と述べています。
 6月30日バクダット南方で、アメリカ軍兵士5人によるイラク女性レイプ。家族4人の殺害事件や7月1日バクダット北西部の市場で車の爆発があり、買い物をしていた女性や子どもを含む市民70人以上が死亡犠牲となるなど、憎しみの連鎖の地獄が今のイラクの現実です。
 この危険なイラク北部に、航空自衛隊の活動を拡大して、アメリカ軍の兵士や物資の輸送業務に当たることは、実質的には憲法9条で禁止されている「戦闘行為に参加する」ことになります。
 6月21日現在、アメリカを中心とした多国籍軍の死者2730人のうちバクダットでは626人、アサドで895人が死亡しています。航空機の撃墜や航空基地への攻撃が日常的に行われている地域で、まさに、アメリカ軍と文字通り一体となっての活動に踏み出す事は、派遣される航空自衛隊員の命の危険が現実のものとなる可能性が極めて大きくなります。
 法治国家日本の憲法9条に抵触し、「イラク特別措置法」にも明記された非戦闘地域での活動からも大きく逸脱します。
 そして、何よりも戦後一人も戦争犠牲者「戦死者」を出さずにきた、戦後62年世界に誇る日本の不戦の歴史をここで止めることになる危険があります。ブッシュ・小泉会談で日米安保条約の枠組みを世界地域に拡大し、憲法が厳しくいましめる軍事行動をアメリカ軍と自衛隊が一体となって展開することは許されません。航空自衛隊の皆さんはイラクの人々の復興のためと高い決意に燃えて、派遣されているのでありましょう、アメリカ軍と一体でイラクの人々を苦しめる事を使命としてはいないはずです。

 イラクの人々は、もともと日本に信頼と親しみをもっていました。しかし、アメリカ占領軍の一翼を担っている自衛隊や日本政府に対する厳しい声が上がっています。サマワの女性39歳のオムアリさんは、「日本政府に言いたい。私たちは平和を望み日本が友好国であることを望みます。しかし、占領軍の一員として存在するならきっぱり拒否します。なぜなら、アメリカ占領軍は私たちの国を奪っているからです。」と言っています。
 当初イラクの多国籍軍には40カ国が参加していましたが、スペイン、フィリピン・オランダ・韓国・イタリアなど多くの国々が自主的に撤退し、今は28カ国に減っています。自衛隊の犠牲者をこれ以上だすことのないよう、陸上自衛隊と共に航空自衛隊の速やかな撤退をするよう強く政府に求めるものです。

 議員の皆さん、どうか想像してください。ご自分の娘や息子がイラクに派遣された航空自衛隊にいま所属していたら、何を願うでしょうか?イラクの現実を直視したご判断の上に、心から議員各位のご賛同をお願いして提案説明とさせていただきます。ありがとうございました。