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2004年 12月議会
「瀬良教育長再任議案」高村議員の賛成討論(12/21)

* 記事はすべて、共産党県議団事務局のテープおこしによるものです。



 議第25号教育委員会委員の選任について討論をいたします。

 文教企業委員会において瀬良和征教育長の再任議案が否決されましたが、日本共産党県議団は、本議案には賛成の立場です。
 人事は知事の専決事項であり、吉村県政の時代から、ご本人が社会的規範において問題とならなければ、基本的には賛成をしてきております。
 本来人物評価や姿勢を論ずるべきではないことです。しかし委員会において人権を否定する反対のための反対というような論議がなされており、やむを得ず私は、少し立ち入って述べたいと思います。
 瀬良氏は教育長として約2年間長野県教育行政事務局のトップとしてお勤めいただいた経過があり、県議会が本案件を否決することは、この間の県教育行政を正しく評価することなく、否定することにつながるのではないでしょうか。
 
 教育基本法は、その前文で「われらは先に日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本に於いて教育の力に待つべきものである。われらは個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期すると共に、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を普及徹底しなければならない」と謳っています。
 
 瀬良教育長は、この教育基本法の精神を長野県教育の現状に照らして、まず深刻な教育現場に出向き、一人一人の子どもたちの状況や当事者の声を受け止めることに力を入れてきました。
 30人学級の実現をはじめとする「ゆきとどいた教育の実現を求める県民署名」は15年間に約1,100万筆以上が寄せられ、ようやく田中知事のもとで実施される事になり、小学校1年生から3年生まで県の責任で実施され、今年度は4年生以上6年生について、市町村との共同事業として行われるようになりました。そしてまた来年度は県が4年生まで全額負担し、さらに30人規模学級が拡大することとなり、長年の県民要望が大きく前進しています。
 吉村県政時代に、小海町が独自に30人学級を実施しようとしたとき長野県教育委員会がこれをつぶしにかかりましたが、当時と比べれば隔世の感があります。どちらが本当に子どもたちと先生の心ふれあう学級作りを応援する姿勢でしょうか。
 
 また、今までほとんど光が当てられなかった養護学校においても、ようやく子どもたちや保護者・教職員の声が受け止められ、スクールバスの補充や設備改善が進むようになり、稲荷山養護学校は知的障害児も通える併設学校としていま改築が進んでいます。また高等部の訪問教育も年齢制限をなくすなど改善が進んでいます。
 共産党県議団は、ADHDやLDなどの発達障害児を抱える学級に教員の特別加配を求めてきましたが、昨年2月の石坂千穂県議の質問では、瀬良教育長が自らそういった学級を見学し体験された時の様子から、長野県としてADHDやLDなどの生徒を抱える小中のクラスに教員の特別加配をしますと答弁され、今発達障害児へのケアーが広がっています。
 
 長野県は、不登校児童が全国一番多い県となっています。不登校となった児童とそのご家族の苦しみはとても一言では言えません。なかなか理解が得られない状況に長い間置かれてきました。昨年の文教企業委員会の現地調査で佐久のフリースクールを訪問した際、すべてボランティアで運営されているその責任者の方から、不登校児童への支援に何ら関心を示さない歴代の県教育委員会の姿勢を厳しく問われました。
 瀬良教育長は、いじめなど不登校で苦しむ子どもさんや父母の声を真っ直ぐに聞き取り、教育者としての姿勢や学校運営を率直に正されてきました。不登校問題でさまざまな活動を行っている皆さんとともに県教育委員会として不登校児童への支援活動をどのようにすべきか話し合いを重ね、「子どもサポートプラン」を作成し、地域ネットワークを立ち上げました。
 また、県教育委員会が県民に開かれた存在にもなってきました。昨年から移動教育委員会が県内各地に出向いて5回開かれました。私は、今年9月に小諸で行われた教育委員会を傍聴しました。「高校改革プラン中間まとめ」の審議もされていました、その後行われた教育委員会委員と50名近い傍聴者との意見交換では、審議での疑問点や蓼科高校や望月高校存続を望む率直で熱意あるご意見が沢山出されました。
 また高校改革プラン完成に向けて、この秋県内前12通学区で、検討委員参加のもと、県民との懇談会がもたれました。
 今まで、県教育委員会に県民がじかに声を寄せることはほとんど出来なかったのではないでしょうか。校長先生を通じて、市町村教育委員会を通じてしか届かなかったことを思うと、本当に大きな県民に開かれた教育改革がこの2年間進んできました。
 
 この間の県教育行政の改善に照らせば、このたびの人事案件不採択の理由として、「教育現場に混乱を招いた」とする理由は、道理のあるものではないと思います。教育現場はまさに日々子どもたちと向き合って奮闘している学級・学校・地域であります。この現場に瀬良教育長は自ら出向き、現場の状況をつぶさに見て、当事者の皆さんの声に耳を傾け、子どもたちの思いを共有しともに悩み、そして国の制度ありきではなく、まさに独立した長野県教育委員会の進むべき方向に体を張って貢献されてきたと私は思います。
 オリンピックの前の1995年には長野県予算に占める県の教育費は18.9%まで落ち込みましたが、現在は22.4%に前進しています。今まで莫大な借金のツケと三位一体改革による危機的な財政状況の中でも、教育予算を確保し予算の姿から言えば「教育県長野」を復活させました。
 15日の文教委員会で瀬良氏の人事が否決されたことから、この方向を悲しみ納得いかない個人や団体の皆さんが行動を起こされています。17日には、20人の方が記者会見を行い、それぞれの思いを発言されました。「不登校の問題で、県に3年間訴えていく中で教育委員会が変わってゆくさま見てきました。瀬良教育長は子どもの心に寄り添う人です」とか「教育長が自ら家族や本人と話を進めてゆくなど今まで無かったこと、一人一人の子どもを輝かせることを理念にした教育長」など、この間教育行政に要望をだされて瀬良氏と懇談をされた中から、教育長・教育委員としての誠実な姿勢に高い評価と感謝の声を述べられています。
 先週18日土曜日夕方1時間、19日日曜日3時間、長野駅前で瀬良教育長の再選を求める署名活動が行われました。どういうわけか右翼が街宣車をくり出しこの活動に妨害をしました。そんな中でも2日間の駅前では650筆。それ以降も県内各地で自主的な署名活動が取り組まれ、現在、4142筆の署名が寄せられ、県議会議長あてに提出され、県議会各派に連日要請を繰り返されております。
 今、来年度の教育予算編成の大事な時期にあります。また、いじめ不登校問題、学力問題をはじめ高校改革、高校入試制度問題など教育課題が山積しています。12月議会は最終日が延会となり、12月20日で任期を一旦終了された瀬良和征氏はこの議場に今おりません。
 この大切なこの時期に、この人事案件を本県議会が否決することになれば、教育行政執行部のトップ不在の事態となり、混乱を招くような事態は、決して県民の理解は得られず、人権民主主義の問題としても禍根を残すことになるのではないでしょうか。
 良識ある県議会議員各位におかれましては、本人事案件のご賛同を心から訴え、賛成討論とするものです。


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