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2004年 12月議会 高村議員の一般質問(12/8)

* 記事はすべて、共産党県議団事務局のテープおこしによるものです。

  1. 山口村の越県合併について
  2. 農業政策について
  3. 国民健康保健制度について
  4. 福祉医療制度について
  5. 児童虐待について


1.山口村の越県合併について

 最初に山口村の越県合併について質問します。
 日本共産党はもともと国による「押しつけ合併」には反対です。山口村でも合併反対の態度でがんばってきました。しかし、村民の意思が示された今は住民自治を尊重する立場です。住民自治の本旨は、そこに住む住民自身が自らの将来を決めるものであり、その住民の意志は尊重されなければならないということです。
 「たとえ少数であっても、長野県民でありたいと願う人々を護らねばならぬ。」という知事の思いはわかりますが、村民多数の意思が無視されて良いということにはならず、「県民の意思」という多数の力で、「村民の意思」が否定されてはならないと思います。
 知事は「これを認めれば、長野県が溶けてしまう。」と言われますが、そこに住む住民に長野県が選択されなかった事実は、無念であっても認めざるを得ません。栄村、臼田町馬坂など県境の村の例があげられていますが、それらの村では、様々な困難を乗り越えて、村民の意思で「自立」を選択したのであり、馬坂も住民の意志で全員で決めることを選択したのです。昭和の合併の時には「上から押さえて」悲劇をつくりだしたものです。いま県民は、県境の南牧村、小谷村、富士見町などでも住民の意志で自立を決めています。
 もちろん私たち日本共産党は道州制には反対です。「溶けて流れることを認めるのか。」と知事は主張されますが、県民の良識は「溶けて流れていくもの」を認めてはいません。もっと県民を信頼すべきではないでしょうか。知事の見解をお聞かせ下さい。


      【答弁 田中知事
        今のご質問は、午後一番にご質問なさった林奉文議員はいかなる思いでお聞きになったのかなと思ったところでございます。私は昨日も申し上げましたように、この問題は県土の姿が変わるか否かでございますから、同一県内での市町村合併とは異なり、県民の民意が問われ、つまり地域住民の意向とはすなわち長野県民の意向ということが問われるということです。そして仮にこの山口村の越県合併という越県を認めるとおっしゃるのならば、申し上げましたように今後都心へと新幹線通勤する住民が急増している軽井沢町が東京都へと飛び地合併したいと望んだとき、あるいは上高地を擁する安曇村が安房トンネルで直結している岐阜県高山市との合併を望んだとき、はたまた志賀高原が位置する山ノ内町が一体的観光行政を実現するべく群馬県草津町との合併を望んだとき、いずれの場合も地元町村民の意向のみを尊重して、県議会諸氏は越県合併を認められるのであろうかということであります。そこまでの覚悟と想像力はおありなのかということでありまして、このような覚悟や想像力がなく、山口村という県庁所在地から遠く離れた場所に関してのみお認めになるということであれば、これはダブルスタンダード、その場しのぎに他ならないということであります。すなわち、このように県境に位置する共有財産である馬籠や軽井沢・上高地・志賀高原をはじめとする、あるいは蓼科をはじめとするものが他都道府県へと離脱して信州信濃長野県が溶解していくことを容認するだけの覚悟や想像力を抱いた上でのご意見かと、そうでなければこれは憐憫という名の無関心や侮蔑ではなかろうかと私は思うわけでございます。
       そして日本共産党というのは、私は今まで常に少数者あるいは弱者というものと共に歩むと言う方々であろうと思って参りました。
       先ほど松本ひであきさんという旧自治省の事務次官をお勤めである方の新版逐条地方自治法とこの中には、関係市町村の申請があっても知事においてその処分を行うことが適正を欠き、または不合理であって住民の福祉に反し、かつ地方自治の本旨にももとると認められるときは、知事はその処分を行わないこともできると、この場合には都道府県の議会に付議する必要は無いと、このような解釈が載っているわけでございます。私は、今申し上げましたように、対等合併ではなく吸収合併、それも越県という形での合併が果たして住民の福祉というものに帰するものであろうかという点でかねてから私は意見を申し上げているところであります。

 改めまして今議会中に越県合併議案の提出を強く要望して、次の質問に入らせていただきます。



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2.農業政策について

 農業政策について伺います。
 国において新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定に向けて中間論点整理が進められています。
 この中身は、世界市場と互角に競争できる大規模農業に再編し、小規模の家族農家と兼業農家を切り捨てるものです。長野県農業の実態に照らして、今回の基本計画変更は、農家に希望を示す事はできません。
 長野県農業を担っている農家の実態や特徴をどのように捉えておられるでしょうか。11月1日関東農政局都県農政主管部長会議に、長野県農政部として意見・提案を出されていますが、その主旨を農政部長に伺います。
 またあわせて、担い手対策や小規模農家支援など「長野県独自の農業活性化支援対策」はどのようなものがあるのか伺います。


      【答弁 鮎沢農政部長】
       お答えいたします。まず新たな「食料・農業・農村基本計画」でございますけども、これは8月に中間論点整理が公表されたわけでございます。この中では4つの重点的な施策が柱となって公表されたわけで、その中の一つが担い手政策のあり方ということでございます。このことにつきましては国の方では現在、担い手を重点的にしてその担い手に集中的な投資をするということで、その担い手は認定農業者制度がございまして、その制度を活用するとともに、実態を有する集落営農という形の中で集落営農も視野に入れているということで、最近いろいろ論議されているわけですが、530万円の所得が得られるような形態というかたちで論議されているわけでございます。
       そういう中で一方、私たち長野県を見た場合に、15年の数字でございますが、総農家数が12万9千戸で、うち販売農家が8万3千戸、専業農家が1万6千戸とこういう数字でございます。総農家に占める専業農家は12.4%という状況でございまして、非常に兼業農家、自家消費農家含めて8割以上が長野県の農業を担っているとこういう状況にあるわけでございます。そういう中で私がさきの関東農政局の部長会議のときに11月1日にあったわけですが、担い手対策のあり方について、長野県としては、長野県の農業これは今もそうですし、今後も例えば農地や農業用排水路こういうものを維持管理していく、その担い手農家だけでできるか、それはできない。地域の人と共同したなかでいかなきゃいけない、こういうことがございます。そういうことが非常に大事だと思います。いわゆる担い手農家の育成というのは非常に大切な施策ですけども、一方、中山間地農業を沢山抱えている長野県とすれば中山間地対策もあわせてちゃんとしっかりやっていただかなければいけない、こういう視点で私は担い手対策を論議していただきたい。いわゆる全国一律的な対応ではなくて、地域にあった対応をするように述べてきたところでございます。担い手の支援でございますけれども、私たち長野県は、前に長期基本ビジョンで毎年300人の新規参入者がほしいということを申し上げてあるわけでございます。現実的には150人前後が毎年就農をしている。
      そういうことで、今までのままでいきますと、非常に厳しい状況になるということで、ますます荒廃地が増えてしまう、こういうことで議会の皆さんの同意を得る中で昨年「里親制度」というものをつくりましたし、その里親制度に研修に入る前の初歩的な研修をするための農業大学校の研修施設の一部改修とこういう工事もさせていただくようなかたちで取組みをしております。これで充分だと思ってはおりませんが、いろいろな施策を今後もこの中で支援をしていきたいこんなふうに考えているところでございます。

 ただいまご答弁いただきましたように、長野県農業は、一割ちょっとの専業農家と八割以上の兼業農家で成り立っています。
 中山間地の小規模農家、高齢者や女性も農業の主役として頑張っています。
 専業農家も兼業農家も輸入農産物に押され、設備投資での借金や価格の変動に泣かされ、希望とやりがいを見出せない状況にあるのではないでしょうか。国の政策が大規模農業に無理やりシフトされようとしていますが、大切なことは、現在農業を担う農家やグループがやりがいをもって農業が続けられるよう応援する事ではないでしょうか。
 田畑が耕作され農作物が作られてこそ、自然のダムなど災害に強い国土が保全され、美しい風景が広がります。
 わたしが子どもの頃、祖父や父母とともに農作業を行った「田ごとの月」の名勝地姨捨の段々畑、棚田で有名な上田の岩清水は、大型機械では作業ができず経営効率は上がりませんが、ご先祖が家を建てるように石垣や土手を築いて猫の額のような田んぼにも稲穂の実りを願って手作業で稲を苗を植えてきたのです。
 私たちの先人が瑞穂の国の誇りを持って、営農してきたその心を長野県農業の心として引き継いでゆく事が今こそ求められています。農業をめざす青年の里親制度や「おらの村づくり事業」―「おいしいお米と食材は地元の大地から」地産地消の学校給食の日など諸施策をもっと進めて、後継者育成と農家のやりがいを応援することが大切です。また台風や異常気象などで規格外となってはじかれた作物を、その土地柄の特徴を生かして加工し付加価値をつけて販売する事への支援や小規模家族農家・グループが種や苗を購入する、「春おこし資金」への助成など、高齢者や女性の意欲を引き出し、声を受け止めて、細やかな営農支援策をすすめていただきたいと思います。
 ここで知事にお伺いします。
 「中山間地直接支払い制度」は、農家から効果的な制度として歓迎されています。国に対して来年度以降もこの制度を存続するよう継続を強く求めるとともに、県としても独自支援策を検討すべきではないかと考えます。小規模ながらも農業を続ける意欲が持てる農家や集落を応援する長野県農政について知事のご所見を伺います。


      【答弁 田中知事】
       ご存知のように「中山間地域農業直接支払事業」は平成12年度から実施されておりますが、平成16年度の今年度が最終年度でございます。農政部長の鮎沢光昭のもと県内各地で「集落どこでも農政部」というものを行わせていただいておりまして、この中ではこの事業の継続を望む声というものが多くございます。県としても、集落の自律というものに向けた取組みの一定の契機になっているというふうには認識しておりまして、今年度の7月29日に「より条件不利地域に視点を置いた制度であること」と、また「集落の自律や自然と共生する農業が展開できる制度」であることと「畑の傾斜要件の緩和と交付単価の引き上げを行うべきである」ことと、こうした提言を国に対しては行っております。農林水産省においては現時点で平成17年度以降も事業を継続することとして、来年度予算の概算要求を行っているという形でございます。この制度は継続されるものとなってはおりますが、制度の内容が明確にはなっておりません。
      これがいわゆる所得保障のような形になってしまっては真の意味での自律ということにつながらないわけでございますから、こうした観点をより実施していくうえで入れていく必要があろうかと思います。ですから、今議員がおっしゃられましたように横並びで同じものを作るのはなく、地域の独自性というものや誇りがもたらされる形である必要があろうかと思います。いま県としての独自の支援策というようなお話であったかと思います。ただ県としては、これはまさに自律型の町村やコモンズという集落への支援と、また各市町村においても県のそうしたコモンズ施策と合致する取組みに人的であったり、予算的にも支援をするということになっておりまして、この今の中山間地域の農業直接支払い事業というものに限定して県の独自の支援策というものを行うという予定はございません。


 小規模農家を応援する長野県政を期待しております。



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3.国民健康保健制度について

 次に国民健康保険制度の現状について伺います。市町村が保険者の国保の運営は、保険料の滞納が年々深刻な問題となっています。
 長野県社会保障推進協議会が、9月に市町村アンケートによって独自にまとめた実態調査によりますと、保険収納率は1991年の97.3%をピークに年々下がっており、03年では93.9%に落ち込みました。国保加入世帯の特徴では「所得のないもの」と「百万円以下の年間所得」が48.1%を占めさらにこういった世帯が増え続けています。保険料の法定軽減は12万5千世帯にも達し、国保世帯の厳しい生活状況が現れています。
 このような状況にあって厚労省は、今年一月市町村国保の再編統合に向けて、当面広域連合と都道府県の参画を求め、保険料収納率を上げる対策として、「強制徴収」「滞納処分」の実施や「短期保険証」「資格証明書」の交付を強調しました。
 そこで、社会部長に伺います。県内市町村国保の実態、保険料滞納状況をどのように受け止めておられるでしょうか。
 あわせて、11月26日に社会部長名で厚生労働省に「国保に関する要望書」を提出されましたが、どのような内容かご紹介下さい。


      【答弁 堀内社会部長】
       お答えをいたします。市町村国保の運営の実態と滞納の状況についてどのように受け止めているかというおたずねでございます。
       平成15年度の決算状況を見ますと景気の低迷による個人所得の減少や、高齢化に伴いまして医療費増加等ありまして、単年度の経常収支が77の市町村保険者が赤字となっております。このことから財政調整基金から繰り入れ投入で赤字の解消を図っているところでございます。
       次に、保険料の滞納の状況でございますが、保険料を滞納している世帯につきましては平成15年度では約5万9千世帯と前年度より約6千世帯増加しております。全世帯に占める割合は14%で全国の19%よりは下回っているものの、年々増加している累積の滞納額につきましては、115億2千700万円となっているという状況でございます。
      県ではこのような事態を重く受け止めまして、厳しい財政状況ではありますが、市町村保険者の国保財政の安定化および健全財政維持のために、保険基盤安定負担金や高額療養費共同事業負担金など必要な助成を行っているところでございます。
       2点目の11月26日に厚生労働省あてに国保に関する要望の中身は何ですか、とおたずねでございますが、2点ございまして「財政支援措置をより一層充実すること」、もう1点は「安定的で持続可能な医療保険制度体系の実現に向け対策を講ずること」でございまして、まず、財政措置については市町村保険者の厳しい財政状況を支援するために平成17年度までの事業措置として行っております先ほどの保険基盤安定負担金および高額療養費共同事業負担金の助成この継続についてを要望したものです。
       もう1点の医療保険制度体系の確立につきましては、現在国におきましては、医療保険制度の抜本的な改革を検討しておるわけでございますが、都道府県の財政負担が転嫁されないように、また本人負担が重くならないように配慮しながら国保制度を含む医療保険制度を早急に確立されるよう要望したところでございます。以上でございます。


 国保滞納世帯が増えている状況がございます。
 この中で長野県民主医療機関連合会は、最近の3年間、病気治療の継続にさまざまな困難が生じている事例を「受療権侵害事例」として500の実態をまとめました。深刻な不況のなかで、リストラ解雇され失業保険も切れて、生活費が無くなり、国民健康保険料が払えずに病気があっても受診できない人々や40歳50歳の若さで無念にも一人さびしく亡くなって発見されるなど深刻な事態がまとめられています。病気を抱えて苦しんでいても生活困窮の中で医療保障から外れている皆さんの声を代弁し、このような人々をこそ救済する制度への充実を強く求めています。
 こんな中、行政による保険料の強制徴収や資格証明書の発行は、憲法25条に詠われている「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」とした社会保障の精神に反するものです。国や県・市町村行政がどういう立場をとるのかが強く問われています。国民健康保険の名の下に、貧困弱者を切り捨て命まで奪うなど許されるものではありません。
 今年の6月に市町村に対して「国保44条の規定による医療機関での一部負担金の猶予及び減免制度の策定」を県は通達されましたが、その後の進展はどうでしょうか。
 また、高額療養費は、いったん病院窓口で支払った後で補填される仕組みですが、支払い義務を超える金額は窓口で支払わなくても済むように、療養費の受領委任払い制度の導入に向けて健康保険組合や市町村と共同して実現するため、検討委員会などを設置して真剣に取り組んではいかがでしょうか。
 また、生活困窮者救済のつながりとして、水道・ガス・電気料の滞納がある場合、状況を把握することなく一方的に業者が供給を切る事のないように、事業者から福祉事務所などにつながるように長野県としては再度通達を徹底し、事業者、市町村とともに命と健康の危機にある県民を力を合わせて救える県政を期待します。社会部長にその状況につきまして伺いたいと思います。


      【答弁 堀内社会部長】
       3点順次お答えいたします。
       1点目でございますが、一部負担金の減免について、その後の状況どうなっているかというおたずねでございます。災害とか風水害、失業等によりまして収入が著しく減少したために医療機関の窓口で一部負担金を支払うことが困難な方に対しましては国民健康保険法の44条におきまして、市町村保険者の判断で一部負担金の減免をすることができるという規定がございます。それで、一部負担金の減免につきましては適応基準の定めが無くても運用が可能でありますが、より公平・適正で運用を図るために今年の6月に全市町村保険者に対しまして、減免の適応基準を定め、加入者へのその制度の周知を図るよう依頼したところでございます。その結果でございますが、減免の適応基準を定めている市町村が57町村から85市町村に現在なっております。なおまだ定めていない市町村保険者に対しましては速やかに適応基準を定めるよう求めてまいりたいと考えております。
       次の高額療養費の受領委任払い、この検討会を設置してはいかがかとこういうおたずねでございます。高額療養費の受領委任払いにつきましては、本人の窓口負担軽減と申請手続きを簡素化しようとするものでございまして、本人が高額医療費を医療機関に支払うことなく市町村保険者が直接医療機関に支払うという方法でございます。
      しかし、これは本人が窓口でかかった医療費の一定割合を負担することによりまして健康に対する自覚と適切な診療を促し、医療費の公平な負担をするという一部負担の趣旨に反するということでございます。このため、受領委任払いに変わるものとして高額な自己負担額を支払うことが困難な方に対しましては、それぞれ市町村保険者におきまして高額療養費に相当する額を無利子で貸し付けるという「高額療養費貸付制度」が用意されているわけでございます。実質的に本人の負担を軽減することは可能となってきております。従いまして検討会を設けて検討するということではなく、貸付制度を利用しやすいように改善したり、窓口に何度も足を運ぶことが無くて済むようにしておこなってまいりたい。
       続きまして、3点目でございますが生活困窮者がガス代とか水道代、電気料金滞納したときに一方的にライフラインを停止しないための対応を徹底するように再度通知を出したらいかがかとこういうおたずねでございます。これにつきましては、従来から生活困窮者に関する情報が福祉事務所とか市町村の窓口につながるようなシステムでございまして、民生委員や介護サービスなど福祉サービス提供事業者等と提携体制を図ってきているところでございます。これにつきましては平成13年に料金を滞納し電気などのライフラインを止められたことによりまして痛ましい事件につながった他県の事例がありまして現在行っているところでございます。長野県では電気・ガス・水道事業者も生活実態を把握できる立場にあるということから、料金を滞納している方の中でも、生活困窮している状態にあると思われる方に対しましては、一方的に供給停止を行うのではなくて福祉事務所、市町村役場あるいは民生委員へ相談してはいかがかと事業者から助言等をいただくよう協力をお願いしているところでございます。
      今後とも痛ましい事件が起こらないよう、ライフライン事業者と福祉事務所と連携体制を更に徹底を図っていきたいと思っています。以上でございます。


 生活困窮者救済、福祉・医療を保障する長野県にもう少し突っ込んで検討を是非お願いしたいと思います。



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4.福祉医療制度について

 昨年の7月から「福祉医療費の自動給付方式」が実施されています。対象者の深刻な声をご紹介し、共産党県議団としまして昨年来から何度も本会議で、早急の見直しを行い、福祉制度としてそぐわない1レセプト300円のご負担はやめるべきであることを求めてきました。所得に関係なく一律に負担をとる一部負担金は一刻も早く見直すべきです。
 来年は、制度を見直す年でもあり、この制度を検証し、当事者の意見をしっかりと踏まえた福祉医療制度として再構築すべきと考えます。また、子育て支援の視点からも、乳幼児医療費の窓口無料化は全国の3分の2の31都府県が取り組んでおり長野県は遅れています。宮城県でも来年度から実現されるとのことです。当初の知事の公約でもありますので、再度この場で確認をさせていただきたく、ご決意を伺います。


      【答弁 田中知事】
       この問題は、福祉医療制度のあり方検討委員会というものをご存知のように設けたわけでございます。市町村の代表の方々もお入りになったんでございます。平成15年7月に制度改正を行ったんでございますけども、結果として、それまで窓口の無料化を行っていたような市町村が、そのときの状況をより前進した姿勢というふうに仮に仮定すると、それよりも後退してしまったというところもあるわけでございます。
      この点は大変私としても忸怩(じくじ)たる思いの点でございます。今までの制度論に則ってくると受益者負担や窓口無料化の見直しは制度の根幹に関わる問題で、県と市町村が共同で考えるべき重い課題だというような言い方になると思うんですね。ただ、これは多く県民のニーズ、私は決して福祉の垂れ流しとかそういうようなことを望んで言って来た訳ではございません。しかしながら、確かにレセプトの問題に関しましては、全国の20道府県が導入はしておりますけども、逆に言えば47都道府県でございますから半分近いところは導入していないとも言えるわけでございます。完全の窓口無料化を実施しているのは全国で6県ございます。今議員がおっしゃられましたように部分的といいますか、あるいは大半の部分ということで言えば31県というかたちであります。この点は県内では小海町が先駆的に町内の2医療機関に限ってではございますが窓口無料化ということを行っております。この問題は財政的に厳しい中ではございますが、県民のニーズというものが決して福祉垂れ流しやあるいは他律的ということではない方々からもご意見はございますので、きめ細かい検討を行うべきであるというふうに私は考えておりますし、今議員がご指摘にありましたように再度見直しを行う時期には来ているということも充分承知しているところでございます。


 是非見直しをし、早急な検討に入っていただけることを期待いたします。



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5.児童虐待について

 次に児童虐待について伺います。
 県は、児童相談所の相談体制の強化のためこの4年間に児童福祉司など職員を35人から53人に増やし、一時保護所の通年開所や松本児童相談所の移転等体制の強化が図られ、職員が24時間の緊急対応にも献身的に応えて奮闘されています。
 今年10月の「児童虐待の予防に関する法律の一部改正」にともなって、9月議会では「児童虐待での犠牲児童を出さない長野県のために更なる体制の強化」を求めたところです。
 そこで制度改正によって県の責務と児童相談所の役割がどのようになったのか社会部長に伺います。
 あわせて県下5箇所の児童相談所の現状はどうなっているでしょうか、地方交付税算定基準に照らして不足している児童福祉司の補充状況はどうでしょうか、法改正にともない求められる機能と児童相談所の状況から現在直面している課題をうかがいます。



      【答弁 堀内社会部長】
       お答えをいたします。児童虐待の防止等に関する法律の改正に伴いまして、県の責務と児童相談所の役割がどのように変わったかというおたずねでございます。
       まず県の責務に新たに加わった点について申し上げますと、1点目は児童虐待の予防および早期発見や児童虐待を受けた児童の自立支援、それから家族の再統合促進のための関係機関との連携の強化および研修の実施。これが1点目でございまして、2点目としては虐待を受けた児童および保護者のケア、支援のあり方などについての調査研究および研修の実施。この2点でございます。
       また、児童相談所の役割につきましては、児童の安全確認および確保に万全を期する観点から、1つ目としては新たに関係者の協力の下に子どもにじかに会って安全確認を行う。2点目といたしましては児童の安全確認および保護において警察官の援助を求める場合は従来は、必要に応じて警察官の援助を求めることができる規定だったんですが、今回は必要に応じて警察署長に対し援助を求めなければならないと定められたところでございます。これらの改正を踏まえまして、虐待防止に一層努めているところでございます。
       それから2点目の児童相談所の現状と児童福祉司の体制等の問題点等の指摘でございますが、近年児童相談所におけます児童虐待相談件数は年々増加しておりまして、相談内容も複雑多様化してきております。これらの状況を踏まえまして、平成12年の虐待防止法制定を受けてから、児童福祉司など児童相談所の職員の増員を順次図って相談体制の強化をしてきたところでございます。しかしながら、児童虐待に関わる相談につきましては加害者とのかかわりなど多くの時間を要するために担当職員の精神的な負担が大きく業務はますます過重傾向になっているのが現状であると思います。
      このために児童相談所の相談機能の更なる強化が求められているわけでございまして、現在、現地機関の再編とあわせまして、適正な職員配置についてこれから検討をしてまいる、こういうふうに考えております。以上でございます。


 児童虐待の予防、早期発見、迅速な児童保護および自立支援、家族関係の支援、また調査研究等の機能も求められるということでございます。こういった中で関係機関団体との連携・調整この役割が強く求められてきていると思います。特に虐待発見の場として保育園・幼稚園・学校教職員の取り組みの強化が求められる中で、教育委員会、教育事務所の認識と対応はどのようになっているでしょうか教育長に伺います。
 また、小児科医師や看護師など医療現場で虐待を受けている児童に関わることもあり、衛生部としてはどのような対応があるのでしょうか、この点衛生部長に伺います。


      【答弁 瀬良教育長】
       お答えいたします。児童虐待について県教育委員会としての取り組みについてのおたずねでございます。本県における児童虐待は平成15年465件という相談件数がございまして、前年比23%という増加でございます。被虐待児という者は、ほとんどは幼児そして小中高の児童または生徒でございまして、また一方、虐待を加える者はそのうちの83.7%が実母または実父であるという極めて悲惨な状況にあります。このようなか先ほど議員のお話のように、10月1日に児童虐待防止法の一部を改正しようということで強化されたところでございまして、社会部長からお話があったように保護者以外の同居人による児童虐待を見過ごしていたもの、ネグレクトとしての児童虐待にあたるんだとか、それから児童の目の前でドメスティックバイオレンスというふうな暴力行為とか、児童の恐怖をあおるような行動をとった者も間接的な児童虐待行為になると、それから、以前は児童虐待を受けた児童について通告義務の対象としていた
      ものを、今回は児童虐待を受けたと思われる児童というふうに拡大してその実効性を高めている。また、児童虐待を受けたために学力が遅れた児童に対しての就業と就学援助、進学・就職の際の支援というふうなことも考えております。今児童虐待におきましては予防と早期発見、さらには児童虐待を受けた子ども達の自立の支援というのが何より大切でございまして、県教育委員会といたしましては、保育所とか学校等の教育現場は子どもの身体的、状況的変化に気づきやすく、また保護者や家族の訴える問題について知りうる機会が多く、また虐待を早期に発見しやすい立場にあります。
      このような観点から踏まえて、県教育事務所と小・中学校区の該当者等が児童虐待防止ネットワークに参加して関係機関との連携・協力に努めております。更に、県教育委員会といたしましては、福祉・医療との関係強化も充分に深めておりまして、児童虐待防止等、児童虐待を受けた児童の自立の支援  取組みを進めていきたいと考えております。具体的な取組みといたしましては、県教育委員会では今年2月に児童虐待への適切な対応について教育現場に通知したほか、9月に児童虐待に関する教育研修を実施して十分な体制を整えております。また11月の児童虐待防止月間を中心にポスター、リーフレット等各学校に配布するとともに、郡市の校長会、私立幼稚園協会、保育連盟等通じて児童虐待防止法の改正等について、教育の現場への指示の徹底、そして関連機関との連携等について、指導助言をしておるところでございます。



      【答弁 鈴木衛生部長】
       児童虐待防止に関しましては、常日頃、直接児童を診察する機会の多い小児科医などが、その虐待の疑いを発見することも大変多いわけでございます。そういう面で大変重要な役割を果たしていると認識をしておりまして、現在県下の各広域ごとに個別の児童虐待防止ネットワークが設置されておりますけれども、その中には複数の医療関係者が参加をしておりまして連携を図っておるところでございます。これまでにも医師が日常診察業務の中で、児童の身体あるいは様子に虐待の疑いがあるということを感じた場合には児童虐待の防止に関する法律に基いて通告義務があるわけでございますけれども、通告をいたしておるところでございます。今後は市町村単位で、児童虐待防止のネットワークが構築がなされていくとこういう方向性がありますので、医療機関がこういった役割期待されておりますので十分な役割を果たせることができるように一層関係の機関みなさまと連携を図ってやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。


 教育委員会および衛生部の所管の関係機関におかれましても、そういった視点で単に児童相談所機能にすべてそこに任せるということではなく、ともに考えるということを是非お願いしたいと思います。
 乳幼児健診での保健師、市町村児童福祉員、児童福祉施設の職員、弁護士、警察など地域のネットワークと連携した子どもたちを守るネットワークが大切です。その束ね役が県とおよび児童相談所に求められていると思います。
 児童相談所の業務としたしまして、通報から初期対応、児童の一時保護とか、あるいは家族状況把握や児童養護施設への入所やその後の親との良好な関係作りなど大変な作業がございます。家族再統合に向けての援助、どの場面でも複数職員での対応、関係機関との共通認識を持ちながらすすめること、親が虐待を否認し続け問題解決に向けて進まないなど、「子どもを保護しながら、一方で親から憎しみをもたれてしまう」危険な場面にも直面する事態があると思います。
 このように児童相談所の職員は、現在の社会のゆがみの犠牲となっている子どもたちとともに、もがき苦しみながらぎりぎりの状態で頑張っています。心理判定員を正規職員する事や、24時間の相談体制や専門機能強化を視野に入れて専門職員の配置を長野中央児童相談所や松本児童相談所で充実することを強く提案したいと思います。
 来年から児童福祉法の一部改正案が示され、市町村では対応困難な専門性の高い困難事例への対応や市町村の後方支援の役割など、ますます指導援助体制の強化が必要となってくることが予測されます。
 児童虐待を予防し、長野県子どもたちの幸せのために児童相談所の充実やネットワーク構築にむけてどのように取り組まれるのか、最後に再度社会部長におたずねして私の質問を終わらせていただきます。


      【答弁 堀内社会部長】
       お答えいたします。児童虐待の実態につきまして、ただいま議員ご指摘のとおり大変な実態が随時現場では起きております。そのまま看過するわけにはいかないので、これからますます児童相談所の機能の充実強化というものを、それで児童相談所で措置して児童養護施設へ措置すればそれで終わりではなくて、最終目標はあくまでも家族統合といいますか、それで再起していただくと、そのためには早期発見、早期対応が何よりも大事という観点に立ちまして、現在児童相談所を中心にしまして、9つの広域圏ごとの広域圏単位のネットワークを組んでおります。10の広域圏がございますので、これからは10の広域圏にしまして、先ほど言いました衛生部なり教育委員会、保健所とは学校とかそれから医療機関、警察、民生児童委員だとか、虐待防止相談員とかいろいろいます。そういう人、あらゆる人に近隣で見守りしながら、早く発見して、早く対応するということが求められている。今後さらに子どもの見守りの一番近いところは一番身近な市町村なわけでございます。子ども達の身近な市町村で見守る体制をつくるという意味において、市町村単位ごとにネットワークがまず築けていければ、そのためには市町村担当者の研修なり、技術を強化して、そういう支援を積極的に県としてもやって市町村単位ごとにまたネットをつくっていこうという体制に充実強化していきたいと考えております。以上です。
       児童相談所の充実強化、先ほども現地機関との再編の中で考えていきたいということで申し上げたんですが、マンパワーが今充分と言えるかどうかということは、必ずしも充分ということでないということは認識しておりますので、更なる努力をしてまいりたいというふうに考えております。



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